美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

一般国民に財政赤字のツケが回ってくることなどありえない

2020年04月30日 14時02分41秒 | 経済


まずは、言葉の定義から。

財政赤字とは、何でしょうか。インターネットで検索してみたら、「コトバンク」に次のようにありました。

税収以上に政府支出が多くなった状態。 それを補うため、国債などが発行される。 一般に財政赤字が拡大すれば、国債依存度も高くなる。

要するに、単年度において政府支出が税収を超える分を「財政赤字」と言うのですね。その分は、いわゆる赤字国債を発行して補う。それが積もり積もれば膨大な赤字国債発行残高の累積となり、そのツケは結局一般国民が増税などの形で支払わざるをえない。てなわけで、今回の「10万円配布」も、その財源は赤字国債なので、増税という形でそのツケは結局一般国民に回ってくるので素直に喜べない、などという意見が世間にまことしやかに出回ることにもなるのですね。

しかし実は、タイトルにある通り「一般国民に財政赤字のツケが回ってくることなどありえない」のです。つまり、世間に出回っている通説とは真逆であって、一般国民が赤字国債という政府の借金を返す必要はまったくないのです。

この通説は、「赤字国債は、一般国民の預金から拠出される」という誤解に基づいています。

では、赤字国債発行の実態・実務は、本当のところどうなっているのでしょうか。少々回りくどく感じるかもしれませんが、しばらくお付き合いください。

政府と市中銀行は、日銀の口座に「日銀当座預金」勘定なるものを設けています。たとえば政府が赤字国債10兆円を発行し、市中銀行がそれを買い入れたとします。その場合、政府の「日銀当座預金」が10兆円増え、市中銀行の「日銀当座預金」が10兆円減ります。政府の10兆円規模の公共事業を請け負い、政府発行の10兆円の政府小切手を入手した企業は、市中銀行にそれを持ち込み、市中銀行は10兆円を企業の口座に記帳すると同時に10兆円の取り立てを日銀に依頼します。で、日銀は、政府の「日銀口座預金」を10兆円減らし、市中銀行の「日銀口座預金」を10兆円増やします。これで振り出しに戻るわけです。プラス・マイナス・ゼロというわけです。

 *詳しくは、建部正義「国債問題と内生的貨幣供給理論」のP611~ 「3 銀行による国債購入のメカニズム」をごらんください。一度は当箇所にURLを載せたのですが、うまく表示されませんでした。《建部正義「国債問題と内生的貨幣供給理論》で検索すれば必ずヒットするので、ご興味を持たれた方は、お手数ですがそちらを検索してみてください。

以上のように、政府と市中銀行は、日銀に設けられた「日銀当座預金勘定」の単なる記帳上の増減を通じて、国債買い入れのプロセスを無限に繰り返せることが分かります。

注意すべきは、この国債買い入れのプロセスに、一般国民はまったく関与していない、ということです。「赤字国債は、一般国民の預金から拠出される」という一般的・通俗的なイメージはまったくの誤解なのです。一般国民に財政赤字のツケが回ってくることなどありえないのです。

これが、国債の真実です。

ここを誤解した財政議論や経済政策議論を展開する論客は、百害あって一利なしなのです。そうして、大手メディアに登場する論客の99.9%は、そういう有害な存在なのです。

コメント (1)
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