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【書評】紀田順一郎『文庫の整理学』/難波先生より

2013-06-24 22:47:07 | 難波紘二先生
【書評】エフロブの「買いたい新書」に紀田順一郎『文庫の整理学』(講談社学術文庫)を取りあげました。
 http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1371195003
 いま文庫本は累計2万点以上刊行されていますが、各社の文庫を横断的に解説した目録がありません。それに本来は絶版、品切れがあってはいけないのに、入手不可の文庫本も目立ちます。


 紀田のこの本は、1985年時点での刊行文庫本から1,030冊を4つの分野に分けて、紹介・解説したものです。手元に置いて目を通してみると、「あ、これが文庫になっていたのか…」と驚くような発見があります。まるで古本屋で「掘り出しもの」を見つける感じです。お薦めの一冊です。


 昨、日曜日の「中国」書評欄の「活字の世界」という出版事情を紹介する欄に、2012年の新刊総点数が8万2204点に達した(「出版ニュース」調べ)とありました。対前年比約4%の伸びで、返本率は40%だそうです。
 本が売れなくなっているのに、新刊点数が異常に増加しているのは、本の「委託販売性」とニッパン、トーハンという大手取次店が納本時点で出版社に、納本品の一部を前渡しする慣行があるからです。(本の定価に対する出版社の取り分が「正味」です。これは岩波あたりだと7掛けですが、他の出版社はもっと低い。)


 前渡し金は小売店からの返本率が多いと、後日返金しなければいけないが、出版社は金がないから、次の本を出して新たな「前金」をもらおうとする。つまり新刊書をつぎつぎと出さないと、会社が倒産するという「自転車操業」に陥っており、これが異常な新刊書点数が過去最多という事態を招いている、と論じています。


 この問題を解消するためには、「委託販売制」をやめ、「返品なしの書店買い切り制」を導入するしかないだろうと「出版ニュース」代表清田義昭氏は論じています。私は2005年の『大学新入生に薦める101冊の本』で、まさにそう論じました。8年経ったら出版界の中からそういう意見が出るようになりました。


 新聞、雑誌、書籍の「定価販売」は独禁法違反です。今は公取委の「除外品目」でそうなっているにすぎません。洋書には定価が書いてなく、売値は店によりまちまちです。スーパーで安売りしているものもあります。
 日本の新刊書でも、いったん古書店を通すと、ダンピング価格で売られています。その儲けは古書店に行っているのです。かつて書店や出版社の利益を護るためにあった「再販制」はいまや小売店と出版社の首を絞めているわけです。早急にやめるべきだと思います。
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