美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

絶望的な政治状況に絶望するのはよそう (イザ!ブログ 2013・10・22 掲載)

2013年12月25日 05時13分49秒 | 政治
絶望的な政治状況に絶望するのはよそう

下記の論考は、10月17日(木)にFBに掲載した「私の政治的なスタンスの現状」を大幅に加筆訂正したものです。

*****

最近いろいろなところに折に触れて書いている政局がらみの文章を、ここでちょっとまとめておきたいと思います。自分自身の頭の整理をしておきたいというのもあります。

最近の私は、TPP絡みで安倍政権に対する批判を強めています。また、首相の消費増税決定措置に対しても、なんと馬鹿で愚かな意思決定をしてしまったのだという強い憤りがあります。それを中韓が高く評価したという報道に接したときは、「だから言わんこっちゃない」と思いました。歳に似合わず、精神的に相当なダメージを受けて、正直、ガックリときています。さらに、10月15日の安倍総理による所信表明演説が、電力・農業・医療の分野における規制緩和の積極的な推進の意志を断固として表明した、極めて新自由主義路線に急接近したものであったことにも改めて落胆しました。http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement2/20131015shoshin.html

「痛恨の極み」と言い続けてきた靖国神社参拝の見送りを、彼が、今回の秋の例大祭についても繰り返してしまったことについても、少なからず失望の念を抱きました。というのは、「戦後レジームからの脱却」を唱えてきた政治家が、その抱負を実現するためには、人並みはずれた胆力がなければならないものと思われますが、今回の振る舞いは、安倍総理にそれらしきものがどうやらないらしいことがうかがわれたからです。「アメリカからの圧力」は理由になりません。なぜなら、「戦後レジームからの脱却」をトータルに実現しようとする場合のアメリカの外圧のすさまじさに比べれば、靖国参拝を封じようとするそれなど取るに足りないレベルのものに過ぎないと思われるからです。だったら、最初から「戦後レジームからの脱却」などと言わなければ良かったのにと言いたくもなってきます。

こんなふうに、今の私は安倍政権に対して不満タラタラなのですが、それでも、同政権支持を撤回しようとは今のところ思っていません。かろうじて、ごく消極的な気持ちに過ぎないのではありますが、消去法でいけば、いまのところ、安倍総理くらいしかいないのではないかと思われるのです。

これは、理詰めで考えれば、根本的に矛盾した態度です。安倍政権は、消費増税反対、TPP反対という選挙公約を明らかに破ったのですから、それを信じて安倍自民党に投票した者が、なおもそれを支持し続けるのはあきらかにおかしいのです。「安倍信者」なる言葉が跋扈するのもむべなるかなです。しかし私は、いまのところその「致命的」な論理的自己矛盾に耐えようと思っています。

本当は、支持を撤回して「国民に信を問い直せ」というのが筋ですね。しかし、選挙が実現する可能性は限りなくゼロに近い。ねじれ国会が解消して政治運営が楽になった自民党に、選挙に打って出るモチベーションなど湧いて来るはずなどないからです。百歩譲って、安倍自民党が選挙に打って出たとしても、現状では、安倍自民党がふたたび圧勝するでしょう。理由は簡単。私が抱えているような不満の受け皿となる健全野党がいまの日本には、まことに残念なことながら存在しないからです。共産党じゃねぇ、というやつです。

にもかかわらずあくまでも筋論を言い募ろうとするのは、一種の現実逃避にほかなりません。とするならば、自ずと別のことを考えるよりほかはないでしょう。

そもそも政治には、次の二つの面があるのではないかと考えます。ひとつは、自分の思想信条を貫き通すことが大事で、それと反する政治勢力の動向に対して果敢にノンを突きつけるという面。もうひとつは、リアルな力関係において、敵対勢力に負けてしまったら元も子もないという面。それぞれを、政治の理想主義的側面と現実主義的側面と言いかえてもいいかもしれません。

私なりの考えですが、平時においては、どちらかと言えば前者が尊重されるべきなのではないかと思われます。政治思想に磨きをかけることは大切ですから。しかし、緊急時においては、後者の方が尊重されるべきなのではないかと思われます。なぜなら、緊急時に敵対勢力に負けてしまったら、取り返しがつかないからです。

そうして、いまは緊急時です。それが私の現状認識です。ここで敵対勢力というのは、中国・韓国すなわち特亜と、国内の親特亜勢力です。彼らは、日本を敵国とみなして、着々と国内法を整備し、情報戦において日本に対して優位に立っています。領土問題についても一歩も引こうとしません。また、スキあらば、日本のEEZを掠め取ろうともしています。さらに中国は、ハワイから西を自分たちの海にするという遠大な計画があります。その第一歩が、尖閣諸島領有なのですね。日本がどうなだめすかそうとしても、中国が「中核的利益」としての尖閣諸島の領有に関して譲る気などまったくありません。その点、朝日・毎日の親特亜系メディアが日本政府に対して良きものとして提唱し続けている対話的外交路線は、空理・空論であることを超えて、恥知らずな利敵言動であると断じざるをえません。中国情勢についてちょっと冷静に勉強してみれば、中共の対尖閣のスタンスがどういうものか、すぐに分かることです。

で、その特亜勢力がとても嫌がっているのが安倍政権なのです。つまり、安倍政権の存在そのものが、中韓の軍事的冒険主義に対する抑止力になっているという現実を私たちは活用しない手はないのです。少なくとも軽視すべきではないのです。

アメリカは、どう思っているのか。細かく言えばいろいろとあるのでしょうが、東アジアに関しては、現状維持をもってベストとしているのではないかと思われます。別の言い方をすれば、「分断して統治する」というスタンスをよしとしている。その方が御し易いですからね。だから、日中や日韓が小競り合いをして仲良くしようとしない状況は、実はアメリカにとってそれほどに不都合ではない。だから、日中・日韓の首脳が関係改善のために腹を割った会談をするという事態は、実は歓迎すべきものではない。それゆえ、いまの日中・日韓の膠着状態にはアメリカの意思が反映されていると見るべきでしょう。

そういう状況において、これまで安倍政権を強力に支持してきた保守勢力が、消費増税問題とTPP問題をきっかけに四分五裂してしまったら、特亜と親特亜勢力が大喜びをするのは目に見えています。それは、力関係に著しい不均衡をもたらすことにつながります。そうすると、対特亜において抑止力たりえてきた安倍政権が抑止力たりえなくなるのです。権力掌握者として弱体化するわけですからね。そうなると、アメリカはしぶしぶ重い腰を上げて、不均衡是正のために措置を講じなければならなくなるものと思われますが、その場合、安全保障の面で弱体化した日本はアメリカの都合のいいように弄りまわされることになるでしょうね。非関税障壁をめぐって、さらなる難題をふっかけられるのは必至でしょう。G0(ゼロ)状況において、いまのアメリカは、覇権国家としての理性よりも一主権国家としてのエゴイズムを優先させようとしますから。

だから、私としては消費増税やTPP問題や新自由主義路線の強化をめぐって、現政権を筆鋒鋭く批判するのはやぶさかではありませんし、そうすべきだとも思いますけれど、だからといって、安倍政権の支持をやめてしまうのは、得策ではないと思うのです。時期が悪すぎる。いささか根本的なことを言えば、そういう振る舞いは、もともと不完全にできている人間存在にあまりにも多くのものを求めすぎる姿である、とも言えるでしょう。

もともと政治なるものは、権力欲という人間の抜きがたい煩悩を原動力とする嫉妬まみれの詐術に満ちた説得の言語ゲームなのです。端的に言えば、政治はもともと「汚い」ものなのです。そんなことなど、われわれは十二分に分かっていたのではないでしょうか。

安倍さんには、つかの間のいい夢を見させてもらったことを感謝して、今後はもっと醒めた心で功利主義的な観点から、支持し続けようと、私は思っています。仮に安倍さんを力ずくで政権の座から引きずり下ろしても、現状では、石破総理大臣が誕生するだけでしょう?彼は典型的な経済音痴で軍事オタクですから、彼に権力を握らせたら、場合によっては異次元緩和をやめてしまうかもしれません。少なくとも国土強靭化路線は確実に撤回するでしょう。その点、非常にリスキーです。また、その歴史観にも自虐史観の影響が色濃いところがあって問題です。あるいは、麻生総理大臣とか。今回の消費増税問題で、彼は安倍総理に対してハシゴを外す役割を果たした裏切り者ですよ。そんな人に首相になってほしいと思いますか?私は、それよりは安倍総理のほうがいまだにちょっとマシだと思っています。問題は多いですけれどね。民主党政権の方がマシだった?そう思うのは、ちょっとモノの見方に偏りのある方だけでしょう。朝日新聞やNHKがいちばん正しいことを言っていると信じ込んでいる人とか。

閑話休題。これまで安倍政権を強力に下支えしてきた三橋貴明氏が、「いまの安倍政権は、レントシーキング内閣であり、日本の民主主義を骨抜きにしかねない危険な政治手法を強化しつつある」という意味のことを言って、厳しく批判しています。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/page-1.html#main 

また、これまで「チャンネル桜」で異彩を放っていた若手の論客・倉山満氏が、安倍総理の消費増税決定をきかっけに、「チャンネル桜」と袂を分かつという保守陣営にとって小さくはない出来事が先日ありました。
http://www.youtube.com/watch?v=Evn6d2Mu_C0

これらは、安倍政権の中核的支持層を担ってきた保守陣営の四分五裂状況と安倍政権における新自由主義路線の加速度的強化とを象徴する現象です。その意味で私たちは、いま絶望的な政治状況に直面していると言っていいでしょう。

そういう状況は、私たちを「絶望」という名の情緒的停滞へと誘ないがちです。その誘惑に抗して、「絶望的な政治状況」を冷静に把握し、批判すべき急所をさまざまな形で安倍政権に突きつけ続け、同政権を国民経済を担うに足る存在として鍛え上げることができるかどうか、少なくともその思いを持続させうるかどうかが、「戦後レジームからの脱却」という課題を自分のものとして本当に引き受けうるかどうかの試金石になるのではないでしょうか。

立派なことを言いたがっているように見えるかもしれませんが、心のなかには、あの太宰治の、すべての熱意を虚しくさせる「トカトントン」の残響のようなものが執拗に響いています。それに抗して、こんなことを言っているのではあります。



〈コメント〉

☆Commented by kohamaitsuo さん

全面的に共感します。私のなかにも「トカトントン」がかすかに響いていながら、しかし自分を「神経症患者」という弱者像に安住させたくない、という思いがあります。

それにつけて思うのは、現在の政局で一番キャスティングボートを握っているのが公明党でありながら、不思議にもこの事実に対する批判がほとんど見られないことです。安倍政権の「戦後レジームからの脱却」という理念が、与党の一角を占める公明党によってすべてなし崩しにされていることに、私たちはもっと目を向けるべきではないでしょうか。安全保障問題、憲法改正問題、原発問題で、与党であるゆえの力を悪用して、最も有効な邪魔立てをしているのは、山口代表率いる公明党です。安倍自民党は、石破幹事長に代表されるように、この党に過度に遠慮し、ご機嫌を取ってばかりいます。

この政党が強力な宗教団体をバックとした圧倒的な組織票を根拠に成立していることはもとより自明であり、それゆえにその力に対する「怖れ」を周囲に不必要に肥大させている事態を招いていることは理解できなくはありません。しかしそれはいまや、単に私たちの心の中に住む「妖怪」であるかもしれないのです。そもそもこの党が何を言っているかといえば、何の国際的視野も経済的定見も政治的理念もなく、ただ「平和ニッポン大事、日中、日韓友好ご大切、消費増税賛成、TPP賛成、集団的自衛権承認反対、憲法改正反対」という一部の惰性的風潮に便乗しているだけです。その空想的・ポピュリズム的姿勢において、まさに「戦後レジーム」そのものであり、朝日新聞や社民党と何ら変わるところがありません。問題はそれが権力中枢の一角を占めていることなのです。

この政党と手を切る、とまでは言わないにしても、何らかの形ではっきりと距離をとる姿勢を示さない限り、私は、いまの自民党を支持する気になれません。

無責任な言辞を弄しましたが、ご一考願えれば幸いです。

☆Commented by 美津島明 さん
 To kohamaitsuoさん

おっしゃるとおりです。安倍自民党は、公明党などというバカ政党と連立を組んでいる限り、戦後レジームからの脱却などできるはずがありません。公明党は、戦後レジームそのものの愚にもつかない存在ですから。ちなみに、もともと自民党もそうですね。違いは、自民党の方がより多く敗戦利得を得ている点だけ。また、相も変わらず公明党と組もうとした段階で、自民党も戦後レジームからの脱却をやる気などなかったのでしょう。今国会で自民党が新自由主義路線に舵を切ったことも、考えてみれば経団連などの財界べったりの自民党本来の姿に戻っただけのこと。消費増税を決めたことも、財務省べったりの自民党体質を考えれば、これまた当たり前のこと。

さらに悪い想像を続けると、あの小泉元首相が、形勢不利な総裁選で「自民党をぶっ壊す」とブチ上げマスコミと世論を見方につけて見事総裁選を制したように、安倍首相は同じく形勢不利な総裁選で「日本を取り戻す」とブチ上げインターネット世論を味方につけて見事総裁選を制しましたね。安倍首相は、もしかしたら、小泉元首相の政治手法を深く学んでいるのかもしれません。

状況を曇りなき目で見渡せば、絶望感がひたひたと湧いてきます。まさしく「トカトントン」。

「戦後レジームからの脱却」を担うのは、結局は、それをよしとするひとりひとりの名も無き存在なのかもしれません。なんとなく、村上一郎の草莽論的な心境に近づいてきた感があります。「戦後レジームからの脱却」の重要性を示し、そのためには一にも二にも「デフレからの脱却」をするよりほかはないという正論を強調したのは当時の局面では安倍晋三氏しかいなかったのですから、ひとりの草莽として、彼を選んだ判断に間違いはなかったと今でも思います。まあ、それでいいのではないでしょうか。

彼をなおも消極的にでも支持し続けることと、諸般の事情から彼がダラダラと今後も政権を担い続けるにちがいないこととは、それほど大きな違いはないのかもしれない、という気がしています。今の彼を尊敬する気持ちがなくなってしまったのは残念ですが。

☆Commented by プシケ♂ さん

美津島さま。
ブログを拝見しました。

私も、特に消費増税延期を判断しなかった10/1以降、そして、秋の例大祭での安倍総理の対応、新自由主義と称される系統のフレーズが並ぶ所信表明などの当初は想像していなかった安倍政権の方向性に、何とも言えない虚脱感を覚え、かといって、「安倍は終わった。もう何もできやしない。」的なスタンスを取る気はないという状態でして、美津島さんが分析された如く『「致命的」な論理的自己矛盾』の中にいるのだなと、思考の端緒をいただき、頭の整理をさせていただきました。

 それでもまだ、今後のスタンスに確たる定見を持てずに右往左往している状況です。もうしばらく色んな方の主張を聞きながら右往左往してようと思います(結果的に、『もっと醒めた心で功利主義的な観点からの安倍支持』に帰結する気がしていますが)。

1年前に安倍晋三という人間に感じた何か、「国柄を護る」「瑞穂の国の資本主義」という言語を自らの言葉として発した(少なくとも、そう感じさせた)安倍晋三という人物は、一体どこへ埋没してしまったのでしょうか?

ツイッターの方でちょっと触れましたが、安倍総理の心身が激務に悲鳴をあげ、変調をきたした判断しかできない状態なのでは?などという「希望的観測、願い」を捨てきれません。それが、まだ右往左往していたいという気持ちに繋がっているのだと思います。

さて、美津島さんも触れられているように、いわゆる保守系言論空間においても、各人のスタンスと手法が分裂してきました。

反日を主是とする勢力に、ここにつけ込まれることは避けねばなりませんが、私はある種面白くそれぞれの言論を拝見しています。盲信的に、どなたかの言論についていく必要はないですし、こちらもしばし傍観していようと思います。
(続く)

☆Commented by プシケ♂ さん
(続き)
そんな傍観する私の中で、目下疑問であり考えているのが、安倍政権を誕生させ、参院選でも圧勝させた「世論」とは何だったのだろうかという点です。

○民主党には懲りた
○チャイナ、コリアは嫌いになった
○景気回復するといいな

程度が、実は世論の共通項で、美津島さんも触れられ、多くの保守系の思考の方々が感じている「今は平時ではなく、危機・緊急時だ」という認識は、世論の中にはないのかもしれませんね。というか、ないのでしょうね。(好んで接するネット情報の中にいると、自分のポジションが判らなくなります(笑))

TPP交渉に参加しようが、消費増税延期を見送ろうが、国柄を壊す規制緩和を持ち出そうが、「世論」はあまり反発を示さないようですので。

当事者意識、危機意識を国民の多数が共有していないのだとすると、実に脆い世論をバックにした安倍政権だなと思います。また、「世論」としても、危機ではないという認識をしているうちは、のほほんと、やり過ごすのも当然といえば当然です。

こうなってしまった安倍政権という現実を受入れ、美津島さんご指摘の『「絶望的な政治状況」を冷静に把握し、批判すべき急所をさまざまな形で安倍政権に突きつけ続け、同政権を国民経済を担うに足る存在として鍛え上げる』ためには、目先の尖閣諸島の安全保障などだけではなく、もっと深いあらゆる分野の安全保障に対する危機意識をもっと多くの国民が共有していくことが必要なのだと思います。

ブログを拝読して頭の整理の端緒をいただいたことに感謝するとともに、上記のような雑感を覚え、今後、美津島さんを始め、保守系の方々の「世論」の分析と接し方、また、単なる一国民としての私などでも出来る周囲の「世論」への効果的なアプローチ方法なども、ご示唆をいただきたいなと、そんなことを感じました。私自身、やはり右往左往注状態ですね、脈略のないコメントになりました。失礼します。

☆Commented by 美津島明 さん
 To プシケ♂さん

熱のこもったコメントをありがとうございます。右往左往は、私も同じようなものです。プシケさんがおっしゃるように、消費増税決定、TPP聖域破棄、所信表明演説における新自由主義路線への傾斜ぶり、秋の例大祭不参詣決定と、コアな安倍支持者として、4連打を喰らった形ですから、それは当然のことだと思います。安倍政権は、おそらく長期政権をより確実なものにするために、支持基盤のシフトを図っているのではないかと私は思いはじめています。アメリカの大統領がよく使う手法ですね。つまり、形勢不利な総裁選を乗り切るには、チャンネル桜を象徴とするような、保守系の熱狂的なネット世論の後押しを必要とした。しかし、保守系ネット世論はいわゆるマスメディアの世論操作には容易に動じない。つまり、為政者からすれば本質的に御しにくい。政権を奪取し、ねじれ国会状態は解消し、当分解散もない。つまり、政権として安定期に入った。とするならば、自分たちの政権の支持基盤を、小うるさい保守系ネット世論から、モードのところにいる一般国民にシフトしたほうが安定期を長期化するうえでいいのではないか。彼らは、増税しようが、TPPで選挙公約を破ろうが、靖国神社に行かなかろうが、あまり気にしないし、大手新聞やテレビの情報を鵜呑みにするので、コントロールしやすい。そんなことを考えているような気がするのですね。とすれば、最近の安倍政権の一連の振る舞いはにわかに合点がいきます。しかし、それは愚かな浅知恵に過ぎないことを、私は非力ながらも、訴えたいのです。小うるさくない一般国民は、消費税8%が実施される来年の四月に、避けようもなく迎えることになる「経済の崖」(約10数兆円規模のGDPのブレイク・ダウン)を境に、安倍政権を支持しなくなります。一般国民は、経済状態がなんとなく好転しているような気がするからぼんやりと支持してきただけですからね。そこで慌てて、保守系ネット世論に擦り寄ってきても、時すでに遅しなのです。保守系ネット世論は愚かではないので、安倍政権のそういう動きの本音をすぐに見抜いてしまうから、支持熱は昔のようには盛り上がらないことでしょう。私は、いまの安倍政権に「支持層のシフトの目論見を中止せよ。それは、愚かなことであり、自分たちの政権を短命化させるだけのことだ」と警告したい。

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