美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

世界経済と中国経済の現状 (美津島明)

2016年01月26日 23時06分21秒 | 経済
世界経済と中国経済の現状 (美津島明)



中国の7月~9月のGDP成長率が六年半ぶりに7%を割りこんで6.9%になった、という報道があったのは19日のことです。この数値を真に受ける人は、よほどのお人好しか、何も考えない人以外には、あまりいないでしょう。いずれにしろ、中国経済の減速が顕著であることはもはやだれの目にも明らかでしょう。

昨日今日と、フェイスブックに中国経済をめぐっていくつかコメントをアップしました。手直しをしたうえで、ブログにアップしておきます。なお、当ブログにたびたびご寄稿をしていただいている小浜逸郎氏とのやり取りも載せておきましょう。

○「止まらない世界同時株安の『真犯人』は誰か」(週間ダイアモンド)
http://diamond.jp/articles/-/85135

記事中の「真犯人」が誰なのかはとりあえず措こう。「米国利上げ」と「中国経済減速」と「原油安」と「世界同時株安」それ自体が、複合的・連鎖的に作用して、世界同時株安が進行していることは間違いない。

私見によれば、そのなかで独立変数の度合いがもっとも高いのは「米国利上げ」である。「中国経済減速」と「原油安」は、世界経済停滞の原因というよりも、むしろそれと連動関係にあると思われる。だからと言って、それが真犯人であるとまではいわない。経済現象の諸要因は、基本的に、因が果となり果が因となる、複雑な連鎖反応において存在するものであるから。

「米国利上げ」に対する私見を述べておこう。

「米国利上げ」は、シェール革命によってエネルギー資源を他国に頼らずに済むようになったアメリカが、グローバリズムの推進からナショナル・エコノミーの充実に国家運営の基本路線を変更した国家的意思決定という意味合いが強いのではないか、とは以前から考えてきたことである(むろん、グローバリズムによる既得権益は固守しようとするのだろうけれど)。また、覇権国家としての地位の低下、という現実をアメリカはアメリカなりに受けとめて、グローバリズムのさらなる推進は得策ではないと判断したのではないだろうか、とも思う。アメリカが推進してきたグローバリズムは、アメリカのゆるぎない覇権があってこそアメリカに格別の利益をもたらしてきたのである。その前提がぐらつきはじめたら話は別だ、というのは、けっこうわかりやすい話ではなかろうか。

アメリカは、敵を叩くことに長けているので、もしかしたら、利上げによってドルを自国に吸収し、頭をもたげてきた中共を資金難に陥らせるという戦略があるのかもしれない。中共が、覇権国として衰退気味の米国に代わって覇権国の座をねらっているのは明らかであるから、その可能性は少なくない。アメリカが、そうやすやすと覇権国の座を「禅譲」するはずはないのである。

○「新たな『世界の工場』はどこに 優勢失う中国」
http://forbesjapan.com/articles/detail/10990 (Forbs JAPAN)

大陸中国がもはや「世界の工場」ではなくなりつつあるという現状こそが、大陸中国にとって、経済減速の最大の要因なのではなかろうか。というのは、それは雇用の激減を意味するからである。

中共は、四〇年以上一人っ子政策を続けてきた。そのため、生産年齢人口の減少傾向が今後顕著になることが明らかだ。



http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121227/241649/?rt=nocntより引用

生産年齢人口の減少は、人件費上昇の最たる原因になる。それゆえ、先進諸国が安い労働力を求めて中国に林立してきた工場の国外流出傾向に歯止めがかからないことになる。むろん、それに連動して、ドルが流出し、株価は下がり、人民元安になる。その傾向に拍車がかかる。

工場の国外流出とは、雇用の減少を意味する。これからの大陸中国は大変である。というのは、経済減速が、単なる一時的な景気後退によるものではなくて、経済成長を支えてきた土台の崩壊によってもたらされているものであるからだ。

○「春は二度と来ない」中国政府系シンクタンク、異例の〝弱気〟ついに海外論評にも屈服 (産経WEST)
http://www.sankei.com/west/news/160126/wst1601260001-n1.html

中国経済減速の深刻さを訴える発言が、ほかでもない、中共政府サイドから発信された点が情報として貴重である。中国社会科学院は、中国経済の深刻さを物語る内部資料を握りしめているはず。

小浜逸郎 不動産バブル、金融バブルと次々にはじけ、今度は過剰設備投資をどうするかですね。リストラの嵐が吹き荒れるかもしれません。オーストラリアのような対中資源輸出国の景気もどんどん悪化しているようです。「偉大なるハッタリ帝国の罪と罰」

美津島明 おっしゃるとおりであると思います。中共にしてみれば、最近よくないことばかりが続いています。経済は明らかに減速しているし、台湾ダブル選挙で民進党が躍進して今後台湾と日米との安全保障面での協力体制が強化されるし、「中国は金にならない」と判断したドイツの中国離れが進みドイツ国内での対中ネガキャンが強まっているし・・・。ここからが要注意ですね。外憂内患を、対外侵略によって一気に吹き飛ばそうとする可能性があるのではないかと思うからです。習近平が、台湾の馬総統と何を話したのか、本当のところは闇の中ですからね。少なくとも習近平は、このままおとなしく耐え忍ぶような地道な人間ではない、とは言えるでしょう

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