【SFTS】という「新型ウイルス病」で死者3名が出た(山口県、宮県、愛媛県)との厚労省発表をメディアが報道している。
Severe Fever with Thrombocytopenia Syndromeの略号がSFTSだ。「重症の発熱と血小板減少症を特徴とする症候群」という意味だ。
2011年4月のNew. J. Med.誌に中国のXue-Jie Yuらが詳しい論文を発表してから知られるようになった。
「縦書き新聞」では病名のフル標記ができまい。
論文によると2009から湖北省と河南省にこの奇妙な病気が発生し始め、当初の致死率は30%であったという。
2009~2010/9まで上記2省以外にも遼寧省、山東省、江蘇省、安徽省の6省にひろげ「監視調査」体制をとったところ、241人の入院患者が発見され、うち171人から新型のウイルスが見つかった。
患者の75%は50歳以上で、97%が農林業従事者の男女であった。
新型ウイルスは、ブニヤウイルス(Bunyavirus)科に属し、フレボウイルス(Phlebovirus)属の新種SFTSウイルス(SFTSV)とされる。
各省で分離されたSFTSV(一本鎖RNAウイルス)は、そのヌクレオチド配列に変異があり、その祖型は系統発生樹上、ブニヤウイルス祖型と類似性がある。
一本鎖RNAウイルスにはRNAポリメラーゼ遺伝子をもっていて、mRNAを合成して、これによりリボソームを乗っ取りタンパク質を合成する(+)ウイルスと、遺伝子RNAがそのままmRNAとして働く(-)ウイルスがあるが、ブニヤウイルスは後者に属する。
このSFTSVのRNAがマダニ科のH. longicornisダニから検出された。このダニは家畜、鹿、ネコ、マウス、イタチ、ハリネズミ、ヒト、野鳥にとりついている。
このダニは、アジア太平洋全域、つまり中国、朝鮮、日本、オーストラリア、太平洋の諸島、ニュージーランドにひろく分布している。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1010095#t=article
この論文で見るかぎり、「Emerging Virus」であることは間違いないが、SARSのように渡り鳥が運んで来たというよりも、国内に古くからあった病気が、中国からの報告以来、「発見されるようになった」ということだろう。
中国から最近渡来したものか、日本固有のものかは、死亡した3人の患者のウイルスRNA配列を調べればすぐわかる。
2009年以後に「輸入」されたものなら、RNAに変異はないはずだ。もし日本固有のものなら、3県ともRNA配列が違うはずだ。
人間による環境破壊が原因で、世界中で新型の病原体がヒトを襲うようになっている。エイズもエボラ熱もナイル熱もそれだ。
マダニは樹上にひそみ、動物が近づいてくるとその強力な赤外線センサーで獲物に「ロック・オン」し、背中に落ちて、毛のなかにもぐり込み吸血する。5年間も何も食わないで、樹上にひそんでいることができる。5年目にヒトが来れば、間違いなくターゲットになる。
ダニ(Mite)には陸生のもの、吸血性のもの(Tick)、土中生のもの、水生のものといろいろある。新潟県の燕温泉からは、40℃の温水に棲息するオンセンダニが見つかっている。日本語では「ダニ」しかないが、英語ではマイト(非吸血性のダニ)とチック(吸血性のダニ)は別の言葉である。
日本語でも「ツツガムシ」のように、ダニであってもダニという和名をもたないものがいる。ツツガムシ病を起こすのは「アカツツガムシ」である。
かつて新潟、福島、山形、青森の4県に分布していたツツガムシ病は、ダニが病原リケッチャを感染させるために起こるSFTS類似の疾患だ。しかし、ダニを運ぶノネズミがカヤ原の減少によりいなくなったので、消滅してしまった。消えて行く病気もあれば、出現する病気もある。
厚労省は秘密主義でいたずらに不安を煽るのをやめ、早急にRNA検索結果を公表すべきだ。
Severe Fever with Thrombocytopenia Syndromeの略号がSFTSだ。「重症の発熱と血小板減少症を特徴とする症候群」という意味だ。
2011年4月のNew. J. Med.誌に中国のXue-Jie Yuらが詳しい論文を発表してから知られるようになった。
「縦書き新聞」では病名のフル標記ができまい。
論文によると2009から湖北省と河南省にこの奇妙な病気が発生し始め、当初の致死率は30%であったという。
2009~2010/9まで上記2省以外にも遼寧省、山東省、江蘇省、安徽省の6省にひろげ「監視調査」体制をとったところ、241人の入院患者が発見され、うち171人から新型のウイルスが見つかった。
患者の75%は50歳以上で、97%が農林業従事者の男女であった。
新型ウイルスは、ブニヤウイルス(Bunyavirus)科に属し、フレボウイルス(Phlebovirus)属の新種SFTSウイルス(SFTSV)とされる。
各省で分離されたSFTSV(一本鎖RNAウイルス)は、そのヌクレオチド配列に変異があり、その祖型は系統発生樹上、ブニヤウイルス祖型と類似性がある。
一本鎖RNAウイルスにはRNAポリメラーゼ遺伝子をもっていて、mRNAを合成して、これによりリボソームを乗っ取りタンパク質を合成する(+)ウイルスと、遺伝子RNAがそのままmRNAとして働く(-)ウイルスがあるが、ブニヤウイルスは後者に属する。
このSFTSVのRNAがマダニ科のH. longicornisダニから検出された。このダニは家畜、鹿、ネコ、マウス、イタチ、ハリネズミ、ヒト、野鳥にとりついている。
このダニは、アジア太平洋全域、つまり中国、朝鮮、日本、オーストラリア、太平洋の諸島、ニュージーランドにひろく分布している。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1010095#t=article
この論文で見るかぎり、「Emerging Virus」であることは間違いないが、SARSのように渡り鳥が運んで来たというよりも、国内に古くからあった病気が、中国からの報告以来、「発見されるようになった」ということだろう。
中国から最近渡来したものか、日本固有のものかは、死亡した3人の患者のウイルスRNA配列を調べればすぐわかる。
2009年以後に「輸入」されたものなら、RNAに変異はないはずだ。もし日本固有のものなら、3県ともRNA配列が違うはずだ。
人間による環境破壊が原因で、世界中で新型の病原体がヒトを襲うようになっている。エイズもエボラ熱もナイル熱もそれだ。
マダニは樹上にひそみ、動物が近づいてくるとその強力な赤外線センサーで獲物に「ロック・オン」し、背中に落ちて、毛のなかにもぐり込み吸血する。5年間も何も食わないで、樹上にひそんでいることができる。5年目にヒトが来れば、間違いなくターゲットになる。
ダニ(Mite)には陸生のもの、吸血性のもの(Tick)、土中生のもの、水生のものといろいろある。新潟県の燕温泉からは、40℃の温水に棲息するオンセンダニが見つかっている。日本語では「ダニ」しかないが、英語ではマイト(非吸血性のダニ)とチック(吸血性のダニ)は別の言葉である。
日本語でも「ツツガムシ」のように、ダニであってもダニという和名をもたないものがいる。ツツガムシ病を起こすのは「アカツツガムシ」である。
かつて新潟、福島、山形、青森の4県に分布していたツツガムシ病は、ダニが病原リケッチャを感染させるために起こるSFTS類似の疾患だ。しかし、ダニを運ぶノネズミがカヤ原の減少によりいなくなったので、消滅してしまった。消えて行く病気もあれば、出現する病気もある。
厚労省は秘密主義でいたずらに不安を煽るのをやめ、早急にRNA検索結果を公表すべきだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます