以下の論考は、藤井厳喜氏に多くを負っています。
今回は、売電のカーボン・フリー政策に触れましょう。
売電は、1月20日の大統領就任初日、虎さん前政権が離脱したパリ協定への復帰を決める文書に署名しました。あわせて、前政権が施行した環境関連の規制の見直しを関係省庁に指示する大統領令に署名しました。虎さん前大統領はエネルギーの自立や石炭産業の復興を掲げ、オバマ元大統領が導入した火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出規制や石油・ガス部門から排出されるメタンガスの排出規制を緩和してきました。しかし売電は、全世界の温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにするという目標に向けて世界をリードすると宣言しました。
つまり売電政権は、二酸化炭素排出規制を最大の目標とすると公言したのです。当政権の左翼的偏向に鑑みて言いかえれば、二酸化炭素排出規制を至上価値とする全体主義的統制社会の実現が目標なのです。その実現のために、国際金融資本や無国籍巨大企業が一肌脱ぐ、というわけです。国内のエネルギー産業がどうなろうと、自動車産業がどうなろうと、アメリカ国民が経済的にどれほど困ったことになろうと、知ったことでないというわけです。
「資本主義の権化が、世界の社会主義的再編を是とするはずがない」という見方は、浅薄に過ぎます。「権力の独占・寡占体制の確立・永続化」は、両者にとって実現するに値する「理想」であるという点において、両者はタッグを組むことができるのです。私たちは、2020年11月4日の米国大統領選でそのことを確認しました。最近では、アメリカの巨大企業200社が不正選挙の是正にこぞって反対したことからも、わかるでしょう。
では、左翼の大好きな「二酸化炭素排出規制」が、イデオロギーとしていかにいかがわしいものか、次に述べましょう。
実は、「二酸化炭素排出規制」に関して、その呼称が徐々に変わってきています。かつて「問題は、地球温暖化である」と言われました。次に「気候変動が問題」に変わりました。今では「カーボン・フリー(脱炭素)こそが重要」と叫ばれています。
科学者・池田清彦氏がいうように、地球の温暖化を厳密に証明しようとすれば、地球上に等間隔に温度計を設置しなければなりません。つまり、地球温暖化を科学的実証的に証明することは技術的に困難なのです。2000年以降の20年間、大気中の二酸化炭素濃度は上昇していますが、地球が明らかに温暖化しているというデータは出ていません。化石燃料の燃焼と二酸化炭素濃度と地球温暖化の因果関係は実証されていないのです。
ただし、気候変動が起こっていることは事実にちがいありません。というのは、気候は毎年文字通り変動しているにちがいないから。
つまり、脱炭素・カーボンフリーとなると、地球が温暖化しているかどうかの議論はもはや行われません。脱炭素社会が人類の目指すべき理想であるということは、これを信奉し目指す人々の間でもはや公理のようになっています。
大統領選挙の不正に対する姿勢と同様に、具体的な議論は一切封殺して、脱炭素化を所与の絶対的な真理として社会全体をコントロールすることが、グローバル社会主義者たちの目標であり、戦略でもあるのです。グレタ嬢は、そういう目標や戦略のイノセントな広告塔なのでしょう。
その目標を実現するために、売電政権は、カナダからメキシコ湾までを縦断するキーストンXLパイプライン建設許可取り消しの大統領令に署名しました。また、ロシアの天然ガスをパイプラインでEU諸国に送るノルドストリームⅡの推進に対して嫌がらせをしています。前者は、大量の失業者を生み、後者は、EU諸国の脱原発の推進の邪魔をすることになります。ヘタをすれば、NATO解体につながりかねません。
さらに、売電のカーボン・フリー政策は、アメリカが虎さん主導で達成したエネルギー自給率100%の維持を危ういものにし、アメリカの中東介入を復活させかねません。
売電のカーボン・フリー政策は、とても危険な代物なのです。
次回は、ヨーロッパのエネルギー事情に触れましょう。