今回は「グローバルマクロ・リサーチ・インスティチュート」に掲載された最新の論考の紹介記事です。FRBパウエル議長は、5月3・4日のFOMC会合に関連して、タカ派的な利上げ政策を遂行しても株価暴落を避けることができるかのような発言をしました。が、実はそれはいわゆる「タテマエ」であって、「株価暴落は避けられないだろう」というのが本音である、というお話です。
「グローバルマクロ・リサーチ・インスティチュート」のもろもろの論考を読んできた者としては、そうだろうなという感想が浮かんできます。
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ガンドラック氏: アメリカ金融引き締めでソフトランディングは無理
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24193
2022年5月9日 GLOBALMACRORESEARCH
債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで金融引き締めの経済への悪影響について語っている。
金融引き締めとソフトランディング
Fed(連邦準備制度)は5月のFOMC会合で、通常の倍の0.5%利上げを行うとともに、2018年に世界同時株安を引き起こした時の2倍の規模の量的引き締めを発表した。
• 5月FOMC結果、2018年世界同時株安時の2倍の規模の量的引き締め開始
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24032
アメリカでは現金給付と脱炭素政策のために物価が高騰しており、インフレ抑制のためには他に選択肢がないのである。
だがこの規模の金融引き締めはどう考えても株価と実体経済を殺してしまう。
そしてそれはパウエル議長も分かっている。分かっていないのは一部の個人投資家だけである。だからパウエル氏は聴衆を安心させるように記者会見で次のように言った。
ソフトランディングか、ソフトランディングのようなものを達成できる十分な見込みがある。
ソフトランディングのようなもの(原文:soft-ish landing)とは何だろう。
もうこの時点でかなり苦しいのだが、この表現に関するガンドラック氏のコメントを見てみよう。
記者会見のあの場面はパウエル氏が輝いていた瞬間ではなかった。
パウエル氏はそう言うしかない。それは理解できる。だが「ようなもの」という言葉からすでにアキレス腱が露出している。
パウエル氏はそう言うしかなかったのだが、それでも彼はこれから市場と経済がどうなるかを知っているだろう。
何故ならば、パウエル氏は2018年に今の半分の規模の量的引き締めで世界同時株安を引き起こしているからである。
• 世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
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パウエル氏はそれがトラウマになったために、インフレが明らかに高騰しても金融引き締めをやりたがらなかった。それで「インフレは一時的」と言い続けていたのである。
• ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/14522
だがインフレが止まらなかったのでパウエル氏も諦めざるを得なくなった。それが「ソフトランディングのようなもの」が可能だという虚しい決意表明に表れている。
ガンドラック氏は次のように言う。
その見込みが五分五分よりも悪いことを彼は理解しているだろう。
景気後退へ
何度も言っているが景気後退と株価暴落は避けようがない。
• 世界最大のヘッジファンド、アメリカ経済がもう手遅れであることを認める
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22771
司会者は巨大ヘッジファンドCitadelのケン・グリフィン氏の「われわれは恐らくリーマンショック以後最大の不確実性のただなかにいる」という発言を持ち出し、ガンドラック氏にコメントを求めた。
ガンドラック氏は次のように答えている。
ポール・チューダー・ジョーンズからほとんど同じ言葉を聞いたよ。ジェフリー・ガンドラック、ポール・チューダー・ジョーンズ、ケン・グリフィン。これでハットトリックだ。
ちなみに筆者にとって2022年は未曾有の高リターンの年である。投資法を1月の時点でこれほど詳しく公開していたのだから、誰でも同じことが出来たはずなのだが。
• 2022年のスタグフレーションに投資する方法 (2022/1/20)
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18949
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では、いつ株価暴落は起こるのでしょうか。基本的に「それは神のみぞ知る」というよりほかはありません。
しかし、FRBが量的緩和から金融引き締めへ政策転換し、インフレ対策としてのタカ派的利上げ政策の推進をしている現状からすれば、今後、株価が急降下する要因はあっても株価が継続的に上昇する要因はないとはいえるでしょう。一時的な上昇局面に惑わされて、大局を見誤らないようにしたいものです。
そうして、そのような米国株の、おそらくは今年から来年(の少なくとも半ば)にかけての数度の暴落局面を含む下落傾向に、長期インフレと基軸通貨ドルの地位低下と中露の台頭という長期的な「地殻変動」が複雑にからむことになるのでしょう。
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