ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【分母】難波先生より

2013-02-15 06:35:42 | 難波紘二先生
【分母】まだ「ソ連」という国と、「プラウダ」というウソばかり伝える国営メディア(「プラウダ」はロシア語で「真実」の意)が存在していた頃、こんなアネクドート(小話)が生まれた。
 ソ連のゴルバチョフ書記長と米国のカーター大統領が論争になり、二人が競技グランドを一周して勝った方の意見を採用することになった。で、レースの結果はカーターの勝ちだった。


 翌日のプラウダの報道。「最近行われた国際陸上レースの結果、ソ連は堂々2位になった。これに対してアメリカは哀れにもビリから2番目であった。」
 これは事実としてはまったく正しい。しかし母数としてのレース参加者が書かれていないから、読者に誤解を与えるように仕組まれている。


 この前の「日揮人質事件」でも今度の「グアム殺傷事件」でも、メディアは母数を示さず、「日本人の死傷者数」だけを強調する。イメナスで働いていた外国人の国別母数を示し、その上に死傷者数を示すという当たり前の報道がなぜできない。体質はプラウダと変わらないではないか。


 グアム島には年間120万人の観光客が訪れる。うち8割は日本人だ。まして高級ホテルやショッピングセンターのある繁華街だ。
石を投げれば日本人にあたるだろう。そこで無差別殺傷事件が起これば、殺されるのは日本人に決まっている。
 秋葉原で買い物をしていても、理由なく殺されるのだから、グアムで殺されるのは不思議でも何でもない。


 精神病学者野田正彰の政治的発言を私は支持しないが、『狂気の起源をもとめて:パプア・ニューギニア紀行』(中公新書, 1981)は名著だと思う。西洋文明と土着文明のせめぎあいの箇所で、原住民に狂気が生まれるという事実の指摘だ。
 グアム島は最後の日本兵横井庄一が戦後28年間、降伏せずに立て籠もった島だ。(新藤兼人「弔辞」, 岩波新書に「恥ずかしながら生きながらえて」という映画シナリオが収録されている。俳優の伴淳三郎に依頼されて、この事件を主題に書いたものだが、映画化されなかった。)
 横井は生きるために、盗みも人殺しもやっている。
 グァム島の歴史を見ると、日本人観光客にいい顔をするものだけではあるまい。


 私は犯人が狂気に冒されていたと考えるが、その原因が何かまではわからない。しかしethnophobiaをあらかじめ除外するのはナイーブというものだろう。メディアは心して報道してもらいたい。
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