美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

世界情勢・点描  (イザ!ブログ 2012・8・1 掲載)

2013年11月25日 07時40分58秒 | 政治
今日配信された三橋貴明さんのメルマガは、東田剛(謎の覆面ライター、中野剛志さんでしょう)氏の特別寄稿でした。国際情勢やそれと絡めた国内政治情況の点描としてよくまとまっていると感じたので、それをご紹介しながら、コメントをはさみましょう。

最近、世の中、不安でたまりません。

ヨーロッパはギリシャやスペインなどの債務危機で、共通通貨ユーロは崩壊寸前。ヨーロッパの金融市場は内部で資金が流れなくなって分断され、「バルカン化」と言われています。第一次世界大戦前夜、バルカン半島はいつ戦争の引き金が引かれてもおかしくない「火薬庫」と呼ばれていましたが、まさにヨーロッパ金融市場は火薬庫状態です。


ヨーロッパは、緊縮財政・均衡財政から積極財政へ、新自由主義路線から経済成長路線へ、舵を大きく切らなければ、いまの危機を脱することができません。しかし、エリート層の頭が、まだうまく切り替えられていないような印象があります。ケインズがいうとおり、危機に臨んで障害になるのは、既得権益ではなく間違った古い思想です。新自由主義が、現在における、ケインズのいわゆる「間違った古い思想」、いいかえれば時代の病巣としてのイデオロギーであると私は考えています。みなさんは、お金持ちバンザイの世界がそんなに嬉しいのでしょうか。私はちっとも嬉しくありません。新自由主義というのは、要するにそういうことです。トリクル・ダウンなどと、一般国民をコバンザメ扱いする、不届きな思想なのです。

また、グローバリズムとは、新自由主義が国際経済の姿をとった場合の形容語です。だから、二言目には「グローバリズム」と言いたがる経団連やその尻馬に乗ろうとする脳みそ空っぽの輩は、有害無益な寝言を言っているのです。リーマン・ショック後の世界を、それ以前の世界のキーワードで語ろうとするのは時代錯誤です。パワー・エリートたちには、一日でも早く目を覚ましてほしいものです。

アメリカは、思いっきり積極財政するしかないのに財政赤字の拡大は日本と同じで人気がなく、やりたくてもできません。とすると対策は、量的緩和の追加しかありませんが、資金需要がない中で、そんなことをしても、投機マネーが発生して、原油や食料の値段を引き上げるだけ。すでに、大干ばつもあって、穀物価格は高騰しています。

懸念事項は、それだけではありません。アメリカは、いま「財政の崖(がけ)問題」を抱えています。今年末までに米議会の対応がなければ大型減税の期限切れと歳出の強制削減が同時に発動されるのです。それは、実質増税と歳出削減という、景気回復の足をひっぱるダブル・パンチが間を置かずに繰り出されることを意味します。FRB議長は、「景気回復が危機にさらされる」と警告し、議会に早急な対応を迫っていますが、このままだと、国防歳出額が大幅に削減されることになり、雲行き怪しい極東情勢において、専軍思想の中国を勢いづかせる懸念があります。この場合も、「小さな政府」を目指す新自由主義的思想がネックになるリスクが避けられません。

新興国は、ヨーロッパからの資金が引き揚げるわ、欧米の大不況で輸出が伸び悩むわで、青息吐息。こういう国々は政治基盤が不安定ですから大変です。すでに中国では、暴動が頻発しています。

田村秀男氏によれば、中国には「熱銭」と呼ばれる巨額の投機マネーが不動産や株式市場に流入しています。その多くは、中国の党幹部や国有企業系の海外法人が国外に移した資本であり、逃げ足も速い、とのこと。熱銭が国外に逃避し始めると、不動産や株式市場の崩壊が一挙に進む恐れがあります。つまり、バブル崩壊のリスクが確実に存在するのです。秋の党大会が大きな目安になりそうです。

いやな予感はオリンピックとアメリカ大統領選の間です。○八年のリーマンショックが起きたのも、オリンピック終了後で、大統領選の前でした。あのときも、穀物の価格が急騰していました。

ヨーロッパあるいはアメリカあるいは中国発の金融恐慌第二波が、ロンドンオリンピックとアメリカ大統領選の間に襲来することになるのではないか、と言っているわけです。アメリカ大統領選は、来年の一月六日に大統領選挙人による投票を開票し新大統領が決まります。つまり、今年中に第二波が襲来することを覚悟せよ、ということです。かなりのリアリティがあるように感じます。

では、それを迎え撃つ国内体制はどうなっているのか。

当時は、リーマンショック勃発の直前に、麻生太郎総理・中川昭一財務大臣という奇跡のコラボがあったので、日本は助かりました。でも、今回は、どうでしょうね?野田政権がグダグダ続いている間に、世界金融危機が起きたら、東日本大震災の時のように「選挙どころではない」ということで、民主党政権が延命しますよ。

これは、目の前が真っ暗になる最悪のシナリオです。解散の時期をめぐってモタモタしているうちに金融恐慌の大津波が襲来してしまうと、おそらくそうなるでしょう。これは、なにがなんでも避けなければなりません。一日でも早く泥鰌を首相の座から力づくでも引きずりおろさなければならない、ということです。民主党から一日でも早く政治権力を剥奪しなければ、その分だけ日本はダメージを受けるのです。また、ちゃんと身分保障された学校教員による政治活動が、日本の存亡に関わるほどの脅威を与えることも今回判明したのですから、日教組は解体すべきであるとも考えます。お望みならば、民主主義を守るためにこそ、日教組は潰されなければならない、とまで掛け値なしに申し上げておきましょう(民主主義の本質についてはいずれ徹底的に論じようと思っています)。それがいまの民主党政権にできないことは誰の目にも明らかです。《左翼反権力思想は、「ごっこ」でやっているうちは人畜無害だが、一度権力を手中にすると、国家の屋台骨を揺るがす所業に出る。そうして、その原因の大半は、彼らの無知と無能による。彼らは、人として未熟なのである》これは、私が民主党政権から学んだ貴重な教訓の核心です。私が彼らに気を許すことはもう二度とないでしょう。

また、ごちゃごちゃ抜かしているだけの日銀のケツをひっぱたいて、どんどんお札を刷らせなければ、インフレの保護膜のない日本経済は世界発のスーパー・デフレの大津波で木っ端微塵にされてしまいます。これを考えると、私は目の前がかすむほどに日銀に対する怒気がせり上がってきます。一般国民の無知につけこみやがって、ズルするなよ、このコソ泥が、というわけです。保障された高給に値するだけの仕事をしない奴は、税金ドロボーとしか私には思えませんので。

そして、また予算の裏付けのない「成長戦略」が出てお茶を濁されますね。何をすればいいのか分からなくなった民主党と経団連とマスコミは、「TPP!」「道州制!」とか、ショック・ドクトリンを連発。こういう機をとらえてのし上がるのが、橋下のような奴。これで失われた四十年、確定です。

これまでのパターンを振り返ってみると、そんなふうになってしまう可能性が高い、と私は考えます。危機に直面して、それを解決しえない的外れな「小さな政府」という新自由主義的スローガンを臆面もなくぶち上げた者が、この一〇数年来、マスコミと民衆の支持を背景にして権力を手に入れています。橋本龍太郎しかり、小泉純一郎しかり、民主党しかり(民主党はもともとは違ったはずだったのに、無知・無能なので知らないうちに新自由主義に染まってしまいましたけれど)。そうして次は、このまま行くと橋下徹が権力を手中にしてしまいそうな形勢です。橋下を支持するなんて、石原慎太郎ももうろくしたものです。あなたは、ほかのことは考えないで、日本のために尖閣買い入れだけに専念してください。

でも自業自得だよね。日本人は、麻生首相を引きずりおろして鳩山なんかに代えて大はしゃぎし、中川大臣を辱めて死に追いやったんだもの。

これが、国民の常識になる日が来るのを私は待っています。「麻生さんは、積極財政によって、リーマン・ショックで地獄にたたき落とされることから日本を救った偉い人である」「中川さんは、積極財政を推進しようとして、それに執拗に理不尽に抵抗する財務官僚の罠にハメられて憤死した本当のエリートである」この二つが国民の常識になるときが、すなわち日本経済に光明が差すときであると私は信じています。

個人的見解はどうであれ、他の大多数の日本人がやった馬鹿の巻き添えを食わなきゃいけないのが「日本人」に生まれた宿命。こればっかりは、しょうがない。「国民」であるということは、そういう重く厳しいことなんですね。文句言っていても始まらないから、私はとりあえず自分に何ができるか考えて、やってみますわ。

まあ、そういうことですね。差し当たり私は、このブログで、日本のためになると信じていることを根気よく言い続けるほかはないのでしょう。諦めないことが肝心、と自分に言い聞かせましょう。

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