美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

公教育は、オンライン授業の徹底化を急げ

2020年04月28日 14時35分31秒 | 教育


宮城県の村井嘉浩知事が、二七日に「九月の入学、始業がよいのでは」という私案を示し、教育界で少なからず議論が巻き起こっているようです。実は当方、コロナ禍における公教育の在り方について近頃いろいろと思いをめぐらしておりました。で、同知事の私案を目にし、少なからず違和感を抱いたのです。以下、私見を述べようと思います。

コロナ禍の長期化を前提とするならば、「いつになったら以前のように生徒を学校に集められるのか」という問題設定そのものが現実的ではない。当方は、そう考えております。というのは、一か所に生徒を集めることそれ自体が3密を生むからです。そうなると学校が3密の新たな発生源になり、社会的に極めて危険な状況がもたらされることになります。せっかく終息しかかったコロナ禍がふたたび襲来する、というわけです。

そう考えると、学校は、生徒ひとりひとりにタブレットを配って、オンライン授業を徹底するよりほかにすべはないものと思われます。部活の復活などもってのほか、となります。オンライン授業で学校が提供できるのは主要5教科の教育サービスのみで、実技4科は基本的に無理だから、美術と体育と技術家庭と音楽は、たとえば二教科選択制とし、指導は民間機関に任せる、とするほかはないでしょう。費用はもちろん地方公共団体が出す。また、生徒の学力評価の仕方や、通知表の内容や取り扱い方も、根本から考え直さなければならなくなってくるでしょう。

こんなふうに、コロナ禍は、学校なるものの抜本的変革をもたらすのではないでしょうか。

こうやって考えを進めると、集団授業の再開時期をいつにするかといった議論は、空想にすぎないと言わざるをえなくなってきます。その意味で「9月の入学始業」もリアルに状況を踏まえたアイデアとは到底思えなくなってきます

「九月入学始業はグローバル・スタンダードであって、留学生を受け入れるのに便利」というニュアンスの肯定論があるのも、気に入りません。コロナ禍は、グローバリズムという名のチャイニーズ・パワーの浸透がもたらしたものという側面を、当方、重く見るからです。そういう軽佻浮薄な言説を目にすると、まだ懲りないのか、という感慨を禁じ得ないのです。

文科省は、既成の枠にとらわれた堂々巡りをいい加減やめにして、公立小中高の生徒たちのオンライン授業の実現に向けて早急に動き出さなければなりません。大人が空しい議論をしている間にも、子ども総体における学力低下や子ども間の学力格差の拡大はすさまじい勢いで進行しているのですから。念のため申しあげておきますが、省益の保護をやぶにらみしてはいけませんよ。
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大瀧詠一・山下達郎イチ押しの男性シンガー名曲ベスト3

2020年04月28日 14時35分31秒 | 音楽


当方、寝付くときに、山下達郎と大瀧詠一の「新春放談」をyoutubeで聴くという習慣が、この数年間続いております。「新春放題」は、山下達郎がパーソナリティを務めるラジオ番組の新春恒例企画で、大瀧詠一をゲストに迎え一月のはじめの数回、歌を何曲か織り込んで気ままなトークを繰り広げる、という内容です。当方の記憶違いでなければ、一九八四年から二〇一一年まで続いた長寿番組です。半分くらいは何を言っているのか分かりませんが、とにかくめっぽう楽しい気分になる、という不思議な番組です。

そのなかで、両名が「これは文句なし」と太鼓判を押した三曲の男性シンガーによる楽曲があります。一言お断りしておくと、大瀧詠一にとってエルビス・プレスリーは別格の存在で、ここには含まれません。

一曲目は、ロイ・オービソンの「クライング」(一九六一年)です。大瀧詠一いはく「ロイ・オービソンを好きな人は、最後に大袈裟に歌い上げなきゃロイ・オービソンじゃないというだろうし、彼を嫌いな人は、だからオービソンは嫌いだというだろうな」。山下達郎は、「観客の拍手があったかいんだよね」と感慨深げに言っています。この歌手、日本ではあまりなじみがなくて、唯一「ユー・ゴット・イット」がヒットしただけです。ウェットな日本人の感性にフィットしたのでしょうね。ということで、両曲を掲げておきます。当方、同番組で「クライング」を夜中にはじめて聴いたとき、感激のあまり布団のなかで年甲斐もなくわなないてしまいました。掲げた動画は、一九八七年のライヴを収録したもののようで、二人が話題にしたテイクはこれだと思われます。若い時より歌がずっと上手くなっています。たゆまぬ修練の賜物でしょう。

Roy Orbison - Crying (Black & White Night 30)

You Got It


二曲目は、ライチャス・ブラザースの「アンチェンジド・メロディ」です。二人のトークの合間にサクッとかかって、曲が終わったら何もなかったかのようにまた二人のトークが続き、二人のコメントは何もなかったのですが、なんというか空気から、二人が「文句なしの名曲」と高く評価しているのが伝わってくるのですね。1990年のアメリカ映画「ゴースト/ニューヨークの幻」のテーマミュージックだと言えば、ピンとくる方が少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。下に掲げたのは、ライヴでの歌唱です。歌い終わった後の歌い手の「ああ、オレ、やったね」という満足そうな表情が印象的です。1955年にアレックス・ノースが作曲しハイ・ザレットが作詞した当楽曲には、たくさんのヴァージョンがあり、ライチャス・ブラザースのものはそのなかのひとつです。当動画を観て「ここには《永遠》が刻み込まれている」という感想を持つのはわたしひとりではないでしょう。

Righteous Brothers - Unchained Melody [Live - Best Quality] (1965)


三曲目は、エバリィ・ブラザースの「キャシィズ・クラウン」です。大瀧詠一によれば「二人の間にいろいろあって、決裂したり憎みあったりの末にふたたびふたりでステージに立ったんだよね。恩讐の彼方で、と言おうかなんと言おうか。まさに人間ドラマだね。ボクら、一応お金をもらって歌を歌うんだけど、どこでお金を超えるかが問題なんだ」という意味のことを言っています。山下達郎は「脇を固めている若い連中もよく分かっていて、絶対にアチャラカな音を出したりしない」という意味のことを言っています。「アチャラカ」という言葉が、大瀧さんにエラく受けていますよ。同曲は一九六〇年に発売され、全米1位を記録しています。動画のライヴは一九八三年のもので、同番組でオンエアされたのはこれだと思われます。そういえば、大瀧詠一と山下達郎は、一九八一年にNHK・FM放送で、エバリィ・ブラザースの同曲を歌っています。これも掲げておきましょう。その次に入っている「クライング・イン・ザ・レイン」もエバリィ・ブラザースの曲です。

Everly Brothers - Cathy´s Clown (live 1983) HD 0815007

大滝詠一 & 山下達郎 NHK FM Studio live 1981 ①


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