【メンタル・ブロック】<ど忘れ>のことを英語でそう呼ぶ。
これは記憶が消去されてはいないが、再生のための神経回路が上手くつながらない状態をいう。
先日、東広島市西条栄町で友人仲間と新年宴会をしていて、話題がこの前、亡くなった政治家野中広務に及んだ。彼は「路地」出身であることを公表した最初の政治家の1人だろう。
そこで「紀州熊野出身の作家もそうだよ」と言ったものの、名前が出て来ない。作品は読んだことがないからだ。
これがMental Blockである。
こういう時はどうしたら思い出せるか?
原理は簡単である。記憶は1個の脳細胞に蓄えられているのではない。想起の最短回路に支障が出ているだけだから、迂回路つまり「連想ネットワーク」を活性化させればよいのである。
講談社の和賀正樹さんに「熊野・被差別ブルース」という著書があること、JR新宮駅の表口左に「徐福公園」があり、駅から南に通りを歩くと商店街があり、その東端にその男の生まれた「路地」があり、そこからさらに東南の位置に「浮島公園」があること、などをしゃべっているうちに「中上健次」を思い出した。
「認知症」について売れそうな本を書く医者は多いが、「記憶再生」の機構を知って書く医師は少ない。記憶そのものはパソコンのハードディスクと同様で、完全に保たれている。老化により障害されるのは「再生の回路」である。
オリバー・サックスの「妻を帽子とまちがえた男」(晶文社、2002)
に、18歳の時に「嗜眠性脳炎」に罹り、以後意識不明になっていた女性が、63歳になってL−ドーパという、薬の投与を受けて、意識回復したら、時代遅れの言葉と共に、若い娘時代の下品な冗談やざれ歌を、完璧に思い出したという話が出てくる。
日曜日の昼過ぎは雪が舞っていた。ぼたん雪でも粉雪でもなく、六角形の雪の結晶のようなかたちの雪だった。おおかた天から降る途中でこういう形に発育したのだろう。
雪の結晶の撮影に成功したのはカナダの・ベントレーだが、江戸期の日本にも雪の結晶を観察し、絵図を残した藩主がいる、と思い出した。
江戸の北の方にある小藩だが、藩名も老中の氏名も、絵図譜の名前も思い出せない。
それをどうやって思い出したかを以下に書く。ご参考になれば幸いだ。
1)まず「大名の日本地図」(中嶋繁雄:文春新書、2003)で、「関東」の地図を見ると55藩があり、うち「古河(こが)」藩があった。これで藩名を思い出した。
2)ついで、「古河藩 八万石」のページを見ると、土井利位(としつら)(藩主・老中主座)が「雪花図説」を刊行したとわかった。これは顕微鏡観察から絵にしたものだ。
3)ここから連想が働いて、蔵書DBを検索したら、ベントレーの英語本はあるが、「雪花図譜」はなく、前に雑誌「ミクロスコピア」で、誰かが土井利位の「雪花図譜」を取り上げ「世界最初の雪の顕微鏡観察」と述べたので、「読者からのレター」で異論を述べたことを、思い出した。
このように、ど忘れしても諦めないで、パソコンやグーグル地図や、エクセルDBなどの助けを借りて、連想チェーンのどこかにたどり着けば、後は全部思い出せるのだ。
「記事転載は事前に著者の許可が必要です。必ずご連絡いただきますようお願いいたします」
これは記憶が消去されてはいないが、再生のための神経回路が上手くつながらない状態をいう。
先日、東広島市西条栄町で友人仲間と新年宴会をしていて、話題がこの前、亡くなった政治家野中広務に及んだ。彼は「路地」出身であることを公表した最初の政治家の1人だろう。
そこで「紀州熊野出身の作家もそうだよ」と言ったものの、名前が出て来ない。作品は読んだことがないからだ。
これがMental Blockである。
こういう時はどうしたら思い出せるか?
原理は簡単である。記憶は1個の脳細胞に蓄えられているのではない。想起の最短回路に支障が出ているだけだから、迂回路つまり「連想ネットワーク」を活性化させればよいのである。
講談社の和賀正樹さんに「熊野・被差別ブルース」という著書があること、JR新宮駅の表口左に「徐福公園」があり、駅から南に通りを歩くと商店街があり、その東端にその男の生まれた「路地」があり、そこからさらに東南の位置に「浮島公園」があること、などをしゃべっているうちに「中上健次」を思い出した。
「認知症」について売れそうな本を書く医者は多いが、「記憶再生」の機構を知って書く医師は少ない。記憶そのものはパソコンのハードディスクと同様で、完全に保たれている。老化により障害されるのは「再生の回路」である。
オリバー・サックスの「妻を帽子とまちがえた男」(晶文社、2002)
に、18歳の時に「嗜眠性脳炎」に罹り、以後意識不明になっていた女性が、63歳になってL−ドーパという、薬の投与を受けて、意識回復したら、時代遅れの言葉と共に、若い娘時代の下品な冗談やざれ歌を、完璧に思い出したという話が出てくる。
日曜日の昼過ぎは雪が舞っていた。ぼたん雪でも粉雪でもなく、六角形の雪の結晶のようなかたちの雪だった。おおかた天から降る途中でこういう形に発育したのだろう。
雪の結晶の撮影に成功したのはカナダの・ベントレーだが、江戸期の日本にも雪の結晶を観察し、絵図を残した藩主がいる、と思い出した。
江戸の北の方にある小藩だが、藩名も老中の氏名も、絵図譜の名前も思い出せない。
それをどうやって思い出したかを以下に書く。ご参考になれば幸いだ。
1)まず「大名の日本地図」(中嶋繁雄:文春新書、2003)で、「関東」の地図を見ると55藩があり、うち「古河(こが)」藩があった。これで藩名を思い出した。
2)ついで、「古河藩 八万石」のページを見ると、土井利位(としつら)(藩主・老中主座)が「雪花図説」を刊行したとわかった。これは顕微鏡観察から絵にしたものだ。
3)ここから連想が働いて、蔵書DBを検索したら、ベントレーの英語本はあるが、「雪花図譜」はなく、前に雑誌「ミクロスコピア」で、誰かが土井利位の「雪花図譜」を取り上げ「世界最初の雪の顕微鏡観察」と述べたので、「読者からのレター」で異論を述べたことを、思い出した。
このように、ど忘れしても諦めないで、パソコンやグーグル地図や、エクセルDBなどの助けを借りて、連想チェーンのどこかにたどり着けば、後は全部思い出せるのだ。
「記事転載は事前に著者の許可が必要です。必ずご連絡いただきますようお願いいたします」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます