バブル崩壊以降、日本の株価がバブル期の最高値を超えたことはない。世界の株価の動向と比べた場合、これは異常事態である。“消費増税のくびき”が最大の要因である(以上、当記事の内容とは関係のないコメントです)。
5月11日(水)の「YAHOO JAPAN ニュース」に、次のような記事が掲載されているのを昨日目にしました。発信源はロイターです。
「米労働省が11日に発表した4月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年同月比8.3%上昇と、1981年12月以来の高水準だった3月の8.5%から減速した。減速は昨年8月以来初めて。(後略)」
日頃「グローバルマクロ・リサーチ・インスティチュート」を欠かさず読んでいる当方は、すぐに、その誤りに気づき、FBに次のように、データ付きのコメントをアップしました。
《3月のインフレ8.5%の比較対象となった2021年3月は、アメリカで最後の現金給付が行われた、インフレが本格化する直前の月です。今後発表される4月以降数か月間のインフレ率は、現金給付によって高騰した後の2021年のインフレ率と比較されてゆくことになります。それゆえ、2022年4月以降のインフレ率は「見かけ上」鈍化します。それは単なる統計技術上の現象にすぎません。だから当報道は、バイデンの経済政策の失敗をカモフラージュするための、MSMによる単なるデマのたぐいである、か、もしくは単にバカが記事を書いたか、のどちらかです。ゆめゆめダマされないようにしましょうね。》
経済のド素人の、ロイターという「権威」に歯向かった生意気な経済関連コメントにもかかわらず「いいね」ボタンを押してくれた奇特な方がいらっしゃいました。この場を借りてお礼申し上げます。
「グローバルマクロ・リサーチ・インスティチュート」掲載の最新論考は、ロイターと同じネタ、すなわち、米国4月のインフレ率を取り上げています。4月の見かけ上の数値の低下を予告していただけあって、その取扱い方は見事というよりほかはありません。
じっくりとごらんください。得るところ大でしょう。
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アメリカの4月のインフレ率、予想上回る 株価は下落
WWW.GLOBALMACRORESEARCH.ORG/JP/ARCHIVES/24257
2022年5月12日 GLOBALMACRORESEARCH
アメリカの物価高騰が株式市場をも揺るがすなか、注目の最新の消費者物価指数が発表された。4月のアメリカのインフレ率は8.2%(前年同月比)となった。
減速したインフレ率
まず債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏が述べていたように、今回の数字は前回3月よりも下がることが予想されていた。
• ガンドラック氏: インフレはピーク
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/23164
3月の数字が8.6%なので、4月の8.2%はガンドラック氏の想定通り少し下がったということになる。インフレ率のチャートは次のようになっている。
少し下がっている。
何故下がることが想定されていたかと言えば、この数字が前年同月比で、比較対象となった前年2021年4月が、アメリカで3月に行われた3回目の現金給付の影響で物価が急騰した月だったからである。
前年同月比とは前年の同じ月に比べてどれだけ物価が上がったかという数字なので、前年の比較対象の月が物価の高い月であれば、当然ながらインフレ率は高くなくなる。
インフレのピークは株価の大底
以下の記事ではインフレのピークが株価の大底になるということを説明した。
• 2022年インフレ株価暴落はいつまで続くか
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24209
この記事は非常に重要なので読んでもらいたいが、要するに株価の底値を予想するためにはインフレ率が今後どうなってゆくかを予想しなければならない。
まず、前年同期比の数字を考えるためには、比較対象となっている前年において各月の物価上昇がどの程度だったのかを考えなければならないだろう。
そこで、2021年の前月比年率(前の月と比べた数字を年率換算したもの)のインフレ率を見てみたい。
やはり4月頃からインフレ率が高くなり、6月には11%に達している。
よって前年との比較で今年の数字が高いインフレになるためには、高かった去年6月の数字を超えてゆかなければならないということになり、やはり今後数ヶ月のインフレの数字は落ち着くという予想が妥当だろう。
インフレ鈍化で株価反発の可能性
これまでインフレを警戒して株価が下落していたのに、インフレが減速した今回の数字を受けて米国株は更に下落した。
何故かと言えば、8.2%という数字が市場が予想していたほどの減速ではなかったからである。
今回の数字があまりインフレ減速的だと思われなかったとしても、やはり6月(の数字が発表される7月)までは数字上インフレは減速し、株式市場にとってはつかの間の追い風となる可能性もある。
だが結局は、今年の後半にかけてインフレ率がどうなってゆくかということが、株価の最終的な命運を握っている。
それを考えるためには、高騰している住宅価格の上昇率と長期金利を並べた以下のチャートが一番分かりやすいだろう。
• アメリカの住宅価格が2月に19.8%上昇、再上昇開始
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/23546
アメリカ国民は家賃が高騰するなか、ローンを組んで住宅をこぞって買おうとしている。賃貸ならば住宅価格や家賃の上昇はマイナスだが、買ってしまえば自分にとってプラスになる。しかしそうした住宅購入が住宅価格を更に押し上げてゆく。
住宅価格が年率20%近い速度で上がるなか、ローン金利に影響する長期金利は3%程度である。
つまり、年間3%か4%のコストを払うことによって、お金がない人でも20%の資産価格上昇を手に入れることができる。それはローンが実質的に損のない無料の資金であることを意味する。この状態で、アメリカ国民の購買意欲が収まるかということである。
*当論は、住宅価格と長期金利の乖離から、アメリカ国民の購買意欲は収まらない、すなわち、インフレは収まらないだろうと予測しています。ちょっと調べてみて分かったのですが、新型コロナのパンデミックがもたらした意外な結果として、目下、多くの国で住宅価格が急上昇しています。米国、英国、ドイツを含むいくつかの主要国では、2桁ペースで住宅価格が上昇しており、価格の上昇はこの1年で加速しているそうです。世界的な物価高の一側面として、住宅価格の急上昇があるということです。それが日本にどう飛び火するか注視すべきところでしょう。 〔引用者 注〕
結論
筆者はこの状態でインフレが収まるとはまったく思っていない。だから6月にかけてインフレが減速し、中央銀行が金融引き締めの手を緩めるならば、それは一時的には株価にとってプラスになるだろうが、最終的なインフレ率は更に高くなってゆくだろう。
だがいずれにしても今後インフレ率は最重要指標である。その動向が株価の行く末を決めるからである。以下の記事はしっかり読んでおいてもらいたい。
• 2022年インフレ株価暴落はいつまで続くか
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24209
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当論考に従うならば、今後7月まで数字上のインフレは減速し、株価は数か月間の追い風に恵まれるかもしれません。しかし複合的な要因によってインフレが収まらなければ、結局株価は「大底」に向けて下落することになるでしょう。当論考によれば、インフレの行方が株価の行く末を決定するのですから。
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