ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【人間の絆】難波先生より

2018-02-05 11:24:26 | 難波紘二先生
【人間の絆】主治医から「脳の休養が必要だ」といわれ、一年ぶりくらいに映画を観た。DVDのサマセット・モーム「Of Human Bondage」だ。邦題では「人間の絆」となっているが、原題に忠実な訳は「人間の繋がりについて」で、私のいう「世の中はネットワークで繋がっている」と同じ意味だとわかった。

原作はモームの同名小説(1915)。映画化は1937年と12年も遅れている。
日本公開時の映画邦題は「痴人の愛」というから、笑ってしまう。
よくも「痴人の愛」(1924-25)を書いた、谷崎潤一郞が怒らなかったものだ。

モームはドイツのハイデルベルグ大学医学部に学んだが、途中で医学から文学に転向した。だから本作は自伝的要素がつよい。(映画では美術科から医学科に転科する)
英語は古典的な英国英語で、字幕なしでも8割は理解できた。
まあ、80年以上前のキングス・イングリッシュのせいもある。

ハイデルベルグは大学町で、ハインリッヒ・マンの小説「アルト・ハイデルベルグ」に出てくる「赤い雄牛」という居酒屋兼レストランは、今もある。ここからライン川に架かる橋を渡り、ライン左岸に行くと「哲学者の路」がある。京大の「哲学者の路」はあのミニチュア版だ。

映画では舞台がロンドンになり、主人公フィリップはロンドン大学の学生で、美術の才能がないことを悟り、医科に転向する。それが居酒屋の性悪女(ベティ・デービス)にぞっこん惚れ込み、手玉に取られる。(ここはハイデルベルグでの、モームの実体験だろう。というのもフィリップ(レスリー・ホワード)のアホぶりに、見ていて腹がたつからだ。実体験がなければ、ここは想像では書けない)

高校の頃、「人間の絆」は図書館の本で読んだ。
主人公がClubfoot(エビ足)とあり、身障者だと分かったが、何のことか正確にはわからなかった。映画では解剖学の授業で、教授が「内反足」の説明をし、むごいことにフィリップの足を学生に見せる。要は、足首が回外し、足が内転位で固定した先天奇形だった。

誰の訳だったかは忘れたが、この小説の「エビ足」の謎が、映画のおかげで60年ぶりに解けてよかった。

 フィリップを散々手玉に取った悪女(ベティ・デービス)は最後に肺病で死ぬ。フィリップはロンドンの有名な王立病院で、臨床医としての修練を積むが、内反足による障害のため、病院に働き口がない。やむなく船医を目指すが、彼を本心から愛してくれているサリーと再会し、結婚する決意を固める。折しも、学資の面倒を見てくれた叔父が亡くなり、300ポンドの遺産が残された。
 ちゃんとハッピーエンドで終わる。
 よい気分転換になった。


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