ワタシは自称、ヤフオク大学書道学部半紙学科准教授であります。
最近、家内に怪訝そうな顔をされます。月に何度も届く大きな段ボール、ほとんどが書道用紙なのですが、使い切れないだろうと。無理も無いか。過去ひと月を振り返っても、ヤフオクで落札した半紙だけで3回、1万数千枚は届きました。
ヤフオクは、中身を手に取って確認できないのです。だからこうした古い物、消耗品は安く買えるが、品質は大きく当たりはずれがあるのです。届く半紙も、気に入るか・見込み通りかは段ボールを開けてみないとわかりません。シミだらけで状態の悪い物、機械漉きの粗悪品も当然混じってきます。・・・ある程度はオークションの説明や写真と、入札件数で判断できるのですが。
書道に打ち込む(笑)者としては、書道紙、特に半紙は、上達の最も重要な要素であり、大量に費消する消耗品でもあります。ざっと月に千枚ほど書いている勘定になります。半紙は専ら漢字用、練習用です。さらに、週一回通う書道教室には、30人ほどの学童・学生さんも来ていますので、使いきれない分は子供たちの練習用に寄付するのです。先生は半ばボランティア、人助けのような書道教室運営なので、古くても安物の半紙でも笑って受け取ってくださいます。
半紙にも大きく分けると漢字用と仮名用、そして機械漉きと手漉きに分類されます。仮名用は薄くて、墨が浸透しないように表面に薬剤でコーティングされております。漢字用は平均的には厚めで、カスレや滲みを出すために、ある程度繊維が墨を吸収するように作られています。
機械漉きは、原材料が紙パルプで早い話が、ちり紙と大差なく古紙などを使った再生紙が多いようです。古新聞などを混ぜて大量に生産するので、一枚1円にも満たないような半紙まで売られています。学童用や粗悪品を除けば、平均的には一枚2,3円というところでしょうか。
一方手漉きといっても、ピンからキリまであって、国産・中国産かでも製法や原料が違います。流通している手漉き半紙は、7,8割がコスト、人件費の安い(安かった)中国・台湾で作られたもののようです。今時は、すべての工程で手作業であるはずも無く、出来上がってきた紙が、手で漉いたような風合いと、特有の薄い横縞のような模様が出来ていれば「手漉き」または手漉き風として販売されます。
国産の純正の手漉き半紙なら、最低12円位、高いのは100円以上!。一方唐紙などと言われる中・台産輸入物は最低で5円、高級品は15円以上で売られています。伊予半紙は割合伝統的に国産が多く、甲州半紙は昔から輸入物に依存していると思われます。これらは昭和の時代からほとんど単価は変わっていないのです。
ともあれ、古今を問わず、手漉きの紙は新品おおよそ一枚10円が目安となります。ネットショップで定価で買うと千枚が最低で1万円、上等なものは2万円近いものもあり、練習用にはもったいなくて使えません。
そこで練習用の半紙はヤフオクの出番、ワタシのねらい目は、手漉き半紙のみ、数個の箱入り半紙、あるいはバラで積み上げられた大量の半紙で、手漉きがどれだけ入っているかが勝負の分かれ目であります。
厚紙の箱入りならば、印刷・押印された製品名・能書きがありますので見当がつきます。手漉きならちゃんと手漉きの表示がされるのが通例です。それだけでなく、定価のラベルが残っているもの、あるいは持ち主が手書きで購入年月日と買い入れ価格を記しているものもあります。
オークションで出る半紙はひと箱のみなら沢山あるのですが、これは、ほとんど書道紙メーカーや販売店が出品した在庫品・新品なので、割引率(即決価格)はせいぜい20~30%で、魅力はありません。手間や配送料も考え、判断に迷うような品物が複数まとめて「大量」に入手できるものを狙うのであります。出品者は、古物商より廃品処理業者さんが多いように見受けられます。書道用具の福袋、安物買いのナントカと言われれば、その通りです。
正直ここ2,3回は外しました。(´;ω;`)ウゥゥ
機械漉きが多く粗悪なものも含まれていました。手漉きもありましたが、固くてカサカサの書きにくいものでした。落札平均7,8千円であったのが救いです。これには、その失敗の原因や理由があるのですがまた別の機会にしましょう。
そうして、今回落札し、昨夜届いたのが、手漉き(と見込んだ)「雪吟・白眉・王蘭・玉版半紙」計5千枚、19千円とワタシにしては思い切った落札価格でした。一枚当たり換算で3.8円。それでも、上限25千円にしていたのでややラッキーだったのです。
うっすらと10500円と鉛筆書きされています。これは、消費税が5%であった時期の商品、1997年以降でしょうか。製造工場等の記載が無いので輸入品(台湾)でしょう。こんな感じのものが2箱、もう一つ「王蘭」は2千枚入りですが、これもシミの無い良質な輸入と思しき「手漉き」でありました。問題は茶色の箱に入った「玉版半紙」とだけ判を押されており、オークションの写真では期待できないなぁ、と思ったものです。
玉版とは、動物の歯の滑らかな部分や、天然の玉石などで紙面を繰り返し磨くことで滑らかさや締まった紙面を作る加工法であります。安徽省の特選書道紙「紅星牌」の工場や福建省で製造されているようです。通常の手漉き工程に新たな作業が加わり、また厚みが多い分だけ価格も高くなるのが道理です。
入手したこの半紙は、まさにその通り。やや厚みがありすべすべした手触りで、紙繊維がち密に均されており滲みが少ない上質な半紙でした。これは以前半紙屋さんでネット買いし、最高級と言われた千枚18千円の半紙と紙質に近いのです。今回の一番の収穫でした。
これら5千枚は、中国か台湾から輸入した良質な方の手漉き半紙で、購入時期は2,30年前、購入時定価は、6万円前後では無かったか、というのがワタシの見立て、結論であります。今回は大当たりなのです、気分良く書道の稽古が出来ますし、機械漉きの使わない在庫、使いかけの半紙は安心して、まとめて先生の所へ持ち込もうと思います。
実はもう一件落札した半紙があります。ざっと見て4千枚近い箱無しのバラの半紙、7,250円でした、ワタシの観察と直感で、ほとんどが最近まで書かれていた良質の手漉き半紙ではないかと踏んだのです。家人の冷ややかな視線は覚悟の上であります。
さて柳の下に泥鰌がいるか、来てからのお楽しみです。
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