日本人の平均寿命が年々伸びて「人生100年時代」と言われる中、年齢が高い人同士で遺産が受け渡される「老老相続」が増えていると、昨年10月23日の日本経済新聞が伝えています。(『増える「老老相続」 相続人の半数が還暦以上に』)
内閣府の調査によると、2022年時点で相続人の半数超が還暦以上だった由。具体的には、遺産を相続する人のうち60歳以上の割合は52.1%に達し、現役世代である50歳代は27.0%、49歳以下は20.6%だったということです。
60歳になって退職金が入り、大手企業に勤めていれば厚生年金のほかに企業年金も入ってくる。そこに(予定外の)親の遺産が入ってきても、定年を迎え子育ても終わった年齢では使うものも限られている。かくして、財産は定期預金に積まれたまま、本人は財産を使うこともなく80代で亡くなっていくのでしょう。
一方、同じ時代を生きる若い世代は、お金がなくて苦しい生活を強いられている。これは、社会構造的に見ても何とも「もったいない」というか、健全な状態とはいえません。こうして「デッドストック」と化してしまっている高齢者のお金を、世の中に還流させるにはどうしたらよいものか。
少し前の記事にはなりますが、メディアなどで活躍する投資家の「ホリエモン」こと堀江貴文氏が、情報誌「週刊朝日」(2015年1月30日号)に『相続税は100%にして有意義な人生を!』と題する一文を寄せていたので、参考までにこの機会に指摘の一部を残しておきたいと思います。
2015年1月1日から相続税制が改正され、相続の際の基礎控除が4割カットで課税対象者も増えることになった。そんなこんなで、最近、ウェブ上でも相続税を扱ったニュースをよく見かけるようになったと、氏はこの論考の冒頭に記しています。
そうした中、氏によれば「実は私(←堀江氏)は相続税100%論者である」とのこと。家族であるからという理由で、ある程度の財産が空から降ってくるというのは私にはどうにも理解できないと、氏は相続をめぐる現状を厳しく否定しています。
(自分には経験はないが)これは正直、宝くじのようなものだろう。もちろん振り返れば、そうやって莫大な財産を相続した2代目、3代目がパトロンとなって、芸術や文化を花開かせてきた歴史(的な意味)などはあるかもしれない。しかし、今やNPOや財団などへの寄付、クラウドファンディングなど、政府が支援しなくても大丈夫な仕組みが世界的にできているということです。
そもそも、何故多くの人たちは(生前贈与までして)財産を家族に相続させたいと願うのか。おそらくは、そういう「同調圧力」が社会にあることも一つの原因であることは間違いないと氏は言います。自分で形成した財産ならば(他に気を使わず)自分で使いきればいい。もちろん、死んでしまう時期はわからないのだからきっかり0円にすることは不可能でも、(正当な理由や目的もなく)子孫に残す意味はないというのが堀江氏の考えです。
私(←堀江氏)の持論を言えば、子どもたちへの相続などは彼らが興味を持つことがあったら全力でその機会を与えてあげることくらい。親とは違う子どもたちの人生を私物化すべきではないと氏はここで指摘しています。そもそも子供は奴隷ではない。もし配偶者がいたとして自分の死後も生きているならば、それは離婚した時と同様の財産分与を行えばいいだけの話で、それで問題ないということです。
ただし、(税として徴収されることの是非に関して言えば)国家政府の税金の使い方が下手くそであるのは間違いないと氏は言います。年度予算制も単式簿記も非常に遅れている。時代に合っていない。それを解決する策はやはり「小さな政府」化しかないというのが氏の感覚です。
さて、そこで問題の相続税だが、例えば中小企業の経営者が亡くなったとして、ほとんどの財産は株式なのだろうから、それは国家がいったん保有して売りだせばよい。土地などの試算も同様に対応できるだろうと氏は説明しています。
本来であれば、現金はファンドなどを作って公募制で優良なプロジェクトに分配されるようにするのもいいかもしれない。少なくとも行政機関が使い道を決めるよりは有用な使われ方が期待できるということです。
さて、そうした状況の中で、もっとも堀江氏が「恐ろしい」と感じるのは、相続税関連の記事を読んで、まだ死んでもいないのに、死んだ後のことを否応なしに考えさせるような状態になってしまうことだと氏は最後に指摘しています。
実際に、本人はまだ元気で頑張りたいと思っているのに、配偶者や子どもたちからいろいろ言われて、仕方なく相続税対策なんて考えている人も多いはず。家族のために稼げるだけ稼ぎ、年を取って使えなくなったら(次がつかえているので)「お払い箱」というのでは、人生あまりに「残念」ということでしょう。
資産を家族に残すのは、果たして「美徳」と言えるのか。周囲の声などにめげず、「死ぬまでに財産を使いきってビタ一文残しません」と断言する人を支持したいと話す堀江氏の指摘を、私も大変興味深く読んだところです。
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