ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【冬至】難波先生より

2013-11-23 10:21:40 | 難波紘二先生
【冬至】この前、文具とトイレ洗浄剤を買いに行く車中で、妻と「陽が短くなったなあ…」という話になった。4時前なのに、太陽がもう西の山に落ちようとしている。


 「もうすぐ冬至だね」、というと「冬至の日に昼がもっとも短くなるのではなく、実際は別の日だ」という。妙なことをいうな、と思い「では夏至は?」と聞くと、似たようなことを言う。
 それは「太陰暦と太陽暦の違いの話かい?」と聞くと、太陽暦の話だという。春分の日も、秋分の日も同様だという。


 聞いていて、スイスの言語学者F.D.ソシュールの言語理論を思い出した。言語学者といっても、彼は大野晋みたいにある特定の言語の起源を研究したわけでも、各種言語の地理的分布とその系統関係を研究したのでもない。


 「言語学総論」というか、記号としての「ことば」とそれが「意味するもの」の関係について、歴史的、心理学的、生理学的な深い考察を行った。
 しかしソシュール(1857~1913)は自分の言語理論を書物として著すことなく、亡くなった。が、没後にその講義ノートが刊行され、20世紀の言語理論に大きな影響を与えた。


 特に米ハーヴァード大の言語学者N.チョムスキーの「普遍文法」理論と結びつき、「ソシュール=チョムスキー理論」とさえ称されることがある。
 ソシュールの言語理論は、「先天的な言語能力」と「獲得性の言語能力」を区別していて、脳の中に普遍的な言語中枢があるとする、チョムスキー理論の先駆をなしている。
 Cf.1) F.D.ソシュール「一般言語学講義」, 東大出版会、2007
   2) N.チョムスキー:「生成文法の企て」, 岩波現代文庫, 2011
   3) 田中克彦:「ことばとは何か」, ちくま新書, 2004


 彼はフランス語(ジュネーブ大はスイスのフランス語圏)で講義したので、英語の「意味する(signify)」に相当する「signifier」という動詞を、「signifiant(シニフィアン)」と「signifie(シニフィエ)」の二つに分けた。
 前者シニフィアンは「意味するもの」という意味で、「音としてのことば」をあらわす。後者シニフィエは「意味されるもの」という意味で、「言葉が示す対象物あるいは意味」を示す。
 彼が本当に革命的だったのは、これにより「音言葉とそれが指示する意味との間に、必然的な関係はない」と主張した点にあった。


 東大医学部紛争が広島大にも波及して、医学生たちが研究室封鎖をやった時、講義室で寝泊まりしていて犬を飼っていて、それに「プロフェッサー」という名前を付けいた。まあ団交を拒否する教授会への憂さ晴らしもあったのだろうが、その時、「なるほど、ネコという名前を付けてもよいわけだ」と感心した。仮に、古代の日本人がイヌを「ネコ」と呼んでいたら、イヌとネコは名前が入れ違っていたはずだ。つまり「言語の意味の固定」は社会的・歴史的な背景があって起こる。


 ソシュール=チョムスキーの言語理論だと、人間の脳に特徴的な「普遍言語」が脳の発達に伴って形成され、そこからの「表出」として個別言語が成立する。この考え方に従えば、基本の文構造は「SVO」か「SOV」の2種しかなく、後は言葉の語尾が「変化する(屈折する)」かどうかの違いでしかないから、人類の言語は4分類される。
 これを知っておくと、他言語の習得がきわめて容易になる。


 それと、「冬至」、「夏至」、「春分」、「秋分」の話と、どう関連があるのか?
 地球は1年=12ヶ月をかけて、太陽の周りを一周する。よって1ヶ月あたりの公転角度は360/12=30°である。公転軸は太陽の引力により決定されるから、太陽軸に平行となる。
 もし地軸が公転軸と一致していれば、1年中、夜と昼の長さは各12時間で、季節の変動はない。


 月は自転しないのに、なぜ地球が自転するのかわからないが、ともかく自転していて、昼と夜がある。これがなければ、生命は誕生していないだろう。で、その自転軸は公転軸と23.4°ずれている。このため、地上から見ると、太陽が東から西に移動して、昼と夜があるだけでなく、1年をつうじて、南から北へと往復運動をしているように見える。


 太陽がもっとも北に来て、地表の単位面積あたりの太陽光照射量と照射時間が最大になるのが「夏至」であり、最も南に移動し昼が最短になるのが「冬至」である。
 その中間に春と秋があり、昼と夜の長さが同じなる時があり、それぞれ「春分」と「秋分」と呼ばれる。
 
 そう呼んだのは中国の天文学者で、英語では「Summer solstice」(夏至)、「Winter solstice」(冬至)、「Vernal equinox」(春分)、「Autumnal equinox」(秋分)という。
 Solsticeはラテン語で「折り返し点」の意味、Equinoxは equi-(等しい)とnocti-dium(夜・昼)の結合語であり、夜と昼の長さが等しいこと、つまり太陽が赤道上を通過する時点を意味ししている。


 地球の自転軸と公転軸の間に差があることによる、地球表面に対する太陽運動の差は、客観的なものだから、西洋の天文学でも中国の天文学でも差がない。
 ただ太陽が南に寄り切った時、南から北に移動する際に赤道を通過する時、北に寄りきった時、再び南に移動して赤道を通過する時、この4時点の名前が東西で違うだけである。


 つまりすべては、地球の回転軸(地軸)と公転軸がズレているために、生じる現象なので、そこのところを理解していれば、夏は太陽が真上に来て、家の中に直射日光が射さなくなるし、冬は太陽が南により家の奥まで日が射すこと、夏に昼が最長にある日があり、それが夏至と呼ばれ、逆に冬には昼が最短になる日があり、それが冬至と呼ばれること、その3ヶ月後にそれぞれ夜と昼の長さが等しくなる日があり、それが春分または秋分と呼ばれることが、まったく一元的に理解できる。


 手元にスタンドが公転軸にそっていて、自転軸が調節できる地球儀がある。昔リーダースダイジェスト社が売り出したものを、古道具屋で1000円で手に入れた。この会社は、本だけでなく理科教材も売っていたとみえる。
 これで冬至の時と夏至の時に太陽から見たら、地球がどう見えるかを写真で撮影した。
 今は地球の自転軸が太陽から極大に傾いているから、日本は冬至に近く、太陽からは南半球が見える。(添付3)いま、小川先生が「修復腎移植」の論文発表で行っておられる、オーストラリア、シドニーが夏至に近いわけである。
 逆に日本の夏至では、自転軸が太陽軸に対して極小となり、日本列島が太陽側に寄った状態になり、日照時間が長く、真上から日光があたるので暑くなる。(添付4)
 オーストラリアと日本の経度はいっしょで時差がない。経度もシドニーなら北緯と南緯が違うだけで、数値は似ている。


 今は、海底図も測量が完了し、プレートの裂け目位置も確定したから、本当の「地球儀」が作れるはずで、公転軸、自転軸の角度が調整でき、赤道、北回帰線、南回帰線が書き込んであり、緯度、経度測定尺をそなえ、海底図もちゃんと描き込んだ、安い地球儀があってよいと思うが、新聞広告でもついぞ見かけたことがない。


 頭のよい人は、冬至=日が最短の日、夏至=日が最長の日、春分、秋分=昼と夜の長さが同じ日、とバラバラに覚えることができる。それが「学校教育」だ。
 小学校の教師だった母は、「じんむ・すいぜい・あんねい・いとく・こうしょう・こうれい……こうめい・めいじ・たいしょう・しょうわ」と124人の天皇の名前を、お経を読むようにすらすら暗記していた。きっと生徒にも暗誦させたのであろう。
 私は機械的記憶力がぜんぜんだめだ。「懿徳」(いとく)なんて字は読むことも、書くこともできない。


 だから、「夏至とは」とか「冬至とは」という覚え方ができない。逆に、地球の自転軸と公転軸がズレているから、3ヶ月おきに太陽移動の上で、重要な4つの「分点」がある。そこにたまたま漢字で固有の名前が付いていると覚えている。それが「冬至」、「春分」、「夏至」、「秋分」である。
 それを英語で「冬の折り返し点」、「夏の折り返し点」、「春の日夜等分点」、「秋の日夜等分点」といったところで、それらが意味する現象、つまり、ソシュールのいう「シニフィエ」には変わりがない。



 そういえば、昔は冬至の日にはゆず湯に入るという習慣があったなあ……
 今年の冬至は、12月22日、天皇誕生日の前の日か。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【倍返し】難波先生より | トップ | 11月23日(土)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事