【新聞を読んで】
7/21毎日「余録」が「カクテルパーティ効果」という現象を紹介していて面白く読んだ。経験のある人も多いと思うが、立食パーティで酔っぱらっていても、近くで誰かが自分の名前を出して話していると、騒音だらけなのに、すぐ耳に入る現象だ。現象は知っていたが、名称は知らなかった。
あれは「パーコレーション理論」でも説明が可能だと思う。パーコレーターでコーヒーを入れる時、初めフィルターの上に熱湯が溜まる。しばらく水面はそのままだが、次第に湯がコーヒーの粉末層を通過し、フィルターも下に向けて濡れが広がる。ひとたび一滴のコーヒーが落ちると、後は滑らかに液体コーヒーが出て、水面はみるみる低下して行く。いったんこうなったフィルターでは「初期遅延」は起こらない。この現象を一般化したものが「パーコレーション理論」だ。
で、これはPCR法でDNAを増幅するとき、1本鎖DNAにプライマーと呼ばれる「合成開始点」をくっつけておく方法に似ている。プライマー(primer)とは「呼び水(priming water)」に由来する新語だが、今は「岩波生物学辞典」にもプライマーとして載っている。昔、井戸からポンプで水を汲んでいた頃は、ポンプの中をあらかじめ水で満たしておかないと、間に空気があるので水を汲み上げられなかった。もう死語にちかい言葉だが、1980年頃には生きていた。
つまり「自分の名前」がプライマーとして耳に入ると、それに続く音声信号がパーコレートされて選択的に耳に入る可能性もある。プライマーの下流にあるDNAが複製されていく現象と似ている。
余録士は騒音の中でも集中力は発揮できると受験生を励ましているが、職業性難聴も老人性難聴も基本的には騒音が原因だ。昔、ステレオのボリュームを最大にして勉強している学生がいたが、あまり薦められない。
で、老人性難聴は高音域が聞き取りにくい難聴だが、意外に「金つんぼ」でなく、低い音や小声が聞こえていることがある。ご本人についての話だとちゃんと聞こえていたりする。「空つんぼ」とか「器用つんぼ」と呼ばれる。
パーコレーション理論とコーヒーカップの液面上にできる蜂の巣状の模様について、何かの本に書いてあったのでJ.D. バロウ『科学にわからないことがある理由』(青土社)を開いて見たら、違った。「確か左頁に液面にパターン形成が起こった写真が載っていたはず」と思い、「自然科学総論」の書棚を探したらM.ブキャナン『複雑な世界、単純な法則』(草思社)に載っていた。これではいわゆる「ベナール対流」により液体中に六角柱構造ができ、その柱の中で表面張力の差により対流が起きると説明されているが、「パーコレーション現象」の説明がなかった。こうなると別な本を探さないといけない。
英国のW.チャーチルが「どこかに書いてあったことは覚えているが、どの本だったか思い出せない時ほど、いらいらすることはない」と書いているがその通りだ。
コーヒーの粉末の粒子1個1個が水分を含み、粒子間が湯で充たされるとはじめてコーヒー成分の抽出が始まり、粉末層に細かく分岐した水のトンネルができる。こうなるとコーヒーは勢いよく滴下しはじめる、というのがこの理論のミソだ。たしか「複雑系」がらみの一般解説書に書いてあったのだが、著者名も書名も思い出せないし、自作の「蔵書目録」にもない。未入力か大学へ返却した蔵書の中にあったかだろう。
同じく産経の「産経抄」は『危ない生きもの大図鑑』(PHP新書)を紹介してくれていて助かった。「もっとも危ない生きもの」が「生きた人間」であるというのはその通りだ。岡山大学のO名誉教授は若い頃ドイツに留学していた。研究で夜遅くなると通常の出入り口が閉められ、病理解剖室から遺体安置室を抜けて外に出たそうだ。安置室には翌朝から解剖する遺体がずらりと並んでいて(ドイツの病理解剖は時間が短く、1日の数が多い)、ライヘ(遺体)向かって「グーテンナハト」(お休み)と声をかけて、列の間を通ったそうだ。
「怖くないですか?」と聞いたら、「ちっとも。死人は優しいですよ」と返事があった。
7/26「産経抄」
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/140726/ent14072603110004-n1.htm
は作家百田尚樹のNHK経営委員としての発言を批判した「朝日」記事
http://www.asahi.com/and_M/interest/entertainment/Cpettp01407260010.html
を、この暑いのに「読むだけで朝が噴き出した」と真っ向から批判していて面白い。「朝日」も負けずに反論してもらいたい。こういう「言論戦」は大いに歓迎する。同じ産経「緯度経度」欄での黒田勝弘記者の「キーセン観光業が成立するくらい人肉市場が盛んな国」という田中明「韓国政治を透視する」からの引用も、歴史的事実である。売春業はいまも韓国のGDPに貢献している。海外売春も含めれば相当の額に上る(統計上GDPに含まれない)。
1970年代の終わりだったと思うが、後輩に国際学会の経験をさせようと、ソウルで開かれるある国際学会へ演題を出すことを薦め、手伝って英文抄録を書き、発表英文原稿も持たせて学会に行かせた。日本から学会ツアーが出たそうだが、戻って来ての土産話に「キーセン・ツアー」の詳細を聞いた。女は北朝鮮系の思想にかぶれていたようで、寝物語に「千里馬思想が素晴らしいとか、ハングルは世界で一番すぐれた文字である」とか、話したそうだ。真面目な男なので、すっかり信じ切って話すのがおかしかった。
室谷克実『ディス・イズ・コレア』(産経新書)が1910年、日韓併合後の朝鮮人の日本への移住者数を年度別に掲げていた。下関に上陸した朝鮮人(日本国籍)にとって、東京はあまりに遠く、文化的にも隔絶していて、泥くさい関西の地が内地での、最大の朝鮮人コロニーとして発達したのだという。
アレン・アイルランド『The New Korea(日英対訳)』(桜の花出版)には、合併後約10年経った1919~1923年の5年間の各種統計数値が載っているが、日本移住者数の統計がない。併合により旅券もビザもいらなくなって、総督府の(たぶん)渡航許可証だけで連絡船に乗れたはずだから、統計がないのが当たり前だろう。許可証がなくても密航船はいろいろあったはずだ。
面白い記事や重要と思われる記事は切り抜いてファイルしておくのだが、一面コラムと社説には日付が入っているのに、肝心の記事には署名はあっても、紙名日付がない。切り抜いてから赤のボールペンが日付と紙名を記入するが、時にどの新聞だったかわからなくなることがある。一列の文字数を数えれば見当がつくが、「産経」のように12文字だったり、15文字だったりするとまごつく。ついでに見出し下に紙名と日付を入れてもらえれば、「切り抜くだけ」で片がつくのに。
7/21毎日「余録」が「カクテルパーティ効果」という現象を紹介していて面白く読んだ。経験のある人も多いと思うが、立食パーティで酔っぱらっていても、近くで誰かが自分の名前を出して話していると、騒音だらけなのに、すぐ耳に入る現象だ。現象は知っていたが、名称は知らなかった。
あれは「パーコレーション理論」でも説明が可能だと思う。パーコレーターでコーヒーを入れる時、初めフィルターの上に熱湯が溜まる。しばらく水面はそのままだが、次第に湯がコーヒーの粉末層を通過し、フィルターも下に向けて濡れが広がる。ひとたび一滴のコーヒーが落ちると、後は滑らかに液体コーヒーが出て、水面はみるみる低下して行く。いったんこうなったフィルターでは「初期遅延」は起こらない。この現象を一般化したものが「パーコレーション理論」だ。
で、これはPCR法でDNAを増幅するとき、1本鎖DNAにプライマーと呼ばれる「合成開始点」をくっつけておく方法に似ている。プライマー(primer)とは「呼び水(priming water)」に由来する新語だが、今は「岩波生物学辞典」にもプライマーとして載っている。昔、井戸からポンプで水を汲んでいた頃は、ポンプの中をあらかじめ水で満たしておかないと、間に空気があるので水を汲み上げられなかった。もう死語にちかい言葉だが、1980年頃には生きていた。
つまり「自分の名前」がプライマーとして耳に入ると、それに続く音声信号がパーコレートされて選択的に耳に入る可能性もある。プライマーの下流にあるDNAが複製されていく現象と似ている。
余録士は騒音の中でも集中力は発揮できると受験生を励ましているが、職業性難聴も老人性難聴も基本的には騒音が原因だ。昔、ステレオのボリュームを最大にして勉強している学生がいたが、あまり薦められない。
で、老人性難聴は高音域が聞き取りにくい難聴だが、意外に「金つんぼ」でなく、低い音や小声が聞こえていることがある。ご本人についての話だとちゃんと聞こえていたりする。「空つんぼ」とか「器用つんぼ」と呼ばれる。
パーコレーション理論とコーヒーカップの液面上にできる蜂の巣状の模様について、何かの本に書いてあったのでJ.D. バロウ『科学にわからないことがある理由』(青土社)を開いて見たら、違った。「確か左頁に液面にパターン形成が起こった写真が載っていたはず」と思い、「自然科学総論」の書棚を探したらM.ブキャナン『複雑な世界、単純な法則』(草思社)に載っていた。これではいわゆる「ベナール対流」により液体中に六角柱構造ができ、その柱の中で表面張力の差により対流が起きると説明されているが、「パーコレーション現象」の説明がなかった。こうなると別な本を探さないといけない。
英国のW.チャーチルが「どこかに書いてあったことは覚えているが、どの本だったか思い出せない時ほど、いらいらすることはない」と書いているがその通りだ。
コーヒーの粉末の粒子1個1個が水分を含み、粒子間が湯で充たされるとはじめてコーヒー成分の抽出が始まり、粉末層に細かく分岐した水のトンネルができる。こうなるとコーヒーは勢いよく滴下しはじめる、というのがこの理論のミソだ。たしか「複雑系」がらみの一般解説書に書いてあったのだが、著者名も書名も思い出せないし、自作の「蔵書目録」にもない。未入力か大学へ返却した蔵書の中にあったかだろう。
同じく産経の「産経抄」は『危ない生きもの大図鑑』(PHP新書)を紹介してくれていて助かった。「もっとも危ない生きもの」が「生きた人間」であるというのはその通りだ。岡山大学のO名誉教授は若い頃ドイツに留学していた。研究で夜遅くなると通常の出入り口が閉められ、病理解剖室から遺体安置室を抜けて外に出たそうだ。安置室には翌朝から解剖する遺体がずらりと並んでいて(ドイツの病理解剖は時間が短く、1日の数が多い)、ライヘ(遺体)向かって「グーテンナハト」(お休み)と声をかけて、列の間を通ったそうだ。
「怖くないですか?」と聞いたら、「ちっとも。死人は優しいですよ」と返事があった。
7/26「産経抄」
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/140726/ent14072603110004-n1.htm
は作家百田尚樹のNHK経営委員としての発言を批判した「朝日」記事
http://www.asahi.com/and_M/interest/entertainment/Cpettp01407260010.html
を、この暑いのに「読むだけで朝が噴き出した」と真っ向から批判していて面白い。「朝日」も負けずに反論してもらいたい。こういう「言論戦」は大いに歓迎する。同じ産経「緯度経度」欄での黒田勝弘記者の「キーセン観光業が成立するくらい人肉市場が盛んな国」という田中明「韓国政治を透視する」からの引用も、歴史的事実である。売春業はいまも韓国のGDPに貢献している。海外売春も含めれば相当の額に上る(統計上GDPに含まれない)。
1970年代の終わりだったと思うが、後輩に国際学会の経験をさせようと、ソウルで開かれるある国際学会へ演題を出すことを薦め、手伝って英文抄録を書き、発表英文原稿も持たせて学会に行かせた。日本から学会ツアーが出たそうだが、戻って来ての土産話に「キーセン・ツアー」の詳細を聞いた。女は北朝鮮系の思想にかぶれていたようで、寝物語に「千里馬思想が素晴らしいとか、ハングルは世界で一番すぐれた文字である」とか、話したそうだ。真面目な男なので、すっかり信じ切って話すのがおかしかった。
室谷克実『ディス・イズ・コレア』(産経新書)が1910年、日韓併合後の朝鮮人の日本への移住者数を年度別に掲げていた。下関に上陸した朝鮮人(日本国籍)にとって、東京はあまりに遠く、文化的にも隔絶していて、泥くさい関西の地が内地での、最大の朝鮮人コロニーとして発達したのだという。
アレン・アイルランド『The New Korea(日英対訳)』(桜の花出版)には、合併後約10年経った1919~1923年の5年間の各種統計数値が載っているが、日本移住者数の統計がない。併合により旅券もビザもいらなくなって、総督府の(たぶん)渡航許可証だけで連絡船に乗れたはずだから、統計がないのが当たり前だろう。許可証がなくても密航船はいろいろあったはずだ。
面白い記事や重要と思われる記事は切り抜いてファイルしておくのだが、一面コラムと社説には日付が入っているのに、肝心の記事には署名はあっても、紙名日付がない。切り抜いてから赤のボールペンが日付と紙名を記入するが、時にどの新聞だったかわからなくなることがある。一列の文字数を数えれば見当がつくが、「産経」のように12文字だったり、15文字だったりするとまごつく。ついでに見出し下に紙名と日付を入れてもらえれば、「切り抜くだけ」で片がつくのに。
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