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将来的な少子高齢化の社会や経済への影響が懸念される中、総務省が9月に発表した住民基本台帳に基づく人口動態調査(確定値)によると、国内に暮らす日本人は今年1月1日時点で1億2616万3576人だったということです。
昨年(2014年)1年間の死亡数は79年の調査開始以降最多の127万3004人。一方、出生数は同じく調査開始以来最少の100万3539人で、日本の人口は1年間で差し引き約27万人の減少を見せています。
この減少幅は、調査を始めた1968年以降で最大だということで、(いよいよ)日本における本格的な超少子高齢化時代の到来を実感させられます。
安倍晋三首相は、9月24日の記者会見で「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言し、経済成長の推進力として東京オリンピックが開催される2020年に向け新しい「3本の矢」を発表しました。
新たな政策は、(1)希望を生み出す強い経済、(2)夢を紡ぐ子育て支援、(3)安心につながる社会保障、の3項目。安倍首相はこの会見で、「長年手つかずだった日本社会の構造的課題である少子高齢化の問題に真正面から挑戦したい。」と意気込みを示したということです。
中でも、政府は「子育て支援」について、低下の一途をたどる合計特殊出生率を1.8程度まで回復させるという目標を掲げ、今後、子育てにかかる経済的負担を軽くするための幼児教育の無償化や結婚支援や不妊治療支援に積極的に取り組むとしています。
現実の社会を見れば、2014年の合計特殊出生率は1.42まで落ち込んでいるという実態があります(厚生労働省人口動態調査(2015))。子供の数が減っていく日本の状況をあと5年余りの間に打破する、(ある意味)「奇策」のようなものが果たして本当にあり得るのか?
こうした問いに答えるかのように、11月14日の総合経済サイト「現代ビジネス」では、ジャーナリストで国際政治経済情報誌「インサイドライン」編集長の歳川隆雄(さいかわ・たかお)氏が、「少子化問題はこれで解決する」と題する興味深い論評を行っています。
フランスでは、「国が子供を育てる」という発想から画期的な少子化対策を打ちこみ、「女性活躍」社会を制度化して出生率1.8を達成したと、歳川氏はこの論評で指摘しています。そこで日本でも、思い切って年間5兆円の少子化対策予算を付けることで、新生児が毎年約50万人増えることになるというのが、この論評における氏の主張の眼目です。
少子化対策は究極の経済対策であり、乗数効果で言えば公共事業などに数兆円規模の補正予算を毎年度計上するよりはるかに大きな政策効果が期待できると氏は説明しています。
そして、その具体策として示しているのが、向こう3年間、第1子に対する子育て支援としてそれぞれの家庭に1,000万円を供与し、年間50万人、3年間で150万人の人口増加を促すというもの。これが実現すれば、「第3次ベビーブーム」の到来は確実だというのが歳川氏の提案です。
そんなことすれば、地方都市の超若年ヤンキー・カップルだけが(お金欲しさで)「産めよ増やせよ」に励むことになる、と皮肉る向きもあるだろう。しかし、金目当てでも、ヤンキー・カップルでもいいではないか。高賃金の製造業従事者が減り、低賃金の若年中心の就業者が増え続けているのだから、「強い経済」には若者への支援と画期的な少子化対策が何を置いても不可欠だというのが、この問題に対する歳川氏の認識です。
氏は、安倍政権が進める「一億総活躍」政策に対し、現在の人口1億2689万人中の残る「2689万人」の過半に相当する若年貧困に喘ぐ人たちこそが、現在の日本の低賃金サービス業を担っているという現実から目を背ける訳にはいかないとしています。で、あるとすれば、そうした若者に(1,000万円という現金を供給し)未来への希望を与えることこそが、日本の経済を活性化しベビーブームを生みだすきっかけになるのではないかと、歳川氏は考えています。
さて、先にも述べたように、現在の日本では毎年約100万人の新生児が誕生しています。従って、第1子誕生の際に漏れなく1000万円の子育て支援を行い(100万人に加えて)毎年50万人の出生数の上乗せを期待するためには、実際のところ氏の示した5兆円をさらに超える財政出動が必要になるかもしれません。
しかしよくよく考えてみれば、2015年度の社会保障費の国庫負担額は当初予算ベースで31兆円を大きく上回っている現状があるのですから、(国民の理解が得られれば)子育てに対する5兆円(±)の投資は必ずしも実現不可能なものではないでしょう。さらに言えば、第2子以降に500万円とか、第3子以降に1000万円というような形で多子世帯への支援をドンと厚くすることで、出産や子育てに迷う若い世代の背中を強く押すというような効果が上がるかもしれません。
いずれにしても、急激な少子化を食い止めるためには若者の感覚にストレートに届くインパクトのある政策が必要だとする歳川氏の提案も、この段に至っては十分に傾聴に値するものだと感じられます。
GDP600兆円達成による「強い経済」を実現していくためには、「第3次ベビーブーム」をもたらす画期的な少子化対策が不可欠だとする歳川氏の見解を、私もこの論評から大変興味深く読んだところです。
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