*タイトルから、プーチン擁護と受けとめられかねないご時世なので、前もって言っておきます。以下は、100%日本擁護です。そのこころは「日本よ、道を誤ることなかれ」です。
国際決済網SWIFTからの排除などの強硬な経済制裁によって、ロシア通貨ルーブルは、ドルに対して一時期一気に値を下げました。西側諸国の論調は、「プーチン危うし!」でした。
ところがその後、対露制裁前の水準近くまで値を戻しています。それが市場の判断です。つまり「強硬な経済制裁によってロシア経済が崩壊したりぐらついたりすることはない」。
ここからおのずと浮かび上がってくるのは「強硬な対露制裁はもしかしたら失敗に終わるのかもしれない」という疑問です。
次に紹介する「グローバルマクロ・リサーチ」の論考は、「もちろんそうだ。のみならず、当制裁によって、ロシアはむしろ儲かり、西側諸国は自分で自分の首を絞めることになる。つまり自滅する」と言っています。
そういう判断や論が、反米親露のイデオロギストではなくて、オーソドックスなエコノミストやマネーのリアリストたちによって展開されているという事実を、当方は深刻に受けとめます。
賛成・反対、いろいろあるでしょうが、まずは耳を傾けてみましょう。
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サマーズ氏: ロシアは対露制裁でむしろ儲かっている
WWW.GLOBALMACRORESEARCH.ORG/JP/ARCHIVES/23308
2022年4月20日 GLOBALMACRORESEARCH
アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、ウクライナ危機後のロシアについて面白いことを語っている。
ウクライナ危機後の対ロシア制裁
サマーズ氏はロシア経済の現状について次のように語っている。
ロシアは今や戦争前よりも多くの収入を得ている。そしてロシアの通貨ルーブルは強くなっている。何故ならば、ヨーロッパの国々がロシアから原油を大規模に輸入し続けているからだ。
ロシアのウクライナ侵攻以後、日本を含む西側諸国はロシアに対して制裁を課した。ロシアの中央銀行が国外に保有する資産は凍結され、ロシアの銀行の一部は国際決済網であるSWIFTから排除され、アメリカなどはロシア産のエネルギー資源の禁輸を発表した。
また、「アメリカにあるプーチン大統領の銀行口座」なる存在するわけがないものも凍結されている。
• 西側が制裁で海外資産を凍結したプーチン氏とラブロフ氏、海外口座を持っていない模様
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/20400
ロシアのものであれば架空のものでさえ取り締まってゆこうというスタンスである。
さて、これらはロシアを国際経済から徹底的に排除し、デフォルトに追い込もうとする試みだった。結果としてロシアルーブルは一時暴落していた。
しかしその後どうなったか? ドルルーブルのチャート(上方向がドル高ルーブル安)は次のように推移している。
西側の経済制裁が万能だと信じ、国際経済から締め出されたらロシアは終わりだと信じていた多くの日本人のバイアスは、むしろアメリカのお守り(皮肉にもそれが架空であることをウクライナが証明している)がなければ国際社会で生きていけないという自己の間違った西側依存をさらけ出したものだったのではないか。
*「アメリカは、核武装した国家と戦火を交えることはない」ことが、ウクライナ問題によって判明しました。すなわち「アメリカは、台湾や尖閣諸島に侵略する中共と戦果を交えない。ただし日本に武器の供給はする」。日本人にとって、これがウクライナ問題から得た最も重要な認識であると、当方は考えています。どこかの国の外務大臣は、なにやら楽観的な寝言を発しておりましたが。〔引用者 注〕
筆者は戦争勃発直後に次のように書いている。
• 戦争で株価は下落するのか? 歴史上の株価チャートを振り返る
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/20648
ロシアの主要輸出品であるエネルギー資源の価格はウクライナ情勢のために高騰しており、この状況でロシア経済が消えてなくなることは有り得そうにない。
これがバイアスのない目で見た事実である。そして市場はそれを織り込んだ。
ロシア経済を援助する対露制裁
だが興味深いのはそれだけではない。実際には対露制裁がロシアの収入増加を手助けしている。
何故ならば、アメリカやヨーロッパが表向きはロシアの資源を締め出すと宣言したことで、原油価格や小麦価格などが高騰しているからである。
• コモディティの高騰止まらず、原油や金は高値更新目指す勢い
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/23246
しかしその一方で、ヨーロッパは実際には天然ガスの輸入を続けている。ヨーロッパ人は脱炭素政策という宗教にのめり込み、原油の使用量を激減させた上で、ドイツなどは福島以降原子力発電を否定している。
• サマーズ氏: エネルギー価格を高騰させる脱炭素政策は健全ではない
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/16442
だがそれらのエネルギー量を供給が不安定な太陽光発電や風力発電で補えるわけがない。結果としてロシア産の天然ガスへの依存が大きくなり、禁輸すればただでさえインフレになっているヨーロッパで、電力価格は人々が本当に生活できないレベルまで上がってゆくだろう。
• 5倍に高騰しているヨーロッパの天然ガス価格とインフレ危機
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22488
• フランス、インフレ対策で現金給付へ
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/16682
*「生活できないレベルの物価高」。これが、4月24日の仏大統領選挙の行方を占うキー・ワードになるのではないでしょうか。フランスの一般国民が、何かしらの形で「西洋の長期自殺トレンド」に気づいたならば、僅差でルペンが勝利するのではないでしょうか。〔引用者 注〕
だからヨーロッパは、表向きに禁輸するという姿勢を見せながら輸入を続けるという選択肢を取らざるを得ない。だがこの行動は、わざわざロシアの輸出品の価格を上げてから輸入するような行為に他ならないのである。実はヨーロッパ人はロシアが好きなのではないか。親切なことである。
結論
西側諸国はどんどん自滅してゆく。中東の人々をタダ飯でそそのかしてヨーロッパ入りさせようとし、多くを地中海で溺死させた上で、辿り着いた移民はヨーロッパで婦女暴行を働いたこともそうである。また、脱炭素政策で自分のエネルギーの供給源を自分で断ち始めたこともそうである。さらに、ウクライナをけしかけてロシアとの戦争に追い込み、自国民に不必要な物価高騰をもたらしながらロシアに儲けさせていることもそうである。
• 移民危機からウクライナまで: 西洋文明は自殺しようとしている
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22334
筆者はこれを西洋の長期自殺トレンドと呼んでいる。そして「西洋」には西側諸国の愚かな政策に無批判に従う日本も含まれている。ウクライナは始まりに過ぎない。その結果は本当に酷いことになるだろう。
• 世界最大のヘッジファンド: ウクライナは世界秩序をめぐる戦争の始まりに過ぎない
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/23074
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岸田政権は、論者のいわゆる「西洋の長期自殺トレンド」に100%寄り添おうとしています。ウクライナ問題から得られる
「アメリカは、台湾や尖閣諸島に侵略する中共と戦果を交えない」という貴重な認識から目をそらしつつ。