【訂正など】巨大落花生の産地を「八街道」と書きましたが、
四街道(よつかいどう)市と
八街(やちまた)市との「合成語」でした。現実の地名ではありません。
四街道と八街は隣接してはいますが、別の市でした。
訂正してお詫び申し上げます。
巨大ピーナッツの方は、北下総地方で広く栽培されているようです。
「よつ」というのは現地言葉では数詞の4で「十字路」の意味、「や」というと序数で「8番目」(にできた街)という意味のようです。
それにしてもよその土地に住むものから見ると、地名の多くは当て字だから読むのに苦労します。
中でも困るのが青森、岩手の地名「戸(へ)」の付く地名が、一戸、二戸、三戸、五戸、六戸、八戸、九戸とあり、おまけに「戸来」という地名まである。「八甲田山」もあれば「六ヶ所村」もある。
とても地名と地図とを対応して憶えきれない。
鹿児島県の「川内(せんだい)」は、もとは宮城の「仙台」とおなじで、アイヌ語ではなかろうか、と思う。
啄木が育った「渋民」村だって、はじめから字があったとは思えない。「しぶたみ」に似た音が先にあって、当て字したのだろうと思う。
2)【新聞】今年は新聞、雑誌、書籍など活字メディが転機を迎えた年ではないか、という気がする。
今年の1月に福山市で高校教師をしているN先生が調査したところ、高校1年の生徒112名中「新聞を毎日読む」と答えた生徒は28%だった。
「まったく読まない」が18%もいた。
進学エリート校でこれだから、読まない生徒は他の高校では20%を超えているだろう。5年後に成人し、7年後に大学を卒業して社会人になると、スマフォの普及もあり、新聞はもっと売れなくなるだろう。
2013のABC部数を調べると、
1)読売=1000万
2)朝日=790万(2012の数値:今年分は公開していない。落ち込んだのであろう)
3)毎日=339万、
4)日経=280万、
5)産経160万となっている。
「ブロック紙」では、
1)中国=63万、
2)山陽=43万、
3)愛媛=27万、などだ。
他方、非営利団体による日刊紙は
1)聖教新聞=550万、
2)しんぶん赤旗=168万
と部数では、全国紙の「産経」、「日経」、「毎日」を超えている。この分が全国紙の部数を食っているということもあるだろう。
それでも「世界ランキング部数10位」内には、
1位:読売、2位:朝日、4位:毎日、6位:日経、9位:中日と日本の新聞が5つも入っている。ワシントンポストやニューヨークタイムズは、10位以内に入っていない。
上記の高校生では、「1面トップ記事を読む」と答えた生徒が39%、その次に多かったのが「テレビ欄」の22%であり、「中まで開いて読む」生徒は10%以下である。これは忙しいし、自分の金で購読しているのでないから、そうなるのもわかる。
年末に入って恒例の「訃報まとめ」とか「今年の書籍出版」とか「十大ニュース」などが出始める頃だが、どうも新聞に活気がないように思う。「毎日」の通年書評に期待していたが、常連書評家に3冊ずつピックアップさせただけの芸のない「週間書評」を2回も掲載した。もっと工夫の仕方があろうに。
尾道市がわざわざ岡山市から「三顧の礼」で呼んできた、市立病院の「病院事業管理者」を「罷免」したという事件が5月に起きた。そんな失礼な話は聞いたことがなく、必ず岡山大病院は医師派遣を拒否するだろうと、このメルマガで論じた。
12/23「中国」の「激動2013」という記事がその後の経過を報告しているが、突っ込み不足だ。署名記事が啼く。
「大都市への医師偏在」が問題なのではない。大学病院はどこも研修医が集まらなくて苦労している。不足分をより偏差値が低い、地方や私立の医大卒業生が補っている。だから昔に較べれば、大学病院の診療能力はぐんと落ちている。
そのことは家内の「網膜黄斑円孔」問題でいまの大学病院を中からみて、よくわかった。
診療レベルが高くて、待遇のよい公立・民間の総合病院に、研修医が流れているのである。いつまでも北海道みたいに、大学に金を寄付して医者を派遣してもらうようなシステムが機能するはずがない。
芸者置屋は抱えの芸者がいて、はじめて成り立つ商売だ。
それに結婚して子供が大きくなった場合のことを考えると、知的刺激に富み教育環境に恵まれた大都市で、勤務医の仕事につこうとするのは当たり前だろう。
案の定、尾道市立病院は小児外科、小児科に医者がいなくなって診療閉鎖に追い込まれた。これは当然予測されたことで、現在の医師マーケットがどういう原理で動いているかをきちんと調査して記事を書けばもっと読み甲斐のあるものになったはずだ。
こういう情報は「M3」などの医師情報交換サイトにすぐに流れる。
12/13「毎日」1面コラム「余録」、
リンクを貼ろうと思ったが、全文が読めない。
http://mainichi.jp/shimen/news/m20131223ddm001070172000c.html
仕方ないからPDFを添付します。(添付2)「毎日」は来年から値上げするらしいが、購読者が減るのではないか。
余録氏は今年のノーベル医学賞受賞者UCLAバークレイ校のランディ・シェクマン教授がネイチャー、サイエンスなどの商業主義を批判し、投稿ボイコットを呼びかけたという事件を論じている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ランディ・シェクマン
この英紙「ガーディアン」に掲載されたシェクマン教授の論評は、「余録氏」の主張とかなり違う。
http://www.theguardian.com/commentisfree/2013/dec/09/how-journals-nature-science-cell-damage-science
「ネイチャー」、「サイエンス」、「セル」誌が高い特権的位置を保持しており、科学者の世界でそこに掲載された論文が高く評価されているのは事実だが、すべてが良心的で再現性のある論文ではない。そこを強調した論説だ。教授は要約でこういう:
<高い購読料を取っておりながら、それに見合う社会的責任をこれら商業誌は果たしていない。現に「百歳人の遺伝子上の特徴」、「ヒト胎児のクローン」、「ゴミの路上投棄と暴力の関連性」に関する非常に注目される論文の取り下げは行われたが、捏造が指摘されている、「ある種の細菌にはDNAにリンの代わりにヒ素を用いているものがある」という論文はいまだに撤回されていない、と指摘し、これからはこれら3誌に代わって、「市民のだれでも無料で読むことができる、「eLife」というウェルカム・トラスト、ハワード・ヒューズ財団とマックス・プランク協会が協同で発行している電子ジャーナルに論文を載せ、同僚にもそのように呼びかけるつもりだ。
高額の報奨金(ボーナス)が証券・銀行の世界を「ねじれ」させたように、高い社会的名誉や永久教授職へのステップにつながるという世俗的欲望が科学の世界を歪めている。ここを改めなくてはならない>、
というもので、名前をあげられた3誌の「独占」を問題にしたものだ。
ここでも紙版と電子版を共存させることで、生き延びをはかり、巨大な利益をあげているシステムが問題にされている。
「明日ノーベル賞の授賞式に臨む」と書いた後、彼はこう締めくくっている。
<Just as Wall Street needs to break the hold of the bonus culture, which drives risk-taking that is rational for individuals but damaging to the financial system, so science must break the tyranny of the luxury journals. The result will be better research that better serves science and society.>
(「ボーナス文化」はリスクを取るというそれ自体は理性的な行為に個人を走らせるが、それは金融システムにとっては破壊的であり、ウォール街がこの呪縛を断ち切る必要があると同様に、科学は豪華な雑誌の専制を打破しなければならない。その結果、もっと科学と社会に奉仕できる、よりよい研究が生まれるだろう。)
というもので、新しい論点は1980年代以後、「科学における不正」が主に科学者個人の問題(不正な動機、倫理観の欠除、熾烈な研究競争)として論じられてきたのに対して、科学雑誌エスタブリッシュメントの責任を指摘した点にある。
これは「雑誌ジャーナリズム」の特徴で、日本の週刊誌はスキャンダルだけを報じているのではなく、大新聞が書けないことも書くから、役に立つのである。
誰か「雑誌あたりの捏造論文受理数」を計算してみてくれないか、と思う。ネイチャー、セル、サイエンスは飛び抜けて多いはずだ。
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンとかランセットは低いと思われる。「PRONAS」(米学士院会紀要)も少ないだろう。
医科研の上教授が論じている東大分子生物学の加藤教授事件とは少し次元が違うように思う。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kamimasahiro/20130904-00027838/
「世俗的欲望」が研究を歪めているというシェクマン教授の指摘は、例の降圧剤論文疑惑の方がもっと適切な例だと思う。特に千葉大学のケースは問題だ。このブログでは製薬会社の問題の社員名もあげられている。
何でメディアはこれを報じないのか、本人の釈明を聞かないのか?
http://diovan-novartis.blogspot.jp/
今年改善されたと思ったのはコラムやちょっとした記事に日付が入れられるようになったこと。ついでに新聞名も印刷しておいれくれると、切り抜く時にいちいち書かないで済むから助かるのだが…
私が新聞社の社長なら、面を縦軸と横軸にわけ、索引語を一面に載せる。地図みたいに「D-5」というように、その語の位置を表示する。自分が関心がある分野なら、索引語を見るだけですぐにその記事に行き当たり、見落としがない。バカみたいにでかい見出しなんか不要だ。スポーツ紙ではあるまいに。
佐々木俊尚「2011年、新聞・テレビ消滅」(文春新書, 2009/7)という物騒な本が出て4年が過ぎた。まだどこも消滅していないが、消費税率が10%になるまでが、ヤマ場だと思う。各紙とも電子版の有料化や登録制を推進しているが、多くの市民は個人情報を把握されるから、敬遠するだろう。
末端の新聞店の儲けの半分は、折り込み広告から出ている。福富町の場合、1枚2円50銭で、その倍の4つ折り大が平均10枚は入っているから、ざっと1紙50円になる。3紙取っている家だと150円になる。
購読料の約半分が販売店に入る。だから、減紙にならなければ、何とか暮らせるようだが、独居老人が増えて、テレビは見るが新聞は取らないという家が増えているそうだ。
Gmailの「迷惑メール撃退サービス」が徹底しているから、今のところスパムに悩まされなくて済んでいるが、どこで何が起こるかわからない。
2007年は電子書籍用端末「キンドル」が出現した年であった。いまや日本でも普及して、出版社が小売店と提携して店頭で電子ブックを売り始めるそうだ。つまりニッパン、トーハンの「取次」を中抜きしようというわけだ。運転資金の潤沢な大手はできるだろうが、取次の仮払金が必要な中小出版社にはこのまねができないだろう。
いづれにせよ、佐々木俊尚の予言が実現するかどうか、来年のメディアの対応が見ものだろう。
12/24プリンタのインクを買いに家電スーパーに行ったら、新刊書を3~6割引で値引き販売していた。よく見ると「旧価格」に対しての値引きであり、出版社が「指定価格」を値下げしているので、形式的には値引き販売ではない。どういう本があったかというと、
「医者からもらった薬がわかる本」(法研)
「薬局で買える薬がよくわかる本」(法研)
「相続でもめないための遺言書」(主婦の友社)
などだ。
いずれも「売れ残り」の不良在庫を処分したらしい。
こういう現象はアメリカのスーパーでは1970年代に認められた、「断裁処分」するよりは、値下げして売った方が得なのである。
これも来年はもっと波及するだろう。
3)映画=久しぶりに日本映画を見に行ってきました。12/21/全国公開の「永遠の0」です。前に原作を読んで書評を書いたので、感作されていたせいか、泣けて泣けてハンカチが手放せませんでした。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1376610798
米軍の戦闘爆撃機は日本軍の戦闘機部隊と遭遇したらすぐに爆弾を投下して身軽になり、ドッグファイトに取りかかるのに、日本の特攻機は爆弾を投下せず、みすみす敵戦闘機の餌食になってしまう。
これは特攻隊員が空中戦の訓練を受けなかったからだということを知りました。それを訓練する時間的ゆとりがなかったのです。
主人公の宮部少尉は、五味川純平「人間の条件」の梶上等兵と類似したところがあります。
海軍特攻隊員として沖縄に出撃戦死した宮部久蔵少尉の孫に当たる姉妹が、祖母の前夫の戦死の真相を突きとめようと生き残っている関係者に会って話しを聞いて回るという構成は原作と変わらないが、
佐伯(父方の祖父):夏八木勲
井崎(宮部の部下):橋爪功(肺がんでターミナルケア病室にいる)
大企業の会長武田(宮部の部下):山本学
長谷川:平幹二朗
といった芸達者な脇役に、宮部少尉の生き方を物語られると、また味わいもひとしおです。夏八木はこの秋亡くなったので遺作になりました。
名前は知らないが、航空隊で憶病者と考えて、宮部小隊長に模擬戦を挑んで、実弾まで発射しつつも、完全に小隊長のドッグファイトの技量に圧倒されてしまい、戦後大阪のヤクザになり、宮部の妻子の危機を救う、特攻隊員あがりのヤクザの組長の演技に迫力がありました。
16:00からのショーは15人くらいしか観客がいませんでしたが、親子連れの4人組もいました。これからでしょう。人気が出るのは。
四街道(よつかいどう)市と
八街(やちまた)市との「合成語」でした。現実の地名ではありません。
四街道と八街は隣接してはいますが、別の市でした。
訂正してお詫び申し上げます。
巨大ピーナッツの方は、北下総地方で広く栽培されているようです。
「よつ」というのは現地言葉では数詞の4で「十字路」の意味、「や」というと序数で「8番目」(にできた街)という意味のようです。
それにしてもよその土地に住むものから見ると、地名の多くは当て字だから読むのに苦労します。
中でも困るのが青森、岩手の地名「戸(へ)」の付く地名が、一戸、二戸、三戸、五戸、六戸、八戸、九戸とあり、おまけに「戸来」という地名まである。「八甲田山」もあれば「六ヶ所村」もある。
とても地名と地図とを対応して憶えきれない。
鹿児島県の「川内(せんだい)」は、もとは宮城の「仙台」とおなじで、アイヌ語ではなかろうか、と思う。
啄木が育った「渋民」村だって、はじめから字があったとは思えない。「しぶたみ」に似た音が先にあって、当て字したのだろうと思う。
2)【新聞】今年は新聞、雑誌、書籍など活字メディが転機を迎えた年ではないか、という気がする。
今年の1月に福山市で高校教師をしているN先生が調査したところ、高校1年の生徒112名中「新聞を毎日読む」と答えた生徒は28%だった。
「まったく読まない」が18%もいた。
進学エリート校でこれだから、読まない生徒は他の高校では20%を超えているだろう。5年後に成人し、7年後に大学を卒業して社会人になると、スマフォの普及もあり、新聞はもっと売れなくなるだろう。
2013のABC部数を調べると、
1)読売=1000万
2)朝日=790万(2012の数値:今年分は公開していない。落ち込んだのであろう)
3)毎日=339万、
4)日経=280万、
5)産経160万となっている。
「ブロック紙」では、
1)中国=63万、
2)山陽=43万、
3)愛媛=27万、などだ。
他方、非営利団体による日刊紙は
1)聖教新聞=550万、
2)しんぶん赤旗=168万
と部数では、全国紙の「産経」、「日経」、「毎日」を超えている。この分が全国紙の部数を食っているということもあるだろう。
それでも「世界ランキング部数10位」内には、
1位:読売、2位:朝日、4位:毎日、6位:日経、9位:中日と日本の新聞が5つも入っている。ワシントンポストやニューヨークタイムズは、10位以内に入っていない。
上記の高校生では、「1面トップ記事を読む」と答えた生徒が39%、その次に多かったのが「テレビ欄」の22%であり、「中まで開いて読む」生徒は10%以下である。これは忙しいし、自分の金で購読しているのでないから、そうなるのもわかる。
年末に入って恒例の「訃報まとめ」とか「今年の書籍出版」とか「十大ニュース」などが出始める頃だが、どうも新聞に活気がないように思う。「毎日」の通年書評に期待していたが、常連書評家に3冊ずつピックアップさせただけの芸のない「週間書評」を2回も掲載した。もっと工夫の仕方があろうに。
尾道市がわざわざ岡山市から「三顧の礼」で呼んできた、市立病院の「病院事業管理者」を「罷免」したという事件が5月に起きた。そんな失礼な話は聞いたことがなく、必ず岡山大病院は医師派遣を拒否するだろうと、このメルマガで論じた。
12/23「中国」の「激動2013」という記事がその後の経過を報告しているが、突っ込み不足だ。署名記事が啼く。
「大都市への医師偏在」が問題なのではない。大学病院はどこも研修医が集まらなくて苦労している。不足分をより偏差値が低い、地方や私立の医大卒業生が補っている。だから昔に較べれば、大学病院の診療能力はぐんと落ちている。
そのことは家内の「網膜黄斑円孔」問題でいまの大学病院を中からみて、よくわかった。
診療レベルが高くて、待遇のよい公立・民間の総合病院に、研修医が流れているのである。いつまでも北海道みたいに、大学に金を寄付して医者を派遣してもらうようなシステムが機能するはずがない。
芸者置屋は抱えの芸者がいて、はじめて成り立つ商売だ。
それに結婚して子供が大きくなった場合のことを考えると、知的刺激に富み教育環境に恵まれた大都市で、勤務医の仕事につこうとするのは当たり前だろう。
案の定、尾道市立病院は小児外科、小児科に医者がいなくなって診療閉鎖に追い込まれた。これは当然予測されたことで、現在の医師マーケットがどういう原理で動いているかをきちんと調査して記事を書けばもっと読み甲斐のあるものになったはずだ。
こういう情報は「M3」などの医師情報交換サイトにすぐに流れる。
12/13「毎日」1面コラム「余録」、
リンクを貼ろうと思ったが、全文が読めない。
http://mainichi.jp/shimen/news/m20131223ddm001070172000c.html
仕方ないからPDFを添付します。(添付2)「毎日」は来年から値上げするらしいが、購読者が減るのではないか。
余録氏は今年のノーベル医学賞受賞者UCLAバークレイ校のランディ・シェクマン教授がネイチャー、サイエンスなどの商業主義を批判し、投稿ボイコットを呼びかけたという事件を論じている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ランディ・シェクマン
この英紙「ガーディアン」に掲載されたシェクマン教授の論評は、「余録氏」の主張とかなり違う。
http://www.theguardian.com/commentisfree/2013/dec/09/how-journals-nature-science-cell-damage-science
「ネイチャー」、「サイエンス」、「セル」誌が高い特権的位置を保持しており、科学者の世界でそこに掲載された論文が高く評価されているのは事実だが、すべてが良心的で再現性のある論文ではない。そこを強調した論説だ。教授は要約でこういう:
<高い購読料を取っておりながら、それに見合う社会的責任をこれら商業誌は果たしていない。現に「百歳人の遺伝子上の特徴」、「ヒト胎児のクローン」、「ゴミの路上投棄と暴力の関連性」に関する非常に注目される論文の取り下げは行われたが、捏造が指摘されている、「ある種の細菌にはDNAにリンの代わりにヒ素を用いているものがある」という論文はいまだに撤回されていない、と指摘し、これからはこれら3誌に代わって、「市民のだれでも無料で読むことができる、「eLife」というウェルカム・トラスト、ハワード・ヒューズ財団とマックス・プランク協会が協同で発行している電子ジャーナルに論文を載せ、同僚にもそのように呼びかけるつもりだ。
高額の報奨金(ボーナス)が証券・銀行の世界を「ねじれ」させたように、高い社会的名誉や永久教授職へのステップにつながるという世俗的欲望が科学の世界を歪めている。ここを改めなくてはならない>、
というもので、名前をあげられた3誌の「独占」を問題にしたものだ。
ここでも紙版と電子版を共存させることで、生き延びをはかり、巨大な利益をあげているシステムが問題にされている。
「明日ノーベル賞の授賞式に臨む」と書いた後、彼はこう締めくくっている。
<Just as Wall Street needs to break the hold of the bonus culture, which drives risk-taking that is rational for individuals but damaging to the financial system, so science must break the tyranny of the luxury journals. The result will be better research that better serves science and society.>
(「ボーナス文化」はリスクを取るというそれ自体は理性的な行為に個人を走らせるが、それは金融システムにとっては破壊的であり、ウォール街がこの呪縛を断ち切る必要があると同様に、科学は豪華な雑誌の専制を打破しなければならない。その結果、もっと科学と社会に奉仕できる、よりよい研究が生まれるだろう。)
というもので、新しい論点は1980年代以後、「科学における不正」が主に科学者個人の問題(不正な動機、倫理観の欠除、熾烈な研究競争)として論じられてきたのに対して、科学雑誌エスタブリッシュメントの責任を指摘した点にある。
これは「雑誌ジャーナリズム」の特徴で、日本の週刊誌はスキャンダルだけを報じているのではなく、大新聞が書けないことも書くから、役に立つのである。
誰か「雑誌あたりの捏造論文受理数」を計算してみてくれないか、と思う。ネイチャー、セル、サイエンスは飛び抜けて多いはずだ。
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンとかランセットは低いと思われる。「PRONAS」(米学士院会紀要)も少ないだろう。
医科研の上教授が論じている東大分子生物学の加藤教授事件とは少し次元が違うように思う。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kamimasahiro/20130904-00027838/
「世俗的欲望」が研究を歪めているというシェクマン教授の指摘は、例の降圧剤論文疑惑の方がもっと適切な例だと思う。特に千葉大学のケースは問題だ。このブログでは製薬会社の問題の社員名もあげられている。
何でメディアはこれを報じないのか、本人の釈明を聞かないのか?
http://diovan-novartis.blogspot.jp/
今年改善されたと思ったのはコラムやちょっとした記事に日付が入れられるようになったこと。ついでに新聞名も印刷しておいれくれると、切り抜く時にいちいち書かないで済むから助かるのだが…
私が新聞社の社長なら、面を縦軸と横軸にわけ、索引語を一面に載せる。地図みたいに「D-5」というように、その語の位置を表示する。自分が関心がある分野なら、索引語を見るだけですぐにその記事に行き当たり、見落としがない。バカみたいにでかい見出しなんか不要だ。スポーツ紙ではあるまいに。
佐々木俊尚「2011年、新聞・テレビ消滅」(文春新書, 2009/7)という物騒な本が出て4年が過ぎた。まだどこも消滅していないが、消費税率が10%になるまでが、ヤマ場だと思う。各紙とも電子版の有料化や登録制を推進しているが、多くの市民は個人情報を把握されるから、敬遠するだろう。
末端の新聞店の儲けの半分は、折り込み広告から出ている。福富町の場合、1枚2円50銭で、その倍の4つ折り大が平均10枚は入っているから、ざっと1紙50円になる。3紙取っている家だと150円になる。
購読料の約半分が販売店に入る。だから、減紙にならなければ、何とか暮らせるようだが、独居老人が増えて、テレビは見るが新聞は取らないという家が増えているそうだ。
Gmailの「迷惑メール撃退サービス」が徹底しているから、今のところスパムに悩まされなくて済んでいるが、どこで何が起こるかわからない。
2007年は電子書籍用端末「キンドル」が出現した年であった。いまや日本でも普及して、出版社が小売店と提携して店頭で電子ブックを売り始めるそうだ。つまりニッパン、トーハンの「取次」を中抜きしようというわけだ。運転資金の潤沢な大手はできるだろうが、取次の仮払金が必要な中小出版社にはこのまねができないだろう。
いづれにせよ、佐々木俊尚の予言が実現するかどうか、来年のメディアの対応が見ものだろう。
12/24プリンタのインクを買いに家電スーパーに行ったら、新刊書を3~6割引で値引き販売していた。よく見ると「旧価格」に対しての値引きであり、出版社が「指定価格」を値下げしているので、形式的には値引き販売ではない。どういう本があったかというと、
「医者からもらった薬がわかる本」(法研)
「薬局で買える薬がよくわかる本」(法研)
「相続でもめないための遺言書」(主婦の友社)
などだ。
いずれも「売れ残り」の不良在庫を処分したらしい。
こういう現象はアメリカのスーパーでは1970年代に認められた、「断裁処分」するよりは、値下げして売った方が得なのである。
これも来年はもっと波及するだろう。
3)映画=久しぶりに日本映画を見に行ってきました。12/21/全国公開の「永遠の0」です。前に原作を読んで書評を書いたので、感作されていたせいか、泣けて泣けてハンカチが手放せませんでした。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1376610798
米軍の戦闘爆撃機は日本軍の戦闘機部隊と遭遇したらすぐに爆弾を投下して身軽になり、ドッグファイトに取りかかるのに、日本の特攻機は爆弾を投下せず、みすみす敵戦闘機の餌食になってしまう。
これは特攻隊員が空中戦の訓練を受けなかったからだということを知りました。それを訓練する時間的ゆとりがなかったのです。
主人公の宮部少尉は、五味川純平「人間の条件」の梶上等兵と類似したところがあります。
海軍特攻隊員として沖縄に出撃戦死した宮部久蔵少尉の孫に当たる姉妹が、祖母の前夫の戦死の真相を突きとめようと生き残っている関係者に会って話しを聞いて回るという構成は原作と変わらないが、
佐伯(父方の祖父):夏八木勲
井崎(宮部の部下):橋爪功(肺がんでターミナルケア病室にいる)
大企業の会長武田(宮部の部下):山本学
長谷川:平幹二朗
といった芸達者な脇役に、宮部少尉の生き方を物語られると、また味わいもひとしおです。夏八木はこの秋亡くなったので遺作になりました。
名前は知らないが、航空隊で憶病者と考えて、宮部小隊長に模擬戦を挑んで、実弾まで発射しつつも、完全に小隊長のドッグファイトの技量に圧倒されてしまい、戦後大阪のヤクザになり、宮部の妻子の危機を救う、特攻隊員あがりのヤクザの組長の演技に迫力がありました。
16:00からのショーは15人くらいしか観客がいませんでしたが、親子連れの4人組もいました。これからでしょう。人気が出るのは。
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