行雲流水

仏教をテーマとした記事を掲載しています。

途中にあって家舎を離れず

2013年11月12日 | 禅の心
途中にあって家舎を離れず

「一人有り、劫を論じて途中に在って家舎を離れず。一人有り、家舎を離れて途中に在らず。那箇か人天の供養を受くべき。」(臨済録)


笑い話です。勉強をしない子供に親が話しています。

親「良い学校に入るために一生懸命勉強しなさい。」
子「良い学校に入ったらどうなるの?」
親「良い学校に入ったら良い会社に就職できるから。」
子「良い会社に入ったらどうなるの?」
親「良い会社に入ったらお金がたくさんもらえるから。」
子「お金がたくさんもらえたらどうなるの?」
親「楽に暮らせるから」
子「それなら今のままの僕でいいね」

  臨済禅師に言わせれば、この子供の言うことにも一理あるのです。(もちろん、怠けているのはよくありませんが。)何のために勉強するのか。将来のために勉強するのではなく、勉強すること自体が目的なのです。人間、明日があるかないかわかりません。まだ来ぬ未来を思うのでもなく、過ぎ去った過去にとらわれるのでもなく、今を精一杯生きるのが禅的生き方なのです。

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仏の命

2013年11月08日 | 禅の心
道ばたの石はいい
いつも青空の下にかがみ
夜は星の花をながめ
雨にぬれても
風にかわく
それに だいいち
だれでも
腰をかけていく


これは、『泣いた赤鬼』の作者である、浜田広介の詩です。
動物や植物はもとより、全てのものに命が宿るというのが釈尊の教えですが、道ばたに転がっている石ころにも大きな値打ちを見いだすことができるのです。どんなものにも仏の命がやどっているのです。そして、草木でも石ころでも真理をあらわしているのです。

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底浅き川は音を立てて流れ

2013年11月05日 | 禅の心
底浅き小川は音を立てて流れ、満水の川は、自ずから静かに流る。
(スッパ・ニパータ)


 釈尊の存命の時代に最も近い時代に編纂された、スッパニパータというお経の中の言葉です。
不平不満ばかり言い、誰とでも馴れ馴れしく話し、権力者にゴマをするような人はある意味危険です。不平不満や悪口、陰口は言葉が軽く、馴れ馴れしいのはコミュニケーション力があるのではなくて人間関係が軽く、ゴマをするには態度が軽いのです。
 浅い小川とは、深みのない人のことです。立ち振る舞いが大きくても、何事も軽く内容のない人なのです。
 それに対して、満水の川とは、どっしりと構えていて、軽々しく振る舞わない人です。外向的な性格の人は何かといいことが多そうですが、軽くなりがちという欠点があります。寡黙でも、内容のある人が魅力的なのです。

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科学技術の罪

2013年11月01日 | 禅の心
空にさえずる鳥の声
峯(みね)より落つる滝(たき)の音、
大波小波とうとうと
響(ひび)き絶(た)えせぬ海の音、
聞けや人々面白き
此(こ)の天然の音楽を。
調べ自在に弾(ひ)き給(たも)う
神の御手(おんて)の尊(とうと)しや。

春は桜のあや衣(ごろも)、
秋は紅葉(もみじ)の唐錦(からにしき)、
夏は涼しき月の絹、
冬は真白き雪の布(ぬの)。
見よや人々美しき
此の天然の織物を。
手際(てぎわ)見事に織り給う
神のたくみの尊しや。

うす墨(ずみ)ひける四方(よも)の山、
くれない匂(にお)う横がすみ、
海辺はるかにうち続く
青松白砂(せいしょうはくしゃ)の美しさ。
見よや人々たぐいなき
此の天然のうつしえを。
筆も及ばずかきたもう
神の力の尊しや。

朝(あした)に起る雲の殿(との)、
夕べにかかる虹の橋。
晴れたる空を見渡せば
青天井(あおてんじょう)に似たるかな。
仰(あお)げ人々珍しき
此の天然の建築を。
かく広大(こうだい)にたてたもう
神の御業(みわざ)の尊しや。





 武島羽衣 作詞で、岩国出身の田中穂積作曲の『美しき天然』の歌詞です。明治の日本人には、このように自然に対する感性を持ち合わせていました。自然と対話し、自然から学ぶ姿勢があったのです。

 しかし、残念なことに、科学技術の進歩とともに、便利な世の中になるにつれ、日本人は自然の声を聴くことができなくなってしまいました。科学技術の進歩は、私たちに多大な恩恵をもたらしていますが、自然から隔絶することが多くなってしまったのです。

 私たちは、野山にでかけて、できるだけ、自然と対話し、自然から学ぶ機会を作らなければなりません。

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