出典 AGBE
ドイツは2003年以来、一貫して電力の純輸出がプラスです。しかもその純輸出高は近年増加しています。
ドイツは原発全廃を決めており、現在稼働中の6基の原発も今年中に順次停止し、来年は稼働原発ゼロになる予定です。しかしながら、一貫した電力の純輸出国であり、しかも上のグラフから分かるように安定的にそうなのです。つまりドイツは、基本的に他国に依存することなく脱原発を実現しようとしているのです。
よくドイツの脱原発は「フランスの原発電力を買っているからだ」とか「東の隣国ポーランドの石炭火力発電の電力を買っているので偽善的だ」といった批判を受けます。しかし、年間のトータルで見ると、ドイツは電力の純輸出国であり、その地位は安定的なのです。「福島ショック」のあった2011年、ドイツは国内の原発の約半数を停止させました。しかし、2011年においても、グラフにあるとおり、ドイツは電力純輸出国でありつづけたのです。
ドイツは1998年、電力市場の完全自由化に踏み切りました。これ以降、電力業界は再編を通じて競争力の強化を図りました。2003年以降ドイツが電力の純輸出国であり続けている背景には、その事実があるようです。
(当方は、電力市場の完全自由化には、エネルギー安全保障の観点から、基本的に反対の立場ですが、ドイツの電力自由化が成功している事実は認めないわけにはいかないようです。もう少し、自分なりに調べてみようと思います)
エネルギー危機の2011年においてさえもドイツが電力の純輸出国であり続けたのはなぜでしょうか。それは、原子力発電の減少を補うために、再生可能エネルギーによる発電が急拡大したから、というのもあります。それに加えて、旧来の褐炭・石炭を用いた発電が強い競争力を維持したから、というのもあります。
ドイツの電力純輸出が増加しているのは、単に量的な供給力に余裕があるからだけではなく、価格競争力があり、電力価格が周辺国より安いからでもあります。
次の図は、2017年のドイツの電力の輸出入状況です。
ドイツが電力を輸入している国と電力の大きさは、次のとおりです。
デンマークから23億キロワット時、スウェーデンから19億キロワット時、ポーランドから10億キロワット時、チェコから25億キロワット時。トータルで77億キロワット時です。
ドイツが電力を輸出している国と電力の大きさは次のとおりです。
オランダに96億キロワット時、ルクセンブルグに43億キロワット時、フランスに137億キロワット時、スイスに86億キロワット時、オーストリアに318億キロワット時。トータルで純輸出量が602億キロワット時です。
純輸出の大きさ=602億キロワット時-77億キロワット時=525億キロワット時
となります。電力の純輸出大国と言っても過言ではないでしょう。
特筆すべきは、原発大国フランスに137億キロワット時もの電力を純輸出していることです。
確かにドイツは、自国が電力不足で、フランスが電力供給過剰の時に、フランスから電力を買っています。しかし、トータルで見れば、ドイツの「輸出-輸入」は大幅なプラスなのです。
ドイツは、脱原発で生じた不足分を、再生エネルギー発電だけで補ってきたわけではありません。粛々と化石燃料による発電でその不足分を補いながら、脱原発の目標に向かって徐々に前進しているのです。先ほど述べたとおり、ドイツでは、褐炭と石炭による旧来型の火力発電が強い競争力を維持しています。
二酸化炭素や大気汚染の発生源としての褐炭・石炭を、徐々により公害の少ない天然ガスに置き換えるという地に足の着いた脱原発の道を歩み続けているのです。そのためにこそ、ドイツはノルドストリームⅡを必要としているのです。
売電政権が、それを邪魔するなど、言語道断というよりほかはありません。
次回も、ドイツのエネルギー事情を続けます。
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