植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

逃がした印財は大きい 釣りあげた魯庵はどうだろう

2022年11月04日 | 篆刻
ヤフオクの快楽にどっぷりはまってすっかり依存症になっている「ヤフ中のワタシ」であります。

毎晩狙いをつけた印材などにちょいちょいと入札し、オークションの趨勢を眺めながらも、睡魔には勝てず、結果を見ないままに就寝してしまう、というのがいつものパターンであります。そのおかげで、魅力的な出物・珍しい逸品であっても、深夜まで続く「吊り上げ行為」やら高値での入札競争に巻き込まれず、散財をまぬかれているのです。夜中にエスカレートして、予算を大幅に上回る、品物の価値以上の値段で落札したら、おそらく翌朝は後悔するでしょう。

結果として、ほぼすべての品は当然入手できておりません。昨夜は、目を付けていた「印面の彫りがある印材まとめて30本ほど」の品のオークションに参戦しました。鶏血石や田黄・芙蓉石などの銘石が少なくとも10個以上含まれているように見え、ほとんどの石が、立派な紐や側面の浮彫「薄意」があるものでした。非常に価値が高いものと思っていたので、忘れないよう数日前に5千円で入札していましたが、それはすぐさま高値更新されていました。

そして夜8時、すでに3万円近くまで上がっていたものに「44,000円」という、ワタシにとって破格の入札をいたしたのです。だいたい一個1,500円としてそんなものになるので決して無謀な入札では無いのです。最終期限の9時頃までは、ワタシが最高入札額を維持しておりました。ところが残り10分を切ると、突如、急激な入札合戦に突入いたしました。それは、予想したことではありますが、そこに新規に入ってきた人たちの「評価点」が10人中7人が10000点以上、つまり、ヤフオクでは極め付きの猛者・常連・金持ちの美術商級の人たちであります。

即、ギブでありました。こうした場合、もはやワタシの財力では太刀打ちできないのは明白で、石を仕入れ対象としてもコレクションとしても1個あたり1500円で済むはずもありません。結局、今朝になって落札金額を見ると「評価13052点」の方が、147,000円で落札していました。一個当たり5千円ほどですから、それでも決して高値掴みとは思えません。むしろいい買い物であったでしょう。もはや、印材ならぬ印財(宝)であり、もし、ワタシが潤沢な資金があるバイヤー・古美術商ならば15万円以上出したかもしれません。

もう一件、これは上記の印の入札の前夜、一昨日の夜のお話です。狙いをつけていた、ほとんどオークションでも出ることが無い珍品の印泥「魯庵印泥」であります。ワタシは篆刻の腕前は準中級、印材の蒐集および知識は中級、印泥のコレクションについてはほぼ上級者であると自認しております。その数60個以上になりましょうか。

印泥はある意味「生もの」なので、鰻の秘伝のたれ、ぬか床同様、適正な場所で・環境での保存とメンテナンスが必要です。数百もコレクションしたらみんな腐らせるか、干からびるかになります。また、印泥自体せいぜいそのメーカーは5.6社で、数十種類しかありません。(品質やグレード・色合いなどで差異はありますが)

市販されている有名どころは、だいたい所蔵しているのです。ワタシのブログをみて、連絡を頂いたのが半年ほど前の「Iさん」でした。書道を始めて印泥に凝ったのだそうです。ワタシ同様、ヤフオクで印泥蒐集することに飽き足らず、いくつもの書道具専門店や中国からの輸入業者にコンタクトしているようです。

そのIさんがワタシの愛蔵品「魯庵印泥」を譲ってくれと連絡してきたのですが、これ一個しかなく、真贋不明、さらに見ず知らずの方と個人情報やお金をやりとりすることにいささか不安を覚えて、保留にしておりました。そして最近出品された中に見つけていた「魯庵」、これはともかくも落札しようと思っていたのです。そして恐らくIさんも狙っているに相違ない、と。

果して、彼から電話があったのが落札最終日の前日でありました。すでに数千円の札を入れたのだと仰って、どうしますか?との相談でありました。彼と、仮に落札競争して必要以上に価格を釣り上げるとしたら、それは愚の骨頂というものです。相談した結果、ワタシは戦わずして下りよう、首尾よく落札出来たら「半分こ」し、ワタシの「魯庵印泥」も半分にして交換しようという話でまとまったのです。魯庵印泥は、写真で見るとワタシの印泥と同じ説明書がついていて、色味は赤、ワタシのは黄口と別種でもありました。本物で間違いなかろうとは思いますが、もし印泥自体を違うものにすり替えられていたら、打つ手はありません。

入札は、これも残り10分で慌ただしく動き始めたのです。Iさんは「2万円まではがんばる」などと決意を述べていましたが、ワタシの勘では1万円から1万5千円であろうと見ていました。彼は、最終決断で15千円で落ちなかったら諦めると伝えてきました。そうなった時ワタシが跡を継ぐわけにはいきません。

二人の新たな入札者が加わり、すぐに1万円を突破、残り数秒になると入札額が上がり、終了時間が7分延長となります。500~1000円刻みで何度も上がってついに14,500円に到達しました。ここでもう1度入札があればIさんの最高札を上回ることになります。そして固唾を飲んでカウントダウンが残り0秒を表示した時「この商品は終了しています」と表示されました。自分の入札でも、こんなにドキドキ興奮したことはありません。時刻は22時45分、普段だったらとっくに寝入っている時間であります。

隣では家内が寝静まった真っ暗な部屋に、間髪を容れず 、ワタシのiPhoneが鳴り響きました。それはIさんからの電話で、大変興奮していました。こちらは、布団の中、ほとんど眠気で朦朧としている所にわぁわぁ話したのが10分ほどでしたか(笑)。その趣旨は、「落札した印泥は、なんとワタシの住所に直接届くように登録するから、住所を教えろ。届いたら「真贋の鑑定」の上、ワタシの手持ちの印泥と新たに届いた印泥の中身をそれぞれ等分して、自分の住所に送ってくれ」でありました。

このバーター取引では、お互いに基本的には損得はありません。ワタシが代わりに落札しても、彼から15千円貰って半分差し上げるのですから意味は同じです。以前Iさんに、譲るなら15千円と約束していたのです。ワタシの貴重な印泥の半分は無くなる分、魯庵印泥の別種が入手できるのです。お金のやり取りも無いのでトラブルの心配もありませんね。

恐らく今日には件の印泥が自宅に届くことだろうと思います。何にせよ、生きているといろんなことがあって楽しい日々であります。

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