表情のスキルを意識し学ばせる
発達障害のある子ども達は,体験を共有し,共感することが苦手である。「人とか
かわることも技術が必要なのだ」と考え,スキル指導から始める。
1 表情を身につけるSSTの授業
① ウォーミングアップ
― 笑う・怒る・泣く表情の練習 ―
最初は顔の表情だけを真似る。最も情報の少ない場面からはじめる。
続いて,動作も加えて笑う・怒る・泣くを練習を行うのである。
② ペアで体験・無表情はだめ
話す人と聞く人に分かれる。一人は今朝,起きてからしたことを話す。一人は視線
をそらし無表情で聞く。発表では,「相手が無表情だと話すのがつらい」という意見
が出る。「無表情ではいけないのだ」ということを学ぶ。
③ スキルを教える
相手と気持ちよく会話するときのスキルを具体的な動きに変えて教える。
・相手の目(眉間)を見る。
・うなずく。
・ほほえむ。
実際に一つ一つ練習する。「ほほえむ」に関しては,
1.目を細める2.口を横に開く3.力を少し抜く,という具合にスモールステップで表情
を作ってみる。
④ 話すときのスキルを見つける
ペアになり,他にどんな話すためのスキルがあるか相談する。そして,発表する。
何人か指名して黒板に書き出す。書いて活字になることで,理解する子もいる。
⑤ 様々なスキルを使って話をする
学んだことを基に,スキルを意識してペアで話をする。
発達障害があり,表情を読み取ることが苦手な子や,コミュニケーションの動作が
身についていない子に「共感しなさい」と言っても,理解や動作にはつながらない。
まず,人とやりとりするときに形から入る。スキルを身につけることからはじめるの
である。
2 言葉を代弁してスキルを身につける
巡回相談活動で向かった先に,偏食の多い子がいた。隣に座り,「これもおいしい
よ,食べてみる?」と誘うが,頑として食べない。家でのことや日常の話をし,少し
盛り上がってきたところで,「これおいしんだけど,ちょっとなめてみる?」と聞く
と,そっとなめた。
まんざらでもないようである。「ちょっとかじってみたら?」と言うと口に入れ食
べ始めた。意外においしかったようだ。そこでスキルを入れるためにダメ押しの言葉
を伝えた。
「食べてみるとおいしいことがあるんだね」
その後も食べ続けたので,2~3度その言葉を伝えた。その子はその後,おかわり
もした。食べたことがないものはどんな味がするか分からない。むやみに食べられな
い。何となく警戒している。その子は日常,こだわり,衝動性を見せる子だった。
しかし,「たべてみるとおいしいことがある」このことを一つ学んでくれれば,味
覚の広がりが今後も期待できる。こちらが共感し,共感する言葉を伝えることで,学
ぶことができる。
3 気持ちのズレを修正する
広汎性発達障害のある子である。ソーシャルスキル絵カード「お見舞いに来た友達
がくれた手紙を『こんなのいらない」と放り投げてしまった』一枚の絵。この絵を見
せたとき,いけないことは理解した。しかし「どこがいけない?」と聞くと,なんと
答えたと思われるだろうか。
「紙をゴミ箱に捨てていない。」であった。
その状況や気持ちがうまく理解できないのに,「共感」することは難しい。その場
合には,たとえば,「お見舞いにせっかく来てくれて渡した手紙をいらないといった
ら,みんながいやな気持ちになるんだよ。」「心配して会うために来てくれたのだか
ら『ありがとう』って言うとよかったね。」と教えるのである。
このようにソーシャルスキルカードで,一つ一つその子の理解が難しい気持ちを教
えていくことが必要である。
4 協力することでほめる体験を積む
突然走り出して危ない。友達のことをたたきながら歩く。やりたいことを止められ
るとパンチや引っ掻きが出る。感情のコントロールがうまくできず,叱られて反発す
るなど,マイナスのかかわりばかりしてしまう子がいた。しかし,物を運んだり,雑
巾をかけたりするなど,やることがはっきりしていると,がんばる姿が見られる子だ
った。掃除の時間に,その子のクラスをのぞいた。しぶしぶのようだが,机運んでい
る。「えらいな,よく机を運んでいるね。」あたりまえのことであっても,やってい
ればたいしたものだ,と受け止めてほめる。「すごいな」「力があるな」とほめてい
くとどんどん活動した。「一緒に運ぶと楽だよ」と教えると,笑顔で運んだ。協力す
るとほめられる。一緒にやるとほめられる。
協力することでほめられる体験を積み重ね,スキルを高めて将来の自立につなげた
い。
発達障害のある子ども達は,体験を共有し,共感することが苦手である。「人とか
かわることも技術が必要なのだ」と考え,スキル指導から始める。
1 表情を身につけるSSTの授業
① ウォーミングアップ
― 笑う・怒る・泣く表情の練習 ―
最初は顔の表情だけを真似る。最も情報の少ない場面からはじめる。
続いて,動作も加えて笑う・怒る・泣くを練習を行うのである。
② ペアで体験・無表情はだめ
話す人と聞く人に分かれる。一人は今朝,起きてからしたことを話す。一人は視線
をそらし無表情で聞く。発表では,「相手が無表情だと話すのがつらい」という意見
が出る。「無表情ではいけないのだ」ということを学ぶ。
③ スキルを教える
相手と気持ちよく会話するときのスキルを具体的な動きに変えて教える。
・相手の目(眉間)を見る。
・うなずく。
・ほほえむ。
実際に一つ一つ練習する。「ほほえむ」に関しては,
1.目を細める2.口を横に開く3.力を少し抜く,という具合にスモールステップで表情
を作ってみる。
④ 話すときのスキルを見つける
ペアになり,他にどんな話すためのスキルがあるか相談する。そして,発表する。
何人か指名して黒板に書き出す。書いて活字になることで,理解する子もいる。
⑤ 様々なスキルを使って話をする
学んだことを基に,スキルを意識してペアで話をする。
発達障害があり,表情を読み取ることが苦手な子や,コミュニケーションの動作が
身についていない子に「共感しなさい」と言っても,理解や動作にはつながらない。
まず,人とやりとりするときに形から入る。スキルを身につけることからはじめるの
である。
2 言葉を代弁してスキルを身につける
巡回相談活動で向かった先に,偏食の多い子がいた。隣に座り,「これもおいしい
よ,食べてみる?」と誘うが,頑として食べない。家でのことや日常の話をし,少し
盛り上がってきたところで,「これおいしんだけど,ちょっとなめてみる?」と聞く
と,そっとなめた。
まんざらでもないようである。「ちょっとかじってみたら?」と言うと口に入れ食
べ始めた。意外においしかったようだ。そこでスキルを入れるためにダメ押しの言葉
を伝えた。
「食べてみるとおいしいことがあるんだね」
その後も食べ続けたので,2~3度その言葉を伝えた。その子はその後,おかわり
もした。食べたことがないものはどんな味がするか分からない。むやみに食べられな
い。何となく警戒している。その子は日常,こだわり,衝動性を見せる子だった。
しかし,「たべてみるとおいしいことがある」このことを一つ学んでくれれば,味
覚の広がりが今後も期待できる。こちらが共感し,共感する言葉を伝えることで,学
ぶことができる。
3 気持ちのズレを修正する
広汎性発達障害のある子である。ソーシャルスキル絵カード「お見舞いに来た友達
がくれた手紙を『こんなのいらない」と放り投げてしまった』一枚の絵。この絵を見
せたとき,いけないことは理解した。しかし「どこがいけない?」と聞くと,なんと
答えたと思われるだろうか。
「紙をゴミ箱に捨てていない。」であった。
その状況や気持ちがうまく理解できないのに,「共感」することは難しい。その場
合には,たとえば,「お見舞いにせっかく来てくれて渡した手紙をいらないといった
ら,みんながいやな気持ちになるんだよ。」「心配して会うために来てくれたのだか
ら『ありがとう』って言うとよかったね。」と教えるのである。
このようにソーシャルスキルカードで,一つ一つその子の理解が難しい気持ちを教
えていくことが必要である。
4 協力することでほめる体験を積む
突然走り出して危ない。友達のことをたたきながら歩く。やりたいことを止められ
るとパンチや引っ掻きが出る。感情のコントロールがうまくできず,叱られて反発す
るなど,マイナスのかかわりばかりしてしまう子がいた。しかし,物を運んだり,雑
巾をかけたりするなど,やることがはっきりしていると,がんばる姿が見られる子だ
った。掃除の時間に,その子のクラスをのぞいた。しぶしぶのようだが,机運んでい
る。「えらいな,よく机を運んでいるね。」あたりまえのことであっても,やってい
ればたいしたものだ,と受け止めてほめる。「すごいな」「力があるな」とほめてい
くとどんどん活動した。「一緒に運ぶと楽だよ」と教えると,笑顔で運んだ。協力す
るとほめられる。一緒にやるとほめられる。
協力することでほめられる体験を積み重ね,スキルを高めて将来の自立につなげた
い。