平成二四年3月24日(土)の読売新聞の経済欄に、「日銀審議委員 一人は空席も 政府、河野氏提示」と題する次のような小記事がありました。それほどの分量ではないので、全文引用します。
政府は23日、4月4日に任期切れとなる日本銀行の中村清次(69)の後任に、BNPパリバ証券経済調査本部長の河野龍太郎(47)を充てる人事案を国会に提示した。マクロ経済だけでなく、税制や財政にも精通するエコノミストだ。衆参両院の同意が得られれば、水野温氏(あつし)氏(04年12月~09年12月在任)以来の証券会社からの就任となる。審議委員は金融政策などを決める9人の政策委員の1人。任期は5年間。同じく4月4日に任期満了となる亀崎英敏(68)の後任人事案の提示は見送られたため、一人は当面空席になる可能性がある。
一見なんの変哲もない、日銀人事異動記事のようです。ところがどっこい、これは十分に生臭い「政府ヨイショ記事」なのです。一般国民をだまくらかす狡知がなにげなくかつ周到にめぐらされている。今回は、そんなお話をします。
日銀の審議委員という耳慣れない言葉が出てきます。まずは、それについて手短に触れておきましょう。こんなときは、池上彰さんにご登場願うのがいちばん、というわけで、彼の『日銀を知れば経済がわかる』(平凡社新書)から引用します。
日銀の政策委員会は、日銀の最高意思決定機関。金融政策の方針を決めると共に、日本銀行という会社の運営も監督します。政策委員会のメンバーは、日銀総裁、副総裁二人の計三人、外部から六人の審査委員の計九人。多数決で方針が決められるように、わざと奇数にしてあります。委員は、決定にあたって全員一票を持ち、平等な立場です。国会(衆参両議院)の同意を得て内閣によって任命されます。任期は五年。政府と考えが違うからといって解任されることはありません。日銀は政府から独立しているからです。
さすがは池上さん、分かりやすいですね。ただし、本書を読んでも「経済がわかる」ようにはちっともならなかったのは残念でありますが。ただ、ここで一つ、今回の人事との関連で気になるのが、「多数決で方針が決められるように、わざと奇数にしてあります」という指摘です。審議委員のポストが一つ空席にしてありますね。多数決が機能しないようになっているわけです。これは、政府・日銀のトップの意向に日銀の意思決定を誘導するための悪知恵である可能性がありますね。
次に、BNPパリバ証券というのも、これまた庶民にとっては耳慣れない会社名です。さて、いったいどんな会社なのでしょうか。ウィキペディアによれば、
パリに本拠を置く世界有数の金融グループのうちの一つである。2010年には ブルームバーグ と フォーブズにより、3.1兆ドルの資産を持つ世界最大の銀行行及び事業会社として評価された。2000年にパリ国立銀行(BNP) とパリバ (Paribas) が合併して誕生し、ユーロ圏では最大規模の金融グループである。ユーロネクスト・パリ (BNP) に上場し、CAC 40 の構成銘柄である。
とあります。この会社は、なんと世界最大の証券銀行なのですね。
世界を恐慌寸前にまでたたきこんだリーマン・ショック以来、アメリカの金融資本は心ある人々によって痛烈に批判され続けてきました。いいかえれば、無条件の善、あるいは歴史的必然とされてきた金融資本主導のグローバリズムそれ自体がいまや良心的な批判の俎上に本格的に乗りはじめているのです。その意味で、野田政権はまるでリーマン・ショックなんてなかったかのような厚顔無恥な人事をしようとしている、といえるでしょう。少なくとも、その疑いが濃厚です。
次に、河野龍太郎とはいかなる思想傾向の人物なのか、見てみましょう。産経ニュースHPの記事(2011年5月30日掲載)からの引用です。
東日本震災からの東北被災地の復興のための財源をどう賄うべきか、との記者の質問に、河野氏は、
「震災対応などで時限的に増税する場合、各国では所得税や法人税の増税で賄う例が多い。ただ、法人税に関していえば、電力不足で海外移転を検討する企業がある中、増税は難しい。消費税なら1%引き上げで年間2・5兆円の財源を確保できる。同じ額を所得税で確保する場合、19・4%の定率増税が必要だが、10%が精いっぱいではないか」
と答えています。震災対応のための増税は先進国の常識、ただし法人税増税はダメ、所得税や消費税の増税ならOKと言っていますね。これは、野田政権の方針と完全に一致しています。
では震災復興対策のための財源捻出は消費税率引き上げが望ましいのか、とあらためて問われて、
「仮に復興に15兆円かかるとして、すでに平成23年度1次補正予算で措置した4兆円を除いた11兆円を10%の所得税の定率増税で賄うとすれば、9年程度かかる。復興財源は本来、所得税や法人税の増税で確保すべきで、それでもいいが、忘れてはいけないのが、社会保障との整合性だ」
と答えています。
ちょっと分かりにくい言い方をしていますね。所得税増税がいいのか、消費税増税の方がいいのかもっと具体的に、との記者の突っ込みに、河野氏は、次のように答えています。
「社会保障と税の一体改革は震災前から喫緊の課題だった。復興は大事だが、一体改革の足かせになってはいけない。復興財源の捻出で所得税を増税している間、二重増税の反発から、社会保障の財源確保のための消費税率引き上げができないと、日本の財政は大変なことになる。復興と社会保障を同時並行で考えることが重要だ。極力早い時期がいいが、社会保障制度改革のために消費税率を引き上げ、最初の数年間は増税分の一部を復興に使い、残りを社会保障の財源に充当するのが妥当だろう」
要するに、復興財源確保のためには所得税増税で対応すべきだが、社会保障の財源確保のためには、それと同時並行で消費税も増税すべきである、ということですね。これまた、野田政権と息がぴったり合っています。早急な増税こそが国を救う道、というわけです。
増税以外の選択肢はないのか、と問われて、
「国債の日銀引き受けは高率のインフレを招く恐れもあり、副作用は大きい。歳出削減は基本だが、復興や新たな街づくりには民間資金を活用した社会資本整備(PFI)や民間の知恵を活用する視点も大事だ。国民負担の縮減につながると同時に、民間が創意工夫することで経済成長にもつながっていくはずだ」
と。国債の日銀引き受けはハイパー・インフレを招く恐れがあるのでダメ、とにかく民間がどんなに苦しくても自力で這い上がるしかない、と言っているわけです。カッコよく言えばシュンペーターの末裔、今風に言えば「シバキ上げ派」の典型的な物言いですね。これが分かりにくければ、戦前の大恐慌時に緊縮財政を実行して日本を奈落の底に突き落とした、あの井上準之助の流れを汲む人です。
河野氏が、野田増税路線と100%呼吸の合った言動をしているエコノミストであることは明らかです。リフレ派の上念司氏によれば、例の「復興構想会議」において増税を進言したエコノミストとしてつとに有名である、とのことです。そういう人物を政府は審議委員として抜擢しようとしている。野田内閣を財務省がコントロールしているのは明らかですから、財務省が、自らの意向を貫徹する一貫として増税路線積極容認のエコノミストを日銀に送りこもうとしていると見てもまず間違いはないでしょう。日銀が財務省の植民地であることは周知の事実です。今回、目立たない形で、財務省はその事実のさらなる地固めをしようとしているのでしょう。
私でさえ容易に見破ることができる日銀人事異動の本質を読売新聞が分かっていないはずがありません。一切を知悉したうえで、河野氏を「マクロ経済だけでなく、税制や財政にも精通するエコノミスト」などと持ち上げる報道姿勢には、大きな問題があります。
ここには、野田政権と軸足をそろえて、増税路線を是とする社の方針を貫徹するために、自社の主張に都合の悪い事実には蓋をして記事を書いてしまうという読売の最近の乱暴な悪癖が露呈されています。記事が小さくて目立たない分、やり方が露骨になります。「小人閑居して不善をなす」とはよくいったものです。ちょっと見(み)とはうらはらに、ずいぶん生臭い記事だとは思われませんか。心ある読売の記者は(もしいるとすれば)心をひどく痛めているにちがいと推察します。
この人事には、もうひとつ見過ごせない問題点があります。
次の記事は、ブルームバーグというアメリカの大手マスメディアのHPからの引用です。ちょっと長くなりますが、それは私が曲解に基づく批判をしているという印象を避けるためです。退屈に感じる方は、適当に読み飛ばしてください。
河野氏はブルームバーグ・ニュースが定期的に配信している、有力日銀ウオッチャーを対象とした日銀金融政策に関する予測調査記事の回答者の1人。同調査回答者では、水野温氏現クレディ・スイス証券副会長も日銀審議委員(2004年-09年)に選ばれた。
河野氏は9日付の同記事で、日本経済が停滞しているのは、①少子高齢化に伴う働き手の減少でトレンド成長率そのものが低下している②社会保障制度の持続可能性に対する疑念から現役世代が消費を抑制している③財政赤字拡大で民間の貯蓄が食い潰され、設備投資が抑制されている-ことなど構造問題が主な原因であると指摘。
その上で「日銀が政策目標として『物価安定』 が与えられている以上、これらの構造問題 や 円高が引き起こすデフレ圧力を可能な限り吸収することは日銀の責務であるが、構造問題の解決そのものは金融政策で対応できるわけではない」としている。
要するに、現下のデフレ不況は金融政策で解決されない、日銀のこれまでの金融政策に基本的な誤りはない、デフレ不況は野田内閣の、財政健全化と消費税増税による税と社会保障の一体化路線によって根本的な解決が可能になる、と言っているわけですね。
私の耳に、彼の言葉は「オレが日銀の審議委員になったら、デフレ不況によって国民が塗炭の苦しみにどれほどのたうちまわっていようとも、とにかく日銀の既定路線を踏襲するだけだ」と響く。デフレ不況を肌で知る者としては、目の前が真っ暗になる発言です。情け容赦のない発言です。私の目には、河野氏が、デフレ不況という国難に直面する日本の金融政策の中枢を担うのに不適格な人物と写ります。
大手メディアの垂れ流し報道に抗するような形で、インターネット上においてさまざまな方面から、早速今回の人選について激しい異論が立ち上げられはじめているようです。
政府は23日、4月4日に任期切れとなる日本銀行の中村清次(69)の後任に、BNPパリバ証券経済調査本部長の河野龍太郎(47)を充てる人事案を国会に提示した。マクロ経済だけでなく、税制や財政にも精通するエコノミストだ。衆参両院の同意が得られれば、水野温氏(あつし)氏(04年12月~09年12月在任)以来の証券会社からの就任となる。審議委員は金融政策などを決める9人の政策委員の1人。任期は5年間。同じく4月4日に任期満了となる亀崎英敏(68)の後任人事案の提示は見送られたため、一人は当面空席になる可能性がある。
一見なんの変哲もない、日銀人事異動記事のようです。ところがどっこい、これは十分に生臭い「政府ヨイショ記事」なのです。一般国民をだまくらかす狡知がなにげなくかつ周到にめぐらされている。今回は、そんなお話をします。
日銀の審議委員という耳慣れない言葉が出てきます。まずは、それについて手短に触れておきましょう。こんなときは、池上彰さんにご登場願うのがいちばん、というわけで、彼の『日銀を知れば経済がわかる』(平凡社新書)から引用します。
日銀の政策委員会は、日銀の最高意思決定機関。金融政策の方針を決めると共に、日本銀行という会社の運営も監督します。政策委員会のメンバーは、日銀総裁、副総裁二人の計三人、外部から六人の審査委員の計九人。多数決で方針が決められるように、わざと奇数にしてあります。委員は、決定にあたって全員一票を持ち、平等な立場です。国会(衆参両議院)の同意を得て内閣によって任命されます。任期は五年。政府と考えが違うからといって解任されることはありません。日銀は政府から独立しているからです。
さすがは池上さん、分かりやすいですね。ただし、本書を読んでも「経済がわかる」ようにはちっともならなかったのは残念でありますが。ただ、ここで一つ、今回の人事との関連で気になるのが、「多数決で方針が決められるように、わざと奇数にしてあります」という指摘です。審議委員のポストが一つ空席にしてありますね。多数決が機能しないようになっているわけです。これは、政府・日銀のトップの意向に日銀の意思決定を誘導するための悪知恵である可能性がありますね。
次に、BNPパリバ証券というのも、これまた庶民にとっては耳慣れない会社名です。さて、いったいどんな会社なのでしょうか。ウィキペディアによれば、
パリに本拠を置く世界有数の金融グループのうちの一つである。2010年には ブルームバーグ と フォーブズにより、3.1兆ドルの資産を持つ世界最大の銀行行及び事業会社として評価された。2000年にパリ国立銀行(BNP) とパリバ (Paribas) が合併して誕生し、ユーロ圏では最大規模の金融グループである。ユーロネクスト・パリ (BNP) に上場し、CAC 40 の構成銘柄である。
とあります。この会社は、なんと世界最大の証券銀行なのですね。
世界を恐慌寸前にまでたたきこんだリーマン・ショック以来、アメリカの金融資本は心ある人々によって痛烈に批判され続けてきました。いいかえれば、無条件の善、あるいは歴史的必然とされてきた金融資本主導のグローバリズムそれ自体がいまや良心的な批判の俎上に本格的に乗りはじめているのです。その意味で、野田政権はまるでリーマン・ショックなんてなかったかのような厚顔無恥な人事をしようとしている、といえるでしょう。少なくとも、その疑いが濃厚です。
次に、河野龍太郎とはいかなる思想傾向の人物なのか、見てみましょう。産経ニュースHPの記事(2011年5月30日掲載)からの引用です。
東日本震災からの東北被災地の復興のための財源をどう賄うべきか、との記者の質問に、河野氏は、
「震災対応などで時限的に増税する場合、各国では所得税や法人税の増税で賄う例が多い。ただ、法人税に関していえば、電力不足で海外移転を検討する企業がある中、増税は難しい。消費税なら1%引き上げで年間2・5兆円の財源を確保できる。同じ額を所得税で確保する場合、19・4%の定率増税が必要だが、10%が精いっぱいではないか」
と答えています。震災対応のための増税は先進国の常識、ただし法人税増税はダメ、所得税や消費税の増税ならOKと言っていますね。これは、野田政権の方針と完全に一致しています。
では震災復興対策のための財源捻出は消費税率引き上げが望ましいのか、とあらためて問われて、
「仮に復興に15兆円かかるとして、すでに平成23年度1次補正予算で措置した4兆円を除いた11兆円を10%の所得税の定率増税で賄うとすれば、9年程度かかる。復興財源は本来、所得税や法人税の増税で確保すべきで、それでもいいが、忘れてはいけないのが、社会保障との整合性だ」
と答えています。
ちょっと分かりにくい言い方をしていますね。所得税増税がいいのか、消費税増税の方がいいのかもっと具体的に、との記者の突っ込みに、河野氏は、次のように答えています。
「社会保障と税の一体改革は震災前から喫緊の課題だった。復興は大事だが、一体改革の足かせになってはいけない。復興財源の捻出で所得税を増税している間、二重増税の反発から、社会保障の財源確保のための消費税率引き上げができないと、日本の財政は大変なことになる。復興と社会保障を同時並行で考えることが重要だ。極力早い時期がいいが、社会保障制度改革のために消費税率を引き上げ、最初の数年間は増税分の一部を復興に使い、残りを社会保障の財源に充当するのが妥当だろう」
要するに、復興財源確保のためには所得税増税で対応すべきだが、社会保障の財源確保のためには、それと同時並行で消費税も増税すべきである、ということですね。これまた、野田政権と息がぴったり合っています。早急な増税こそが国を救う道、というわけです。
増税以外の選択肢はないのか、と問われて、
「国債の日銀引き受けは高率のインフレを招く恐れもあり、副作用は大きい。歳出削減は基本だが、復興や新たな街づくりには民間資金を活用した社会資本整備(PFI)や民間の知恵を活用する視点も大事だ。国民負担の縮減につながると同時に、民間が創意工夫することで経済成長にもつながっていくはずだ」
と。国債の日銀引き受けはハイパー・インフレを招く恐れがあるのでダメ、とにかく民間がどんなに苦しくても自力で這い上がるしかない、と言っているわけです。カッコよく言えばシュンペーターの末裔、今風に言えば「シバキ上げ派」の典型的な物言いですね。これが分かりにくければ、戦前の大恐慌時に緊縮財政を実行して日本を奈落の底に突き落とした、あの井上準之助の流れを汲む人です。
河野氏が、野田増税路線と100%呼吸の合った言動をしているエコノミストであることは明らかです。リフレ派の上念司氏によれば、例の「復興構想会議」において増税を進言したエコノミストとしてつとに有名である、とのことです。そういう人物を政府は審議委員として抜擢しようとしている。野田内閣を財務省がコントロールしているのは明らかですから、財務省が、自らの意向を貫徹する一貫として増税路線積極容認のエコノミストを日銀に送りこもうとしていると見てもまず間違いはないでしょう。日銀が財務省の植民地であることは周知の事実です。今回、目立たない形で、財務省はその事実のさらなる地固めをしようとしているのでしょう。
私でさえ容易に見破ることができる日銀人事異動の本質を読売新聞が分かっていないはずがありません。一切を知悉したうえで、河野氏を「マクロ経済だけでなく、税制や財政にも精通するエコノミスト」などと持ち上げる報道姿勢には、大きな問題があります。
ここには、野田政権と軸足をそろえて、増税路線を是とする社の方針を貫徹するために、自社の主張に都合の悪い事実には蓋をして記事を書いてしまうという読売の最近の乱暴な悪癖が露呈されています。記事が小さくて目立たない分、やり方が露骨になります。「小人閑居して不善をなす」とはよくいったものです。ちょっと見(み)とはうらはらに、ずいぶん生臭い記事だとは思われませんか。心ある読売の記者は(もしいるとすれば)心をひどく痛めているにちがいと推察します。
この人事には、もうひとつ見過ごせない問題点があります。
次の記事は、ブルームバーグというアメリカの大手マスメディアのHPからの引用です。ちょっと長くなりますが、それは私が曲解に基づく批判をしているという印象を避けるためです。退屈に感じる方は、適当に読み飛ばしてください。
河野氏はブルームバーグ・ニュースが定期的に配信している、有力日銀ウオッチャーを対象とした日銀金融政策に関する予測調査記事の回答者の1人。同調査回答者では、水野温氏現クレディ・スイス証券副会長も日銀審議委員(2004年-09年)に選ばれた。
河野氏は9日付の同記事で、日本経済が停滞しているのは、①少子高齢化に伴う働き手の減少でトレンド成長率そのものが低下している②社会保障制度の持続可能性に対する疑念から現役世代が消費を抑制している③財政赤字拡大で民間の貯蓄が食い潰され、設備投資が抑制されている-ことなど構造問題が主な原因であると指摘。
その上で「日銀が政策目標として『物価安定』 が与えられている以上、これらの構造問題 や 円高が引き起こすデフレ圧力を可能な限り吸収することは日銀の責務であるが、構造問題の解決そのものは金融政策で対応できるわけではない」としている。
要するに、現下のデフレ不況は金融政策で解決されない、日銀のこれまでの金融政策に基本的な誤りはない、デフレ不況は野田内閣の、財政健全化と消費税増税による税と社会保障の一体化路線によって根本的な解決が可能になる、と言っているわけですね。
私の耳に、彼の言葉は「オレが日銀の審議委員になったら、デフレ不況によって国民が塗炭の苦しみにどれほどのたうちまわっていようとも、とにかく日銀の既定路線を踏襲するだけだ」と響く。デフレ不況を肌で知る者としては、目の前が真っ暗になる発言です。情け容赦のない発言です。私の目には、河野氏が、デフレ不況という国難に直面する日本の金融政策の中枢を担うのに不適格な人物と写ります。
大手メディアの垂れ流し報道に抗するような形で、インターネット上においてさまざまな方面から、早速今回の人選について激しい異論が立ち上げられはじめているようです。
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