今日は、昨日に続いて珍品の篆刻印発見、お宝入手かというお題のつもりでありましたが、この二日間でとても気分がいい事がありましたので、急遽差し替えといたします。
先日わが師「藤原ひさ子先生」の作品展を観に、熱海の起雲閣へ行った話を載せましたが、一昨日先生からすごい手紙が送られてきました。手漉きの和紙に書筆で書かれた礼状であります。ワタシは今まで、毛筆で書かれた手紙を頂戴したのは生まれて初めてです。しかもそれが、正真正銘の書道家直筆というのです。
冒頭に書かれた歌は
「折りとりて はらりと重き すすきかな」と判読できました。飯田蛇笏さんの、秋をうたった俳句です。先生のおかげで、カナ書き文もだいぶ読み取ることが出来るようになりました。多くの方が訪れ観覧し、中国の出版社から仕事のオファーがあったことなどが、流麗で張りつめた筆意の内に記され、先生にとって充実した三日間であった思いが溢れているようでした。
また、コロナで書道塾がずっと休会になっていた間も、たまにLineでワタシの拙書などを送っては指導していただいています。「章法を勉強なさい」とコメントをいただきましたが、その極意を自ら手紙で示され叱咤されたとも感じて胸に響くものがあります。
この書状は、まさにプライスレスの宝物であります。きちんとした体裁にして「家宝」として大事に保存いたしたいと思います。
それから、昨日の出来事を書き留めておこうと思います。とても清々しく幸せな心もちになりましたし、登場する店も人も素敵なので、あえて実名を挙げようと思います。ワタシのへぼゴルフの帰路、「晴れパン」、という近在でも有名な美味しいパンのお店に寄ったのです。数年前から高級な純生食パンを製造販売し、最近ではデニッシュパンも 焼くようになりました。
家内から「(いつもなにかと世話をやいてくれて総菜も届けてくれる善人の御夫婦)光永さんの分も買ってきて」と言われて二斤を買って店を出たとたん、30歳過ぎの若い男性がワタシに頭を下げ会釈するのです。マスクをしているせいで誰かは分かりませんが知らない人でした。彼は「自分の不注意で、お宅の車の側面に自分の車のドアをぶつけてしまった」と言うのです。助手席側に回ると縦に2本擦過傷がついていましたが、塗装が剥がれたりへこんでいるようには見えません。傷対策でポリカーボネート塗装を施しているので、そこが少し傷んでいるのかもしれません。
偶然にもそこから50Mほどのところがワタシの車を買った「LEXUS」の店舗だったのです。彼が、自分の不注意で大切な車を傷つけて申し訳ない、弁償します、直しますと幾度も頭を下げるのです。ワタシは大事にしたくないので、取り合えず見てもらい、軽微な擦過傷ならば、何かワックスかなにかで目立たないようにしてもらおうと思ったのです。
出てきたレクサスの三浦さんに説明をしていると、「修理の見積をしますか」と言うのでお断りしました。そうすると必ず数万円の負担が出ることは明らかだったからです。乗ってから7年経過し、すでにいくつかのスクラッチ傷がある車なので、そこだけきれいになってもどうと言うことはありません。レクサスの方で、目立たない様にしてくれればいい、と言ったら「わかりました、では自分がやってみます。勿論無料で結構です」と三浦さんが請け負いました。
レクサスは、奥に豪華なラウンジがあって、お客やオーナーが行けばタダで飲み物をご馳走してくれます。コーヒーや紅茶類はスタバ並みのクオリティーで、しかも全国で有名な銘菓をお茶請けに添えてくれる嬉しいサービスがあるのです。ワタシはタダで愛車の故擦り傷をなおしてもらう間、気が動転し恐縮する相手の方に我が家のようにアイスコーヒーを振舞ったのです。彼が差し出した名刺は「箱根富士屋ホテル」総務課長でこちらも偶然名前が三浦さんでした。これは箱根の老舗旅館、さすがにその従業員も違うのだなぁ、と感じました。
駐車場に止めた無人の車にドアが当たって擦り傷をつけた時、いったい何割の人が所有者の戻りを待って謝罪するだろうかと考えました。黙って立ち去る人が多かろうと。地元でも一流の良質で純粋な材料を使うパン屋さん、そのパンを求めに来た正直な若者、お客の意を汲んでサービス補修してくれたレクサスの社員、たまたま身の回りに優れて善良で一流の人がいたことが嬉しかったのです。一流の車屋さんで美味しいコーヒーと銘菓までいただいて。
帰宅して家内にその話をしたら、「あたしは昔、神様と言われたことがある」と言い始めました。数十年も前に駅前のスーパーで買い物をしていた彼女のそばで、制服姿の中学生二人が相談しながら一番安い棒アイスを買おうとしていたそうです。その時、おばちゃんが奢ってあげる、と当時でも高級だったハーゲンダッツのアイスクリームを買ってあげたら、「神様だ」と言われたそうです。
いいことは、人生でそうそうあるものではありません。人に良くすること、善意や好意で誰かに喜ばれること、それは些細なことでも自分を豊かにし、ずっと心に留まるものなのだとしみじみ感じました。
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