走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

看護師の数 続き

2021年04月29日 | 仕事
先日のこちらのブログ中の私の疑問を調べてくださった方がおられたので、ここでシェアします。

時間をかけて丁寧にまとめて頂き感謝します。

ただ今、英論文を書いている私。大学院時代の論文のルールのノートを探していたら大学院時代の授業の課題の論文の(初期の頃)教授のコメントが出てきました。懐かしい〜とパラパラ見ていたら、「ステイトメントをする時にはそれを確固たるものにするために必ずリファレンスをつけるように」とコメントを見つけました。そうそう、そうだよね〜と思っていたところに、この調査結果をもらい、あまりのタイミングの良さに猛省に至りました(笑

数字はとても正直です。しかし扱いによってはマニピュレーション(操作)できるともいわれます。統計の論文をクリティークする時には数字の扱い、デザインを考えると筆者の意図が見えてくることがあります。数字を鵜呑みのするのではなくフォレストさんのように深く入り込むってとても大切なんです。

では、フォレストさんのレポートを。

いつもブログを楽しく拝見させて頂いております。
簡単に調べられる統計の数字だろうと思い調べてみました。
「簡単に調べられる数字」のはずが、、、調べ始めたら芋づる式で色々と調べ何時間も時間が掛かってしまいました。せっかくなので共有させて頂きますね。
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Q.1 OECDの日本看護師数は 看護師免許保持者数か? 准看護師も含まれる数か?またカナダ看護師数は准看護師数を含まないのか。
A.1 OECDが利用している日本の数字は「准看護師が含まれている」数字で、免許取得数ではなく「現在就労中」の数でした。
   そしてOECDのカナダの看護師数は、LPNs(准看護師)を含んだ数でも含まない数でもなく、両者のほぼ中間値の数でした。
 
<カナダについて>
【OECD値】2018年 9.95人/1,000人 と 人口37,074,562人から
  カナダの推定看護師数 2018年 →約37万人 (計算式37,074,562人×9.95/1000= 368,892人)
それに対し
【カナダの実際の看護師数】
看護師数 2018年 LPNs含む 431,769人   LPNs含まず 309,169人
 内訳:RNs(看護師)       303,146人(高度実践看護師(NPs)5,697人含む)
LPNs(准看護師)    122,600人
RPNs(精神科看護師) 6,023人
出典:https://www.cihi.ca/sites/default/files/document/regulated-nurses-2018-report-en-web.pdf
 
従ってOECDのカナダのデータは LPNsを含む/含まない のほぼ平均値という値でした。
 
<日本について>
【OECD値】 2018年  11.76人/1,000人 と 人口 1,265億人 から
  日本の推定看護師数 2018年 →約150万人 (計算式1,265億×11.76÷1,000 =1,487,640)
 
【日本の実施の看護師数】
厚生労働省から
「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
  1 就業保健師・助産師・看護師・准看護師 」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/
というのが出ていて、そこから
「就業中」の 看護師  121.9万人
       准看護師   30.4万人
         計    152.3万人  とOECDの約150万人と一致しました。
 
なお、この日本の統計の人数の定義を確認しようと思い、
「衛生行政報告例の概要 」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/dl/gaiyo.pdf
を確認すると
~~~~~~~
「6 利用上の注意
(1) 本概況は、年度報・隔年報報告のうち、隔年報で把握した以下に掲げる就業医療関係者(免許を取得している者のうち就業している者)等について、就業地の都道府県知事に届出のあった数値等を取りまとめたものである。」
~~~~~~~
 
とあるので、「公的に医療機関から知事へ報告した就業者数」つまり「免許取得者数ではなく実労働者数」とみて問題なさそうです。
 
さらに
厚生労働省:第1回看護職員需給見通しに関する検討会 平成26年12月1日 (つまり2014年)
の資料でも2012年時点のデータとして 就業者数154万人、新規資格取得者数5.1万人、潜在看護師71万人とありました。 OECD値はこの就業者数154万人はとほぼ同じになります。





出典:厚生労働省:第1回看護職員需給見通しに関する検討会 平成26年12月1日(2014年)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000072895.pdf
 
従って、OECD統計の日本の看護師数は潜在看護師が除かれた就労中の看護師数と見て問題なさそうです。
 
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(追記)
上記を調べる中で ブログに挙げられていた疑問点に対する回答を偶然見つけたのでシェアします。
 
野々内さんが以下に指摘されていたことをいくつかに分けて示していきます。
文科省やその他のサイトで看護学校や大学の看護学科の定員数と入学状況を提示しているものはありますが、①「実際卒業した人数はどれぐらいか、把握しているのでしょうか?」これらは定員が必ず埋まっていて、全員が卒業しているというのが前提で作られたデータです(補足1)。しかし実際、定員割れするところもあるし、落第してそのまま辞めてしまう人もいます(補足2)。もちろんそれはとても小さな数値であまり関係ないものですが、それでも現状把握には大切になります。それに免許を持っても必ず看護師として就職するとは限りません(補足3)。
 
補足1) 
 →Q.2  OECDのデータは 入学者数を元にして算出されたデータではないか?
  A.2  否。Q1・A1 で 述べたように、就労中看護師数を元に計算されており、潜在看護師の数は除かれている。
 
①と補足2)
→Q3 卒業者数と入学者数を把握しているのか
 A3 把握している。ただし個別の学校ではなく、「国立大学法人、医療法人、学校法人」などと設置主体の属性でまとめて、公的統計データが発表されている。
 
厚労省「看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」の「令和2年度(2020年) 卒業」という調査結果に 入学者数 卒業者数が載っています。統計のエクセルデータが分割されていて、見にくかったので自分で簡単にまとめて「まとめ表1」にしました。
 
入学者数 65,636人 に対し 卒業者数  59,248人 で 卒業率 90% でした。
看護師の教育課程で約10%の人が卒業できていません。恐らく落第・退学などと思われます。






出典: 厚労省「看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」の「令和2年度(2020年) 卒業」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450141&tstat=000001022606
 
補足3)
→Q4 免許を取得後、どのくらい看護師として就職しているのかを把握しているのか?
 A4 把握している。ただし、個Q3/A3の統計同様に個別の学校ごとではなく、「国立大学法人、医療法人、学校法人」などと設置主体の属性でまとめて、公的統計データが発表されている。
   しかし、その中身について考察されたものはデータセットとして出されていない。
 
 厚労省「看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」の「令和2年度(2020年) 卒業」  のデータの個別シートにおいて、「看護師として就業」「進学」「その他」と「看護師以外」として就職先を区別して把握しています。
 
補足2)
→Q4 定員割れについて把握しているのか?
 Q4  把握している。ただし、個別の学校ではなく、国立大学法人、医療法人、学校法人」などと設置主体の属性で1つのデータとして、公的統計データが発表されいる。
 
定員割れについては 同統計の「定員」「入学」という統計分類シートがあり「統計上、把握はしている」ようです。
 
せっかくなので まとめ表2 に定員 入学者数をまとめてみました。
日本の看護師になるルートが複数あって分かりにくいのですが、今回まとめてみて
(個々の学校ではなく) 属性全体として定員を満たせているのは  大学と短大しかない とのことです。





出典: 厚労省「看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」の「令和2年度(2020年) 入学」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450141&tstat=000001022606&cycle=8&tclass1=000001146308&tclass2=000001146310&tclass3val=0  
 
 
なお「看護大学 定員割れ」でネット検索したら、直近の2021年3月に国立大学の大分大学医学部看護学科で定員割れがあったようです。
 
出典:大分合同新聞(2021/03/11 03:00.) 大分大、看護学科で定員割れ 統合後初めて、追加募集へ
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2021/03/11/JD0060065517
 
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今回調べてみて思ったのですが、統計値としてある程度は公表されていましたが、
その統計調査結果を解析しやすいデータセットとしては公表されていませんでした。
せっかく統計調査されていても上手く活かされていないのではないかという印象を持ちました。
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以上になります。
 

いかがでしたでしょうか?フォレストさんの最後のコメントに同意をします。前回のブログで言いたかったのはデータシェアリング、情報を共有する社会。諸外国ではデーターを公表しそれを活かすために使い、誰でもダウンロードできるようになっています。日本はそこが進んでいないから、データからの改革が進まない、これが言いたかったのです。

でも私には宿題ができた。カナダの数字はどこから?暇な時に見てみよう〜


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