【この1年】
という原題ですが、年が明けてしまいましたので、転載者のタケダが混乱を避けるため勝手に改題しました。
1)靖国参拝=安倍首相の「電撃靖国参拝」で「南スーダン紛争」での「韓国軍への弾薬供与問題が吹っ飛びそうだ。朴槿恵大統領の外交を批判していた韓国メディアも論調を変えた。
NYTは靖国参拝を批判する長文の「投書」を載せている。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304299204579282771952593860.html
私は靖国神社を一度だけ訪問したことがある。東京、九段下の「九段会館」で秋の病理学会が開かれたことがある。この辺りは昔、「軍人会館」や陸軍の「偕行社」があったところだ。今は厚労省の「国立昭和館」という、戦中戦後の生活資料館がある。
その頃、京都府立医大病院病理部長をしていたTさんを誘って、九段下から九段坂を登って行った。文学に取り上げられた靖国神社は知らないが、歌謡曲では靖国の歌に「九段の母」(塩まさる唄、1939, 戦後二葉百合子が再唱してヒットした)、「靖国の母」(二葉百合子)、「東京だよ、おっ母さん」(島倉千代子唄, 1957)などがある。
「九段の母」は昭和14年に塩まさるが唄って大ヒットしたものをCDで聴くと、テンポが速く、典型的なヨナ抜きの長調の歌い方で、当時の浮かれた時代を感じさせるが、戦後、美空ひばりが同じ歌を唄ったものは、スローテンポで短調に変わっており、戦死した息子を思う母の哀切な感情が盛り込まれている。これはぜひ試聴をお薦めする。唄い方により、同じ歌がこうも変わるものかと思いました。
http://www.youtube.com/watch?v=10o8dWULtjY
靖国神社には大鳥居、創建者大村益次郎の銅像の他に、「遊就館」というミュージアムがあり、外国にある「戦争博物館(War Museum)」と同じようなものだ。(私はシンガポールの戦争博物館で、日本軍による略奪暴行のワックスモデルを見て、気分が悪くなった。)
遊就館には戊辰戦争以来の、兵器、戦史、関連資料(特攻隊員の遺書)などが陳列されているが、価値があるのはここの売店である。古い地図や書籍の復刻版が売られている。
戦前の東京都地図、東京都戦災地図、満州国地図、戦前の広島市地図、寛永年間広島城下図、明治後期京都市街図などをここで買った。
靖国神社は宗教団体だから政治はそれと距離をおかなければいけない。殊に隣国が反対しているのは「A級戦犯」が合祀されていることで、昭和天皇でさえ合祀以来、参詣を取り止めたという歴史的事実がある。
安倍首相が「電撃参拝」に踏み切ったのは、竹島問題、慰安婦問題、南スーダンでの韓国軍への弾薬補給問題や中国の「魚釣島への防空識別圏」設定などによる、両国の対話拒否の態度に業を煮やして、あえて火中の栗を拾う賭けに出たのであろうと思う。賭だから丁と出るか半と出るかはわからない。
米国政府は「失望した(disappointed)」と声明を発表している。
http://japanese.japan.usembassy.gov/j/p/tpj-20131226-01.html
12/28「産経抄」を読んで思わず笑った。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131228/plc13122803080003-n1.htm
「長生き」と書いているから執筆者は「コラムばか一代:産経抄の35年」を書いた石井英夫か…。08年退職のはずだが、まだ存命だ。密かに復帰した可能性はある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/石井英夫
私も「毎日」の紙面に「米国の不興をかったのは国益を損なった」という記事を見て目を疑ったひとりだ。
「国益」などという定義不明瞭の右派用語を、「毎日」が使うとは思わなかった。「産経抄」によると「朝日」も使ったらしい。
国益を損なうものが「国賊」であるから、「安倍晋太郎は国賊である」ということを含意している。こういう言葉は理性的思考を曇らせ、相手を罵倒し、感情的応酬やそれこそ強権の発動による言論弾圧を招きかねないので慎んだほうがよい。
参詣は安倍首相の個人的責任において行われたもので、それが許せないなら内閣を倒すか、国会の解散と総選挙に追い込むのが民主主義のルールである。
2)十大ニュース=ロイターで「読者が選ぶ今年の重大ニュース」を見ると、トップを「防空識別圏」と「福島汚染水」が占めている。
http://jp.reuters.com/news/globalcoverage/year
日本メディアと大きな違いがある。ロイター日本語版を見るのは、知的レベルが高い人とまではいえなくても、情報を受け身でなく積極的に集め、自主的に判断する習慣を持った人たちであろう。その人たちの圧倒的多数が「防空識別圏」問題を最大の問題と考えていることは事実だ。
読売、朝日、毎日とも記事の有料化、登録によるユーザーの囲い込みを図っているが、NYTもロイターもタイムズもNEWSWEEKもそういうことをしていない。
このままではIT機器が使いこなせる有識者はどんどん新聞離れしていくだろう。いま、自動翻訳の技術が進んできたから、「日本語版」など安い経費でつくれる。
新聞社のブランド宣伝だと考えれば、無料で採算が取れる。GOOGLEニュースでもこの3紙(読売、朝日、毎日)の記事はあまり引っかからなくなった。
日本の新聞は自滅の道を歩んでいるようだ。
そのうち、「ニューヨークタイムズ日本語版」が紙版で出るかも知れない。
WSJの以下の報道は大変よくできている。日本人記者が書いている。
http://realtime.wsj.com/japan/2013/12/27/靖国問題をひもとく/
3)内視鏡手術事故=4月に沖縄県浦添市で起きた「生体腎移植ドナー」が内視鏡手術のミスで死亡したという事件は痛ましい。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201307/2013070300946
12月24日には山口大病院が腎臓がんの手術を内視鏡でおこない、患者が死亡したと発表した。これも痛ましい。
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2013/1225/8.html
「内視鏡的腎摘出は患者への負担が少ない」というが、それは上手く行った場合の話であって、年に2人も死者が出るようでは考えものだ。確率的には5千例か1万例に1人かそこらだと思うが、宝くじに当たる確率よりは高い。不運にも当たったら生命がなくなる。
それにしても「腎動脈を切断する」つもりで、上腸管動脈と腹腔動脈を切断したというから信じられない。術前に腎動脈が2本あることを画像で確認していたための錯覚だろうか…。
腹部大動脈から腹腔動脈が枝分かれし、それとはかなり下がった位置で、腹部大動脈から上腸間膜動脈が分岐する。この2本はタテにあるので、開腹術なら間違うはずがない。腎動脈とは太さがちがう。
腹腔動脈から肝動脈、胆のう動脈、胃動脈、脾動脈が分かれるから、これを切断したら、肝臓、胆のう、脾臓の壊死が起こり、致命的だ。
膵臓は上半分が腹腔動脈、下半分が上腸管膜動脈により栄養されているから、両方を切断したら、急性膵臓壊死が起こる。これも致命的だ。患者は急性腹膜炎を起こして、相当痛くて苦しんで死んだだろう。
内視鏡の技量が未熟で、患者の内臓脂肪が多いと、覗いてもよく見えないから、局所解剖のマップがしっかり頭に入っていないと、血管を間違えるということが起きる。浦添市の病院の場合は、移植学会などの「外部調査委員会」は「医療ミスはなかった」と結論づけたが、今回はどうなるのかきちんとした調査結果の公表を望みたい。
移植学会は修復腎移植について、「移植用の血管のしばり方をしており、がんが転移する」と主張しているが、今回のように間違った動脈を結紮・切断して患者が死ぬようでは、「内視鏡手術専門医」を認定した学会としての責任も問われるだろう。
4)糖尿病検査結果=12/25(水)に受診した検査結果が郵送されてきた。
空腹時血糖=117 (70~109)、
HbA1c= 5.8 (4.6~6.2)
と40歳を記念して行った時の検査データと同じ程度の値に改善した。
インスリンとC-ペプチドの測定もお願いしておいたのだが、こちらはまだ検査中とのこと。予感ではインスリン生合成も改善されているはずだ。
毎晩、焼酎を2杯飲んでいるからガンマGTPが上昇するかと思っていたが、肝機能には異常がない。つまみが好物のイカの塩辛だから、塩分過多でカリウムが少し多め、ナトリウムは正常。
まさか晩酌に焼酎や赤ワインが飲めるほどに、糖尿病が改善するとは2年前には思わなかった。「糖質制限食」というと日本糖尿病学会が反対するから、「オスラー処方食」ないし「オスラー食」と呼んだら良かろう。オスラーは近代内科学の神様みたいな人だから、学会も内分泌内科医もむげには反対できないだろう。
「ドーランド医学大辞典」を牽くと、オスラーの名前は「オスラー病」、「オスラー結節」、「オスラー現象」、「オスラー症候」、「オスラー3兆候」、「オスラー=ヴァケー病」に残っている。
カナダに生まれ、ペンシルヴァニア大の教授になり、バルティモアのジョンズ・ホプキンス大病院をつくり、英国のオックスフォード大教授に招かれ、サーの称号を受けた人だ。
日本の内科学会が逆立ちしても、かなわないだろう。
という原題ですが、年が明けてしまいましたので、転載者のタケダが混乱を避けるため勝手に改題しました。
1)靖国参拝=安倍首相の「電撃靖国参拝」で「南スーダン紛争」での「韓国軍への弾薬供与問題が吹っ飛びそうだ。朴槿恵大統領の外交を批判していた韓国メディアも論調を変えた。
NYTは靖国参拝を批判する長文の「投書」を載せている。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304299204579282771952593860.html
私は靖国神社を一度だけ訪問したことがある。東京、九段下の「九段会館」で秋の病理学会が開かれたことがある。この辺りは昔、「軍人会館」や陸軍の「偕行社」があったところだ。今は厚労省の「国立昭和館」という、戦中戦後の生活資料館がある。
その頃、京都府立医大病院病理部長をしていたTさんを誘って、九段下から九段坂を登って行った。文学に取り上げられた靖国神社は知らないが、歌謡曲では靖国の歌に「九段の母」(塩まさる唄、1939, 戦後二葉百合子が再唱してヒットした)、「靖国の母」(二葉百合子)、「東京だよ、おっ母さん」(島倉千代子唄, 1957)などがある。
「九段の母」は昭和14年に塩まさるが唄って大ヒットしたものをCDで聴くと、テンポが速く、典型的なヨナ抜きの長調の歌い方で、当時の浮かれた時代を感じさせるが、戦後、美空ひばりが同じ歌を唄ったものは、スローテンポで短調に変わっており、戦死した息子を思う母の哀切な感情が盛り込まれている。これはぜひ試聴をお薦めする。唄い方により、同じ歌がこうも変わるものかと思いました。
http://www.youtube.com/watch?v=10o8dWULtjY
靖国神社には大鳥居、創建者大村益次郎の銅像の他に、「遊就館」というミュージアムがあり、外国にある「戦争博物館(War Museum)」と同じようなものだ。(私はシンガポールの戦争博物館で、日本軍による略奪暴行のワックスモデルを見て、気分が悪くなった。)
遊就館には戊辰戦争以来の、兵器、戦史、関連資料(特攻隊員の遺書)などが陳列されているが、価値があるのはここの売店である。古い地図や書籍の復刻版が売られている。
戦前の東京都地図、東京都戦災地図、満州国地図、戦前の広島市地図、寛永年間広島城下図、明治後期京都市街図などをここで買った。
靖国神社は宗教団体だから政治はそれと距離をおかなければいけない。殊に隣国が反対しているのは「A級戦犯」が合祀されていることで、昭和天皇でさえ合祀以来、参詣を取り止めたという歴史的事実がある。
安倍首相が「電撃参拝」に踏み切ったのは、竹島問題、慰安婦問題、南スーダンでの韓国軍への弾薬補給問題や中国の「魚釣島への防空識別圏」設定などによる、両国の対話拒否の態度に業を煮やして、あえて火中の栗を拾う賭けに出たのであろうと思う。賭だから丁と出るか半と出るかはわからない。
米国政府は「失望した(disappointed)」と声明を発表している。
http://japanese.japan.usembassy.gov/j/p/tpj-20131226-01.html
12/28「産経抄」を読んで思わず笑った。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131228/plc13122803080003-n1.htm
「長生き」と書いているから執筆者は「コラムばか一代:産経抄の35年」を書いた石井英夫か…。08年退職のはずだが、まだ存命だ。密かに復帰した可能性はある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/石井英夫
私も「毎日」の紙面に「米国の不興をかったのは国益を損なった」という記事を見て目を疑ったひとりだ。
「国益」などという定義不明瞭の右派用語を、「毎日」が使うとは思わなかった。「産経抄」によると「朝日」も使ったらしい。
国益を損なうものが「国賊」であるから、「安倍晋太郎は国賊である」ということを含意している。こういう言葉は理性的思考を曇らせ、相手を罵倒し、感情的応酬やそれこそ強権の発動による言論弾圧を招きかねないので慎んだほうがよい。
参詣は安倍首相の個人的責任において行われたもので、それが許せないなら内閣を倒すか、国会の解散と総選挙に追い込むのが民主主義のルールである。
2)十大ニュース=ロイターで「読者が選ぶ今年の重大ニュース」を見ると、トップを「防空識別圏」と「福島汚染水」が占めている。
http://jp.reuters.com/news/globalcoverage/year
日本メディアと大きな違いがある。ロイター日本語版を見るのは、知的レベルが高い人とまではいえなくても、情報を受け身でなく積極的に集め、自主的に判断する習慣を持った人たちであろう。その人たちの圧倒的多数が「防空識別圏」問題を最大の問題と考えていることは事実だ。
読売、朝日、毎日とも記事の有料化、登録によるユーザーの囲い込みを図っているが、NYTもロイターもタイムズもNEWSWEEKもそういうことをしていない。
このままではIT機器が使いこなせる有識者はどんどん新聞離れしていくだろう。いま、自動翻訳の技術が進んできたから、「日本語版」など安い経費でつくれる。
新聞社のブランド宣伝だと考えれば、無料で採算が取れる。GOOGLEニュースでもこの3紙(読売、朝日、毎日)の記事はあまり引っかからなくなった。
日本の新聞は自滅の道を歩んでいるようだ。
そのうち、「ニューヨークタイムズ日本語版」が紙版で出るかも知れない。
WSJの以下の報道は大変よくできている。日本人記者が書いている。
http://realtime.wsj.com/japan/2013/12/27/靖国問題をひもとく/
3)内視鏡手術事故=4月に沖縄県浦添市で起きた「生体腎移植ドナー」が内視鏡手術のミスで死亡したという事件は痛ましい。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201307/2013070300946
12月24日には山口大病院が腎臓がんの手術を内視鏡でおこない、患者が死亡したと発表した。これも痛ましい。
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2013/1225/8.html
「内視鏡的腎摘出は患者への負担が少ない」というが、それは上手く行った場合の話であって、年に2人も死者が出るようでは考えものだ。確率的には5千例か1万例に1人かそこらだと思うが、宝くじに当たる確率よりは高い。不運にも当たったら生命がなくなる。
それにしても「腎動脈を切断する」つもりで、上腸管動脈と腹腔動脈を切断したというから信じられない。術前に腎動脈が2本あることを画像で確認していたための錯覚だろうか…。
腹部大動脈から腹腔動脈が枝分かれし、それとはかなり下がった位置で、腹部大動脈から上腸間膜動脈が分岐する。この2本はタテにあるので、開腹術なら間違うはずがない。腎動脈とは太さがちがう。
腹腔動脈から肝動脈、胆のう動脈、胃動脈、脾動脈が分かれるから、これを切断したら、肝臓、胆のう、脾臓の壊死が起こり、致命的だ。
膵臓は上半分が腹腔動脈、下半分が上腸管膜動脈により栄養されているから、両方を切断したら、急性膵臓壊死が起こる。これも致命的だ。患者は急性腹膜炎を起こして、相当痛くて苦しんで死んだだろう。
内視鏡の技量が未熟で、患者の内臓脂肪が多いと、覗いてもよく見えないから、局所解剖のマップがしっかり頭に入っていないと、血管を間違えるということが起きる。浦添市の病院の場合は、移植学会などの「外部調査委員会」は「医療ミスはなかった」と結論づけたが、今回はどうなるのかきちんとした調査結果の公表を望みたい。
移植学会は修復腎移植について、「移植用の血管のしばり方をしており、がんが転移する」と主張しているが、今回のように間違った動脈を結紮・切断して患者が死ぬようでは、「内視鏡手術専門医」を認定した学会としての責任も問われるだろう。
4)糖尿病検査結果=12/25(水)に受診した検査結果が郵送されてきた。
空腹時血糖=117 (70~109)、
HbA1c= 5.8 (4.6~6.2)
と40歳を記念して行った時の検査データと同じ程度の値に改善した。
インスリンとC-ペプチドの測定もお願いしておいたのだが、こちらはまだ検査中とのこと。予感ではインスリン生合成も改善されているはずだ。
毎晩、焼酎を2杯飲んでいるからガンマGTPが上昇するかと思っていたが、肝機能には異常がない。つまみが好物のイカの塩辛だから、塩分過多でカリウムが少し多め、ナトリウムは正常。
まさか晩酌に焼酎や赤ワインが飲めるほどに、糖尿病が改善するとは2年前には思わなかった。「糖質制限食」というと日本糖尿病学会が反対するから、「オスラー処方食」ないし「オスラー食」と呼んだら良かろう。オスラーは近代内科学の神様みたいな人だから、学会も内分泌内科医もむげには反対できないだろう。
「ドーランド医学大辞典」を牽くと、オスラーの名前は「オスラー病」、「オスラー結節」、「オスラー現象」、「オスラー症候」、「オスラー3兆候」、「オスラー=ヴァケー病」に残っている。
カナダに生まれ、ペンシルヴァニア大の教授になり、バルティモアのジョンズ・ホプキンス大病院をつくり、英国のオックスフォード大教授に招かれ、サーの称号を受けた人だ。
日本の内科学会が逆立ちしても、かなわないだろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます