MIRO ITO発メディア=アート+メッセージ "The Medium is the message"

写真・映像作家、著述家、本物の日本遺産イニシアティブ+メディアアートリーグ代表。日本の1400年の精神文化を世界発信

MIRO ITO発:メディア=アート+メッセージ No.16「本物の日本遺産イニシアティブ」発足のご案内

2021-08-09 09:45:36 | 世界発日本の精神文化
世界に対する答えを見つける

 この1年半は、世界の多くの人びとにとって、忍耐の時間でした。
TOKYO 2020 オリンピックでは、国籍、人種を超えた世界最高峰のアスリートたちが熱戦を繰り広げ、多くのアスリートがコロナ禍による延期の1年の結果、逆境をチャンスに変えた成果を見せてくれていました。忍耐とは、それ自体が一つの活動の力となりうることに、改めて気づかせてくれます。

コロナ禍という、未曾有のパンデミックに世界が晒され、2021年8月8日の時点で、2億300万人が感染し、429万人が死亡した世界的な出来事を前に、世界は一つの運命共同体である、という思いが強まるばかりです。

コロナ禍がきっかけとなった新しい時代のための新しい意識とは、分断化がますます進む世界において「世界は一つであり、私たちは皆一つなのだ」とする意識を全開させることなのではないでしょうか。
この意識は、もう一つの重大な危機である、気候変動問題とも切り離せないものです。


江戸時代後期の世界地図(部分、Ensign, Bridgman & Fanning Publishers, New York)

「本物の日本遺産イニシアティブ」

私自身、ニューヨークで体験した9.11同時多発テロ事件以来、世界の一体性へのメッセージを発信すべく、日本の1400年の歴史の中に、東西文化の交流の証を探る「光と希望の道」プロジェクトをスタートさせました。

それから間もなく20年が経過し、1400年の日本文化とシルクロードのつながりを展覧会や書籍、映像作品として「見える化」させ、コロナ禍以前には、2016年から2019年の間に、外務省国連日本政府代表部・在外公館や国際交流基金、日本カメラ財団との共催で、世界巡回展を11カ国12都市で開催いたしました。

その後、世界での展覧活動はコロナ禍の影響を受けて保留中であるものの、その静止の期間を生かして、このたびオンラインによる活動を本格化させるべく、「本物の日本遺産イニシアティブ」をスタートさせました。

同イニシアティブでは、1400年の歴史以来、シルクロード諸国からの恩恵を受け続けた日本文化から、世界の未来にいかに貢献しうるかをテーマにしてまいります。

そのために独自の「メディア=アート+メッセージ」づくりを行いながら、中期的に財団設立を目指し、同じ志を持つかたがたを同志=会員として、募っていく文化活動です。


映像詩「いまに生きる奈良」(33分)


映像詩「いまに生きる奈良」(監督・撮影・文:MIRO ITO 伊藤みろ) 製作:いかす・なら地域協議会

さて新しいWEBサイトのご案内を兼ね、2005年より15年以上かけて取材をしている奈良への思いの丈を込めさせていただいた、映像詩「いまに生きる奈良 シルクロード東の終着点〜1400年の精神文化の回廊」という作品のご案内をさせてくださいませ。

同作品は、文化庁クラスター事業「いかす・なら地域協議会」の製作で、私が監督・撮影・文を手がけさせていただきました。2006年から本年1月までの撮影をもとに、33分の映像にまとめたものです。
南都六大寺+春日大社の伝統をご紹介しながら、奈良をシルクロード東の終着点であり、日本の神仏習合の1400年の聖地として位置付けるものです。

本年の聖徳太子1400年御遠忌にちなみ、東アジアにおいて仏教の教えを元に国づくりを行い、国際交流の先鞭をつけた聖徳太子の偉業の紹介に始まり、国難克服・国民救済のための復興事業である聖武天皇による大仏造立、鑑真和上の来日と受け継がれる仏教の秘儀、美術や芸能として継承されきた神仏習合の麗しき伝統、さらに奈良にいまも息づく東西文化の交流の証の粋を、映像詩としてつづります。

2月6日に奈良県甍ホールで上映後、奈良県文化資源活用課のYouTubeで配信されております。「本物の日本遺産イニシアティブ」のご案内かたがた、「いまに生きる奈良」をご覧いただけたらと願い、お知らせ申し上げます。(※下記リンク内の映像作品名「いまに生きる奈良」をクリックしてください。)


なお「本物の日本遺産イニシアティブ」におきましては、ぜひ皆さまにご参加いただければ、幸いに存じます。興味を抱いていただけるようでしたら、当イニシアティブのサイト(https://japan-authentic-heritage-initiative.org/)へお越し下さいませ。

それでは、猛威を振るうコロナ禍の収束を祈りつつ、世界の一体性への願いとともに、引き続きどうぞよろしくお願いたします。

末筆ながら「本物の日本遺産イニシアティブ」発足のために、ご協力をくださった多くのかたがたに、心から厚く御礼申し上げます。

令和3年8月吉日
MIRO ITO 伊藤みろ

本物の日本遺産イニシアティブ
Photo and text by Miro Ito, Japan Authentic Heritage Initiative/Media Art League. All rights reserved.

トップイメージ写真:「本物の日本遺産イニシアティブ」サイト部分(左:室生寺十一面観音立像、中央:東大寺月光菩薩立像、右:東大寺伎楽面崑崙・酔胡従)

Japan Authentic Heritage Initiative
Weaving Japan’s 1400-years of cultural legacy into a tapestry for the future

★東京「まほろば館」奈良県文化イベントのご案内★ 3月20日・21日

2021-03-01 20:26:23 | 光と希望のみち
【ご挨拶】

先月の緊急事態宣言発令による、奈良県文化イベントの見直しに伴い、オンライン配信となった講演&映像上映「四天王シンポジウム」並びに、「春日大社・平安の正倉院〜シルクロードの至宝」の小講演&映像上映につきましては、おかげさまで多くの方々にご視聴いただきました。

奈良では、イベントがオンラインに振り替わりましたが、東京では、来たる3月20日(土・祝)と21日(日)の二日間にわたり、奈良県広報施設「まほろば館」(日本橋三越前)にて、イベントを開催いたす運びとなりました。
 
1.「四天王はどこに住み どんな神々なのか」3月20日(14:00〜15:30)
3月20日(土・祝)は、東大寺・森本公誠長老の基調講演(「四天王への熱き想い〜四天王信仰と須弥山世界」オンライン収録版:40分)の上映に続き、小映像作品「崇高なる勇姿の極み 国宝四天王像 天平から鎌倉まで 東大寺〜唐招提寺〜大安寺〜興福寺」(20分)をご覧いただきます。

先日は「奈良 大立山まつり」の2日間に限り、オンライン開催となり、多くの方々にご鑑賞いただきました。

東京の会場「まほろば館」では、上記の講演&映像上映プログラムに加え、ミニトーク形式にて、奈良の国宝四天王像について、私自身による補足講演を行わせていただきます。

コロナ感染対策のため、会場では23名さま限定のプログラムですが、Zoomを使い100名の方々ともオンラインで同時接続されますので、より多くの方々にお届けできるかと存じます。

ご興味のある方は、詳細をまほろば館ホームページをご参照ください。


 
 
2.「春日大社・平安の正倉院〜シルクロードの至宝」(by Miro Ito)
3月21日(午前11:00〜12:00/午後13:30〜14:00)

翌3月21日(日)は、「春日大社・平安の正倉院〜シルクロードの至宝」について の小講演&映像作品の上映を行います。

奈良の精神文化を語る上で欠かすことのできない神仏習合の聖地として、これまでNHKなどの限られたメディアでしか紹介されてこなかった、春日大社の1250年以上の美と信仰の世界について、「平成の正倉院〜シルクロードの至宝」という切り口で、15年間の取材を元に、ご紹介させていただきます。

先日の奈良での講演会はオンライン配信に振替となりましが、東京では、ライブでご聴講いただけます。オンライン版を捕捉する内容も若干加え、さらに「春日大社舞楽面(重要文化財)」の写真掛け軸数点を、会場でご覧いただくことができます。

午前の部(第1部:11:00〜12:00)・午後の部(第2部:12:30〜14:30)の二部構成となり、コロナ感染対策のため、各24名さま限定でのプログラムとなります。

ご興味のある方は、詳細をまほろば館ホームページをご参照ください。



それでは、暖かな季節の到来とともに、コロナ感染症の収束への願いを込めて、皆さまのいっそうのご健勝をお祈りいたしつつ、3月20日・21日のイベントのご案内に代えさせていただきます。

末筆ながら、この旅の文化イベントにご協力いただいた多くのご関係者の皆様に、心から厚く御礼申し上げます。

令和3年3月1日 

MIRO ITO (伊藤みろ)
Media Art League
East meets West, North meets south through "Media = Art + Message"
 


奈良県主催 MIRO ITO★映像&トーク 「春日大社・平安の正倉院〜シルクロードの至宝」配信のお知らせ

2021-02-11 17:20:37 | 光と希望のみち
奈良県主催 MIRO ITO★映像&トーク
「春日大社・平安の正倉院〜シルクロードの至宝」

■オンライン配信 
2021)年2月10日(水)〜17日(水)
https://vimeo.com/507967809
期間中は24時間いつても視聴可能(無料)

【ご挨拶】

世界的に病気平癒が願われる日々も、丸一年が経過しました。

さて、コロナ感染収束に向かう、暖かな季節の到来を待ち望みながら、本日は、奈良・春日大社の悠久の歴史の旅へ、お誘いさせてくださいませ。

奈良県主催の「映像&トーク」イベントとして、「春日大社・平安の正倉院〜シルクロードの至宝」をテーマに、60分の小講演を行わせていただきます。

2月10日から17日まで、期間限定にてオンラインでご覧いただけます。


映像作品「仮面のいのち 春日大社の舞楽 春日若宮おん祭の舞楽」より
舞楽面「地久」(平安時代 重要文化財 春日大社蔵)

シルクロードの終着地として、さまざまな人々と文物が行き交った奈良。
この15年間、奈良を中心に、シルクロード諸国に取材しながら、時代と国境を越えて、東西・南北の文化に共通するアートと哲学の源流を探り、ユーラシア大陸の叡智の道を、作家活動を通して、提唱してまいりました。

私が製作・監督した映像作品 「仮面のいのち 春日大社の舞楽 若宮おん祭の舞楽」(11分)の上映をはじめ、春日信仰の美と芸能をテーマに、平安時代以来の春日大社の秘宝や行事を、写真を通してご鑑賞いただきながら、解説をさせていただきます。


映像作品「仮面のいのち 春日大社の舞楽 春日若宮おん祭の舞楽」より
舞楽面「陵王」(室町時代 春日大社蔵)

天皇や皇族による春日行幸や、貴族や将軍による春日詣で全国的に広まった、日本屈指の聖地、春日の地へご案内させていただきます。

さらに私の長年のテーマである、シルクロードとのつながりを、一つの歴史のロマンとして語らせていただきます。

休日や在宅勤務の休憩時間、夜のくつろぎのひと時、1250年以上の歴史を誇る、奈良・春日大社への「遠隔参拝」をご一緒しませんか?

春日大社が培ってきた、優雅極まる「時の回廊」へ、ご案内させていただきます。


映像作品「仮面のいのち 春日大社の舞楽 春日若宮おん祭の舞楽」より
奉納舞楽「賀殿」(演舞:南都楽所)


MIRO ITO(伊藤みろ)

★お知らせ★

コロナ禍を契機に、オンラインでの作品発表の機会が増えてまいりました。
元々ドイツで「MIRO ITO」として、フォトアーティストとしての展覧活動を開始した原点に戻り、雅号を「MIRO ITO」として統一させていただくことにしました。これより「MIRO ITO」をどうぞよろしくお願いいたします。

Media Art League
East meets West, North meets South through "Media = Art + Message"
http://mediaartleague.org

オンライン講演&映像作品上映のご案内 (2021年1月30日・31日)ー「四天王はどこに住み どんな神々なのか」奈良 大立山まつり

2021-01-30 13:36:47 | 世界発日本の精神文化
オンライン講演&映像作品上映のご案内 (2021年1月30日・31日)
「四天王はどこに住み どんな神々なのか」奈良 大立山まつり
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四天王信仰は、飛鳥時代に始まります。奈良時代には、聖武天皇によって、鎮護国家の祈りが平城京で捧げられ、疫病が収まったという記録が伝えられます。奈良県の冬の風物詩である「大立山まつり」は、四天王にちなんだ大型イベントですが、本年は、コロナ禍のため、イベント形式を改め、オンラインで開催する運びとなりました。オープニングを飾る「四天王シンポジウム」を、ぜひオンライン配信でご拝聴いただければと願い、ご案内させてくださいませ。
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                記


1.日時 令和3年1月30日(土)・31日(日)限定配信

2.「四天王シンポジウム」のプログラム 


①東大寺 森本公誠長老による 基調講演

「四天王への熱き想い〜須弥山世界観と四天王信仰」

事前収録版の配信 (40分)


② 作品映像鑑賞
「天平から鎌倉へ 国宝 四天王像
崇高なる勇姿の極み 東大寺〜唐招提寺〜大安寺〜興福寺」
写真・文:伊藤みろ (Miro Ito)
ショートムービーの配信(20分)

③ 学術解説 「四天王像に見る忿怒の美」
講師: 龍谷大学 神田雅章教授
ライブ講演(30分)


3. 配信アドレス

奈良 大立山まつり 公式サイト映像配信プログラム

https://hoguhogunara.jp/video2/


主催:奈良県「大立山まつり」実行委員会
撮影協力:東大寺、唐招提寺、大安寺、興福寺、奈良国立博物館
機材協力:キヤノンマーケティングジャパン
協力:奈良県ビジターズビューロー、エヌジーシー、Anyway、イマジカ・ラボ、イマジカ・ライブ、TSP太陽、奈良テレビ放送ほか

プログラムの内容は、まず四天王信仰の由来については、東大寺・森本公誠長老がお話になられます。

次に日本を代表する国宝四天王像の造形美に注力した、私の写真による映像作品を、映像詩としてご鑑賞いただけます。
ご覧いただけるのは、東大寺戒壇堂、唐招提寺講堂、大安寺讃仰殿、興福寺中金堂・南円堂・北円堂にそれぞれ安置されている、天平から鎌倉までの世界的な傑作の四天王像です。

それらの写真作品を元に、龍谷大学の神田雅章教授が、学術解説をライブでお話しくださいます。

2日間の期間限定での配信になりますので、この機会に、ぜひご拝聴くださいますようにお願いいたします。

それでは四天王の見えざる力により、コロナ禍の収束を祈念いたしつつ、皆様のご無事をお祈り申し上げます。

令和3年1月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ
Media Art League
East meets West, North meets South through "Media = Art + Message"


興福寺中金堂四天王像 運慶作  鎌倉時代 国宝
Photo by Miro Ito

伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.15ー清らかな蓮の花のように、自然の叡智に向かう

2020-05-07 05:49:30 | いかに生きるべきかのメッセージ
伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.15ー清らかな蓮の花のように、自然の叡智に向かう

毎日、世界の多くの国々で報じられる言葉を失う惨状を、深まる悲しみともに切り抜けながら、新しい時代が始まろうとしています。

新型コロナ感染の災禍とともに、一人一人の自粛への自覚が求め荒れるつつある今、これを乗り越えることができた未来では、「BC(Before Corona) 」「AC (After Corona) 」といわれる世紀の大転換が起こると予見されています。

かつて疫病による人口激減が賃金上昇を引き起こし、労働の機械化が一気に進行した産業革命後のヨーロッパのように、コロナ感染拡大によって、これまでの生活の変化を余儀なくされ、労働のIT化やAI化への変革が後押しされつつあります。

一方、人同士の距離感の拡大によって排他的風潮と疎外感が広がり、世界の分断化だけではなく、社会の管理・監視化が進むことが懸念されています。コロナ感染拡大は、もはや伝染病との戦いである以上に、信頼と協調に基づく社会生活、ひいてはヒューマニティと人権への挑戦となっています。


蓮華座


奈良・大峰山の石仏観音像


さて、仏陀の悟りの姿である仏像は、両足または片足の甲を反対側の腿の上に乗せる姿勢(結跏趺坐または半跏趺坐)で座っています。

不自由でありながらも、もっとも身体を安定させるため、禅定(ぜんじょう)の修行法として、蓮華座とも呼ばれます。

仏陀は、世界そのものを、蓮華に喩えました。また宇宙を一輪の蓮華の上に立ち現れる世界(小宇宙)の無数の集合体(大宇宙)として表し、さらにその大宇宙が無数に点在する教えを説いています。この光景は、奈良・東大寺大仏さまの蓮弁に「蓮華蔵世界」として1300年前に刻まれました。

蓮華は、泥の中で育まれる清浄心の喩えでもあります。煩悩にまみれた世の中でも、汚れのない心のあり様が立ち現れることの象徴です。さらに私たちひとりひとりが、かけがえのない命の華に他なりません。



有限の中で無限に目覚める

外出自粛や自宅待機という社会的な自由が阻まれる中で、瞑想をして心の安静を保つ乗り越え方があります。

蓮華座を組んで静かに座ると、有限な身体の制約の中で、心が無限に開かれていくことが感じられます。 無際限の宇宙に向かって自我を解き放つことで、自分がなぜこの世に存在するのか、何をしなければいけないのか、どこに向かいつつあるのか、真実を求めていく限り、いつしか答えも自ずと立ち上ってくることでしょうか。

その先に開かれてくるのは、すべてが絶え間なく流転するという自然の本性であり、私たち自身も自然の一部である気づきです。

すべてが相互につながり合い、支えあっている自然の命こそが、私たちの存在の本源的な要素であることに目覚め、地球という命を守るために、新しい自粛の機運がこれまで以上に高まることが願われるばかりです。



命の源であり、命そのものである地球


叡智に向かう選択

1300年前の蓮の種から復活した蓮は、今年も、私が愛してやまない古都・奈良で花を開かせます。 

時空を超える蓮のような清らかな未来を思い描きながら、自然の叡智への目覚めとともに、「効率優先」のこれまでのグローバル化へ逆戻りするのではなく、「いのち優先」のグローバル化の始まりを祝福するものであってほしい、と願われるところです。

コロナ感染拡大と地球温暖化も、ともに私たちの命に関わる重大な危機です。私たちの選択によって、地球の汚染がどれほど緩和されるか、奇しくもコロナ危機は、私たちに示してくれました。

人の命とともに、大元である地球の命を守りながら、自然の智恵によって清められる新しい時代の開花を願いながら…


合掌

令和2年5月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ
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http://mediartleague.org

Photographs & Text by Miro Ito/Media Art League. All rights reserved.

伊藤みろ発:メディア+アート=メッセージ N0.14ー国籍を超えて地球を愛する

2020-01-06 10:01:36 | いかに生きるべきかのメッセージ
伊藤みろ発:メディア+アート=メッセージー国籍を超えて地球を愛する

新年明けましておめでとうございます。

皆様にとって新年が、ご多幸の年となることをご祈念申し上げます。


新たな10年の試練

持続可能な未来をどう描くか、いまや世界は試練にさらされています。

地球規模での気候変動が予測を超えた速さで進み、世界気象機関(WMO)によると、過去5年間は観測史上、最も暑かった5年間でした。私たちに今必要なのは、地球環境の持続性にかかわる脅威と取り組む生き方を、真摯に求めていくことです。


センス・オブ・グラティテュード

私たちのいのちは、地球のいのちとひとつです。
地球の健全さを私たち自身のことと考え、最優先課題として、私たち自身の暮らし方と結びつけ、新しい価値体系を生み出す生き方へと、ともに歩むということを、実践していきたいものです。

持続可能な生き方の基本は、私たちが生かされている自然環境を慈しみ、自然の恩恵に感謝することです。

慈しみと感謝の連鎖が、気候変動に歯止めをかける意識を育み、持続可能な未来を構築できるのではないでしょうか。



人類という真の国籍

地球温暖化には、国境がありません。
地球を守るには、人類という単位が必要です。

いまこそ「人類という真の国籍」(H.G. ウェルズの言葉)に目覚めていくべきときです。



人類愛、自然愛、地球愛

自然を慈しむこころは、神道の基本であり、仏教では、すべてのつながりを宇宙の真理として説いています。「隣人を愛する」というキリストの教えは、人類愛を根底にしながら、生きとしいけるものへの愛へと開かれていくものです。

人も自然も、水も空気も、光もエネルギーも、循環する万物のすべてに感謝に満ちた態度で臨むこと。日々の瞬間瞬間に、いまここで生かされていることに感謝し、人類愛、自然愛、地球愛に向かって開かれ、お互いにつながっていくこと_。


私たちの希望は、私たちの愛あるつながりと行いに帰結するのではないでしょうか。


本年も、東西南北のつながりと心の連帯を訴える文化芸術プロジェクト「光と希望のみち」をどうぞご一緒くださいませ。

新年もどうぞよろしくお願いいたします。


令和二年一月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ
Media Art League
East Meets West, North Meets South through “Media = Art + Message”

Photographs & text by Miro Ito/Media Art League. All rights reserved.
Photo (above) The Afrasiab painting (part), Afrasiab Museum, Samarkand, Uzbekistan (7-8th century CE)
Photo (below): A statue of Apollo reclining Buddha-like (from [former] Portuguese Royal Family Collection), National History Museum, Rio de Janeiro, Brazil

伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.13ーアテネ・チュニス・奈良:世界の3つの古都を巡る、東西・南北文化の源流への旅

2019-10-11 10:34:28 | 光と希望のみち
伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.13ーアテネ・チュニス・奈良:世界の3つの古都を巡る、東西・南北文化の源流への旅
 

本年1月のアテネに続き、先月9月21日から10月5日まで、アフリカ大陸チュニジア共和国のバルドー国立美術館にて、「光と希望のみち」展が開催されました。 
 
2016年5月にNY国連本部でスタートして以来、8カ国10箇所目の巡回先となり、主催は在チュニジア日本国大使館、チュニジア文化省、国立バルド美術館、共催は日本カメラ財団、メディアアートリーグです。 

 
(チュニジア国立バルドー美術館「光と希望のみち」のバナー 
写真は東大寺戒壇院多聞天立像[国宝、8世紀])


アテネでは、日希修好通商航海条約締結120周年記念事業キックオフ行事として、そしてチュニジアでは、在チュニジア日本国大使館開設50年を記念する催しとなりました。

これらの二つの式典は、展覧会のオープニングを兼ね、ストラスブールやリオ・デ・ジャネイロ、メキシコシティに引き続き、共催者ならびに作者として、スピーチをさせていただく大変名誉な機会を頂戴いたしました。

(チュニジア日本大使館開設50年を祝福するエラビディン文化大臣[右]と ナイティギル館長のご挨拶を挟んでの、清水信介大使[壇上]のご挨拶) 


カルタゴとユーラシアの接点 アテネでは、ギリシャから奈良までヘレニズム文化の伝搬の中に、東西文化の源流を辿ることで、すべてが一つであり、皆つながっていることを提示させていただきました。 

そしてチュニジアでは、古代オリエント文明に遡る、カルタゴ帝国(前814年~前146年)とユーラシア大陸の文化遺産との接点をあぶり出す試みとなりました。 

地中海世界において、クレタ文明(前20世紀~前14世紀)の後、ミケーネ文明(前16世紀~前12世紀)を受け継いだフェニキア文明(前1200年~前800年頃)がカルタゴ帝国として花開き、700年の間、海の交易で栄え、ギリシャ文化と混じり合いました。

アレクサンドロス大王によって、前326年以降、全オリエント地域が統一されると、エジプトからカルタゴ、メソポタミア、ペルシア、インドにいたる広大な地域で、ギリシャ文化と多文化が豊かに融合し合って、国際的なヘレニズム文化が生み出されました。
  

 (バルドー美術館所蔵「笑み面」[前4~前3世紀]と春日大社所蔵「地久面」[国重要文化財、1185年]/
撮影協力:バルドー美術館・春日大社) 


こうした歴史を紐解きながら、スピーチでも触れさせていただきましたが、カルタゴ帝国と日本文化をつなぐ接点があるとすれば、国立バルドー美術館所蔵のカルタゴの仮面かもしれません。

同館の特別な許可を得て撮影させていただいた紀元前4~3世紀の陶製の笑み面、その魔を寄せ付けない爽やかな笑顔は、舞楽の地久面(春日大社蔵、重要文化財、1185年)との共通点が見出せます。 

両者にはおよそ1500年の開きがあるものの、海のシルクロード諸国の王朝芸能の流れを汲む舞楽の中で、発祥が謎とされる地久面のルーツは、私見ながら、カルタゴにあるのかもしれないと思えるほどです。


 (伊藤みろのスピーチの様子、2019年9月21日バルドー美術館「光と希望のみち」オープニングにて)  


伎楽面・舞楽面のルーツを求めて またギリシャ国立考古学博物館蔵の伝アガメムノンの黄金マスク(前1550~1500年)には、遥か3500年前のミケーネ文明の栄華が偲ばれます。

金・銀・銅・陶製の埋葬用の仮面は、生前の顔に似せたマスクを被せることで、不死の存在とする意図があったといわれます。 

呪術や祭祀などの宗教的儀礼を中心に、仮面は不可知な世界と私たちをつなぐ変身の装具として、文化の中で表されてきましたが、それを演劇にまで高めたのは、古代のギリシャでした。紀元前2世紀の大理石製ギリシャ喜劇面は、広い意味で、伎楽面や舞楽面のルーツといえます。

 
(伝アガメムノンの黄金マスク[前1550~1500年]とギリシャ大理石製喜劇面[前2世紀]、撮影協力:アテネ国立考古学博物館) 


当日は、チュニジア国営TV局(第一チャンネル)から取材をいただきました。チュニジアとギリシャ、そして日本に共通する類似点を辿り、写真作品として見せることで、私たちの文化の源流もひとつであり、そのことから東西・南北を貫く連帯の心を訴えることができたとしたら、本望に存じます。



 (チュニジア国営TVの記者との記念撮影) 

奈良まほろば館の講演会

 さて10月13日(日)には、東京日本橋三越前にある「奈良まほろば館」で講演会を行い、「正倉院展を前に~ヘレニズム文化と奈良」について語らせていただきます(午前11:00~12:30分・午後13:30~15:00)。 

その際には、中央アジアにおける仏像の起源を探りながら、その伝搬ルートと奈良の仏像に残されたヘレニズム文化の影響について、ギリシャやチュニジア、ウズベキスタンやパキスタン等を取材した成果をもとに、私見を述べさせていただきたいと存じます。  

ご興味のある方は、ご拝聴いただきたく、以下のURLをご参照くださいませ。
https://www.mahoroba-kan.jp/course.html 


(東京「奈良まほろば館」での講演会「ヘレニズム文化と奈良 正倉院展を前にして」
10月13日11:00〜12:30&13:30〜15:00) 


奈良シルクロードシンポジウムと「光と希望のみち」里帰り展

 また10月19日(土)には、奈良県・文化庁・国土交通省の主催にて「2019 奈良シルクロードシンポジウム」が、平城宮跡歴史公園・平城宮いざない館にて開催されます(13:30~16:30)。 

基調講演は、奈良国立博物館・松本伸之館長が「シルクロード文化の結晶 奈良」についてお話をされるほか、本年1月の「光と希望のみち」展の会場となったギリシャ国立ビザンチン・キリスト教博物館より、ゲスト講演者が来日されます。ペリアンドロス・エピトロパキス展示・交流・教育部長&エフィ・メラムヴィリオタキ東アジアコレクション学芸員のお二人が、ギリシャ側から、シルクロードとヘレニズムおよびビザンチン文化の旅について、お話をされます。 

私はパネリストとして、第二部に参加いたします。また同時開催で世界巡回展「光と希望のみち」の里帰り展を同館で開催いたします(10月27日まで)。 

さらにシンポジウム終了後は、これまで海外で披瀝してきた「伎楽バレエ」(踊り手:春双、芸術監督:伊藤みろ)を、公式での国内初の演舞予定です。 ご参加いただける場合は、下記URLにてお申し込みくださいませ。

https://www.sap-co.jp/event_detail/silkroad2019_1/

 (「奈良シルクロードシンポジウム2019」10月19日開催予定) 

☆☆☆☆☆

本年度は、古代ミケーネ文明の発祥の地であるギリシャから、古代フェニキア文明を継承する旧カルタゴ帝国のチュニジアまで「光と希望のみち」の思いをつなげることができ、大変素晴らしい体験ができました。 

ビザンチン・キリスト教博物館、バルドー国立美術館、在ギリシャ日本国大使館、在チュニジア日本国大使館をはじめ、主催・共催およびご後援をいただいた各団体、東大寺、春日大社、奈良博物館、アテネ国立考古学博物館をはじめ、撮影のご協力をいただいた皆様に、心から厚く御礼を申し上げます。

これからも世界各地で世界巡回展「光と希望のみち」を通して、ライフワークとして、奈良を中心にシルクロードの遺産を受け継ぐ日本文化の1400年の深層、そしてそこから見えてくる未来への連帯と寛容へのメッセージを、発信させていただきたいと誓っております。 

「光と希望のみち」は、これからも続きます。
ぜひご一緒くださいませ。 

令和元年10月吉日 

伊藤みろ メディアアートリーグ
Media Art League
East Meets West, North Meets South through “Media = Art + Message”
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Photo & Text by Miro Ito/Media Art League. All Rights Reserved.(文中敬称略)

伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.13ーアテネ・チュニス・奈良:世界の3つの古都を巡る、東西・南北文化の源流への旅

2019-10-11 10:22:55 | 光と希望のみち
伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.13ーアテネ・チュニス・奈良:世界の3つの古都を巡る、東西・南北文化の源流への旅

本年1月のアテネに続き、先月9月21日から10月5日まで、アフリカ大陸チュニジア共和国のバルドー国立美術館にて、「光と希望のみち」展が開催されました。

2016年5月にNY国連本部でスタートして以来、8カ国10箇所目の巡回先となり、主催は在チュニジア日本国大使館、チュニジア文化省、国立バルドー美術館、共催は日本カメラ財団、メディアアートリーグです。

(チュニジア国立バルドー美術館「光と希望のみち」のバナー・写真は東大寺戒壇院多聞天立像[国宝、8世紀]) 

アテネでは、日希修好通商航海条約締結120周年記念事業キックオフ行事として、そしてチュニジアでは、在チュニジア日本国大使館開設50年を記念する催しとなりました。

これらの二つの式典は、展覧会のオープニングを兼ね、ストラスブールやリオ・デ・ジャネイロ、メキシコシティに引き続き、共催者ならびに作者として、スピーチをさせていただく大変名誉な機会を頂戴いたしました。

(チュニジア日本大使館開設50年を祝福するエラビディン文化大臣[右]と 
ナイティギル館長のご挨拶を挟んでの、清水信介大使[壇上]のご挨拶) 

カルタゴとユーラシアの接点 アテネでは、ギリシャから奈良までヘレニズム文化の伝搬の中に、東西文化の源流を辿ることで、すべてが一つであり、皆つながっていることを提示させていただきました。 

そしてチュニジアでは、古代オリエント文明に遡る、カルタゴ帝国(前814年~前146年)とユーラシア大陸の文化遺産との接点をあぶり出す試みとなりました。 

地中海世界において、クレタ文明(前20世紀~前14世紀)の後、ミケーネ文明(前16世紀~前12世紀)を受け継いだフェニキア文明(前1200年~前800年頃)がカルタゴ帝国として花開き、700年の間、海の交易で栄え、ギリシャ文化と混じり合いました。

アレクサンドロス大王によって、前326年以降、全オリエント地域が統一されると、エジプトからカルタゴ、メソポタミア、ペルシア、インドにいたる広大な地域で、ギリシャ文化と多文化が豊かに融合し合って、国際的なヘレニズム文化が生み出されました。


 (バルドー美術館所蔵「笑み面」[前4~前3世紀]と春日大社所蔵「地久面」[国重要文化財、1185年]/
撮影協力:バルドー美術館・春日大社) 

こうした歴史を紐解きながら、スピーチでも触れさせていただきましたが、カルタゴ帝国と日本文化をつなぐ接点があるとすれば、国立バルドー美術館所蔵のカルタゴの仮面かもしれません。同館の特別な許可を得て撮影させていただいた紀元前4~3世紀の陶製の笑み面、その魔を寄せ付けない爽やかな笑顔は、舞楽の地久面(春日大社蔵、重要文化財、1185年)との共通点が見出せます。 

両者にはおよそ1500年の開きがあるものの、海のシルクロード諸国の王朝芸能の流れを汲む舞楽の中で、発祥が謎とされる地久面のルーツは、私見ながら、カルタゴにあるのかもしれないと思えるほどです。 


(伊藤みろのスピーチの様子、2019年9月21日バルドー美術館「光と希望のみち」オープニングにて) 

伎楽面・舞楽面のルーツを求めて またギリシャ国立考古学博物館蔵の伝アガメムノンの黄金マスク(前1550~1500年)には、遥か3500年前のミケーネ文明の栄華が偲ばれます。金・銀・銅・陶製の埋葬用の仮面は、生前の顔に似せたマスクを被せることで、不死の存在とする意図があったといわれます。 

呪術や祭祀などの宗教的儀礼を中心に、仮面は不可知な世界と私たちをつなぐ変身の装具として、文化の中で表されてきましたが、それを演劇にまで高めたのは、古代のギリシャでした。紀元前2世紀の大理石製ギリシャ喜劇面は、広い意味で、伎楽面や舞楽面のルーツといえます。 

(伝アガメムノンの黄金マスク[前1550~1500年]とギリシャ大理石製喜劇面[前2世紀]
撮影協力:アテネ国立考古学博物館) 

当日は、チュニジア国営TV局(第一チャンネル)から取材をいただきました。チュニジアとギリシャ、そして日本に共通する類似点を辿り、写真作品として見せることで、私たちの文化の源流もひとつであり、そのことから東西・南北を貫く連帯の心を訴えることができたとしたら、本望に存じます。 

(チュニジア国営TVの記者との記念撮影) 

奈良まほろば館の講演会 

さて10月13日(日)には、東京日本橋三越前にある「奈良まほろば館」で講演会を行い、「正倉院展を前に~ヘレニズム文化と奈良」について語らせていただきます(午前11:00~12:30分・午後13:30~15:00)。 

その際には、中央アジアにおける仏像の起源を探りながら、その伝搬ルートと奈良の仏像に残されたヘレニズム文化の影響について、ギリシャやチュニジア、ウズベキスタンやパキスタン等を取材した成果をもとに、私見を述べさせていただきたいと存じます。 

ご興味のある方は、ご拝聴いただきたく、以下のURLをご参照くださいませ。
https://www.mahoroba-kan.jp/course.html


 (東京「奈良まほろば館」での講演会「ヘレニズム文化と奈良 正倉院展を前にして」
10月13日11:00〜12:30&13:30〜15:00) 

奈良シルクロードシンポジウムと「光と希望のみち」里帰り展 また10月19日(土)には、奈良県・文化庁・国土交通省の主催にて「2019 奈良シルクロードシンポジウム」が、平城宮跡歴史公園・平城宮いざない館にて開催されます(13:30~16:30)。 

基調講演は、奈良国立博物館・松本伸之館長が「シルクロード文化の結晶 奈良」についてお話をされるほか、本年1月の「光と希望のみち」展の会場となったギリシャ国立ビザンチン・キリスト教博物館より、ゲスト講演者が来日されます。ペリアンドロス・エピトロパキス展示・交流・教育部長&エフィ・メラムヴィリオタキ東アジアコレクション学芸員のお二人が、ギリシャ側から、シルクロードとヘレニズムおよびビザンチン文化の旅について、お話をされます。 

私はパネリストとして、第二部に参加いたします。
また同時開催で世界巡回展「光と希望のみち」の里帰り展を、同館で開催いたします(11月4日まで)。 

さらにシンポジウム終了後は、これまで海外で披瀝してきた「伎楽バレエ」(踊り手:春双、芸術監督:伊藤みろ)を、公式での国内初の演舞予定です。 ご参加いただける場合は、下記URLにてお申し込みくださいませ。


 (「奈良シルクロードシンポジウム2019」10月19日開催予定)

 ☆☆☆☆☆

本年度は、古代ミケーネ文明の発祥の地であるギリシャから、古代フェニキア文明を継承する旧カルタゴ帝国のチュニジアまで「光と希望のみち」の思いをつなげることができ、大変素晴らしい体験ができました。 

ビザンチン・キリスト教博物館、バルドー国立美術館、在ギリシャ日本国大使館、在チュニジア日本国大使館をはじめ、主催・共催およびご後援をいただいた各団体、東大寺、春日大社、奈良博物館、アテネ国立考古学博物館をはじめ、撮影のご協力をいただいた皆様に、心から厚く御礼を申し上げます。

これからも世界各地で世界巡回展「光と希望のみち」を通して、ライフワークとして、奈良を中心にシルクロードの遺産を受け継ぐ日本文化の1400年の深層、そしてそこから見えてくる未来への連帯と寛容へのメッセージを、発信させていただきたいと誓っております。 

「光と希望のみち」は、これからも続きます。
ぜひご一緒くださいませ。 

令和元年10月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ
Media Art League
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(文中敬称略)

伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.12 フランク・ロイド・ライトが受け継いだ日本建築のDNAを求めて

2019-05-02 23:52:26 | 東西文化の麗しき出合い

平成から令和に変わる時代の大きな節目を迎え、在シカゴ日本国総領事館広報文化センターにて「Edo/Tokyo — Seen through its Edifices(建物にみる江戸・東京)」展を4月15日から30日まで、在シカゴ日本国総領事館、日本カメラ財団およびメディアアートリーグにより、共催いたしました。

本年は、明治維新150周年の翌年、そして東京オリンピックの前年という狭間の年に当たることから、江戸から明治への移行期の東京をテーマにしました。これまで写真によって紹介される機会がほとんどなかった明治の草創期である1870年から1877年にかけて、日本との条約の交渉にあたっていたイタリア全権公使バルボラーニ伯爵 (Conte Raffaele Ulisse Barbolani [1818-1900]) が撮った写真を展示、紹介いたしました。


(伊藤直樹シカゴ日本国総領事の挨拶)


トークイベント

復活祭休暇の前日にあたる4月18日(木)には、スペシャルトークイベントを開催しました。当日は66名の招待客で賑わい、江戸から明治への東西文化の出合いを追体験いただきました。

同総領事館広報文化センターでは、2017年以来、半年に一度の割合で、展覧会を共催させていただいていますが、毎回、日本文化についての独自の洞察を紹介する関連レクチャーも、講師として担当しています。

今回は、江戸から明治へと大きな変革を受けながらも、1400年以来、受け継がれ進化し、モダニズムの伝統とともに、現代においても深化しつづける「日本建築のDNA」について、お話をさせていただきました。



(伊藤みろレクチャーの様子)


とりわけモダニズム建築の世界的な「聖地」の一つである、シカゴとの接点を探る意味で、フランク・ロイド・ライトの建築作品への影響を、日本建築の1400年の伝統の中から、あぶり出す試みを行わせていただきました。

実際、一般にはあまり知られていませんが、明治維新を契機に、日本の建築が西洋の様式を急激に学んでいく最中、まさに同時並行で、19世紀末以来、西洋でジャパネスクが印象派絵画に大きな影響を与えたように、西洋建築においても、日本の社寺や家屋に影響を受けた「逆の流れ」が急速に展開していたのです。

とりわけ、コロンバスの新大陸発見400年を記念したシカゴ万博(1893年)において建てられた日本パビリオン「鳳凰殿(Ho-o-Den) 」は、歴史主義様式の復古的な建築からの脱却を図ろうとしていたアメリカの建築界に、衝撃をもって迎えられました。それを代表するのがフランク・ロイド・ライトで、万博の翌年の1894年には、壁を作らない大きな平面を特徴とするプレーリースタイルが発表され、モダニズム建築運動の発端の一つとなりました。

もとより、シカゴ万博の鳳凰殿(日本パビリオン)は、宇治の平等院鳳凰堂をモデルにした建物でしたが、そこに結実された日本文化1400年の伝統、とりわけ柱と梁で作られた壁を作らない木構造、多重の屋根やひさしの意匠、寝殿造り様式に見られる、庭園を中心に蔀戸(格子)や妻戸(観音扉)を開けると、外部空間と内部空間が溶け合う空間設計が、西洋建築を根本的に変える要素として、受けとめられました。


(シカゴ万博「鳳凰殿(日本パビリオン)」1893年築、1946年焼失、出典: シカゴ美術館アーカイブ)

日本の建築は、仏教とともに渡来した隋・唐の様式をもとに、飛鳥・奈良時代に木質構造の仏教建築が花開きました。神仏集合の伝統とともに、平安〜鎌倉〜室町時代を経て、高度に深化した木造の寺院建築は、家屋建築においても、時代時代において、社会構造や生活様式の変化、精神性や美意識の発展とともに、日本独自の発展を遂げ、寝殿造り、書院造り、数寄屋造を生み出していきました。

そうした解説を行いながら、日本建築のDNAの究極の形を近世、とりわけ15世紀末〜16世紀以降の「接客空間」としての茶席、すなわち茶室に凝縮された表現主義的な小宇宙や有機建築の中に見出していくレクチャーとなりました。


(トーマス・ガウバッツ准教授の講義)

くレクチャーは、ノースウェスタン大学のトーマス・マルティン・ガウバッツ准教授による江戸庶民の生活空間についてでした。庶民の生活空間は明治維新後も変わらなかった点について、式亭三馬の「浮世床」を題材にとりながら、ユニークに紹介していただきました。

建築、音楽、身体におけるさまざまな東西の出合い

トークイベントの最後には、滝廉太郎の「荒城の月」をバレエとして仕立て、国際派バレリーナ春双が舞いました。芸術監督は私自身が務め、明治の文明開化の波の中で、過ぎ去る行く江戸を偲びながら、擬洋風スタイルの衣装をデザイン。明治の東西の出合いを身体を通して、しなやかに示すことができました。音楽は、Hagiが琴や波の音、白州を踏む音などの日本的な要素を使って、サウンドデザインを手がけました。


(バレエ「荒城の月」を踊る春双)

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「建物にみる江戸・東京」展は、昨年8月に日本カメラ財団JCIIギャラリー(東京)で始まり、シカゴで開催された後は、他の国や都市でも、展示ができたらと願っています。

イタリア公爵のまなざしで切り取られた江戸・東京の景観は、銀座大火(1872年)、関東大震災(1923年)に続く第二次世界大戦の東京空爆により、いまは残されていない往時の東京を捉え、建築史においても、類い稀なる「東西文化の出合い」を克明に伝えています。

明治時代以降、同時に逆方向で進んでいた東西二つの建築の相互影響を考えるとき、現在、日本の建築家が世界的に大活躍する土壌も、透けて見えてくる気がします。

末筆ながら、このたびの展覧会開催のためにご尽力いただいた多くの皆さまに、共催者を代表して、心から厚く御礼申し上げます。

令和元年年5月吉日

 伊藤みろ メディアアートリーグ代表
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 Text by Miro Ito / Photos by Media Art League. All Rights Reserved.

伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.11ーギリシャと日本を結ぶヘレニズムの華

2019-01-26 19:16:41 | 光と希望のみち

ビザンチン・キリスト教博物館

「光と希望のみち」展は、2016年5月にNY国連本部で始まり、7カ国8都市目の巡回先として、神話と東方教会の聖地であるギリシャへやってまいりました。

日希修好通商航海条約締結120周年記念事業キックオフ行事として、ビザンチン・キリスト教博物館で1月16日から始まりました(2月10日まで)。

開催場所のビザンチン・キリスト教博物館は、ギリシャ国会議事堂(旧王宮)やフランスやアメリカ、オーストリアなどの各国大使館、博物館が立ち並ぶアテネのメイン通り、ヴァシリシス・ソフィアス大通りにあります。

この博物館の二階ギャラリーにて、天平彫刻の最高傑作である東大寺の至宝を中心に、春日大社の舞楽面を加えた奈良の国宝・重要文化財46点が、写真作品として、ギリシャで初めて紹介されまています。もとより同博物館では、日本をテーマにした企画展は、1914年の創設以来、初めてのことだそうです。



聖地アテネの中の「平城京」

世界でも有数のキリスト教美術の専門博物館の二階に、日本の神仏混交の聖地である「奈良」がすっぽり入ってしまったような、奈良の神秘的かつ聖なる雰囲気が、厳かな静けさを湛えています。



"Road of Light and Hope", Byzantine and Christian Museum



とりわけ大仏さまの作品が掛けられた広間からは、アテネで一番高いリカヴィトスの丘上のアギオス・ヨルギオス教会が望まれ、神々を抱く天の玄関にいるような神妙な景観が開けています。



View from the terrace of the Byzantine and Christian Museum


アクロポリスの丘と双璧をなす、標高227mのリカヴィトスの丘は、カラスの凶報により、女神アテナが落とした岩が山となったといわれますが、ギリシャも、日本と同様、多神教による汎神観の脈絡が自然と共に、現代も息づいているように思えます。

女神アテナの岩山を眺めていると、山自体がご神体の奈良の三輪山を思い出します。頂上のヨルギオス教会は、元伊勢と呼ばれる檜原神社にも思えてきます。


ヘレニズム文化の華

もとより、仏像や仮面も、ギリシャの神々を喜ばす奉納像(アガルマ)を起源とすることから、天平彫刻に反映されたヘレニズム文化の影響を、古代の東西文化の交流の証として紹介する同展は、ギリシャへの「恩返し」のような趣旨を担っています。

ここには、古代ギリシャの神々も、イエスキリストも、展覧会の中の仏陀も天部も菩薩も、伎楽面も舞楽面も、清らかな空気に包まれて、清涼感と静粛を湛えて共存しているような、平和そのものの調和があることを感じさるを得ません。

この調和のとれた平衡状態を目指していくのが「光と希望のみち」展の伝えるメッセージであり、そのモデルは1400年前に「和」を唱えた聖徳太子に遡るものです。


Main entrance of the Byzantine and Christian Museum


アレクサンダー大王の東方遠征とともに、ヘレニズム文化が中央アジアへ伝搬し、仏像となって中央アジアからカシュガル、コータンまたはクチャ(〜トルファン)、敦煌、長安を通って奈良に伝えれらた「叡智」とは、こうした共栄共存の道に他なりません。

会場であるビザンチン・キリスト教博物館のアイカテリーニ・デラポルタ館長も、こうした共存の意義を発信するために、同博物館で、日本の仏像展を開きたかったそうです。物質的な世界の価値観では見えにくなってしまっているものの、宗教行事や宗教美術に結実されている共通の「光」があることを、このたびの展覧会で見せていきたいそうです。

東西文化の源流をつなぐヘレニズム文化の華麗な変遷を、ギリシャから奈良まで辿ることで、すべてが一つであり、皆つながっていること。皆それぞれがかけがえのない華であることを訴えていくのが、もとより「光と希望のみち」展の趣旨になり、それを奈良の世界遺産や国宝・重要文化財の写真や映像作品、講演会で見せていくものです。



His Excellency Ambassador of Japan to Greece, Mr. Yasuhiro Shimizu


先日14日の記念式典では、ビザンチン・キリスト教博物館のアイカテリーニ・デラポルタ館長、ギリシャ外務副大臣ゲオルゲ・カトロウガロス教授、清水康弘駐ギリシャ日本大使がご挨拶されましたが、ご挨拶の中で「光と希望のみち」展につきましても、「日本とギリシャの古代からのつながりを示す最高の展覧会」とのお褒めの言葉を頂戴いたしました。

それは、まさしく奈良の1400年の伝統力が培ってきた芸術の力、そしてシルクロードを経て、東西文化の融合の結果、見事に花開いた、日本独自のヘレニズムの華への賞賛にほかなりません。


1月29日(19時30〜21時)には、ビザンチン・キリスト教博物館での講演会も予定しています。詳細は、ビザンチン・キリスト教博物館のサイトをご参照くださいませ。

ギリシャ展の様子は、また第二弾をご報告したいと思います。

末筆ながら、この度の展覧会開催のために、ご尽力いただいた関係各位に、心から感謝を申し上げたいと存じます。

アテネより

2019年1月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ
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"Road of Light and Hope - Voyage of the Hellenism to Japan"
Byzantine and Christian Museum
Photographs and Text by Miro Ito

場所:Leoforos Vasilissis Sofias 22, Athina 106 75, Greece
期間: 16th January - 10 February, 2019
トークイベント:29th February, 2019 @19:30 - 21:00 (展覧会場内)
共催:Byzantine and Christian Museum、在ギリシャ日本大使館、日本カメラ財団、メディアアートリーグ
後援:日本ユネスコ協会連盟、奈良県ビジターズビューロー
撮影協力:東大寺、春日大社、奈良国立博物館
WEBサイト:http://www.byzantinemuseum.gr/en/ont>

「伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.10 地球という<いのち>を思いやる」

2018-12-04 05:13:07 | 光と希望のみち


共感の連鎖

災害や疫病、戦争や貧困という課題以外に、宗教や社会的な分断の進行、地球温暖化や環境汚染といった差し迫った問題は、もはや私たちを待ってはくれません。地球を一つの生命として捉え、いのちとして共感し合い、地球を守らなければならない時代がやってきました。

世界の未来に答えるために、思いやりを持って、行動すること_。私たち自身が問題の一部ならば、同時にわたしたちこそが、解決の一部なのです。私たちひとりひとりの地球への思いやりは、小さなさざ波にすぎないにしても、音叉のように、その波動を、世界全体に広げていけるのではないでしょうか。

大地に小さな石が存在しているように、宇宙に星が存在しています。石も星も、人も、動植物も、仲間としてお互いを補い合い、支え合っているのです。この世界観は、東西に共通する普遍性をもつものです。

「1片の木を割っても、私はそこにいる。一つの石を持ち上げても、そこに私を見出すであろう」
(イエスの言葉「トマス福音書」)

極小の塵から、極大の宇宙までを一体的に捉える、東西に共通する叡智こそが、「地球」といういのちへの思いやりのある、行動の規範だと考えるところです。


日墨外交関係樹立130周年記念事業「光と希望のみち:東大寺の国宝写真展」展
 メキシコ国立世界文化博物館にて開催(2018年11月8日から12月3日)


全ては「生き物」としてひとつである

さて、在外公館や国際交流基金からのお力添えにより、展覧会「光と希望のみち」(共催:在外公館、国際交流基金、メディアアートリーグ、日本カメラ財団ほか)にちなみ、日本国と諸外国の周年行事や文化機関において、大変光栄にも、スピーカーとして招かれる機会が増えてまいりました。

2年前のストラスブール欧州評議会でのスピーチからはじまり、トロント国際交流基金、シカゴ大学、リオデジャネイロ「日本月間」オープニングイベント、そして先月はメキシコシティへ_。テーマは、東洋の華厳思想、すなわち西洋の新プラトン主義と共通する、「すべては一つであり、一つはすべてである」ということ。そして「宇宙も、一つの<いきもの>であり、全てのうちに<共感>なる相互作用がある」(新プラトン主義)というものです。

奈良に残され、受け継がれているヘレニズム文化の影響を色濃く残す、日本の古代の有形・無形の世界遺産をテーマに、そうした東西間の<共感(シュンパティア/συμπαθεια)>を相互に喚起させるために、展覧会・映像上映およびレクチャー形式で、訴えていくものです。

1400年前に遡り、シルクロードを介して東西文化の源流をつなぐ傑出した国宝・重要文化財の写真作品を「証拠」として見せながら、私たちが「皆ひとつであり、すべてがつながっている」ことを伝える趣旨を担っています。


リオとメキシコシティでのスピーチ



日系移民110周年記念事業・リオデジャネイロ「日本月間」での「光と希望のみち」展オープニングスピーチ
 (2018年7月4日から29日、リオデジャネイロ郵便局文化センター)


本年7月には、ブラジル日系移民110周年を記念し、リオ・デ・ジャネイロで開催された「日本月間」での写真展「光と希望のみち」では、記念行事のオープンングでレクチャーを行い、映像上映もさせていただきました。行事の後には、列席されたアメリカ総領事から、<共感>の言葉をいただけたことが、大切な収穫となりました。またリオ州立大学での体験も、東西文化の交流史を地球規模で示していくことの重要性につき、確信を強めてくれました。日本月間には、3週間半の開催中に、6万2000人の訪問客がありました。

メキシコシティでは、日墨外交関係樹立130年を記念するイベントが、メキシコ国立世界博物館において開かれました。近年にない規模の大型日本文化紹介イベントが行われ、世界巡回展「光と希望のみち」も参加いたしました。

11月8日の記念式典では、桑名良輔メキシコ日本國公使、国際交流基金メキシコ日本文化センターの杉本直子所長に次ぎ、私もスピーチをさせていただきました。また翌9日には、大学生を中心に、国立世界文化博物館において、講演を行いました。展覧会は12月3日まで開かれましたが、<共感>の輪が、さらに地球規模で広がることを願う次第です。

世界巡回展「光と希望のみち」は、2016年5月にNY国連本部からスタートし、このたびのメキシコシティで6カ国7年目の展示を終えましたが、この後は来年1月にアテネへと巡回いたします(日希修好通商航海条約締結120周年記念事業)。

東大寺、春日大社、奈良国立博物館をはじめ、撮影にご協力いただいた関係者の皆さま、展覧会の巡回先でお力添えをくださった多くの皆さまに心から厚く御礼申し上げます。

東西、南北の交流の歴史をつむぐ出合いが連帯や寛容をうながし、<いのち>としての地球への思いやりを乗せて

2018年12月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ代表
Miro Ito, initiator of Media Art League
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「光と希望のみち」展関連レクチャーをメキシコ国立世界文化博物館にて開催(2018年11月9日)

伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.9 「隠し身のしるし」展:日本の1400年の奉納の歴史を探る、聖なるものへの旅

2018-11-05 07:46:25 | 隠し身のしるし
「隠し身のしるし」展、トロントからシカゴへ

「隠し身のしるし(Signs of the Intangible)」展が在シカゴ日本国総領事館広報文化センター(Consulate-General of Japanese in Chicago JIC Hall)で始まりました(11月28日まで)。

この展覧会は、私が10年前に行ったNY公立舞台芸術図書館(リンカーンセンター)での展覧会「Men at Dance – from Noh to Butoh」(能から舞踏へ)を継承しつつ、現在世界巡回中の「光と希望のみち」展の続編として、東大寺の天平彫刻の最高傑作や伎楽面、春日大社の舞楽面の写真作品を加えさせていただき、「日本の1400年の舞と武の心体景観」を焙り出す展覧会として、再構成したものです。

日本とカナダの修好90周年を記念事業として、本年5月にトロント日系文化会館においてキックオフとなり、シカゴへ巡回することになりました。11月13日(月)には、アーティストトーク&ショートムービーの上映会を実施いたします。大変光栄なことに、伊藤直樹総領事にも、ご挨拶をいただきます。

また伎楽をバレエとして復興させた「伎楽バレエ」(踊り手:春双)も、シカゴでは二度目の発表になりますが、トロント、リオ、そして11月8日のメキシコに続き、披露させていただく予定です(芸術監督:伊藤みろ)。

シカゴへお立ち寄りの際には、ぜひ足をお運びくださいませ。(※詳細は、ブログテキストの最後に記載させていただいておりますので、ご参照ください。)

美術の起源を探る旅

さて、この15年間、日本の1400年の芸能史を紐解く思いで、奈良を中心に、有形無形の世界遺産・国宝・重要文化財を撮影・取材させていただきながら、「祈りと奉納の系譜」を、探求してまいりました。

もとより美術の起源には、象徴表現がその大元にあります。原始時代においては、自然の力への崇拝として、狩猟や子孫繁栄への願いのしるしとして、洞窟や岩壁に形象が描かれてきました。宇宙にみなぎる不可視の力を見える形で視覚化させるために、イメージの創造という、文化の根幹である象徴表現が生まれ、祈りの儀式が起こり、神話が語られ、原始宗教が始まりました。

聖なるものを目指すイメージの創造は、記号や文字を生み出し、文明を萌芽させました。そして古代のイメージの創造における頂点ともいえる、エジプトやギリシャの神話の世界においては、現世と神々の世界の交流のために、崇高なる美の世界が追求されました。神の観念の擬人化が行われ、人体像や半人半獣像が作られ、現実と聖なる世界は、奉納や儀式という「場」で結びついてきたのです。

こうした古代ギリシャの奉納像の伝統は、アレクサンダー大王の東方遠征に伴い、西アジアや中央アジアへと伝えられ、仏像の起源となりました。さらに伎楽や舞楽などの仮面芸能も、ギリシャが発祥とされています。

この度の展覧会は、2020年の東京オリンピック開催に合わせて、日本の1400年の有形・無形文化遺産の伝統の豊かさとシルクロードとのつながりを訴え、東西・南北の世界の心の連帯を訴求していくためのものです。

こうした趣旨のもと、仏像などの奉納像から伎楽面や舞楽面などの仮面、そして能や古武道、果ては舞踏、現代舞踊まで、私が25年以上、撮影しているテーマに他ならず、同展「隠し身のしるし」の根幹にあるテーマです。

トロントに次ぐ、シカゴ展では、名門私立大であるノースウェスタン大学でも、「隠し身のしるし」のテーマについて、11月16日に特別講義を行う予定です。

また2019年には、リオデジャネイロ国立歴史博物館へも、開催の提案中ですが、世界を東西南北へと縦断する、巡回を予定しています。

お力添えをいただいたご関係の皆様に、主催・共催者を代表して、厚く御礼申し上げます。

2018年11月吉日
伊藤みろ メディアアートリーグ代表
www.mediaartleague.org


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Exhibition: Signs of the Intangible
開催場所:在シカゴ日本国総領事館広報文化センター
Consulate-General of Japanese in Chicago JIC Hall / 737 N. Michigan Ave. Suite 1000, Chicago, IL 60611
http://www.chicago.us.emb-japan.go.jp

開催期間:2018年11月1日から11月28日

開催時間:午前9:00から午後5:00(月・火・木・金)
午前9:00から午後6:00(水)/土・日・祝日は休み
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Artist Talk & Short Film Screening by Miro Ito
イベント日時:2018年11月13日(午後6:00)
パフォーマンス:Gigaku Ballet by Shunso
(Music by Sukeyasu Shiba / Artistic Direction by Miro Ito)
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共催:メディアアートリーグ、一般財団法人 日本カメラ財団
助成:一般社団法人 東京倶楽部
後援:公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟、奈良県ビジターズビューロー

写真&映像作品、文章:伊藤みろ(メディアアートリーグ)
英語編集:Andreas Boettcher (Media Art League, Toronto)

撮影協力(敬称略):東大寺、春日大社、奈良国立博物館
金春穂高(金春流シテ方能楽師)、武田志房・友志・文志(観世流シテ方能楽師)、
室伏鴻(舞踏家)、滑川五郎(舞踏家)、Sal Vanilla(舞踏ユニット)、春双(舞踊家)

音楽協力:芝祐靖

その他協力:キャノンマーケティングジャパン、イイノメディアプロ(機材協力)、Canon USA(プリント協賛)、佐河太心(掛け軸装丁)、新井工作所(額協賛)ほか

伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.8「トロントからリオへ:平和への祈りと巨像の道」

2018-08-20 23:48:03 | 光と希望のみち

トロントからリオへー平和への祈りと巨像の道

残暑お見舞申し上げます。

本年は、長崎の平和祈念式典に、国連のグテレス事務総長が初めて参列し、核なき世界平和への祈りが、国境を越えてさらに広がることが願われました。

私自身、マザーテレサが毎日唱えていたという「フランシスコの平和への祈り」を厳かに反芻しました。自らを「平和の道具」とならしめるための、祈りのことばです。

主よ、わたしをあなたの平和の道具としてください。

憎しみのある所に、愛を置かせてください。

侮辱のある所に、許しを置かせてください。

分裂のある所に、和合を置かせてください。

誤りのある所に、真実を置かせてください。

疑いのある所に、信頼を置かせてください。

絶望のある所に、希望を置かせてください。

闇のある所に、あなたの光を置かせてください。

悲しみのある所に、喜びを置かせてください。

… … … … … … … …

(以下続く[*])

さて、6月のトロント日系文化会館でキックオフとなった新しい世界巡回展「隠し身のしるし (Signs of the Intangible) 」に続き、7月には外務省の招待により「ブラジル日系移民110周年記念事業」のため、トロントからリオデジャネイロを訪問しました。

中央郵便局の歴史的な建物が文化センターとなった「リオ郵便局文化センター (Centro Cultural Correios) 」を会場に、「日本月間 (Mês do Japão)」が行われ、私は、5カ国6都市目の展示となった世界巡回展「光と希望のみち(Road of Light and Hope) 」を開催させていただきました(共催:リオデジャネイロ日本国総領事館、国際交流基金、日伯文化協会、メディアアートリーグ、日本カメラ財団、後援:郵便局文化センター、110周年記念委員会、日本ユネスコ協会連盟、奈良県ビジターズビューロー)。

リオの「日本月間」は、ブラジル三大紙聞の一つ「Segundo Caderno」紙で大きく取り上げられ、オープニングイベントには、合計300人くらいの方々にお集まりいただきました。

東大寺や春日大社、奈良国立博物館の特別協力のもと、7年がかりで撮り下ろした極めて貴重な奈良の国宝・重要文化財を紹介する写真作品シリーズを前に、星野芳隆総領事、日伯文化協会会長、郵便文化センター館長からご挨拶をいただきました。その後、私のショートレクチャー&映像上映に加え、私自身が芸術監督を務め、伎楽をバレエとして復活させた「伎楽バレエ」 (踊り手:春双) も、会場に華を添えてくれました。

このイベント「日本月間(Mês do Japão)」へは、7月4日から29日までの3週間半の間に、6万2000人が訪れてくださいました。



二つの巨像

さてリオデジャネイロといえば、標高710mの「コルコバードの丘 (Morro do Corcovado)」の上に、両手を広げて聳え立つ「キリスト像 (Cristo Redentor)」が有名です。

奈良の大仏さまが”復興”のシンボルならば、リオのキリスト像は”独立”のシンボルです。歴史を紐解くと、かつての宗主国ポルトガルは、ナポレオンの侵攻により1808年から14年間、ブラジルのリオデジャネイロに遷都していた時期がありました。その後、ナポレオンが倒れたのち、リスボンに国王が戻り、その余波の中で1822年、ブラジルが独立を果たしました。その独立100年を機に工事が始まり、1931年に高さ38メートルのキリスト像が建てられました。

その威容は、リオの人々の心の拠り所であり、世界中の訪問客で溢れかえっています。もとより巨像には、奈良の大仏さまと同様、宗教の垣根を越えて、人々の心をつなぐ役割があるように思われます。祈りにおいて、皆が一つになれるからです。

祈りの内容は十人十色ながら、冒頭の「フランシスコの平和への祈り」は、「慰められるよりも慰め、理解されるより理解し、愛されるよりも愛することを求めさせてください」と続きます。そして結句では「与えることで人は受け取り、忘れられることで人は見出し、許すことで人は許され、死ぬことで人は永遠の命に復活する」と結ばれます[*] 。

まさに「愛されるよりも愛すること」「許すことで許されること」にこそ、平和への道があるように思います。そして言葉の上だけではなく、人々の行為がその種となることで、キリストや仏陀の心とも一体となれるように思うのです。

巨像には、自らが平和の種となれることを示し、光となれること(自灯明)へと導く道としての力があるように思われます。



巨像の道(グレイトブッダロード)

さて、リオ州立大学での特別講義のテーマは、昨年のシカゴ大学での講義と同様、盧舎那大仏が伝来した「シルクロード叡智の道」についてでした。

アジアの巨像を含む石窟仏教寺院の伝統は、1世紀頃のバーミアン(バクトリア地方)からカシュガルへと抜け、タクラマカン砂漠とタリム盆地の上方を西へ進む天山南路を、クチャ(キジル) 経由で、トルファンに至り、敦煌、雲崗、龍門において開花しました。その西域からの伝統が、唐王朝のときに奈良へと繋がった道を「叡智の道」として紹介しました。

もとより大仏さま造立の背景にある叡智とは、華厳の教えが説く「皆がひとつ」であり、「誰もがかけがえのない華である」というものです。その華厳の心を、「日本月間」を飾るオープニングのレクチャーにおいて、大仏さまや伎楽面の映像作品を通して訴えさせていただきました。イラン出身の移住者の女性からは、「皆がひとつであり、それぞれが多様な華であること」はブラジルの心と同じであり、大いに賛同いただきました。

またリオ州立大学での講義は、ブラジルの若者たちに、予想以上に支持される好結果となりました。1400年前の多文化主義を体現したかのような東大寺の伎楽面・春日大社の舞楽面は、500年以上かけて、ブラジル文化に花開いた多民族主義と重なり合う部分があるためか、1時間半の講義の後は、1時間以上も学生たちと懇談をしました。



聖徳太子が思いみた「和」の心を体現する伎楽面や舞楽面。そして聖武天皇が生きとしいけるものすべての幸せを願って、延べ260万人の国民とともに造立した大仏さま。この夏は、国策として多様性と包容性を掲げるカナダからブラジルへ渡航し、二つの多文化主義の国々で、実に多くの方々にご賛同いただいた体験が、かけがえのない収穫となりました。

この後「光と希望のみち」展は、「日墨外交関係樹立130周年」を記念してメキシコシティを訪れる予定です。

奈良の人類遺産の普遍的な訴求力を通して、平和への祈りの道であり、叡智の道を、引き続き世界に発信していきたいと改めて強く誓う次第です。

さまざまなご支援を与えてくださった関係各位の皆様のご尽力には、心から感謝申し上げ、 平和への祈りを込めて、残暑のご挨拶に代えさせていただきます。

2017年8月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ
Media Art League
East Meets West, North Meets South through " Media=Art+Message"
http://mediaartleague.org

Text by Miro Ito/Media Art League. All Rights Reserved.
添付画像:Mês do Japãoフライヤー+盧舎那大仏を「日本の復興の象徴」として紹介するSegundo Caderno紙 (2018.7.4)

注[*] Wikipediaより抜粋

伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.7 「明治150年 世界機運に飛び乗った幕末・明治遣米使節団」

2018-04-23 07:16:46 | 世界発日本の精神文化

明治150年を記念して、在シカゴ日本国総領事館広報文化センターにて、「The LAST of the SAMURAI」展が4月10日から開催されています。幕末・明治にアメリカへ送られた使節団、「最後の侍たち」の肖像写真を中心に、アメリカでの歓迎の様子を紹介する49点の写真展です。

主催は、日本カメラ財団、ならびにシカゴ総領事館と日本文化会館(Japan Cultural Center)、共催はメディアアートリーグ。4月25日までは、同総領事館で開催され、その後、5月5日から13日までは、日本文化会館にて開催されます。


4月10日のオープン二ングの際には、伊藤直樹総領事から、シカゴと岩倉使節団とのご縁を含む、機知に富んだ素晴らしいご挨拶を頂戴いたしました。プロデューサーとして、私もショートレクチャーを行う機会に恵まれ、その後にノースウェスタン大学トーマス・ガウバッツ准教授による、江戸と明治の風俗についてのショートレクチャーが続き、最後に舞踊家・新井春双の居合舞「散り際の美学」(プロデュース:メディアアートリーグ、音楽;Hagi)を披瀝させていただき、いずれも大きな反響をいただきました。


世界の激動の100年

私の講演のテーマは、幕末・明治の二つの遣米使節団の背景と目的についてでした。同じレクチャーは、シカゴの名門私立大学ノースウェスタン大学でも、ガウバッツ准教授のクラスにて、行わせていただきました。

徳川幕府による遣米使節団は、万延元年にペリー来航(1853年)の翌年に結ばれた日米和親条約の後、日米修好通商条約批准書交換のために、1860年、77人の侍たちがアメリカに派遣されたミッションです。正史・新見正興を団長とする77人の侍の特使に加え、司令官・木村喜毅(芥舟)、船長・勝海舟が率いる96人が、護衛艦・咸臨丸で随行しました。咸臨丸には、福沢諭吉や通訳・ジョン(中浜)万次郎も同乗していました。

一行は、ワシントンとニューヨーク、フィラデルフィアとボストンを訪れ、各地で熱烈な歓迎を受けました。「ニューヨーク・ヘラルド」紙が「星からの珍客」と評し、また16歳の見習い通詞の立石斧次郎が「トミー」としてアメリカの婦人に大人気となり、「トミーポルカ」という歌が流行するなど、その後の侍伝説を生み出していきます。このトミーは、後に長野桂次郎として、岩倉使節団にも随行しました。

時代的には、1860年のアメリカは、アブラハム・リンカーンが大統領に当選した年でした。そして翌61~65年には南北戦争が勃発。大きな時代の変革の波が、世界に押し寄せていました。

ヨーロッパでは「1848年革命」が起こり、君主制国家に抵抗する自由主義・ ナショナリズムの台頭が連鎖的に発生したことで、ウィーン体制が崩壊し、以降1945年までの「激動の100年」が始まっていました。その後の53~56年のクリミア戦争をきっかけに、ロシアのプチャーチンが、ペリーに続いて日本の開国を求めて1854年に長崎に来航。ロシアとイギリスが長崎で接近したことをきっかけに、徳川幕府と英国は、秘密裏に外交交渉を始めることになりました。

一方、ペリーが日本との和親条約を、最初に単独で締結できたのは、ヨーロッパ諸国が当事者としてクリミア戦争に参戦していたため、太平洋地域に優先的に関心を向けられなかった、という裏事情がありました。

世界の激動の波に呑まれるように、日本においても、1853年から1945年までは、激動の100年となりました。大政奉還を原動力に、富国強兵を国策として、「脱亜入欧」を掲げ、「文明開化」のスローガンの下、西洋先進諸国への仲間入りを果たすべく、一気に近代化・工業化への階段を駆け上っていきました。

開国後は、日本の近隣諸国との関係も変化し、それが二度の世界大戦の入り口となりました。そして第二次世界大戦後は、日本は民主国家として再生され、世界的には、植民地の独立をもたらし、帝国主義が終焉しました。

 


副産物としての美術外交


一方、明治維新では、あまりにも短い間に、急激な西洋化が進められたことで、飛鳥時代以来、江戸時代までの1200年以上続いた神仏混交の伝統は、廃仏毀釈政策のもとで神仏分離がなされ、多くの仏像や仏具、仏教行事が排除され始めました。その結果、1897年の古社寺保存法の制定、1929年の国宝保存法までの間、仏像や仏画から、絵巻物、水墨画、琳派、風俗画や浮世絵版画まで、大量の秘宝が海外に流失しました。

これらの貴重な文化財は、今日、ワシントンのフリア美術館やボストン美術館、NYのメトロポリタン美術館、大英博物館などで鑑賞することができます。ちなみにシカゴ美術館にも、全米一といわれる浮世絵版画の大コレクションが収蔵されています。

これらのコレクションにより、その後、日本美術の優れた研究者が数多く生まれ、日本文化への理解が深められたことは、ナショナリズムを超えた世界的な宝物の伝搬と保存、研究という視点からは、別の意義が見えてきます。明治維新をきっかけに、国境を越えた日本の優れた伝統芸術による「美術外交」が、その後の日本文化の深い理解への道を開いたものと考えられるからです。



シカゴとのご縁

さて、使節団とシカゴとのご縁は、明治維新後に岩倉使節団が訪問したことでした。

一行は、1871年12月13日に横浜を出発、22日かけてサンフランシスコに到着。翌1月31日にサンフランシスコからサクラメントへ赴き、そこからシエラ・ネバタ山脈を越える鉄道の旅を経て、ユタ州ソルトレイクシティへ到達。その後、ワイオミング準州でロッキー山脈を越え、ネブラスカ州オマハまでの2900キロの鉄道の旅を遂行しました。アイオワ州でシカゴ行きの列車に乗り換えた後は、どこまでも広大なトウモロコシ畑の続く行程を進み、イリノイ州に入ってシカゴに至るまで、オマハからさらに816キロを鉄道で走破しました。

シカゴへの到着は2月27日で、前年10月のシカゴ大火災でまだ被災の跡が顕著に見られたところへ、正史・岩倉具視が5000ドルを寄付したといわれています(『米欧回覧実記』(久米邦武編著、水澤周訳・注、慶應義塾大学出版会)。一行は、当時世界最高水準と言われたミシガン湖畔の揚水装置や水道システム、最新式の消防機械、二箇所の小学校と商品取引所を視察しました。

とりわけ、シカゴとのご縁を語る上でのユニークなエピソードは、唯一の和装姿、「小道服に髷」の公家装束を纏った岩倉正史が髷をシカゴで断髪したことでした。一行は、丸一日をシカゴで過ごし、夜にはシカゴを発って、首都ワシントンを目指し、さらなる1130キロの旅に向かいました。

 

遣米使節団からのメッセージ

今回、「The Last of the SAMURAI」展をシカゴで開催できたことは、二度の世界大戦を経た激動の100年における怒涛のような体験にも拘わらず、アメリカとの長い友好の歴史を振り返り、未来の世代に向けて、相互理解を深めていくために、大変良い機会になったことと願っています。

かつてシカゴ・トリビューン紙は、岩倉使節団について、以下のような記事を掲載しました。
「日本は未開国の中で最も文明化されており、しかもヨーロッパのどの国よりも古い歴史を持っている。われわれの祖先がまだ未開で裸で暮らしていた頃から、日本には政府も法律も学校も文学もあった」(泉三郎著『堂々たる日本人』祥伝社黄金文庫より)。

すなわち民族や文化、宗教や風俗の違いを越えて、人としての威厳、異質なものを尊重する寛容さ、「仁義礼信智」を根幹に置くサムライ精神がアメリカの人々にも、伝わったのだと思います。

岩倉使節団は、その後、ホワイトハウスでジェームズ・ブキャナン第15代大統領に国書を奉呈した際、新見正使、村垣副使、小栗監察は狩衣に太刀を佩く、公家や大名の烏帽子姿でした。4頭立ての馬車に乗ってはいたものの、槍持ちやお供を従えた大名行列さながらの一行を見ようと、沿道や通り沿いの家々の窓から屋根上まで、大勢の人々が群がっていました。その熱狂ぶりは、同写真展でもご覧いただけます。

ハリー条約を改正する目的は遂げられなかったものの、150年後にこの歴史を振り返るとき、分断化の進むアメリカ社会において、異質なものを尊重し、互いに信頼し合い、人としての尊厳を大切にし合うことにこそ、幕末・明治の使節団から時空を超えた意義が読み取れるのです。

これこそ幕末・明治使節団による外交の、今日的なメッセージであり、それが「写真外交」となって、次世代への興味を深めるひとつのきっかけとなることを願ってやみません。その意味で「明治150年」にちなんだシカゴでの「The LAST of the SAMURAI」展は、大成功といえる文化事業となりました。

主催者日本カメラ財団、共催者メディアアートリーグを代表して、ご関係の皆様に厚く御礼申し上げます。

平成30年4月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ
Media Art League
East Meets West through "Media = Art + Message"
http://mediaartleague.org

Text by Miro Ito /Media Art League. Photographs: JCII Collection. All Rights Reserved


※関連リンク:
在シカゴ日本国総領事館広報文化センター (4月10日から25日)
http://www.chicago.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/jic_main_j.html

在シカゴ日本国総領事館Facebook
https://www.facebook.com/jic.chicago/

日本文化会館(5月5日から13日)
https://japaneseculturecenter.com

伊藤みろ発:メディア=アート+メッセージ No.6「アート、普遍性を生み出す力」

2017-10-08 05:54:28 | 光と希望のみち

「光と希望のみち:東大寺の国宝写真展」は、次はシカゴで11月1日から始まります。
在シカゴ日本国総領事館開設120周年を記念し、同館日本広報文化センターホール(JICホール)にて、11月28日まで開催されます。前回のトロント展と同様、日本の国宝中の国宝である東大寺の天平彫刻の逸品をはじめ、41点を写真掛け軸でご紹介いたします。

かつてシカゴ美術館では、1986年に東大寺展が開催されました。以来、30年が経過しましたが、東大寺の1300年の宝物は、時空を超え、いつの時代にも、ご覧になる方々に希望の光を発するはずです。その光とは、普遍性に向かって、結集された心の力といえるものです。

天変地異が相次ぎ、ある意味で現代と似た苦難の時代に、述べ260万人の国民が一丸となって完成された盧舎那仏の造立の史実に見られるように、私たちが一つになれるということ。さらに二度も戦火に被災しながらも、鎌倉・江戸期の二度に亘る、大仏さまの奇跡的な再建・復興力を上げることができます。

この普遍性に向かう力については、東大寺の国宝写真展開催にちなみ、シカゴの二つの大学での講演のテーマにしたいと考えています。

まず、名門シカゴ大学でのワークショップでは、Visual Materialとその背景にあるPerspective(哲学や歴史、創作の動機やメッセージなどの視点)について、講義形式で説明します。これまで制作した三つのショートムービーを紹介しながら、現代という時代において、アートが1300年の時を超えて訴求しうる「普遍性」について、語りたいと思います。


普遍性とは何か

もとより普遍性とは、すべてのものに通じ合う特質のことであり、姿形が違っても、人が平等であるという価値の根幹にあるものです。すなわち「普遍性=ユニバーサリティ」とは、「宇宙=ユニバース」を語源とするように、「すべてがつながっている」という宇宙の法則と通底するものです。

海のシルクロード諸国の宮廷芸能を結ぶ1500年の歴史をもつ舞楽、オアシスの路を交易したゾグドの王をはじめ、呉国の王や崑崙、迦楼羅など、14種類のキャラクターが登場する1400年前の伎楽、さらに1300年前の盧舎那仏について、「すべてのつながり」と「それぞれがかけがえのない華である」という、多様性を許容する華厳の哲学から、ご紹介したいと思います。

同様に、19世紀末に創立されたアメリカ最大のカトリック系の私立大学であるデポール大学でも、仏教美術を勉強する学生を対象に、こうした点を中心に、東大寺の美術品について、お話をさせていただく予定です。


米モダニズム運動の聖地

さてシカゴは、建築やデザインをはじめ、写真の世界において、アメリカのモダニズム芸術を牽引してきた場所です。ナチスの弾圧によって1933年に閉鎖されたドイツの国立総合造形学校「バウハウス」から、写真家・画家・デザイナーのラースロー・モホリ=ナジ等がシカゴに移り住み、「ニューバウハウス(後にイリノイ工科大に吸収)」を設立しました。建築家のミース・ファン・デル・ローエも、シカゴに渡ってイリノイ工科大学の主任教授となりました。

もとよりバウハウスは、1920年代のドイツほか、ロシアやハンガリー、チェコなどの東欧諸国における社会主義革命運動の最中、「アートが社会を変える」という気概を担っていました。写真においては「構成」「運動」「光」をテーマに、果敢なる造形的な実験を行いました。建築においては、数寄屋造や書院造を範にしたとされる、合理的で機能主義的な建築様式の確立を目指したバウハウスは、日本伝統文化との接点も、見出すことができます。

一方、バウハウスのもう一つの思想的な背骨とされたのは、神秘主義でした。神秘主義とは、宇宙の根源なるものとの、内的な合一を直接体験する志向性をもつ、宗教・哲学・芸術上の態度ですが、宇宙の根本との一体化を目指す禅とも相通じるものがあります。

それでは「アートが世界を変える」という1920年代のモダニズム運動の命題についてですが、アートが世界を変えうるとしたら、それこそ、まさに「普遍性」というメッセージが鍵になるのだと信じるところです。


ユニーバーサル・ハート&マインド

奇しくも「ユニバーサル・スペース」という、建築の多くの機能を大空間の中に許容するコンセプトを示したのは、モダニズム建築の三代巨匠の一人、ミース・ファン・デル・ローエでした。一方現代では、障害や能力の度合いに拘わらず、万人が利用できる設計に配慮する「ユニバーサル・デザイン」という考え方があります。

同様に、仏教はすべての人が多様であり、あらゆる人々の差異を許容するという意味で、「精神のユニーバサリティ」であるといえます。個々の人々を分断ではなく、調和へと向かわせる心の教えであり、解脱を目指す、すべての人のためのものであるという意味で、普遍性を持っています。

東大寺の国宝に話を戻しますと、二度の復興を遂げた盧舎那大仏に見られるように、万人のためのものであるがゆえに、壊されても壊されても、時代を超えてなおかつ蘇り、人々の心の力を結集させ、統合に向かってつながる精神を芽生えさせてきました。それは、まさに普遍性という力の生み出す「奇跡」そのものなのだと思います。

もちろん差異を許容するユニーバーサルなハート&マインドは、本来、どの宗教にもみられるのではないでしょうか。シカゴの若いアメリカの学生の方々とは、人種間・宗教間の分断の進む現在のアメリカであるからこそ、そうしたテーマについて、共に考えていきたいと願っています。

ドイツバウハウスの流れをくむ、アメリカのモダンアートの「聖地」において、世界的な傑作である天平彫刻に集約された、東大寺と華厳思想のユニバーサリティについて語らせていただくには、まさに相応しい機会であるように思われます。そして、そのことで東西・南北間の相互理解にささやかながら貢献できるなら、大変幸せに思います。

シカゴにお出かけの際には、ぜひ展覧会まで足をお運びくださいますようにお願いいたします。
※詳細は、下記メディアアートリーグサイトや開催場所のリンク先をご参照くださいませ。

2017年10月吉日

伊藤みろ メディアアートリーグ
公式サイト:http://mediaartleague.org

開催場所のリンク先:

在シカゴ日本国総領事館広報文化センター
http://www.chicago.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/jic_main_j.html

シカゴ大学 University of Chicago - Visual and Material Perspectives on East Asia
https://voices.uchicago.edu/vmpea/

デポール大学 (De Paul University)
https://www.depaul.edu