ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【いっとき】難波先生より

2015-12-21 16:09:20 | 難波紘二先生
【いっとき】
 落語に「時そば」という演目がある。「古典落語集」には入っているが、手持ちテープの「落語名人選」には入っていない。江戸期の時制は、昼夜二分制の「不定時制」だった。それも「九つ」から逆に「八つ」「七つ」「六つ」「五つ」と「四つ」まで逆に進むから勘定がややこしい。
 夜鳴き蕎麦の屋台でソバを食った男が、勘定をする時に、一文銭を数えながら亭主に手渡し、7つまで数えたところで、親父に「何どきでい?」と尋ねると、親父が「八つでい」と答えるのでつづけて「九つ、とお」と勘定を続け、一文をごまかしてしまうという筋。オチはこの話を聞いた別の男が真似をして、逆に一文余計に払ってしまう。

 「不定時法」では昼と夜をそれぞれ6等分しているから、夏と冬ではいっときの長さが違うが、およそ2時間と考えていいだろう。半時(はんとき)は1時間。小半時は30分である。
 尺貫法やヤードポンド法など古い度量制は人体を規準にしている。地球を規準にしたメートル法とはおのずから異なる点がある。
 先日、長距離ドライブに出かけた。2時間経ったらカーナビから警告音が出て、「運転開始から2時間が経ちました。休息して下さい」という女声のアナウンスが聞こえたのでびっくりした。さっそく付近の公園駐車場に駐車し、あたりを散歩して疲れを休めた。

 急に冷え込んできて、12月は終日、石油ファンヒーターを愛用している。(幸い12/17現在、灯油は63円/Lまで値下がりしたので、助かっている。)これと加湿器のおかげで、室温24度、湿度50%という環境が維持できている。このストーブは2時間経つとやはり警告音が出て、ランプが点滅する。消し忘れで家を出ても、「運転継続」ボタンを押さないと、自動鎮火するように設計されている。地震で水平移動や転倒するとやはり自動鎮火する。)
 私はずっと書斎で仕事をしているので、2時間おきにこの音を聞き、ボタンを押して運転を継続している。「わずらわしいな」と思っていたが、ふと、これは「休め」という合図なのだと気づいた。カーナビと同じである。やがてカーナビと同じように「消し忘れです」とか「2時間経ちました、そろそろ休憩して下さい」と若い女声で言うようになるだろう。

 母屋のキチンには「煙 & 室温感知器」が天井換気扇(実験室のドラフトのようなタイプ)に組み込んで設置してある。この前、家内が二階で別のことをしている間に、ガスコンロの鍋が焦げて煙がキチンにもうもうと立ちこめた。らすると「火事です、火事です、火を消して下さい」という緊迫した若い女性の叫びと警告音が聞こえてきた。何も知らずに、隣の食堂で新聞を切り抜いていた私はどきっとした。このように機械・器具は急速にIT化しつつある。
 ストーブの警告音にも合理性があるので、今頃は、いったん仕事を中断してコーヒーを入れ(もちろんパルスィートも)、一服することにした。これはよい疲労回復になる。12/20は15時頃、ピー音で仕事をやめ敷地内をサンサーラまで歩き、帰りは坂道を登り車道を通って自宅まで戻った。これで1500歩である。それから1日1回の食事をした。
 夏場はクーラーをかけているが、あの「自然風」という送風モードは、「1/fゆらぎ」がなく、送風量がリズミカルに変化するというだけのしろものだから、風音がくつろぎを与えない。ところが石油の炎が出す音はまさに1/fゆらぎの音であり、聴いていて楽しい。冬のペチカが安らぎを与えるのは、たぶん炎の色だけでなく、燃焼音のせいもあると思う。
<雪の降る夜は楽しいペチカ…、ペチカ燃えろよ、燃えろよペチカ>

 そこで考えた。「ひょっとして、一刻2時間という単位は人間の生理感覚に合っているのではなかろうか?」
 昔、大学の授業の一時限は2時間だった。講義が100分、休憩時間が20分だった。この時間幅だと教師が脱線して余談をすると、それが面白くて肝心の講義は忘れても、余談の方が頭に残るというメリットがあった。あの「時限制」というのは、ひょっとして湯島・昌平黌時代からあったものではなかろうか?
 睡眠のサイクルはノン・レムとレム睡眠をあわせて、1サイクルが一刻に小半時足りない(90分)である。自然な目覚めにはレム睡眠の後に目覚めるものがよい。
 若い頃の立花隆には文明論的視座があった。たとえば、
立花隆「文明の逆接」(講談社文庫, 1984/4)のように。
 ところが、もともと理系でない彼はその後「自然科学教徒」になり、健全な科学批判精神を失った。たとえば、
立花隆「四次元時計は狂わない:21世紀 文明の逆説(文春新書, 2014/10)のように。

 のめり込むタイプの私は、前にはストーブのピー音を続けて5回も聞いて、1日が終わったこともあった。「高ケトン体血症」になっているから、集中力とその持続力は亢進している。しかしこれはよくない。一刻が生理的サイクルである、という仮説の下にストーブの警告音に従って、休んだり食事をしたりすることにした。
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-12-25 08:31:45
刻そばか。九つ(午前零時頃)まで待ちきれずに夜四つ(午後十時頃)に店に入っちまったから、二十文払っちゃうんだよね。うまくできてる。
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