ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【SFTS媒介動物】難波先生より

2013-02-18 12:07:04 | 難波紘二先生
【SFTS媒介動物】は「Haemophysalis bispinosa NEUMAN」が学名で、動物学者はこれを「フタトゲチマダニ」と邦訳していますが、マダニ属ではなく「チマダニ属」です。属名の「Haemophysalis」は「血(haemo)」を「好むもの(physalis)」の意。「bispinosa」は「二本の棘」で、背中に2本の棘状の突起があることから来たもの。マダニ属は「Ixodes」という名前で始まります。

 青木淳一『新訂土壌生物学』(北隆館, 2010)によると、日本のダニ研究は著しく遅れていて、森川国康、石川和男、伊戸康広による研究がほとんどを占めるという。
 
 「新日本動物図鑑(全3巻)」(北隆館)は1冊2万円もするが、ひどい本で、「マダニ」とか「チマダニ」という項目がない。もちろん「ダニ」もない。これは索引作りを編集部にまかせたためで、和名を頭から丸暗記していないと索引が利用できない。そうではなくて、「語幹」を索引として拾い、それに文脈索引として「ダニ、マー」、「チマダニ, フタトゲー」のように索引を作るべきなのだ。


 学者もダメだが、出版社もダメだ。
                                         
 ダニの和名は、ラテン語を知らない動物学者が命名したものが多いので、混乱があります。マダニもチマダニも吸血性です。
 但し、ツツガムシ・リケッチャやSFTSVに汚染されていない限り、害はありません。

 東広島市にもフタトゲチマダニに咬まれた例があることを、東広島市の本城先生からのメールで知りました。2010年夏に発生している。(本城先生のようにデータをきちんと整理する熱心な開業医はまれです。)
 これはSFTSV陰性の例と思われます。

<フタトゲチマダニ咬傷の1症例                 2010/08/27(金)
                          本城内科小児科 本城典彦
症 例:64歳 男性。No.3115. 高屋町郷在住。
初診日:2010/07/14(水)
主 訴:右上腕後面のダニ咬傷
前日の07/13(火)午後9時すぎ、妻から電話がかかった。
「今夜、入浴時、右上腕後面に咬着していた大豆大の「ダニ」がとれた。ネットで調べるとライム病のことなどが書いてあるが、大丈夫か? ダニは採取してびんに入れているが、生きている。畑で草取りやきゅうりの採り入れを07/12までやっており、そのときに咬み付かれたものと思う。」
翌07/14朝来院、右上腕後面の咬傷とダニを見せてもらい撮影したのち、東広島医療センター皮膚科仁熊利之先生に紹介し同時にダニの同定をお願いした。ダニは生きており、大きくて、長径10mm、短径6mm、厚さ5mm。

仁熊先生からの返信によるとーー
国立感染症研究所昆虫医科学部・林 利彦先生による同定は、
フタトゲチマダニ Haemaphysalis longicornis ♀
であった。>

 このlongicornisは「長い角」という意味で、「二棘(bispinosa)」とは異なり、チマダニ属だがフタトゲチマダニとは別種である。恐らく鑑定ミスであろう。

 いずれにせよSFTSの感染症が発生しても、ヒトからヒトへの感染は起こらないので、パニックに陥る必要はない。
メディアもちゃんと勉強して、恐怖をあおるような報道は慎んでもらいたい。
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