思う・学ぶ・発達支援 心のケア サイト

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場面緘黙の子どもたち

2019年02月20日 | 教育
【場面緘黙】

 場面緘黙とは,特に発声器官には問題なく,言葉を話したり理解したりする力
があり,ある場面では自信をもってはなすことができるが,話すことが求められ
るある場面では話せないことが続く状態である。DSM-5では,不安症/不安障害
に分類される。

1 原因

・以前は反抗的で,わがままな子と受け取られていたが,現在は,内気で不安を
抱えやすい子が多いことが調査研究される中で明らかになった。「不安」が極め
て重要な要因になっている。

2 特徴的に表れるところ

・学校や,家庭とは別な場所に出て話しかけられると黙っているが,家庭では話
をしているという場合がよくある。

3 教室で見られる症状,症例

・入園や入学をする時期に気付かれることが多い。
・話しかけられても黙っている。
・言葉は発しないが,うなずいたり,首を振ったりしてコミュニケーションをとる。
・言葉は発しないが,教室で着席したり,学習の場を移動したりすることは特
に問題なくできる場合が多い。
・話しかけられても黙っていることが多いが,ときおり日常的な話題など話せる
ことがある子もいる。

4 早期発見の重要性

・「自然に治るから大丈夫」と放置されると,不安を抱える環境の改善がなされ
ず,よりストレスをため続けていき,緘黙が癖や習慣化してしまったり不登校,
学業不振につながったりする場合がある。気付いたら,早めに学校や保護者と
情報を共有し,対応の仕方を相談することが必要である。

5 してはいけない対応

・話すようプレッシャーをかけ続けること
・強要したり,脅したりすること。
・話さないことを責めたてること。
・周りを集め,人に注目させること。
不安が極めて重要な要因である中,以上の行為は,
不安を増幅しることにつながりやすく,症状を悪化させやすい。

6 行動を改善するための方策

・集団の中での出来事なので,保護者が知る由もないということもあり得る。し
たがって保護者に過度の受け取られないよう配慮しながら様子を正しく伝える。
「なぜ,早く伝えてくれなかったのですか」と後々困難になったケースもある。
早めに情報を共有することで,不安を取り除き,対応や環境調整を相互で図るこ
とができる。
・専門の期間に相談する。年齢や,その子供の症状によって,行動療法,認知行
動療法(CBT)遊戯療法,精神分析療法などアプローチの仕方が違うものがある。

7 緘黙の子の思い

・分かっていてもなかなか言えない。
・質問することが怖い。
・郊外で行けない場所がある。
・家の外に出ると話しかけられるのが怖くなる。
・家族や親せきの中に話せない人がいる。
・伝えたい気持ちはあるが,伝えられない。

8 保護者の思い


・場面緘黙を理解している人が本当に少ない。
・専門家や関係機関と頻繁に連絡を取らなければならず,ストレスが多い。
・周囲からなにかと批判されてしまう。
・周りの人たちになかなか理解が得られず,手助けがもらえない。
場面緘黙に対する周囲の理解が必要である。

9 意思を引き出す接し方

・ポジティブな態度で励ます話しかけを心がける。「何もしなくていいよ」では
なく,「安心できたらやってみようか」など。
・言葉にできない時には,「~ということかな」と子どもの気持ちに合う言葉を
探す。
・紙や絵に書いて確認を取りながら気持ちの選択を図る。「どっちかな。指さし
てみる?」「両方かな」と気持ちを量りながら意思を確認する。

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解離性障害の子どもたち

2019年02月19日 | 教育
【解離性障害】

 解離性障害とは,耐えがたい心理的苦痛やストレスのため,記憶や感情,自我
が分離し,感覚をまとめる力が失われ,過去の記憶の一部が失われたり,感覚や
感情が麻痺し,自分が誰だかわからなくなったり,いくつもの人格が現れたりす
るなど,その症状が深刻で,日常生活に支障をきたすもの状態の障害である。

1 特徴的な症状

・激しいもの忘れ,記憶の喪失がある。
・意識がはっきりしなくなる。
・心が体から離れているような感じが続く。
・二重人格,多重人格が起こる。

2 原因

・ストレスや心的外傷が関係しているといわれる。心的外傷には様々な種類があ
り,災害,事故,暴行を受けるなど一過性のものもあれば,幼少期の虐待,性
 的虐待,長期にわたる抑圧状態など慢性的に繰り返されるものもある。そのよ
 うな苦しい体験によるダメージを避けるため,精神が緊急避難的に機能の一部
 を停止させることが解離性障害につながると考えられている。

3 子ども虐待との関係

・解離性障害の原因の一つとして,児童虐待,性的虐待,養育放棄などが指摘さ
 れることが多い。最も重要な人物である養育者による虐待は,本来適切な養育
 によってはぐくまれていく自己感も生じないことにつながる。苦しい状態を別
 な自分に置き換えることによって回避する行動へとつながる。それが,多重の
 人格の表れにつながる場合もある。

4 解離性障害の主な症状と種類

・解離性健忘:最近の重要な出来事の記憶喪失であり,器質的な精神障害に起因
 せず通常の物忘れでは説明できないほど強い。
・解離性とん走:自分が誰か分からなくなり,また,最近の重要な出来事の記憶
 も喪失した中,家庭や職場から離れ,失踪して旅に出たり,新たな生活を始め
 たりするなどの症状である。
・多重人格障害:一人の人格の中にいくつもの人格が存在する。
・離人性障害:自分の感覚がなくなり,自分が自分でなくなってしまう。

5 正常な想像機能の除外

・解離という現象は,大きく正常な(適応的な)解離と,不適応的な解離に分け
 ることができる。子どもの遊びの中には,ヒーローになりきったり,おままご
 とをしたりなど,ごっこ遊びの世界が存在する。この世界は,想像力によって
 現実とは離れた世界に行ったり,現実を再構造したりする点で解離ともいえる
 体験である。この状態は,10歳までが多く,解離性障害とは区別しておく必
 要がある。

6 行動を改善するための方策

・認知行動療法:症状の原因となっている不安や恐怖がなんであるかを突き止め
 て,どのように対処していけばよいかを探る方法。
・心理療法:ともすると全く理解できない不可解なことであっても,無意識に抑
 圧され,ストレスがかかっている状態だと見て取ることで理解しやすくなる。
 症状から「なぜだろう」とその意味を考えることで症状が改善していく。

7 家族や友人が心がける対応

・専門医などで家族相談という形で面談を入れ,解離性障害の正しい理解を図
 る。
・解離性の症状は,何らかのストレス要因によって悪化する傾向があるため,日
 常場面でのストレス軽減に努める。
・友人の立場の場合,ストレスになりそうな事態をよく理解し,軽減する。例え
 ば,普段より仕事量を減らしていく,休息がとりやすい環境を作ってあげる。
・虐待的な家族環境がある場合,その状況から切り離す手立てを講じる。

 解離性障害の改善には,より安全で保護的な環境が極めて重要である。







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愛着障害の子どもたち

2019年02月16日 | 教育
【愛着障害】

 愛着障害とは,母親やそのほかの養育者との愛着が何らかの理由で形成されず,情
緒面や対人面に問題が起こる状態のことである。
従 来,特殊な家庭環境で育った子どもの問題とされたが,近年は大人でも,その影
響が大きいといわれる。
 たとえば,うつや不安障害,過食症などの要因の1つとされている。
 ICDー10(世界保健機関の国際疾病分類)では,5歳までに発症するとし,反応性愛
着障害(笑顔がない,無表情,他の子どもと接触しないなどの症状)と脱抑制型愛着
障害(誰にでも無差別に愛着行動を示したり,注意を引こうとして見境なく親しげな
振舞いをしたりするなどの症状)に分けている。

1 愛着とは


・愛着とは,主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる,
 心理的な結びつきのことで,専門用語でアタッチメントともいう。愛着は乳幼児が
 声をかけられるところ,抱っこされ,触れ合うところからすでに形成される。

2 愛着の必要性

・人への基本的信頼感が芽生える。乳児期の3か月を過ぎるころから,自分を養育し
 てくれる人に愛着が形成され,6か月を過ぎるころから,明確に母親を意識してい
 く。自分を養育してくれる人に甘えたり,触れたりすることで,相手を明確に意識
 し,人との信頼関係の基礎が築かれる。
・自己表現力やコミュニケーションの力を高める。愛着を形成した相手に自分の要求
 を何らかの形で表現し,それが受け入れられたり,うまく伝わらなかったりする中
 で,人とのやり取りが生じ,コミュニケーション力の基礎が築かれる。
・自己の生存と安全を確保する。不安や心配を感じたときに愛着を形成した相手に寄
 り添うことで,安心を得る。人といる安心感を培う。そこで拒否されたり,放置さ
 れることで愛着不全が起こる。

3 愛着障害の原因

・愛着が形成される前に養育者と死別,離別してしまった。(愛着形成の臨界期は1
 歳半までといわれる。)
・養育者から虐待を受けるなど,不適切な養育環境に置かれ続けた。
・養育者が子どもに対して最低限の世話はするもののまったく無関心であった。
・養育者のような立場の大人が頻繁に交代した。
・他の兄弟と明らかに差別されて育てられた。

4 発達障害との関係

・乳幼児のうちから,触れられることを嫌がったり,目が合わなかったり,呼びかけ
 に反応しなかったりするなど,成育の中で愛着を育み難い状態に置かれやすい。多
 くに愛着形成の不全が考えられる

5 教室で見られる症状,症例

・回避型愛着の場合,友だちや先生との関係が深まりにくい。
・不安型愛着の場合,過剰の友だちに近づき,疎遠にされると執拗にしてしまうなど
 ある。
・ストレスを自分に対する攻撃と受け止め,暴力や暴言になってしまう。
・ストレスが自分に向かうと,急に落ち込んで泣きはじめ,神経過敏に陥る場合もあ
 る。

6 行動を改善するための方策

・親族やかかりつけの医者,教師など,まわりの人々全体で親子を支援していく。
・低学年の場合担任が子どもを膝に載せたり,抱いたりするなど愛着形成を助ける。
 (オキシトシン効果)
・教室の中でも,教師が笑顔,よい所を見つける,褒める指導を中心に据え,安全地
 帯を形成する。
・他者との愛着の回復を目指すことで問題行動の症状を改善するだけでなく人生も豊
 かにしていく(愛着修復的アプローチ)
・重要な他者との関係回復にこだわらず,誰であ,身近にいる存在の人が,臨時で安
 全基地となることで安定化を図る。(愛着安定化アプローチ)





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情緒障害の子どもたち

2019年02月15日 | 教育
【情緒障害】

 情緒障害とは,何かの原因で感情面に問題が生じ,不適切な行動が引き起こされ,
それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続して,学校生活や社会生活
に適応できなくなる状態をいう。※ただし,教育上の捉え方と医学上の分類は違うた
め,教育,医療,福祉の立場により,それぞれ定義には違いがある。

1 特徴的に表れるところ

・選択制緘黙(話せないのではなく,話さない状態)
・食事,睡眠,排泄の問題(過食,不眠,失禁等)
・神経的習癖の問題(チック,爪噛み,抜毛等)
・対人関係の問題(孤立,いじめ等)
・情緒不安定(気持ちの浮き沈み,癇癪等)
・学業不振,不登校

2 原因

・従来,主として人間関係など心理的な要因と,中枢神経系の機能不全の要因が考えら
 れていた。現在は,中枢神経系の機能不全を主たる原因とする自閉症に関しては,分
 けて考えられている。家族間の人間関係,特に親の拒否的態度,冷淡,放任,過保護
 期待過剰等により,感情生活に支障をきたしたものも大きいとされる。

3 教室で見られる症状,症例


・学校に行きたがらなくなったり,学校で一言も口をきかなくなったり,目をぱちぱち
 させる,肩をすくめるなどのチック症状が出ることもある。
・友だちがうまく作れず,常に落ち込んだ気持ちになり,気分が悪くなったり,頭痛に
 襲われたりして,保健室に行くことが頻繁となる。
・不安やストレスが強くなってしまい,頭やお腹が痛くなったり,熱が出たりする。本
 当に体の調子が悪くなっている。
・上記の内向的に見られるものの他,外向的に見られるものとして,離席、教室からの
 抜け出し,集団行動に入らない,暴言,暴力などに出てしまう場合もある。

4 早期発見のポイント

・朝になると,体調不良を訴え,学校に行けない日がある。
・分からないことがあると,興奮して大きな声を出したり周りにあたり出したりする。
・初対面の人とうまくコミュニケーションが取れず,黙ってしまう。
・休み時間や放課後に友達と遊べず,仲間に加われない。
・大人に対して妙に甘えたり,強く反抗したりする態度が時折みられる。

5 行動を改善するための方策

・問題となる行動が見えたとき注意するのではなく,まず,なぜそうするのか,と考え
 る。
・教室は安心できる場とするよう,教師は笑顔を心がけ,学級の子どもたちに対して褒
 め言葉を旨とし,暖かい空間づくりをする。
・声をかけたり,話を聞く時間を作ったりし,気にかける時間を多くする。





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反抗挑戦性障害のこどもたち

2019年02月14日 | 教育
【反抗挑戦性障害】

 反抗挑戦性障害とは,特に親や教師など目上の人に対して,拒絶的,敵対的,挑戦
的な行動をとる疾患である。DSM-5では,怒りっぽく,しばしばかんしゃくを起こし
たり,口論好きで人をイライラさせたり,意地悪で執念深かったりする様々な症状の
うち,4つ以上が6か月以上持続することとされる。育ちの中での要因の他,ADHDの
2次障害として発症しやすいとも言われている。診断として反抗期とは区別され,そ
の重症度や頻度が重篤なものである。

1 特徴的に表れるところ

・怒りっぽくイライラしやすい。気分の浮き沈みが激しく,周囲からの刺激に対して
 過剰に反応し,かんしゃくを起こす傾向がある。
・周囲がイライラする挑発的な行動をとる。家庭や学校の規則が守れず,学校では破
 壊的な行動を取ったり,校舎の屋根を走り回ってしまったりするなど,注意をされ
 ても繰り返してしまうような行動が見られる。
・意地悪で執念深い言動をする。言動はしばしば挑戦的であり,大人のいうことに対
 していちいち逆らったり,議論をもちかけたりして,その行為を楽しむようなそぶ
 りを見せる。

2 原因

・育ちの中での要因がある。自己調整力の弱さを抱える中,拒絶,無視,溺愛,一貫
 性のないしつけ,学校での不適応,学業不振といった状況が適切に対応されず放置
 されると,問題行動が増加し,反抗的な感情が積み重なって発症する。
・ADHD(注意欠陥多動性障害)の2次症状としての要因がある。ADHDでは,不注意,
 多動性,衝動性など症状のため,周囲から注意を受けやすい,その積み重ねが,2
 次障害として,ODD(反抗挑戦性障害)を発症するとも言われている。

3 教室でやってはいけない対応

・問題となる行動に対して,ただ,非難,批判,叱責を繰り返すことは,症状をさら
 に悪化させる危険性がある。周囲に対して適切な行動をとることができず,これま
 で,十分に非難,批判,叱責等は受け続けてきていることが予想される。

4 教室での対応策

①自己肯定感を高める

・自己肯定感がかなり低下し周囲の大人は敵である,という認識に至っている傾向が
 ある。近づくだけで,「やらない」「やだ」と言ってくる。そういった言動に感情
 的に対応せず,できていることを認め,褒める。席についていること,掃除の場に
 いることでも頑張っていることを認め,周りの大人が決して敵ではないことを気づ
 かせるようにする。

②関係性を改善する接し方に努める

・一緒にいる時間は貴重である。朝など,話をする時間を作る。キャッチボールや腕
 相撲などをする。。人との関係性が上がると,教室内で現れる症状は減少する。

5 未然に防ぐためのポイント

・ある日,突然発症するわけではなく,周囲への不満,不信感が積み重なって発症に
 至る。本人は周囲とうまく対応できず,心の底に強い劣等感が沸き起こり,自己肯
 定感が下がっていく中での起こるものである。早い段階から,うまく行動できない
 ことは,具体的に教えてほめる対応を心がける。本人がうまくできない苦しさを理
 解して接する。
・接する上では周りの大人が共通理解をもって接することが必要である。一貫した態
 度(具体的に教えてほめる)を取るように心がける。


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