文殊菩薩
5月19日(日)、世界政経情報交換会改め、交観会BUNSOの第3回を実施いたしました。
辞書に「交観」なる言葉はございません。造語ですね。参加者それぞれの持ち場で育んだ世界観を取り交わし合う、という意味合いです。BUNSOは、英語やフランス語で、「文殊菩薩」を意味します。もちろん「三人寄れば文殊の知恵」の意味を込めました。当日の参加者の、文字通り「文殊の知恵」から誕生した会の名前です。
まずは、わたくし美津島から、藤井厳喜氏のCFR(ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート)の最新情報と当月12日(日)に実施された藤井厳喜氏の白熱教室の模様をお伝えしました。その内容を以下に列挙します。
〇米中経済戦争は一向に収束せず、5月上旬にかえってエスカレートした。
トランプ大統領は、5月5日、2000億ドル(約22兆円)分のチャイナ成人に対する制裁関税を10%から25%に引き上げる方針を発表した。実施は5月10日からである。同13日に、米国政府は対中制裁関税の第4弾を発表した。約3000憶ドル(33兆円)分のチャイナ製品に最大25%の関税を課すという。これが実施されれば、チャイナの対米輸出品すべてに制裁関税が課されることになる。
〇上記のようなアメリカの対中強硬姿勢の原因は、最終的な妥協案を最後の瞬間にチャイナ側が拒否したためである。チャイナは明らかにアメリカに追い込まれている。
チャイナは、ライトハウザー通商代表と劉鶴副首相が5か月間もかけて作った詳細な合意案を最後の最後に拒絶した。ライトハウザーと劉鶴が一字一句おろそかにせず、訳文も逐一比較しながら精査して作成した合意文書は150ページもある詳細なものだった。ところが5月初めにチャイナ側が送り付けてきたものは100ページあまりに削除されたものだった。削除された約3分の1の中に、合意内容の詳細な実行を保証する法的枠組みが定められていた。つまり合意文書が、一般論を述べた文字の羅列に過ぎないものに変貌していたのである。それを目の当たりにしたライトハウザーとトランプは、この骨抜きの合意文書を拒否した、という経緯が事の真相である。
チャイナ側は、150ページの合意文書を 「不平等条約」と称して息巻いているが、そもそも履行プロセスまでも厳格に合意内容に書かざるをえなかったのは、チャイナ側が繰り返し約束を破ってきたからである。為替取引や資本移動の自由化に努めると言いながら実際にはそれと逆行し資本移動の規制はむしろ強化されている。特許をはじめとする知的所有権を無視して窃盗を繰り返し、国営企業に対する保護政策は維持されたままである。つまり、自国に有利な不平等条約を他国に強制してきたのはチャイナの側だったのだ。
〇米中経済戦争をめぐってのチャイナの選択肢は、①対米全面降伏か、②それを拒否して鎖国的社会主義体制に戻るかのいずれかしかない。
*私見によれば、共産党の既得権益の保持を至上命題とする中国共産党としては、②を選ばざるをえないでしょう。
〇米国は関税引き上げと同時に、ファーウェイ全面排除の強力制裁を発動した。
5月15日、トランプ大統領はアメリカ企業に対し、安全保障上の脅威がある外国企業から通信機器を調達し、また、そのサービスを利用することを禁止する大統領令に署名した。大統領令に個別の企業名はないものの、制裁の筆頭にファーウェイがくることは自明である。これは安全保障上の非常事態に対処する国際経済緊急権限法(IEEPA)に基づく措置である。同じ15日、米商務省は、ファーウェイに対する米国企業の全面的な輸出禁止を発表した。つまり、売る方と買う方の両方から、トランプ政権はファーウェイを徹底的に締め上げる方針なのである。ちなみにこれに先立つ5月9日、米連邦通信委員会(FCC)はチャイナ国有通信最大手チャイナ・モバイルの米国市場参入を完全に拒否する方針を正式決定した。現在までに明らかになったアメリカの国家意思は、ハイテクのサプライチェーンからチャイナをほぼ全面的に排除しようというものである。
*ちなみに米政府は、20日、ファーウェイへの事実上の輸出禁止について一部取引に猶予期間を設けると発表しました。それで、株価市場では米ハイテク企業の業績悪化懸念が和らぎ、アップルやインテルなどが上昇しました。中国売上げ高が大きい建機のキャタピラーや航空機・機械のユナイテッド・テクノロジーズの上げも目立った動きでした。当分、米国の株価は、米中経済戦争をめぐる当局の匙加減に一喜一憂した動きを示すことになるのでしょう。
〇激化する米中経済戦争への日本企業の対応
・アンテナ部品のヨコオは、2018年3月までに、チャイナからベトナムに生産の大半を移管した。
・ジーテクトは、従来チャイナで行っていたアメリカ向けの金型の製造を2018年4月までに国内に切り替えた。
・曙ブレーキ工業は、年間3億円のブレーキパッド(摩擦材)をチャイナからアメリカに輸出していたが、これを2019年3月までに米国内での調達に切り替えた。
・自動車ランプ大手のスタンレー電気は、チャイナからの輸入品の一部を米国内の現地調達に切り替えた。
*以下は、ほかの媒体から知りえた情報です。
・パナソニックは、カーステレオなどをチャイナの工場で生産し、アメリカに輸出してきたが、生産の一部を一時的にタイやマレーシアなどに切り替えた。
・クラリオンは、カーナビとカーオーディオの生産の一部をチャイナから日本に移した。
・東芝機械は、アメリカにある自動車部品メーカー向けに輸出していたプラスチック部品を作る機械を静岡県沼津市とタイの工場での生産に切り替えた。
・ダイキン工業は、アメリカ向けのエアコン部品のコンプレッサーの生産をチャイナからタイに切り替えることにした。
・富士通ゼネラルは、アメリカ向けのエアコン製造の一部をチャイナからタイに切り替えた。
・日本電産は、アメリカ向けの自動車用・エアコン用のモーターの生産の一部をチャイナからメキシコに切り替えた。
・富士フィルムは、アメリカ向けのデジタルカメラ用のアクセサリーなどの調達先をチャイナから切り替えることを検討している(どこの国へかは不明)。
・三菱電機は、アメリカ向けの半導体製品と産業用機械の生産の一部をチャイナから日本に切り替えた。
〇5月13日、内閣府が発表した国内景気の基調判断は6年2か月ぶりの「悪化」となった。それゆえに、消費増税延期の実現性が高まってきた。この場合、6月下旬ないし7月上旬に安倍首相は衆議院を解散し、ダブル選挙を7月に断行するであろう。自民党の圧勝が予測される。
*上記にちなんで、5月12日(日)に実施された、藤井氏厳喜氏の「白熱教室」のあいさつの言葉を掲げておきましょう。
「消費増税延期と衆参ダブル選挙 令和時代の日本の運命」
いよいよ令和の時代が始まりました。
それと同時ににわかに、消費増税延期とそれに伴う衆参ダブル選挙の可能性が高まってきました。
令和時代の日本の運命は、先ずこの増税が回避できるかどうかにかかっています。
増税が実施されれば、単に景気が悪くなるばかりではありません。
激動する世界情勢のなかで、日本は時代の潮流に取り残され、二流国家に転落してゆくでしょう。
やがては中華帝国の属国と化す道を転がり落ちてゆくことになります。
日本の再生のためには、新時代の劈頭に、政治指導者には正しい選択をしてもらわなければなりません。
一時期、増税回避はほとんど絶望的に見えましたが、筆者が警告を発してきたように、さまざまな経済統計が日本経済の不調を告げるなか、ようやく安倍首相とその周辺は、増税回避という正しい選択への決断を固めているように思われます。
増税回避は日本再生への道、増税実施は日本没落への道。
これ以上にはないほどに、明白な二者択一です。
暗愚な日本財界は、自ら繁栄を放棄して、転落への道を選択しています。財界指導者の劣化は目を覆うばかりです。
日本政財界のリーダーの過去30年の過ちの累積が、今日の日本の惨状となって表れています。この負の連鎖を断ち切り、新しい時代を開拓しなければなりません。
〇米大統領に名乗りをあげたバイデン前副大統領であるが、ウクライナ利権に続いて、ダーティなチャイナ・コネクションも暴かれている。氏の選挙は前途多難である。
バイデン前大統領の、ウクライナ政府との癒着関係については、つとに知られている。次は、チャイナ・コネクションの露呈である。氏の次男・ロバート・ハンター・バイデンが代表を務めるローズモント・セネカ・パートナーズという会社はチャイナの国営中国銀行子会社と10億米ドルを出資して、米中合弁投資ファンド「渤海華美」を新設している。ハンター氏は当ファンドの取締役会のメンバーである。彼は、上海自由貿易地域での自由な取引が許されている。これは、外国人としての特権的な地位を保持していることを意味する。これだけでもバイデンファミリーと中共との親密な関係が疑われる。彼は、新疆ウィグル自治区で住民を監視するスパイシステムにも投資している。人権弾圧で金儲けをしていることになる。
〇ロシアゲート疑惑問題でトランプ陣営の逆襲が開始された。ウィリアム・バー司法長官は、コネチカット州のジョン・ダーラム連邦検事を捜査責任者として指名し、2016年にFBIや司法省がトランプ陣営を違法に監視していたとの疑惑の捜査を開始する。ロシア疑惑を仕掛けた側に対する本格的な捜査が始まったのである。反トランプ陣営はパニック状態だ。
〇米露関係は順調に前進している。アフガニスタン・北朝鮮・ベネズエラなどの地域問題でも、米露間で妥協が模索されている。成熟した大国関係を構築しつつあるといえよう。
*藤井氏によれば、米露の分断は、チャイナと利害をともにする旧英帝国植民地派の策謀によるものです。同派は、トランプ大統領のロシアゲート疑惑をでっち上げた米国ディープステイトとも利害をともにしています。彼らをひっくるめていえば、「タックスヘイヴン派」というべきでしょう。
(次回につづく)
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