【学名と和名】
<7月3日の夕方、母屋のバルコニーの下(ここは農機具の収納棚があります)で、壁と柱の間(2mくらいあります)の雨に濡れない位置に、円網を張り丁度獲物を捕らえてこしきに運び、糸でくるんでいる大きなクモを認めました。
背面からフラッシュで撮影したものを添付します。腹部背面に葉状の模様があり、第1脚と第2脚の付け根に黒い球形の目玉状の膨らみがあります。
クモの図鑑2種をめくりましたが、私にはコガネグモ科のヤマオニグモが一番類似しているように思われます。
ちなみに腹側からと側面からフラッシュ撮影をしたら、驚いて地面に飛び降り、姿を消してしまいました。翌日見に行ったら、獲物はそのままでクモの姿は見えませんでした。
このクモがメスだとすると、体長、出現時期、分布などは図鑑の説明と一致していると思われますが、ヤマオニグモと同定して良いかどうか、自信がありません。ちなみに拙宅は海抜380mほどの林間にあります。まあ、山の中です。
ぜひ先生のご高見をお聞かせ頂ければと思います。>
というメールを日本のクモ学の第一人者小野展嗣先生にお送りしたところ、たまたま米コロラド州・デンバー郊外で開かれた「国際クモ学会」に出席中で、すこし遅れて以下の返事があった。私が当初考えた「ヤマオニグモ」ではなく「オニグモ」だろうというご意見だった。(Fig.1)
(問題のクモ)
わざわざのご返事に厚くお礼申し上げます。
「クモ図鑑」片手に、ふと考えたのは学名における命名法と「和名」における命名法の差である。
「クモ属」を「アラクネ(Arachne)」と呼ぶのは、すでに「ギリシア神話」に用例が見られ、「リンネの二項命名法」では「属名」を先に起き、その後に「種名」が続くことになっている。
これは名詞の後に形容詞がつくという「ギリシア・ラテン語」文法に則ったものだ。
これで洋書の図鑑ではArachneの索引を引くと、アラクネ綱に含まれるすべての種が羅列されているから、探している種に一挙にたどり着ける。
ところが日本語の図鑑では、「クモ綱」という項目がなく、「オニグモ」と「ヤマオニグモ」は索引ではまったく離れた位置にある。
英語も「形容詞+名詞」という造語法を持つのだが、図鑑類では名詞(属名)が索引冒頭語になっており、「日本語図鑑」のような混乱はみられない。たとえば、
Araneus ventricosus (オニグモ)
Araneus uemurai(ヤマオニグモ)
は英語本では、索引のAraneusから容易にたどり着けるが、日本語図鑑だとそれぞれが「オニ」と「ヤマ」の項にあり、簡単には到達できない。
こうした不便を何とか解消してもらいたいものだと思う。
(7/22、病院に薬をもらいに行く途中、NHKラジオで小学生が、「家の傍に巣をかけたヤマバト」について電話質問していたが、回答者の教師は、「ヤマバトで図鑑をひいてはいけない。キジバトで引きなさい。そしたら同じ鳥が見つかるはず」と指導していた。
ヤマバト Sternoptera orientalis (「東洋の胸翼類」の意)
はかつて山地に生息していたが、都市化に伴い公園や人家付近での生息が見られるようになり、「和名が変更された」のだそうだ。これなど「父親譲りの鳥類図鑑」を手にした小学生にとって、ずいぶん当惑する話だろうと思う。
要するに教師は「種が変わったのでありません。種の生態が変わっただけです」と言っているにすぎない。なのに和名が「キジバト」に変更された理由は説明していない。)
学名と和名との間に、確固とした対応関係がないこと、和名索引が(たとえばオニグモとヤマオニグモのように)「属名中心」ではなくて、種名の頭文字で編集されていること、この2点が日本語の各種図鑑を使いにくくしていると思う。
そのため今でも英語による解説書は手放せない。
R.Buchsbaum「Animals without Backbones(Vol1,2)」(Pelican, 1951)
などは60年以上前、学生時代に買った本だが、今でも愛読している。
<7月3日の夕方、母屋のバルコニーの下(ここは農機具の収納棚があります)で、壁と柱の間(2mくらいあります)の雨に濡れない位置に、円網を張り丁度獲物を捕らえてこしきに運び、糸でくるんでいる大きなクモを認めました。
背面からフラッシュで撮影したものを添付します。腹部背面に葉状の模様があり、第1脚と第2脚の付け根に黒い球形の目玉状の膨らみがあります。
クモの図鑑2種をめくりましたが、私にはコガネグモ科のヤマオニグモが一番類似しているように思われます。
ちなみに腹側からと側面からフラッシュ撮影をしたら、驚いて地面に飛び降り、姿を消してしまいました。翌日見に行ったら、獲物はそのままでクモの姿は見えませんでした。
このクモがメスだとすると、体長、出現時期、分布などは図鑑の説明と一致していると思われますが、ヤマオニグモと同定して良いかどうか、自信がありません。ちなみに拙宅は海抜380mほどの林間にあります。まあ、山の中です。
ぜひ先生のご高見をお聞かせ頂ければと思います。>
というメールを日本のクモ学の第一人者小野展嗣先生にお送りしたところ、たまたま米コロラド州・デンバー郊外で開かれた「国際クモ学会」に出席中で、すこし遅れて以下の返事があった。私が当初考えた「ヤマオニグモ」ではなく「オニグモ」だろうというご意見だった。(Fig.1)

わざわざのご返事に厚くお礼申し上げます。
「クモ図鑑」片手に、ふと考えたのは学名における命名法と「和名」における命名法の差である。
「クモ属」を「アラクネ(Arachne)」と呼ぶのは、すでに「ギリシア神話」に用例が見られ、「リンネの二項命名法」では「属名」を先に起き、その後に「種名」が続くことになっている。
これは名詞の後に形容詞がつくという「ギリシア・ラテン語」文法に則ったものだ。
これで洋書の図鑑ではArachneの索引を引くと、アラクネ綱に含まれるすべての種が羅列されているから、探している種に一挙にたどり着ける。
ところが日本語の図鑑では、「クモ綱」という項目がなく、「オニグモ」と「ヤマオニグモ」は索引ではまったく離れた位置にある。
英語も「形容詞+名詞」という造語法を持つのだが、図鑑類では名詞(属名)が索引冒頭語になっており、「日本語図鑑」のような混乱はみられない。たとえば、
Araneus ventricosus (オニグモ)
Araneus uemurai(ヤマオニグモ)
は英語本では、索引のAraneusから容易にたどり着けるが、日本語図鑑だとそれぞれが「オニ」と「ヤマ」の項にあり、簡単には到達できない。
こうした不便を何とか解消してもらいたいものだと思う。
(7/22、病院に薬をもらいに行く途中、NHKラジオで小学生が、「家の傍に巣をかけたヤマバト」について電話質問していたが、回答者の教師は、「ヤマバトで図鑑をひいてはいけない。キジバトで引きなさい。そしたら同じ鳥が見つかるはず」と指導していた。
ヤマバト Sternoptera orientalis (「東洋の胸翼類」の意)
はかつて山地に生息していたが、都市化に伴い公園や人家付近での生息が見られるようになり、「和名が変更された」のだそうだ。これなど「父親譲りの鳥類図鑑」を手にした小学生にとって、ずいぶん当惑する話だろうと思う。
要するに教師は「種が変わったのでありません。種の生態が変わっただけです」と言っているにすぎない。なのに和名が「キジバト」に変更された理由は説明していない。)
学名と和名との間に、確固とした対応関係がないこと、和名索引が(たとえばオニグモとヤマオニグモのように)「属名中心」ではなくて、種名の頭文字で編集されていること、この2点が日本語の各種図鑑を使いにくくしていると思う。
そのため今でも英語による解説書は手放せない。
R.Buchsbaum「Animals without Backbones(Vol1,2)」(Pelican, 1951)
などは60年以上前、学生時代に買った本だが、今でも愛読している。
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