★★★「雪を詠む七首」★★★ 松井多絵子
成人の日の昨日は朝から雪、毎年この日は歩く振袖を見ながら街を歩くのですが、今年の私は終日「ミノムシ」、久しぶりに雪よりも白い表紙の歌集『えくぼ』や小麦色の表紙の『厚着の王さま』をひらき雪の歌をさがしました。
めざめれば辺りの緑は消えうせて雪の白さがからだに沁みる
雪の日はひねもすマナーモードにて炬燵をはなれることができない
雪の日の地下街めぐりいて思う縄文杉の根の行く先を
雪解けの坂道をわれの傷口にふれるがに歩く白菜さげて
まだ雪を脱がない山を引き寄せて引き離してゆく高速バスは
あたたかくなっても白いその帽子ぬがないほうがいいよ富士山
雪の日も裏方つとめてきし我にふいにライトが、春きたるらし
※ 松井多絵子のプロフィール 東京都在住 歌誌「未来」所属 日本歌人クラブ会員
第28回現代短歌評論賞受賞 第一歌集『えくぼ』第二『厚着の王さま』短歌研究社刊