ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【稲生の物の怪】難波先生より

2017-05-30 12:27:50 | 難波紘二先生
【稲生の物の怪】4/20「中国」の地域欄に広島県三次市が「妖怪博物館」を計画中、という記事が載っていた。鳥取県の境港市に漫画家水木しげるの「妖怪ロード」があり、全国から多くの観光客がやって来るのに刺激されたらしい。

 三次の妖怪というと、「稲生の物怪(もののけ)」しかない。この話はちょっと頭のおかしい国学者平田篤胤が「稲生物怪録」という本を書いたので有名になった。篤胤がいかにおかしいかは、平田篤胤「仙境異聞, 勝五郎再生記聞」(岩波文庫)を読めばわかる。勝五郎という少年が神隠しに逢い、家に戻った時に前世の記憶があったという話である。
 「稲生の物の怪」は、進藤寿伯「近世風聞・耳の垢」(青蛙房)、根岸鎮衛「耳嚢(中)」(岩波文庫)にも、最近では須永朝彦(編訳)「江戸奇談怪談集」(ちくま学芸文庫)にも採録されている。だが文献の多さは科学的証拠にはならない。いずれも風聞を記したものだからだ。
 水木の「妖怪」はフィションだと誰でも知っている。三次の物の怪は「迷信」の産物だ。
 そんなもので「町おこし」が出来ると、本気で考えているのだろうか?

 奇談・怪談が流行するのは時代が大きく変わる時である。それは百目鬼恭三郎「奇談の時代」(朝日文庫, 1981/4)を読めばわかる。百目鬼(元朝日新聞社文化部)の原稿が書かれたのは1970年代で、まさに日本社会が大きく変わりつつあった時代だ。奇談・怪談の流行は「現実からの逃避」という側面もある。


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