オバマ大統領の最後の一般教書演説(美津島明)
今日、私ははじめて、米国大統領の一般教書演説をBBCワールドニュースの実況中継でつぶさに見ました。それについて、見たままを報告したいと思います。印象に残ったところを感覚的に記そうと思っているのですね。だから、同演説についての客観的な報道を確認なさりたい方は、末尾にそれらしきものを添えておきましたので、ご覧いただければ幸いです。
***
BBCワールドニュースでは、今日(1月13日)の午前11時から約2時間、オバマ大統領の最後の一般教書演説が特集されました。
最初の約1時間は、オバマ大統領の演説の実況中継でした。会場に姿を現してからの十数分間は、議員たちとの交歓に費やされ、特にほとんどの女性議員たちとのいちいちの抱擁と頬の接触(おそらくこれは、もっと適正な名詞的表現があるものと思われます)には、政治文化の違いを感じての新鮮な戸惑いがありました。
結論からいえば、私は、それほど熱心に聞いていたわけではないのですが、最後の10数分は、オバマ演説にすっかり心をつかまれてしまいました。図らずも、涙さえにじんできました。オバマ大統領の、アメリカ国民への信頼や愛が心の底から吐露されていて、そこにオバマの運命愛さえも感じられたからです。
「もしも私にリンカーンやルーズベルトほどの才能があれば、もっと巧みに政党間の対立の融和を実現できたかもしれない。アメリカの民主主義はむずかしいのだ」という言葉には、無類の率直さが感じられて好感が持てました。聞いているうちに、オバマ大統領の寛容な移民政策が正しく思えてくるから不思議です。オバマは、やはり演説の名手なのです。
ニッキー・ヘイリー
その後、ニッキー・ヘイリーという共和党員の現サウスカロライナ州女性知事が登場し、オバマ演説の批判を約30分ほど展開しました。「オバマ大大統領の『アメリカ議会は、意見の対立や憎しみを超えて、アメリカのために協力しなければならない』という主張はもっともだが、彼がやってきたことは、その言葉にそれほどかなったものではない」というのがその話の趣旨ですが、情理を兼ね備えた見事な反論でした。移民問題に関しても、「自分は、誇り高きインド移民の子どもである。合法的な移民を受け入れるのはアメリカのアイデンティティであるが、今はテロの時代である。移民に対する寛容すぎる姿勢は、アメリカの根底をゆるがす」と、自分の出自を明かしながらオバマの移民政策を批判するジェントリーなアプローチは見事でした。終わりの30分は、解説者の冷静な分析が繰り広げられました。「議員やブラウン管の向う側の視聴者の、オバマ演説への感激や興奮に満ちた拍手や支持の表明の直後に、あれだけのことが言えたのは大したことですよ。やりにくいもんですよ」という、コメンテーターのイギリス人らしい知的ユーモアに満ちたコメントが、耳に残りました。
米国大統領の一般教書演説は、世界政治の流れの基調の少なくとも一部分を成す、とても貴重な情報です。それを二時間の特集番組としてきちんと報道するBBCワールドニュースのようなテレビ局が、日本にはひとつもない。この厳然たる事実に、私たち日本人は、少しくらい驚いてもいいのではないでしょうか。
私がおかしいのかもしれませんが、私は、たまに地上波の番組を見てみると、その内容が相変わらずあまりにも牧歌的(もっといえば痴呆的)なので、あきれるやらいたたまれないやらで、すぐにチャンネルを変えてしまうのです。私がおかしいのか、日本の地上波がおかしいのか。
日本の貧弱な報道体制下では、国民の政治意識はいつまでたっても高まりませんし、政治家は大きく成長することもありません。事実、小ぶりなのしかいないじゃありませんか。せいぜい、橋下徹や小泉進二郎などのミニ・トランプクラスの低レベルな政治屋連中がブラウン管を空しく賑わすくらいのことです。嘆かわしいことだと思うのですが、みなさまはいかがお考えでしょうか。
ちなみに、安倍総理がアメリカ議会で演説したことがありましたね。あれを、高く評価する保守派の評論家が少なからずいたと記憶しています。が、今日のオバマ演説とニッキー・ヘイリースピーチを聞いているかぎり、どうしたらそういう評価になるのか、私には理解不能です。残念なことに、レベルがまったく違うのです。大人と大人の真似をする子どもくらいの差があるのです。
***
オバマ米大統領が最後の一般教書演説 7年間の実績アピール
(Sankei Biz)
2016.1.13 12:20
【ワシントン=加納宏幸】オバマ米大統領は12日夜(日本時間13日午前)、2016年の施政方針を示す一般教書演説を上下両院合同会議で行った。08年のリーマン・ショックから景気回復に導いたとして就任後7年間の実績をアピールし、今後、銃規制強化や移民制度改革に取り組む考えを強調。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の脅威から国民を守る決意も示した。
オバマ氏は任期最後の演説で「10年以上先に焦点を当てる」とし、来年1月の大統領退任後も含めた長期的な課題に言及。「民主主義には市民同士の信頼の絆が必要だ」と述べ、党派対立の解消を主張した。
就任前から訴えてきた「チェンジ(変革)」に触れ、「政治過程の変革は(次期大統領で)誰が選ばれるかではなくどのように選ばれるかだ。米国人が求めるときにだけ変革は実現する」と述べた。
また、米軍主体の有志連合によるIS掃討作戦が効果を上げていると強調。先月のカリフォルニア州サンバーナディーノ乱射事件後に大統領選の共和党候補で不動産王のトランプ氏がイスラム教徒の入国禁止を訴えるなど排外主義が広がることに警鐘を鳴らした。
オバマ氏は同乱射事件を踏まえ、銃の購入者に対する身元調査を拡大するなどの新たな銃規制強化策を残り1年間の任期における重要課題と位置付けている。
銃犯罪の阻止を訴えるとともに、演説で大統領が訴える政策に関係する人物を来賓として招くための傍聴席の1つを凶弾に倒れた犠牲者のための空席とし、哀悼の意を表している。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関し、「TPPがあれば中国は地域の規範を設定できない。米国がそれを行う」と述べ、早期承認を訴えた。
今日、私ははじめて、米国大統領の一般教書演説をBBCワールドニュースの実況中継でつぶさに見ました。それについて、見たままを報告したいと思います。印象に残ったところを感覚的に記そうと思っているのですね。だから、同演説についての客観的な報道を確認なさりたい方は、末尾にそれらしきものを添えておきましたので、ご覧いただければ幸いです。
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BBCワールドニュースでは、今日(1月13日)の午前11時から約2時間、オバマ大統領の最後の一般教書演説が特集されました。
最初の約1時間は、オバマ大統領の演説の実況中継でした。会場に姿を現してからの十数分間は、議員たちとの交歓に費やされ、特にほとんどの女性議員たちとのいちいちの抱擁と頬の接触(おそらくこれは、もっと適正な名詞的表現があるものと思われます)には、政治文化の違いを感じての新鮮な戸惑いがありました。
結論からいえば、私は、それほど熱心に聞いていたわけではないのですが、最後の10数分は、オバマ演説にすっかり心をつかまれてしまいました。図らずも、涙さえにじんできました。オバマ大統領の、アメリカ国民への信頼や愛が心の底から吐露されていて、そこにオバマの運命愛さえも感じられたからです。
「もしも私にリンカーンやルーズベルトほどの才能があれば、もっと巧みに政党間の対立の融和を実現できたかもしれない。アメリカの民主主義はむずかしいのだ」という言葉には、無類の率直さが感じられて好感が持てました。聞いているうちに、オバマ大統領の寛容な移民政策が正しく思えてくるから不思議です。オバマは、やはり演説の名手なのです。
ニッキー・ヘイリー
その後、ニッキー・ヘイリーという共和党員の現サウスカロライナ州女性知事が登場し、オバマ演説の批判を約30分ほど展開しました。「オバマ大大統領の『アメリカ議会は、意見の対立や憎しみを超えて、アメリカのために協力しなければならない』という主張はもっともだが、彼がやってきたことは、その言葉にそれほどかなったものではない」というのがその話の趣旨ですが、情理を兼ね備えた見事な反論でした。移民問題に関しても、「自分は、誇り高きインド移民の子どもである。合法的な移民を受け入れるのはアメリカのアイデンティティであるが、今はテロの時代である。移民に対する寛容すぎる姿勢は、アメリカの根底をゆるがす」と、自分の出自を明かしながらオバマの移民政策を批判するジェントリーなアプローチは見事でした。終わりの30分は、解説者の冷静な分析が繰り広げられました。「議員やブラウン管の向う側の視聴者の、オバマ演説への感激や興奮に満ちた拍手や支持の表明の直後に、あれだけのことが言えたのは大したことですよ。やりにくいもんですよ」という、コメンテーターのイギリス人らしい知的ユーモアに満ちたコメントが、耳に残りました。
米国大統領の一般教書演説は、世界政治の流れの基調の少なくとも一部分を成す、とても貴重な情報です。それを二時間の特集番組としてきちんと報道するBBCワールドニュースのようなテレビ局が、日本にはひとつもない。この厳然たる事実に、私たち日本人は、少しくらい驚いてもいいのではないでしょうか。
私がおかしいのかもしれませんが、私は、たまに地上波の番組を見てみると、その内容が相変わらずあまりにも牧歌的(もっといえば痴呆的)なので、あきれるやらいたたまれないやらで、すぐにチャンネルを変えてしまうのです。私がおかしいのか、日本の地上波がおかしいのか。
日本の貧弱な報道体制下では、国民の政治意識はいつまでたっても高まりませんし、政治家は大きく成長することもありません。事実、小ぶりなのしかいないじゃありませんか。せいぜい、橋下徹や小泉進二郎などのミニ・トランプクラスの低レベルな政治屋連中がブラウン管を空しく賑わすくらいのことです。嘆かわしいことだと思うのですが、みなさまはいかがお考えでしょうか。
ちなみに、安倍総理がアメリカ議会で演説したことがありましたね。あれを、高く評価する保守派の評論家が少なからずいたと記憶しています。が、今日のオバマ演説とニッキー・ヘイリースピーチを聞いているかぎり、どうしたらそういう評価になるのか、私には理解不能です。残念なことに、レベルがまったく違うのです。大人と大人の真似をする子どもくらいの差があるのです。
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オバマ米大統領が最後の一般教書演説 7年間の実績アピール
(Sankei Biz)
2016.1.13 12:20
【ワシントン=加納宏幸】オバマ米大統領は12日夜(日本時間13日午前)、2016年の施政方針を示す一般教書演説を上下両院合同会議で行った。08年のリーマン・ショックから景気回復に導いたとして就任後7年間の実績をアピールし、今後、銃規制強化や移民制度改革に取り組む考えを強調。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の脅威から国民を守る決意も示した。
オバマ氏は任期最後の演説で「10年以上先に焦点を当てる」とし、来年1月の大統領退任後も含めた長期的な課題に言及。「民主主義には市民同士の信頼の絆が必要だ」と述べ、党派対立の解消を主張した。
就任前から訴えてきた「チェンジ(変革)」に触れ、「政治過程の変革は(次期大統領で)誰が選ばれるかではなくどのように選ばれるかだ。米国人が求めるときにだけ変革は実現する」と述べた。
また、米軍主体の有志連合によるIS掃討作戦が効果を上げていると強調。先月のカリフォルニア州サンバーナディーノ乱射事件後に大統領選の共和党候補で不動産王のトランプ氏がイスラム教徒の入国禁止を訴えるなど排外主義が広がることに警鐘を鳴らした。
オバマ氏は同乱射事件を踏まえ、銃の購入者に対する身元調査を拡大するなどの新たな銃規制強化策を残り1年間の任期における重要課題と位置付けている。
銃犯罪の阻止を訴えるとともに、演説で大統領が訴える政策に関係する人物を来賓として招くための傍聴席の1つを凶弾に倒れた犠牲者のための空席とし、哀悼の意を表している。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関し、「TPPがあれば中国は地域の規範を設定できない。米国がそれを行う」と述べ、早期承認を訴えた。
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