【もぐら叩き】福島原発がどんなに危機的状況にあるか、9/17「日経」記事を読んでほしい。(添付1)
やはりオリンピック誘致のために真相が隠されていたようだ。
政府は、9/7のブエノスでの「under control」演説まで、報道管制を敷くとともに、9/3には急遽「氷壁」建設などを決め、金もないのに500億円を福島原発に投入することを決めた。
真実を報道しようとするジャーナリストに対する、政府と東電の締め付けは相当厳しいようだ。「もっと重大なことが隠されている」という私の予感は、遺憾ながら事実だったようだ。
報道各社とも、政治部の力が強くなって、社会部、科学部の報道を自己検閲しようという動きが強くなっている。(記事と論調の解離を見ればわかる。)これは太平洋戦争前の報道と同じ兆候だ。
WSJは東電が台風の最中に、汚染水を外洋に放出したことを報じている。
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2013/09/16/fukushima-watch-tepco-drains-water-during-typhoon/
これを読むと、台風を口実にして、東電が原発敷地内の汚染水の量を減らした可能性があると思われる。
JDP(Japan Daily Press)は福島には野積の放射性廃棄物15万トンがまだそのままになっていると、大きく報じている。
http://japandailypress.com/150000-tons-of-radioactive-fukushima-waste-left-in-the-open-away-from-storage-1635936/
9/17夜のTBS「報道ステーション」を見ると、「汚水タンク」エリアを取りまく遮水壁のバルブは、タンクからの水漏れが問題化するまで、ずっと開きっぱなしで、雨水は外洋に流れていたそうだ。東電も政府もまたウソをついていた。
東電や政府の情報統制に屈することなく、ジャーナリストの熱意ある調査報道を望みたい。なに日本語メディアが報じなければ、海外メディアに流せばよい。今、日本人の5%は外国語による報道を読むことができる。
指導的な5%が正確な情報にアクセスできていれば、メディアが迎合して「安倍レジーム」ができても、日本を誤らせることはない。平成の桐生悠々よ、出でよ。黒沢洌よ、出でよ。
9/17の「東京」を見ると、判りやすい図解があり、事態がもっとよく分かる。(添付2)
政府・東電が「氷壁」で囲うとしているのは、右上の1~4号機のまわりだ。作るだけで2年かかるが、効果のほどは未知数だ。普通はこういう場合、小規模の「公開予備実験」を行うものだが、その気配はない。建設費、維持費がどれだけかかるかわからない。地下水の流れが止まらないかぎり、100年は維持しないといけない。
メルトダウンした3基の原発地下で汚染された地下水が、外洋に出ないように防潮堤の入口に作られたフェンスで、港の面積が0.3平方キロ。「ここに汚染水は閉じ込められている」と考え「コントロールされている」と首相は述べたのだ。だがそれはウソだった。
汚染地下水を汲み上げるために掘られたのが、原発の西にある「地下水バイパス」と称する12本の井戸である。組み上げた水は、図でB~Hまで8つの区画に分かれたエリアに貯蔵されている。ここに1000基近くの貯水タンクが設置されているが、安物でしょっちゅう水漏れを起こしている。H4は原発地下から組み上げた高濃度汚染水を溜めたタンクだ。
おまけに、水漏れ対策として、タンク置き場の回りに「遮水壁」を作った。屋根なしだ。台風18号で大量の雨が降り、どうにもならなくて遮水壁のバルブを開けたらから、汚染水は排水溝(青色)を通って直接外洋に出た。元々「港湾内部に汚染水を閉じ込める」というのが戦略であるなら、この位置に汚水タンクを設置してはいけなかったし、設置するなら、排水溝出口の位置を変えなくてはならなかったのだ。
この地表水の排水溝は、夫沢簡易郵便局の東を南北に走る、山頂の東側斜面に降った雨水を、全部集めて外洋に排出するようになっている。表層土や落ち葉や枯れ枝が放射能に汚染されているのだから、雨が降れば汚染水が外洋に流出するのは当たり前だ。夏場は阿武隈山系にぶち当たった太平洋からの湿った空気が、この辺に長雨をもたらすことは、気象学者なら周知の事実だろう。
東電のいうようにベータ線を出すストロンチウム90(Sr90)が漏れたのなら、半減期はセシウムと同じ約30年だ。体内に入ると、カルシウムの換わりに骨に蓄積する。生物濃縮が起こり、骨ごと食う小魚や母乳をつうじて、ヒトの体内に蓄積する。幼児への影響は成人の5~7倍だ。
これだけでも大問題なのに、すでに汚染水はこの2年半のうちに、地下水となって東斜面地下を下り、メルトダウンし廃墟となった原発建屋地下に流れ込んでいることだ。このことは、事故発生直後から、管内閣で問題にされていたことを「日経」記事は伝えている。水素爆発やメルトダウンが相次いで起こる中で、原発周囲に「氷壁」が作れるわけがない。が、案としてはあったのを東電が妨害して、隠したということだ。
しかしこれも「地下水がなぜ東に流れるか」を考えれば、原発の立地条件に問題があることは明らかだ。
(添付3)20万トンタンカー50隻分のタンクを山側の高台に並べて、重みで地盤が崩れたり、大雨で地盤がゆるんだために、タンクがドミノ現象で倒壊することは考えないのだろうか?事故で倒れたクレーン車がタンクを直撃する事態だってあろう。こんな狭い範囲に巨大タンクを林立させているのだから、何かが原因で一つが倒れれば、他に波及するのはわかりきったことだ。
原発を運転する前提では、豊富な地下水の存在が必要条件だった。今、事故を起こして、廃炉作業を進めるには、その条件が逆に障害になっている。だったら、地下水そのものが原発に向かって流れ込まないように、長者原から地下トンネルを掘って流路を西向きに変えるしかなかろう。(添付4)この図は地理学者N氏による原図に私が説明を上書きしたものだ。間違いがあれば指摘してほしい。
この2年半、東電と政府がやって来たことは、ヤブ医者の治療も同然だ。吹き出した個々の症状に、対症療法をするモグラ叩きだ。一向に根本の病気は良くなっていない。高熱の病人の頭を冷やすのに氷嚢を使い、溶けた水を風呂桶に溜めれば、やがては風呂場が溢れる。いまやっていることはそれと同じだ。
事故処理には、原子物理の専門家だけでなく、地理・地質学や気象学の専門家、ボーリングや土木工学の専門家の意見を十分に聞くべきだろう。
福島の処理つまり問題の封じ込めまで、100年はかかるだろう。その間にM8級の地震が2回は来る。
メルトダウンした核燃料の取りだしに成功しなければ、地下の建屋そのものが、強烈なガンマ線と中性子により、劣化が進む。そこを地震津波に襲われたらどうなるか。オリンピックの最中には、その地震が起こらないという保証はどこにもない。
アベノミクスが成功すればインフレになるから、いま年間500億円の工事費は5,000億円位に膨らむだろう。10年間で5兆円だ。しかし10年後に溶融した炉心の除去に成功する保証はまったくない。保守点検ができない建屋や、海まで続いているコンクリートで固めた敷地そのものにも、劣化が生じる。そうなると、10年後の状況は今よりも悪化している可能性がある。100年後に仮に処理に成功したとしても、その総経費は500兆円を超えるだろう。東電はとっくに消滅している。
キンドルバーガー「経済大国興亡史」(岩波書店)は、国家の一生と人間の一生を比較して論じた面白い本だ。国家のライフ・サイクルは、古代のギリシア、ローマでは500年、中世から近代までは200年、近代以後は50年だという。近代国家はまず貿易から始まり、ついで工業に移り、それから金融が主産業になるという。英国がそのモデルだ。戦後日本は金融が主産業になる前に衰退期に入った。アジアの金融センターは香港とシンガポールだ。
日本は工業においては、「カイゼン」などの新しい手法を生みだしたが、金融分野では新技法を生み出せなかった。金融用語はみなカタカナ英語だ。「頼母子講」のような伝統的金融がありながら、アマルティア・センの「グラミー銀行」のようなものへと発展させることもできず、ノーベル経済学賞をもらった人もいない。
理由は二つ。大蔵省の規制が厳しすぎたことと、少子高齢化の急速な進行だ。ことに後者のインパクトは大きい。幸い50年後には団塊の世代はみんないなくなる。だが人口が半減した社会で、誰が国の借金を返済し、福島の処理を続けるのか?
処理を誤ると、福島原発は日本という国家の「直接死因」になるだろう。
やはりオリンピック誘致のために真相が隠されていたようだ。
政府は、9/7のブエノスでの「under control」演説まで、報道管制を敷くとともに、9/3には急遽「氷壁」建設などを決め、金もないのに500億円を福島原発に投入することを決めた。
真実を報道しようとするジャーナリストに対する、政府と東電の締め付けは相当厳しいようだ。「もっと重大なことが隠されている」という私の予感は、遺憾ながら事実だったようだ。
報道各社とも、政治部の力が強くなって、社会部、科学部の報道を自己検閲しようという動きが強くなっている。(記事と論調の解離を見ればわかる。)これは太平洋戦争前の報道と同じ兆候だ。
WSJは東電が台風の最中に、汚染水を外洋に放出したことを報じている。
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2013/09/16/fukushima-watch-tepco-drains-water-during-typhoon/
これを読むと、台風を口実にして、東電が原発敷地内の汚染水の量を減らした可能性があると思われる。
JDP(Japan Daily Press)は福島には野積の放射性廃棄物15万トンがまだそのままになっていると、大きく報じている。
http://japandailypress.com/150000-tons-of-radioactive-fukushima-waste-left-in-the-open-away-from-storage-1635936/
9/17夜のTBS「報道ステーション」を見ると、「汚水タンク」エリアを取りまく遮水壁のバルブは、タンクからの水漏れが問題化するまで、ずっと開きっぱなしで、雨水は外洋に流れていたそうだ。東電も政府もまたウソをついていた。
東電や政府の情報統制に屈することなく、ジャーナリストの熱意ある調査報道を望みたい。なに日本語メディアが報じなければ、海外メディアに流せばよい。今、日本人の5%は外国語による報道を読むことができる。
指導的な5%が正確な情報にアクセスできていれば、メディアが迎合して「安倍レジーム」ができても、日本を誤らせることはない。平成の桐生悠々よ、出でよ。黒沢洌よ、出でよ。
9/17の「東京」を見ると、判りやすい図解があり、事態がもっとよく分かる。(添付2)
政府・東電が「氷壁」で囲うとしているのは、右上の1~4号機のまわりだ。作るだけで2年かかるが、効果のほどは未知数だ。普通はこういう場合、小規模の「公開予備実験」を行うものだが、その気配はない。建設費、維持費がどれだけかかるかわからない。地下水の流れが止まらないかぎり、100年は維持しないといけない。
メルトダウンした3基の原発地下で汚染された地下水が、外洋に出ないように防潮堤の入口に作られたフェンスで、港の面積が0.3平方キロ。「ここに汚染水は閉じ込められている」と考え「コントロールされている」と首相は述べたのだ。だがそれはウソだった。
汚染地下水を汲み上げるために掘られたのが、原発の西にある「地下水バイパス」と称する12本の井戸である。組み上げた水は、図でB~Hまで8つの区画に分かれたエリアに貯蔵されている。ここに1000基近くの貯水タンクが設置されているが、安物でしょっちゅう水漏れを起こしている。H4は原発地下から組み上げた高濃度汚染水を溜めたタンクだ。
おまけに、水漏れ対策として、タンク置き場の回りに「遮水壁」を作った。屋根なしだ。台風18号で大量の雨が降り、どうにもならなくて遮水壁のバルブを開けたらから、汚染水は排水溝(青色)を通って直接外洋に出た。元々「港湾内部に汚染水を閉じ込める」というのが戦略であるなら、この位置に汚水タンクを設置してはいけなかったし、設置するなら、排水溝出口の位置を変えなくてはならなかったのだ。
この地表水の排水溝は、夫沢簡易郵便局の東を南北に走る、山頂の東側斜面に降った雨水を、全部集めて外洋に排出するようになっている。表層土や落ち葉や枯れ枝が放射能に汚染されているのだから、雨が降れば汚染水が外洋に流出するのは当たり前だ。夏場は阿武隈山系にぶち当たった太平洋からの湿った空気が、この辺に長雨をもたらすことは、気象学者なら周知の事実だろう。
東電のいうようにベータ線を出すストロンチウム90(Sr90)が漏れたのなら、半減期はセシウムと同じ約30年だ。体内に入ると、カルシウムの換わりに骨に蓄積する。生物濃縮が起こり、骨ごと食う小魚や母乳をつうじて、ヒトの体内に蓄積する。幼児への影響は成人の5~7倍だ。
これだけでも大問題なのに、すでに汚染水はこの2年半のうちに、地下水となって東斜面地下を下り、メルトダウンし廃墟となった原発建屋地下に流れ込んでいることだ。このことは、事故発生直後から、管内閣で問題にされていたことを「日経」記事は伝えている。水素爆発やメルトダウンが相次いで起こる中で、原発周囲に「氷壁」が作れるわけがない。が、案としてはあったのを東電が妨害して、隠したということだ。
しかしこれも「地下水がなぜ東に流れるか」を考えれば、原発の立地条件に問題があることは明らかだ。
(添付3)20万トンタンカー50隻分のタンクを山側の高台に並べて、重みで地盤が崩れたり、大雨で地盤がゆるんだために、タンクがドミノ現象で倒壊することは考えないのだろうか?事故で倒れたクレーン車がタンクを直撃する事態だってあろう。こんな狭い範囲に巨大タンクを林立させているのだから、何かが原因で一つが倒れれば、他に波及するのはわかりきったことだ。
原発を運転する前提では、豊富な地下水の存在が必要条件だった。今、事故を起こして、廃炉作業を進めるには、その条件が逆に障害になっている。だったら、地下水そのものが原発に向かって流れ込まないように、長者原から地下トンネルを掘って流路を西向きに変えるしかなかろう。(添付4)この図は地理学者N氏による原図に私が説明を上書きしたものだ。間違いがあれば指摘してほしい。
この2年半、東電と政府がやって来たことは、ヤブ医者の治療も同然だ。吹き出した個々の症状に、対症療法をするモグラ叩きだ。一向に根本の病気は良くなっていない。高熱の病人の頭を冷やすのに氷嚢を使い、溶けた水を風呂桶に溜めれば、やがては風呂場が溢れる。いまやっていることはそれと同じだ。
事故処理には、原子物理の専門家だけでなく、地理・地質学や気象学の専門家、ボーリングや土木工学の専門家の意見を十分に聞くべきだろう。
福島の処理つまり問題の封じ込めまで、100年はかかるだろう。その間にM8級の地震が2回は来る。
メルトダウンした核燃料の取りだしに成功しなければ、地下の建屋そのものが、強烈なガンマ線と中性子により、劣化が進む。そこを地震津波に襲われたらどうなるか。オリンピックの最中には、その地震が起こらないという保証はどこにもない。
アベノミクスが成功すればインフレになるから、いま年間500億円の工事費は5,000億円位に膨らむだろう。10年間で5兆円だ。しかし10年後に溶融した炉心の除去に成功する保証はまったくない。保守点検ができない建屋や、海まで続いているコンクリートで固めた敷地そのものにも、劣化が生じる。そうなると、10年後の状況は今よりも悪化している可能性がある。100年後に仮に処理に成功したとしても、その総経費は500兆円を超えるだろう。東電はとっくに消滅している。
キンドルバーガー「経済大国興亡史」(岩波書店)は、国家の一生と人間の一生を比較して論じた面白い本だ。国家のライフ・サイクルは、古代のギリシア、ローマでは500年、中世から近代までは200年、近代以後は50年だという。近代国家はまず貿易から始まり、ついで工業に移り、それから金融が主産業になるという。英国がそのモデルだ。戦後日本は金融が主産業になる前に衰退期に入った。アジアの金融センターは香港とシンガポールだ。
日本は工業においては、「カイゼン」などの新しい手法を生みだしたが、金融分野では新技法を生み出せなかった。金融用語はみなカタカナ英語だ。「頼母子講」のような伝統的金融がありながら、アマルティア・センの「グラミー銀行」のようなものへと発展させることもできず、ノーベル経済学賞をもらった人もいない。
理由は二つ。大蔵省の規制が厳しすぎたことと、少子高齢化の急速な進行だ。ことに後者のインパクトは大きい。幸い50年後には団塊の世代はみんないなくなる。だが人口が半減した社会で、誰が国の借金を返済し、福島の処理を続けるのか?
処理を誤ると、福島原発は日本という国家の「直接死因」になるだろう。
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