今年になってはじめてのhanamas ライヴでした。いつも報告がおくれ気味になってしまうので、今回はがんばって、「ほかほか弁当」でお届けしたいと思っています。念のために言っておきますが、hanamasは、津軽三味線のはなわちえさんとヴァイオリンの沖増菜摘さんの和洋ユニットバンドです。
今回は、いつにも増して強力な助っ人の登場です。ピアニストkeikoさんです。彼女がどう強力かって?そうですね、まずもって、アレンジャーとしての卓越した才能があるのです。それもかなり攻撃的で共演者をいい意味でリードし、煽るアレンジャーです。「自分は脇役」などという、あまりいい意味ではないような日本人的な遠慮などまったくありません。ヘタをすれば、主役が食われてしまいかねない凄い演奏をします。かといって、目立とうなどという下卑た根性はまったく持ち合わせていません。要するに、溢れるほどの才能があり、ハイセンスで、いい音楽を作るうえでの妥協を自分に対して許そうとしない頑張り屋さんなのです。彼女がどういう演奏者か、you tube からひとつ紹介しておきますね。
keiko/カントリーロード~海の見える街Live(Chameleon Jazz)
keikoさんには、こういうアレンジの引き出しが無尽蔵にあって、曲が変わるたびに、こちらをハッとさせるような新鮮なフレーズが次から次に出てくるのです。こう来られるとhanamasとしてもうかうかしていられません。全力を出し切って、keikoさんの「煽り」に応えなければなりません。ここに、才能と才能との良い意味でのぶつかり合いが実現されることになります。その緊張感に、私は心地良いしびれを感じました。keikoさんは、hanamasのお二人によれば、東京芸大在学中に交流はなかったものの、お互い存在を意識していはいたようです。ちえさんがメガニーズとジョイントコンサートをしたとき(http://blog.goo.ne.jp/mdsdc568/e/4c147ced4ca488baba3edc86d1320405)にも思ったのですが、ちえさんや菜摘さんの東京芸大人脈って、まるで水源豊かな泉の観を呈していて、才能のある音楽家が次から次に現れるのでこちらは舌を巻いてしまいます。
左奥が、keikoさん、真ん中が菜摘さん、右端がちえさん。写真はちえさんのブログより拝借しました。
では、当日のプログラムに従って若干のコメントを述べようと思います。1st stage の一曲目は、アイルランド民謡の「ジョン・ライアンズ・ポルカ」。hanamas二人だけのシンプルな演奏が、当曲の素朴な味わいを引き出していて、とても新鮮でした。hanamasオープニング曲の定番です。
二曲目がちえさんのオリジナル「Wing」。若いころ特有の未来へ向けての飛翔感が力強く表現されている佳作です。ちえさんの幻のファースト・アルバム『月のうさぎ』に収録されているそうです。この曲からkeikoさんが加わりました。驚いたのは、曲の途中、彼女が左手でピアノを弾きながら右手でパーカッションを叩きはじめたことです。彼女が座っている直方体の箱そのものが打楽器になっているようなのです。それは、ペルーで生まれたカホンなのだそうです。それを掌で叩くと乾いた大きな音の出る、なかなかの優れものです。
三曲目が、keikoさんのオリジナル『紅唇(こうしん)』。彼女が所属する女性三人グループVanilla Mood(バニラ・ムード)の曲とのこと。会場は、その美しい旋律に虚を突かれたような恰好になってしまい、みんな深く聴き入ってしまいました。曲が終わった後、菜摘さんが「うーん、名曲ですね」と漏らしていたのも肯べなるかな、です。論より証拠、オリジナルをお聞かせします。
Vanilla Mood - 紅唇
四曲目は、『となりのトトロ』から、keikoさんアレンジの「風の通り道」。ジブリ作品でなにが一番好きかについて、keikoさんは『魔女の宅急便』を、ちえさんは『物の怪姫』を、菜摘さんは『風の谷のナウシカ』をそれぞれ挙げていました。ちなみに私は、菜摘さんと同じ『風の谷のナウシカ』です。作品の出来栄えとしては、それと『となりのトトロ』とが甲乙つけ難いとも思っています。
hanamasファンにとってはおなじみの『花音』が五曲目でした。パッヘルベルの『カノン』をhanamas風に愛らしくアレンジしたものですね。keikoさんがここでまやもや「新兵器」を繰り出しました。彼女は、金属のリードを呼気で鳴らす鍵盤ハーモニカを左手で演奏しなから、右手でピアノを弾いたのです。全身これ音楽、という趣の人ですね。彼女の斬新な表現力豊かなアレンジによって、同曲は、新しい命を吹き込まれました。旋律の愛らしさの味わいが深みを増したのですね。我々聞き手が感動の余韻に耐えきれず、拍手した後に、なにかのきっかけでもう一度思わず拍手をしてしまいました。その湧き起る心の振動にhanamasのお二人も感じるものがあったはずです。
その後菜摘ちゃんアレンジのじょんがら風『パガニーニ・トゥ・フォー』、茨城県民謡の『磯節』と続きました。ちえさんの力のこもったじょんがらフレーズで前半最後が締めくくられました。
ところで、当日は超満員。私は特設の座椅子に座り、テーブル席の後ろから聞く形でした。向かって左手の菜摘さんの姿は比較的に良く見えたのですが、右端のちえさんは黒山のひとだかりの向こうにその小さな頭と三味線の糸巻きとそこに差された桜の花びらのようなものとがちょこんと見えるだけでした。お二人がミュージシャンとして大きく成長していくにつれてだんだんと人気が出てくることは、基本的にはもちろんうれしいのではありますが、ファンとしてもこれまでのような具合にいかないことが増えてくることを考えると、どこかでちょっと淋しく感じるのも事実です。ファンとはわがままで本当に煩悩のかたまりのような存在なのだとあらためて思います。人気商売って、そういう連中を相手にするのですから、気苦労が多いのでしょうね。
2nd stage の冒頭は、「八木節」「会津磐梯山」など民謡シリーズでした。その次が、keikoさんアレンジの「マンガ日本昔話」のテーマ曲でした。あの「坊や、よい子だ、ねんねしな」のメロディが忘れようにも忘れられない曲です。ゆるやかで味わいのある演奏ぶりでした。
四曲目が、ヘンリー・マンシー二の『子象の行進』。往年の大スター、ジョン・ウェイン主演『ハタリ』(1962年)の主題曲で、とても有名な曲です。え?分からない?そうですか、では、ご紹介しておきます。この曲です。
子象の行進/パリジャン・セクステット
この、乗りがよくて底抜けに明るい曲のご機嫌な演奏ぶりに、会場のみなさんは、keikoさんの先導によって、手拍子で応えました。そのノリのまま、次の曲は「トコトコ行進曲」。モーツァルトの『トルコ行進曲』をhanamas風に愛らしくコミカルにアレンジしたものです。それを、hanamasの二人は、ぴょんぴょん飛び跳ねながら演奏していました。菜摘さんは、左目と右足の小指が痛いと言っていたのですが、演奏が終わった後、大丈夫だったのかな。。。
六曲目から、アンコールの八曲目まで、『リベル・タンゴ』・『Spain』・『チャール・ダーシュ』と、心地よい緊迫感とともに、感動の頂点をめがけて一気に駆け上って行きました。『Spain』での、イントロにおけるkeikoさんの哀調を帯びた鍵盤ハーモニカの音色が忘れられません。最高のイントロでした。それに続くhanamasの演奏が素晴らしくならないはずがありません。また、『チャール・ダーシュ』での菜摘さんのノリの良さはちょっと神がかり的でした。この曲は、完全に菜摘さんの身体のなかに入ってしまっているような気がします。それにしても、菜摘さんの右足の小指、大丈夫だったのかなぁ。。。
今回のライヴは、私が聴いた中でのhanamasのベスト・テイクです。
最後にひとつ。菜摘さんの存在感が大きくなったような気がします。ファースト・アルバムを完成させたことで、演奏家として、あるいは表現者として、なにか吹っ切れて、大きな自信を手に入れたのではないでしょうか。今後の、彼女自身の展開が楽しみです。それをだれよりも喜んでいるのは、ちえさんであるような気がします。残念ながら、菜摘さんのファーストは今回持ってきていなかったとのことなので入手できませんでした。「だって、hanamasのライヴだから・・・」とは本人の弁。よし、では今度、菜摘さん自身のライヴに行ってみましょうか。
当日実は、写真を何枚か撮ったのですが、あまりうまくいっていないのでがっかりしました。それで、CD販売のときわがままを言って、至近距離から写真を取ることをご本人たちに許していただきました。で、撮ったのが次の写真です。それもあまりうまく撮れていないのですが、お二人のご好意を無駄にしないために、あえて掲載することにしました。どうも、ありがとうネ。
今回は、いつにも増して強力な助っ人の登場です。ピアニストkeikoさんです。彼女がどう強力かって?そうですね、まずもって、アレンジャーとしての卓越した才能があるのです。それもかなり攻撃的で共演者をいい意味でリードし、煽るアレンジャーです。「自分は脇役」などという、あまりいい意味ではないような日本人的な遠慮などまったくありません。ヘタをすれば、主役が食われてしまいかねない凄い演奏をします。かといって、目立とうなどという下卑た根性はまったく持ち合わせていません。要するに、溢れるほどの才能があり、ハイセンスで、いい音楽を作るうえでの妥協を自分に対して許そうとしない頑張り屋さんなのです。彼女がどういう演奏者か、you tube からひとつ紹介しておきますね。
keiko/カントリーロード~海の見える街Live(Chameleon Jazz)
keikoさんには、こういうアレンジの引き出しが無尽蔵にあって、曲が変わるたびに、こちらをハッとさせるような新鮮なフレーズが次から次に出てくるのです。こう来られるとhanamasとしてもうかうかしていられません。全力を出し切って、keikoさんの「煽り」に応えなければなりません。ここに、才能と才能との良い意味でのぶつかり合いが実現されることになります。その緊張感に、私は心地良いしびれを感じました。keikoさんは、hanamasのお二人によれば、東京芸大在学中に交流はなかったものの、お互い存在を意識していはいたようです。ちえさんがメガニーズとジョイントコンサートをしたとき(http://blog.goo.ne.jp/mdsdc568/e/4c147ced4ca488baba3edc86d1320405)にも思ったのですが、ちえさんや菜摘さんの東京芸大人脈って、まるで水源豊かな泉の観を呈していて、才能のある音楽家が次から次に現れるのでこちらは舌を巻いてしまいます。
左奥が、keikoさん、真ん中が菜摘さん、右端がちえさん。写真はちえさんのブログより拝借しました。
では、当日のプログラムに従って若干のコメントを述べようと思います。1st stage の一曲目は、アイルランド民謡の「ジョン・ライアンズ・ポルカ」。hanamas二人だけのシンプルな演奏が、当曲の素朴な味わいを引き出していて、とても新鮮でした。hanamasオープニング曲の定番です。
二曲目がちえさんのオリジナル「Wing」。若いころ特有の未来へ向けての飛翔感が力強く表現されている佳作です。ちえさんの幻のファースト・アルバム『月のうさぎ』に収録されているそうです。この曲からkeikoさんが加わりました。驚いたのは、曲の途中、彼女が左手でピアノを弾きながら右手でパーカッションを叩きはじめたことです。彼女が座っている直方体の箱そのものが打楽器になっているようなのです。それは、ペルーで生まれたカホンなのだそうです。それを掌で叩くと乾いた大きな音の出る、なかなかの優れものです。
三曲目が、keikoさんのオリジナル『紅唇(こうしん)』。彼女が所属する女性三人グループVanilla Mood(バニラ・ムード)の曲とのこと。会場は、その美しい旋律に虚を突かれたような恰好になってしまい、みんな深く聴き入ってしまいました。曲が終わった後、菜摘さんが「うーん、名曲ですね」と漏らしていたのも肯べなるかな、です。論より証拠、オリジナルをお聞かせします。
Vanilla Mood - 紅唇
四曲目は、『となりのトトロ』から、keikoさんアレンジの「風の通り道」。ジブリ作品でなにが一番好きかについて、keikoさんは『魔女の宅急便』を、ちえさんは『物の怪姫』を、菜摘さんは『風の谷のナウシカ』をそれぞれ挙げていました。ちなみに私は、菜摘さんと同じ『風の谷のナウシカ』です。作品の出来栄えとしては、それと『となりのトトロ』とが甲乙つけ難いとも思っています。
hanamasファンにとってはおなじみの『花音』が五曲目でした。パッヘルベルの『カノン』をhanamas風に愛らしくアレンジしたものですね。keikoさんがここでまやもや「新兵器」を繰り出しました。彼女は、金属のリードを呼気で鳴らす鍵盤ハーモニカを左手で演奏しなから、右手でピアノを弾いたのです。全身これ音楽、という趣の人ですね。彼女の斬新な表現力豊かなアレンジによって、同曲は、新しい命を吹き込まれました。旋律の愛らしさの味わいが深みを増したのですね。我々聞き手が感動の余韻に耐えきれず、拍手した後に、なにかのきっかけでもう一度思わず拍手をしてしまいました。その湧き起る心の振動にhanamasのお二人も感じるものがあったはずです。
その後菜摘ちゃんアレンジのじょんがら風『パガニーニ・トゥ・フォー』、茨城県民謡の『磯節』と続きました。ちえさんの力のこもったじょんがらフレーズで前半最後が締めくくられました。
ところで、当日は超満員。私は特設の座椅子に座り、テーブル席の後ろから聞く形でした。向かって左手の菜摘さんの姿は比較的に良く見えたのですが、右端のちえさんは黒山のひとだかりの向こうにその小さな頭と三味線の糸巻きとそこに差された桜の花びらのようなものとがちょこんと見えるだけでした。お二人がミュージシャンとして大きく成長していくにつれてだんだんと人気が出てくることは、基本的にはもちろんうれしいのではありますが、ファンとしてもこれまでのような具合にいかないことが増えてくることを考えると、どこかでちょっと淋しく感じるのも事実です。ファンとはわがままで本当に煩悩のかたまりのような存在なのだとあらためて思います。人気商売って、そういう連中を相手にするのですから、気苦労が多いのでしょうね。
2nd stage の冒頭は、「八木節」「会津磐梯山」など民謡シリーズでした。その次が、keikoさんアレンジの「マンガ日本昔話」のテーマ曲でした。あの「坊や、よい子だ、ねんねしな」のメロディが忘れようにも忘れられない曲です。ゆるやかで味わいのある演奏ぶりでした。
四曲目が、ヘンリー・マンシー二の『子象の行進』。往年の大スター、ジョン・ウェイン主演『ハタリ』(1962年)の主題曲で、とても有名な曲です。え?分からない?そうですか、では、ご紹介しておきます。この曲です。
子象の行進/パリジャン・セクステット
この、乗りがよくて底抜けに明るい曲のご機嫌な演奏ぶりに、会場のみなさんは、keikoさんの先導によって、手拍子で応えました。そのノリのまま、次の曲は「トコトコ行進曲」。モーツァルトの『トルコ行進曲』をhanamas風に愛らしくコミカルにアレンジしたものです。それを、hanamasの二人は、ぴょんぴょん飛び跳ねながら演奏していました。菜摘さんは、左目と右足の小指が痛いと言っていたのですが、演奏が終わった後、大丈夫だったのかな。。。
六曲目から、アンコールの八曲目まで、『リベル・タンゴ』・『Spain』・『チャール・ダーシュ』と、心地よい緊迫感とともに、感動の頂点をめがけて一気に駆け上って行きました。『Spain』での、イントロにおけるkeikoさんの哀調を帯びた鍵盤ハーモニカの音色が忘れられません。最高のイントロでした。それに続くhanamasの演奏が素晴らしくならないはずがありません。また、『チャール・ダーシュ』での菜摘さんのノリの良さはちょっと神がかり的でした。この曲は、完全に菜摘さんの身体のなかに入ってしまっているような気がします。それにしても、菜摘さんの右足の小指、大丈夫だったのかなぁ。。。
今回のライヴは、私が聴いた中でのhanamasのベスト・テイクです。
最後にひとつ。菜摘さんの存在感が大きくなったような気がします。ファースト・アルバムを完成させたことで、演奏家として、あるいは表現者として、なにか吹っ切れて、大きな自信を手に入れたのではないでしょうか。今後の、彼女自身の展開が楽しみです。それをだれよりも喜んでいるのは、ちえさんであるような気がします。残念ながら、菜摘さんのファーストは今回持ってきていなかったとのことなので入手できませんでした。「だって、hanamasのライヴだから・・・」とは本人の弁。よし、では今度、菜摘さん自身のライヴに行ってみましょうか。
当日実は、写真を何枚か撮ったのですが、あまりうまくいっていないのでがっかりしました。それで、CD販売のときわがままを言って、至近距離から写真を取ることをご本人たちに許していただきました。で、撮ったのが次の写真です。それもあまりうまく撮れていないのですが、お二人のご好意を無駄にしないために、あえて掲載することにしました。どうも、ありがとうネ。
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