日本で既得権益を得ているのは、政権与党につながる大企業(経団連の中心企業)と各種の業界団体である。
業界団体で目に付く岩盤団体は、JA、郵便、医師会など。
安倍政権下で消費税は5%上がったが、法人税は大きく下がっている。
消費税を減免するのであれば法人税を上げる必要がある。しかし今の与党政権では無理だ。
政治力をあまり使わないで収益を上げている業界、例えば携帯電話を中心とする通信業界などが、菅政権の格好のターゲットになる。
民間の料金体系に過度に口をはさむのは、自由な資本主義の原点を破壊する行為だ。
極めて慎重であるべきだが、内閣支持率アップには格好の政策なのかもしれない。
だが本当に大局観の欠けた政権だ。
いま世界的に5Gの覇権をどこが取るかで熾烈な競争を行っている。
それも国家が先頭になって行っているのだ。ファーウエイが良い例。
日本が生き残るためには、この業界へのテコ入れが必要。
まさに木を見て森を見ないやり方だ。
菅義偉が心酔している?というデービッド・アトキンソンの主張は、私も賛同するところがある。
しかし彼の説は劇薬で、今まで日本が温めてきた良き慣習を破壊するもの。
「日本の生産性が低いのは、最低賃金が低いから。よって最低賃金すら払えない経営者は早く退場すべし」
最低賃金を払えないのは大部分中小・零細企業だ。その経営者はマーケットから退場せよ、ということだ。
もっとも経営者の方も、今のコロナ過に対する与党政策に見切りをつけて、早々に休廃業・解散している。
東京商工リサーチ調べ。
今年1~8月に休廃業・解散した企業が前年同期比23,9%増の3万5816件だった。
「生産性を上げるため」に最低賃金を上げるというデービッド・アトキンソンの説は正しい。
しかしそれをどのような政策で行うかは、与野党で意見が分かれるだろう。
今後の論戦が望まれる。しかし既得権益の上にどっぷりつかっている与党に出せるのは弥縫策のみ。
中小企業の経営者は自民党の岩盤支持層だから。
1990年代に入ってから起こった非正規雇用者数の増加、労働分配率の低下、企業の内部留保の増加などの事柄は、すべて日本企業の社長がこれまで取ってきた戦略の結果。
これを自民党は後押ししてきた。
この政策の修正を、菅内閣で果たして出来るのだろうか?