思う・学ぶ・発達支援 心のケア サイト

特別支援教育の実践情報など。また,日々の喜びを見つけ、よくする手立てはないか考える、成長・教育のサイトです。

進路指導・就学指導のポイント

2019年01月06日 | 教育
その先を見据えた選択を~力を伸ばす環境が重要である~

1 適切な環境を中学進学に求める

 授業中に落ち着かず,教室の外に出てしまう。支援員がついていくが,自由気まま
にブランコ遊び,水遊びをしている。このような状態が小学校の高学年でも続いてい
たとき,これは通常学級の集団が本人の生活に合っていないことを意味している。そ
のまま通常学級で在籍している原因は「保護者の強い希望」,「その学校に特別支援
学級がない」といったことが予想される。

 その子が中学に進学する際,適切な環境をまず最優先すべきである。どのような環
境が必要か。その子が落ち着いて過ごせる特別支援学級が,進学先の中学校にあるこ
とが望ましい。特別支援学級の生活をベースとして,通常学級へ交流という形で参加
していくことがベストだと思われる。

2 小・中連携の必要性

 進学に向け必要なのは小・中の連携である。

①小学6年の段階で,保護者,担任,管理職と進学に向けて話し合いを持つ。専門性
の高い特別支援学校の教諭に,話し合いに参加してもらうことも有効である。

②保護者に中学校の実態をつかんでもらうため,見学の日程を設ける。見学に伴い,
必要な情報を中学に伝える。

③中学での受け入れ態勢を話し合ってもらう。必要に応じて,その協議に小学校の担
任等も加わる。

3 必要な連携と対応が効をそうする

A君の中学進学に向けて話し合いが持たれた。中学では,新年度,もう一人支援の
必要な生徒が入学することから,特別支援学級が設けられた。2人での学級のスター
トである。マンツーマンに近い朝の会,帰りの会,そして小黒板を使った丁寧な日程
確認,静かで落ち着いた環境。みるみるA君は落ち着きを見せ始めた。通常学級に授
業によって参加するが,うまく気にかけてくれる生徒がいて,50分間,過ごすことが
できるようになった。数学,英語,国語など,主要な教科は教科担任が特別支援学級
に来て,A君に合わせた学習内容を進めてくれる。小学校時代のように,教室の外を
走り回ってしまうことはなくなった。

4 特別支援学級の担任の専門性強化

環境づくりと共に重要となるのは,もちろん担任の対応力である。むやみに叱る,
やらせようとする,という力ずくの指導では,反発を招き,A君に安定した状態を作
ることは難しかったろう。その特別支援学級の担任は発達障害の子の対応について,
書籍や,特別支援学校の教諭から熱心に学んだ。また,個別の対応で様々な方法を工
夫した。

保護者の熱心な指導など他にも要因はあるが,環境を含めた体制作りと担任の対応
力の強化の2点が,A君の安定にかなり力を発揮したのである。

5 その先を見通した高校進学

 進路指導を行う際,その先の将来をどうするか見通していきたい。本人が自信を持
ち,力を発揮できる場が必要である。保護者と,その先の将来まで一緒に考えられれ
ば望ましい。現実の選択肢としては,現在,全日制の高校に進学するか,特別支援学
校へ進学するかということがある。

(1)全日制の高校に入ったとき

 中学で,人とのかかわりが難しく,保健室の登校などが多かったB君。能力は高く
高校へ入ることができたが,やはり登校することに対する抵抗感は,高校に入ってか
らも一層増した。各専門施設に保護者が相談をしたが,結局解決には至らず,学校を
辞めざるを得なくなった。

 大変IQが高かったものの,アスペルガーの傾向があり中学では友達とのかかわり
の問題やトラブルが生じていたC君。全日制の高校へ進学したが,そこではこれまで
以上のプレッシャーを抱え,さらに問題行動が現れた。専門家への相談,保護者の対
応の変化に伴い,落ち着きを取り戻して大学へと進学した。

 D君は,高校へ入学したものの,知的な遅れも大きく,ほとんど授業についていけ
ない。周りともうまくいかない。その後いじめの問題が大きいものとなってしまう。
進級を前にして,特別な体制がとられることとなった。特別な配慮を受けながら通う
こととなる。

 療育手帳があり,全日制高校か,特別支援学校へ行くか迷った末,全日制の高校へ
入学したF君。2年生までは部活も熱心にがんばったが,友達とのトラブルが何度か
続き,止めざるをえなくなった。しかし,その後,専門家のアドバイスとコーディネ
ートのおかげで雇用支援センターに通い始め,無事就職にたどりつく。

(2)特別支援学校に入ったとき

 IQ80程度の境界線にいたG君。全日制高校と特別支援学校を迷った末,職業教
育に厳しく取り組んでいた特別支援学校を選択。礼儀正しいあいさつ,丁寧な作業と
報告などをしっかり行う作業態度を身につけ,給料もかなり高い職場に就職すること
ができた。

 広汎性発達障害の診断があり,中学では周りと打ち解けず,いじめの問題にも悩ま
されていたH君。特別支援学校に入学したが,入学当時は教室にいることもできなか
った。しかし,学習のプレッシャーを強く受けたり,時間にそれほど追われたりする
こともなく過ごす中,生活に徐々に慣れ2年の頃にはきちんと教室で授業を受け,作
業などもしっかり続けることができるようになった。

 全日制の高校,特別支援学校とも,いずれにしろ受け入れる高校側の体制が重要で
ある。そして,ただ入ればそれでいいというものではない。高校生活の先をどうする
か。そこを見つめながら,その子に合った場を与えてあげたい。本人と保護者がより
よい選択ができる十分な情報をできるだけ多く伝え,共に考えて本人が力を伸ばせる
選択を導きたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする