【倍返し】私の亡くなった叔父は耳鼻科の医者だったが、やたら法律に詳しかった。元は悪質不動産業者に騙されて、欠陥住宅を建てたことに始まるらしい。
その叔父から「業者の手付け流しは倍返し」という言葉を聞いたのは、30年以上前のことになる。
「倍返し」は正式な法律用語ではないという意見をNさんから頂いた。
しかし、「宅建業法(宅地建物取引業法)」の第39条=手付の額の制限等、第2項に「倍返し」が規定されている。
「(土地建物取引)業者が…売買契約の締結に際して手付を受領したときは、…契約の履行に着手するまでは、買い主はその手付を放棄して、当該業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。」
昔、「リーダース・ダイジェスト社」という外資系出版社があった。そこから出た「日常生活の法律百科」(1985) は 索引とイラストがしっかりしていて、使いやすい。
そこにもこういう図が載っており、「倍返し」という言葉がある。(添付2)![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/01/d2/9fd538508a36ca39d43cede45db4beeb_s.jpg)
昭和27(1952)年6月施行の法律だが、「宅地建物取引」業者に免許制を導入し、悪徳業者の排除をねらったものだが、実際は消費者が無知なことが多く、騙される人が跡を絶たない。
「宅建業法」と「リーダイ」の図が示すところは、「業者は手付け金と申込金などの名目で売買代金の2割以上の金を取ってはならない。買い主の都合で契約を解除する場合は、手付け金等を放棄する。業者の都合で契約を解除する場合は、倍返し」である。
作家の池井戸潤は「倍返し」という言葉を、「手付け金の倍返し」からえたと思われるが、主人公半沢直樹はこれを、やられたらやり返す時の「報復の度合い」という意味で用いている。新しい「意味の付加」である。
だから 雑誌「正論」12月号の、「前海星高校野球部監督・教育評論家」野々村直道のように、流行語の「倍返し」を引用して、「仇討ち制度の復権を!」と呼びかけるようなトンチンカンな輩が出て来る。
いま、出版不況でヒット作が出ると、その作家にいろんな出版社が執筆依頼に殺到するのだそうだ。池井戸潤はこのシリーズを書きすぎだ。出版社の依頼で、仕方なく書いているのだろうが、多作は必ず質の低下をもたらし、作家が潰れる最大の原因だ。
漱石だって、「吾輩は猫」が一番面白い。あれは趣味で書いて「ホトトギス」に発表したもので、まだ東大英文科の教授をしていた。「朝日」に転職してからは、職業として書いた。
流行作家の内幕は、
校條剛:「ザ・流行作家」, 講談社, 2013
が、1960年頃の流行作家、「木枯し紋次郎」の笹沢左保とエロ小説を書きまくった川上宗薫を中心に、新潮社の編集者だった校條(筆名と思われる)が、当時の流行作家の内幕を書いている。
1962年の作家長者番付は、
1.松本清張=6,103万円
2.山岡荘八
3.源氏鶏太
4.川口松太郎
5.柴田錬三郎
6.山手樹一郎
7.丹羽文雄
8.石原慎太郎
9.今東光
10.水上勉=2,191万円
だそうだ。清張は例外だが、流行作家ほど忘れられやすい。
石原慎太郎は政界に進出して、いまも活躍中だが、これらの流行作家はもうほとんどが忘れられた存在であろう。
総じて「乱作は身を滅ぼす」。
その叔父から「業者の手付け流しは倍返し」という言葉を聞いたのは、30年以上前のことになる。
「倍返し」は正式な法律用語ではないという意見をNさんから頂いた。
しかし、「宅建業法(宅地建物取引業法)」の第39条=手付の額の制限等、第2項に「倍返し」が規定されている。
「(土地建物取引)業者が…売買契約の締結に際して手付を受領したときは、…契約の履行に着手するまでは、買い主はその手付を放棄して、当該業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。」
昔、「リーダース・ダイジェスト社」という外資系出版社があった。そこから出た「日常生活の法律百科」(1985) は 索引とイラストがしっかりしていて、使いやすい。
そこにもこういう図が載っており、「倍返し」という言葉がある。(添付2)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/01/d2/9fd538508a36ca39d43cede45db4beeb_s.jpg)
昭和27(1952)年6月施行の法律だが、「宅地建物取引」業者に免許制を導入し、悪徳業者の排除をねらったものだが、実際は消費者が無知なことが多く、騙される人が跡を絶たない。
「宅建業法」と「リーダイ」の図が示すところは、「業者は手付け金と申込金などの名目で売買代金の2割以上の金を取ってはならない。買い主の都合で契約を解除する場合は、手付け金等を放棄する。業者の都合で契約を解除する場合は、倍返し」である。
作家の池井戸潤は「倍返し」という言葉を、「手付け金の倍返し」からえたと思われるが、主人公半沢直樹はこれを、やられたらやり返す時の「報復の度合い」という意味で用いている。新しい「意味の付加」である。
だから 雑誌「正論」12月号の、「前海星高校野球部監督・教育評論家」野々村直道のように、流行語の「倍返し」を引用して、「仇討ち制度の復権を!」と呼びかけるようなトンチンカンな輩が出て来る。
いま、出版不況でヒット作が出ると、その作家にいろんな出版社が執筆依頼に殺到するのだそうだ。池井戸潤はこのシリーズを書きすぎだ。出版社の依頼で、仕方なく書いているのだろうが、多作は必ず質の低下をもたらし、作家が潰れる最大の原因だ。
漱石だって、「吾輩は猫」が一番面白い。あれは趣味で書いて「ホトトギス」に発表したもので、まだ東大英文科の教授をしていた。「朝日」に転職してからは、職業として書いた。
流行作家の内幕は、
校條剛:「ザ・流行作家」, 講談社, 2013
が、1960年頃の流行作家、「木枯し紋次郎」の笹沢左保とエロ小説を書きまくった川上宗薫を中心に、新潮社の編集者だった校條(筆名と思われる)が、当時の流行作家の内幕を書いている。
1962年の作家長者番付は、
1.松本清張=6,103万円
2.山岡荘八
3.源氏鶏太
4.川口松太郎
5.柴田錬三郎
6.山手樹一郎
7.丹羽文雄
8.石原慎太郎
9.今東光
10.水上勉=2,191万円
だそうだ。清張は例外だが、流行作家ほど忘れられやすい。
石原慎太郎は政界に進出して、いまも活躍中だが、これらの流行作家はもうほとんどが忘れられた存在であろう。
総じて「乱作は身を滅ぼす」。
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