以前あげたブログで「ワタシは虫が嫌い」と書きました。虫をアップで見ると、気味が悪くなります。園芸をやっていると、役に立つ可愛い虫など皆無であります。畑の作物や果実を荒らすだけでなく、花や若葉を食い荒らし植物の大事な葉腋を吸い取りろくなことをしません。
寒くなるとほとんどの昆虫は姿を消すのですが、室内に置いた観葉植物や非耐寒性の為に、屋内に退避させた鉢植えにはダンゴムシやアブラムシ・カイガラムシなどがとりついてぬくぬくとしております。一度はダンゴムシの死骸が大量にワタシの隠れ家に落ちていて、次男が激怒したこともありました。次男もワタシ同様虫嫌いでありました。
その次男はおととしの秋に入籍したのです。お相手の方が岐阜県在住、コロナでなかなか先方に挨拶も出来ずにいたのですが、一昨年の10月にようやく両家顔合わせを致しました。気さくで同い年のゴルフ好きで相手のお父さんとも、意気投合いたしました。ただし一つだけ相容れないのが「虫」でした。ワタシは虫嫌い、先方は昆虫採集が大好きで沢山標本も持っていると仰っていました。
そして昨年、事件が起きたのです。
次男の談であります。彼は結婚後、大垣のアパートに新居を構えました。新妻と楽しく暮らしていたとある朝、なんと警視庁の警察官が数人やって来たのだそうです。警察には全く縁もなく踏み込まれるような覚えもない次男は、これは新手の詐欺や強盗では無いかと疑って、最初はドアを開けなかったそうです。押し問答の末、警察手帳と捜査令状を見せられて部屋に入れると三人の捜査官によるガサイレが始まりました。「種の保存法違反」、国内希少野生動植物種を買ったという容疑でありました。
取引が規制されるのは、ワシントン条約で売買や捕獲が禁止されている国際希少種野生動植物種が有名であります。日本でも「イリオモテヤマネコ、タンチョウ、朱鷺、サンショウウオ」などは天然記念物などに指定され、捕獲禁止というのも聞いたことはあります。
今回の容疑が「たがめ(田鼈 )」だったそうです。これが種の保存法の定めで、商売目的の販売、生死にかかわらず買い入れすることが禁止されていたのです。知ってました?次男のお嫁さんは、父親に請われてヤフオクか何かに出品されていた「たがめ」の標本を落札していたのです。警察はネットでそうした違法取引を監視しているのです。容疑者となった嫁さんは、何週間か内偵捜査され日常生活を監視され、踏み込まれたのです。彼女のネットでの購入履歴から父親とのLINEのやりとりなども徹底的に調べられたそうです。
幸いにしてうちの倅も、家宅捜査されて咎められるような品物を置いてはいなかったようです。そもそもたがめは、ワタシらが子供の頃はそこらの池には沢山いました。(その頃からたがめは嫌いだった)見た目も気持ち悪く、虫や魚などを捕食する肉食昆虫ですよ。調べてみたら、東京神奈川などの大都市圏ではすでに「絶滅」したそうであります。
家宅捜査で、家じゅうをひっかきまわされ指紋を取られたうえ、なにやら押収されたんですね。そして、事情を説明してその足でお父さんの家に向かったそうです(もちろんパトカーに乗って)。お父さん、びっくりしたでしょう。ただの昆虫好きで、標本を集めていたのにいきなり刑事事件の被疑者になったわけですから。
相手が警視庁なので、「東京まで来てもらって調書をとります」、などと脅かされて夜も寝られなかったでしょう。この法律違反は「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」 と定められています。もし、起訴されて有罪判決となれば立派な前科がつきます。懲役はともかく、罰金がいくらつくかもわかりません。
結局、岐阜の警察署で事情説明をし、数か月後「不起訴」となったそうであります。個人の趣味で蒐集し、保存法を本人は全く知らず違法の認識もなく、1件だけの取引だったので書類送検だけでお目こぼしになったのでしょう。お父さんは、娘に「昆虫集めはもうやめて」ときつくいわれたようであります。
お父さんには悪いけれど、昨年の中では一番面白い「すべらない話」でありました。
今回の教訓
1.ヤフオクやネットで販売しているものが、必ずしも合法ではない可能性がある
2.たがめは売っても買ってもいけない。ただし、自然の野山で個人の収集目的での採取はセーフ。→これが不思議
3.万一家宅捜索されてもいいように「違法物件」や人に見られて困るようなものは置かない。