MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2424 さらば青春の原チャリ

2023年06月14日 | 日記・エッセイ・コラム

 現在、この日本には久しぶりのバイクブームが到来しているとのこと。二輪車の2021年の国内販売台数は41万5892台と6年連続で前年を上回っており、40万台の大台を突破したのは実に6年ぶりだとされています。

 一方、こうした状況に、二輪免許の新規取得者も2018年以降ずっと増え続けているようです。特に10代、20代の若者や女性の伸び率が大きいとのことで、教習所を申し込んでも2、3カ月待ちはザラだという話も聞きました。

 中でも人気なのは、趣味性の高い大型車とのこと。日本自動車工業会(自工会)のまとめによると、2022年における排気量251cc以上の二輪車の出荷台数は前年比23.1%増の7万1606台で、6万台を超えたのは1998年以来24年ぶりとのことです。

 こうして大型車が人気となる一方で、苦戦しているのが排気量50cc以下の原付第1種だとされています。年間の出荷台数は30年前の2割以下まで落ち込み、10年前と比べても約半分という不人気ぶり。電動アシスト自転車の普及などもあって、「手軽さ」という原付の魅力は急激に薄まりつつあるようです。

 振り返れば、今から40年ほど前、日本は折からのバイクブームを迎えようとしていました。本屋には何誌ものオートバイ雑誌が並び、逆輸入されたオーバー・ナナハンやカウリングの装着が認められたばかりのレーサー・レプリカ、水冷化されパワーを増したオフロードバイクなどが公道を賑わすようになったのもこの頃です。

 一方、「バイクに乗らせない・買わせない・免許を取らせない)」のいわゆる「三ナイ運動」でがんじがらめになっていた(当時の)高校生たちの夢をつないだのが、50ccの原付バイク、いわゆる「原チャリ」であったことを(なつかしく)思い出す中高年も多いことでしょう。

 ラッタッタ…と呼ばれた HONDAロードパルや、後に下町のツッパリの定番となったYAMAHAパッソルに代表される「街乗りスクーター」に、DAXやモンキーなどのミニバイク。さらには、10馬力を超すような原付ロードバイクなども加わり、実地試験がなく手軽に免許が取れる「原付」は、高校生の憧れだったと言っても過言ではありません。

 しかし、その後時代は大きく動き、街中でも(元気に走る)その姿を見かけることはめっきり少なくなりました。加えて、環境問題への認識や免許制度なども大きく変わる中、我らが青春の「原チャリ」は(これから先)どこへ行ってしまうのか。

 総合経済誌『東洋経済』の5月13日号のコラム「少数意見」に、『原付バイクよ安らかに』と題する原付バイクへのレクイエムとも言うべき一文が掲載されていたので、その概要をここに残しておきたいと思います。

 2025年から、原付バイクを対象にした排ガス規制が導入されるが、その規制に対応できるエンジンの開発が進んでいないと、筆者はこのコラムに記しています。

 市場のニーズや製品価格にコストが見合わず難しいため、業界団体はより排気量が大きいバイクに速度制限を着けて(原付として)販売することなどを検討しているとされる。しかし、現行制度のままでは、それもかなり難しい(だろう)というのが筆者の見解です。

 そこで疑問に思うのは、「そこまでして(ガソリンで動く)原付バイクを残す必要があるのか」ということ。代替品である電動バイクが普及しつつある以上、この先、これまでのような原付バイクは淘汰される可能性が高いというのが、筆者の指摘するところです。

 エンジン排気量50㏄未満の原動機付自転車は、法律上はあくまで自転車の延長と位置付けられている。車や車の運転免許を取得できない交通需要者を念頭に、簡易的な日常の移動手段として設定されたカテゴリーに過ぎないと筆者は言います。

 この手軽さが受けて原付バイクは日本中に普及しホンダの「スーパーカブ」のような世界的なロングセラーも生まれたが、近年は電動バイクの性能も上がり、日常の足として利用できるよう法整備も進められようとしている。電動バイクの普及は、早晩全国に及ぶ(だろう)というのが筆者の認識です。

 ガソリンスタンドは全国的に減少しており、特に地方部では原付バイクの移動範囲内にスタンドがない地域も増えている。結果、本来の用途よりもスタンドに給油に行くのが一番の遠出といったケースも現実になっていると筆者は話しています。

 一方、家庭用の電源で手軽に充電できる電動バイクでは、こうした問題はおこらない。国際社会の動きや技術開発の方向性、何より市場のニーズをとらえれば、国が優先すべき制度改革はおのずと見えてくる。それは、ガソリンで動く原付バイクの延命よりも、電動バイクの普及対策のはずだというのがこのこらむで筆者が主張するところです。

 確かに、テレビのバラエティ番組で、電動スクーターに乗ったタレントが電源を借りながら全国を旅するこの時代。(いくら青春の思い出があるからといって)もはや50㏄の小さなガソリンエンジンにこだわり続ける意味はないのかもしれません。

 原付はヘルメットをかぶる必要すらなかった昭和世代としては淋しい気持ちが残るとしても、ガソリンで動く原付バイクは既に「オワコン」の域に入っているということ。これ以上の延命措置は不要であろうとこのコラムを結ぶ筆者の指摘を、私も(残念ですが)さもありなんと受け止めたところです。



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