今回は、EUで、天然ガスがグリーン・エネルギーに加えられる動きがある、というお話です。
一般にグリーン・エネルギーとは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどから作られるエネルギーのことです。 これらの資源は枯渇せず再利用が可能であり、二酸化炭素の排出量や廃棄物が少ないので、環境への負担が少ないという特徴があります。
さて、欧州委員会の諮問機関のひとつに「持続可能な資金提供プラット・フォーム」があります。同機関は3月19日、持続可能な経済活動の分類法に関する報告を取りまとめ公表しました。
欧州委員会は、その報告書によって、持続可能な経済活動を定義し、そこから具体的な規則を導き出そうとしています。その規則がいわゆる「グリーン・リスト」と呼ばれるものです。
その「グリーン・リスト」の原案を閲覧した英フィナンシャル・タイムズ誌は、3月22日「グリーン・エネルギー」の定義に天然ガスが含まれる可能性があると報じています。
FT誌によれば、EU委員会の提案は次のようなものです。すなわち「天然ガスは、温暖化ガスの排出量が既存の電源より少ない。だから、生産された一キロワットの電力につき、温暖化ガスの排出を少なくとも50%削減できる場合には、発電における天然ガスと他の液化化石燃料をグリーン・エネルギーとして認める可能性がある」というのです。
二酸化炭素を「温暖化ガス」と決めつけている点は気にかかりますが、いまはそれに触れるのは控えておきましょう。
同報告書をもとに、欧州委員会は、最終的なグリーン・リストを4月中に公表する予定です。ちなみに、公表後30日以内に、欧州議会とEU加盟各国はそれを拒否する権限を有しています。
新しいグリーン・リストに採用されれば、天然ガス電力が、正式にグリーン・エネルギーとして認知されることになります。既存の発電法を基準に、「温暖化ガス」の排出量が50%以上削減できれば、天然ガスは晴れてグリーン・エネルギーに昇格するのです。
グリーン・リストに載せられた経済活動に対しては、欧州委員会が準備をすすめるグリーン・ボンド(環境改善のための資金調達債券)の利用が認められることになります。天然ガス産業は、グリーン・ボンドを利用することができるようになるのです。
このようにして、EU諸国が脱原発の着実な現実的な道筋を歩む環境が次第に整ってゆきつつあります。「脱原発による電力減少分を、再生可能エネルギーでなるべく補い、それで補い切れない分を、とりあえず火力発電で補う。そうして、火力発電を順次天然ガス発電に切り替えてゆく」。それが、脱原発の着実で現実的な道筋です。藤井氏は、そう主張しますし、私もそう考える者のひとりです。
次回は、エネルギー政策とのからみで、日英同盟について考えてみます。
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