思う・学ぶ・発達支援 心のケア サイト

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すべての教師に必要な原理原則

2019年01月03日 | 教育
 特殊教育諸学校は平成19年4月より,法律上,特別支援学校と改められた(現場
では養護学校等の名称を残すところもある)。地域をサポートするセンター的機能が
明記された。

 それから10年。正直,未だに,専門的,科学的な目を持ち対応できる現場の教師が
なかなか多いとは言えない。例えば,自閉症やADHDの子に対して,「何できちんとや
らないの!」「よく見ていなさい!」としかりつけ,力ずくの指導をしようとする教
師が存在する。「将来はみな社会に出て,生きていかなければならないのだ」という
思いがあるのは分かる。しかし,力ずくの指導では変わらない。むしろ,害を残しか
ねない。

 すべての教師が,障害の特性を知り,基本的な原理原則に応じた指導を身につけて
いく必要がある。

 優れた方針を立てる上でバークレー氏の方針は具体的であり,現場で容易に想定で
きる原則である。また,この方針はADHDの子を持つ保護者に向けたものでもある。連
携のためにも欠かせない。いくつかを取り上げる。

【罰の前に努力目標を設定する】

「いきなり罰を与えるという,あまりにもありきたりの方向に流されないようにする
ことは非常に重要です。」とバークレー氏は言う。

 悪いことをすると,「まず,叱る」ということが一般的に行われる。しかし,ADHD
の子は,通常より頻繁に怒られることをしてしまい,明らかに叱られるという「罰」
を与えられ続けるということになる。すると,どうなるか。反抗挑戦性障害(ODD)と
いった,2次障害を生むことになる。

 では,努力目標である。子どもの望ましくない行動を変えようとするときには,そ
れを直ちに叱り,罰を与えるのではなく,「望ましい行動とは何か」をまず考え,決
定する。そして,その望ましい行動を示さないかをよく観察し,その行動が見えたら
すばやくほめる。

 A男について例にあげる。A男は作業学習の際,「水を窓から外へ流す」「ふたを
ずらす」「いろいろな容器で水遊びを始める」といたずらにはしる。そのとき,強く
しかると本人の思うつぼである。しかられる,騒ぐ,ということを本人は期待してい
るので,本人のペースになっていく。そのようなときには,悪い行動は無視し,「こ
れはこうします」と活動の流れに淡々と引き戻す。そして,そのあとが重要である。

 そのあと活動を正しくはじめたとき,そこを逃さず,すばやく「そう,そう,じょ
うずだね」とほめる。「よく手で押さえているね」といった具合に具体的にほめる。
これは,よい行動を確認していくことにもつながるので大変有効であった。

 低学年である場合には,ある程度決められた学習をしたときに,頭をなでるなどス
キンシップを用いたほめ方もできる。できたところをすばやく赤で丸をする,終わっ
たら好きな絵を描いてよい,などの褒美を与えるということも有効な手段となる。

【一貫性を保つ】

 「計画の実行が不規則,気まぐれだと,子どもの行動はうまくコントロールできま
せん。」とバークレー氏は言う。ADHDはセルフコントロール力が不足している。
日常には様々な活動があり,それらがつながって日々が過ぎていく。長期的に,計画
的に様々な事実を結び付けて行動することが苦手なのがADHDである。そこは周り
の対応の仕方が重要である。まちまちな指導,まちまちなやり方で教えていては混乱
が増すばかりである。一貫性がほしい。そのためには原則を押さえた指導を誰もが行
うことである。

【許しを実行する】


 これが一番重要で,しかも,毎日実行するのが一番難しい方針といわれる。次の3
つが主な点である。

① 子どもの問題行動を許す
 ※本人に責任がないわけではなく,自分をコントロールできないという点を理解す
  る。
② 理解のない行為をする人を許す
 ※理解のない周りと戦うのではなく,子どもを守ることに専念する。
③ 対応がうまくいかない自分を許す
 ※自分を責めるのではなく,改善すべき点,

 次の是正の努力を考える。その中でも,「子どもの問題行動を許す」ということが
現場ではまず基本である。これは,一つ一つの問題行動に対して,いちいち腹をたて
厳しい態度をとってはいけないということである。その子は「自分をコントロールで
きない」ということを念頭において,コントロールの手助けを教師はすべきであり,
問題行動が発生し続けるというのは,教師の手立てに責任があるということを,再度
自覚することが必要である。その自覚のもとに,自分を責めることではなく,改善す
べき点,次の是正の努力を考えるのである。

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研修を続ける意味

2019年01月03日 | 教育
 優れた研修会に参加し続けること。そこには,常に新しく,常に衝撃を受け続ける
ものがある。

 自閉症の子ども達が抱える質的障害。ADHDの子どもの「不注意」とはどのよう
なことを指すのか。

 なかなかはっきりとつかめない,漠然と雲にかかった部分が次々と明らかにされて
いく。

 まさに衝撃の連続がそこにある。そして,日々の意識,実践のあり方が少しずつ変
化していく。

 身銭を切って,時間を割いて,初めて得られるということがある。

 各地の優れた研修会に参加すること。それは新たな知識を積み上げるだけにとどま
らない。脳を働かせること,活性化させることにつながる。脳は働かせなければ,明
らかに錆びついてしまう。

 また,各地に移動することは,気を動かすことにもつながる。ひとところに留まっ
ていると,よくない気が自然と溜まってしまう。時折,早く,遠くに移動することが
必要である。

 そして,もう一つ大事なことは,知識を得た後どうするかである。そのままにして
おくと,せっかく得た知識が消えていってしまう。ただ置いておいたのでは腐ってし
まう。新鮮なうちに,できるだけ,吐きださなければならない。多くに人に伝える,
出力する作業が必要である。

 多くの人に貴重な情報をできるだけ出すことによって,次の新しい情報が,入って
くることとなる。

 出力することによって,入力されるのである。
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