【核と私】私が生まれた家は、広島の爆心地から1.5キロのところにあった。
舟入本町電停そばに作られた救護所の光景は、小倉豊文「絶後の記録」に描かれていることは、前に指摘した。
父の従兄が陸軍の兵器を製造する会社を経営していて、東京から芸備線沿線に工場のひとつを移した。その従兄から戰争の実態を知らされ、小学校教師を辞めて父はその工場の事務長になった。たぶん従兄は、父を口説くのに「広島は危ない」という情報を切り札にしたのであろう。
一家がその町に疎開したので、運よく助かったのである。
1.5キロ地点では、ガンマ線を21.6ラド、中性子を10.1ラド浴びたとされている。合計31.7ラドだ。シーベルトに直すと0.32Svだが、これは爆発時の数値で残留放射能の影響は入っていない。あの町に住み続けていたら、立派に「被曝者」になっていただろう。
「核の平和利用」が叫ばれ、読売の正力松太郎が中心になって原子力発電を推進した頃は、それが正しいと信じていた。実際に、高校の同級生には東大原子力工学科に進んだ男もいる。が、スリーマイルズ島事故とチェルノ事故の後では、「原子力の制御は不可能だ」と考えを変えた。物理学を買いかぶっていた。
核兵器と同じように原発は悪である。どちらも全廃しか人類が生きる道はない。
9/12の米NBCは9/10「毎日」記事を引用して「福島避難は地震津波より多くの人を殺した」と述べている。
http://worldnews.nbcnews.com/_news/2013/09/10/20420833-fukushima-evacuation-has-killed-more-than-earthquake-and-tsunami-survey-says?lite
私も読んだ記事だが、内容の意味を見落としていた。日赤の調査によれば原発事故のため避難させられた人約30万人。東海大地震津波による全国の死者は約16,000人。内福島県民が1,599人で約1割。「毎日」の調査によれば、「避難関連死」は約1600人と地震津波に匹敵するか、それを超えるという。
http://mainichi.jp/select/news/20130819k0000e030145000c.html
http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20130909p2a00m0na009000c.html
「消耗死」、「孤独死」、「自殺」が多いとある。
仮に福島原発メルトダウンによる強制避難措置がなくても、原住地で死亡していたかもしれないので、避難以前の死亡率との比較が必要だ。それができるのは、死亡小票にアクセスできる公衆衛生学者か、厚労省の役人だけだろう。ぜひきちんとした死亡数および死因統計を作成してほしいと思う。
あの原爆投下後だって、各大学は「調査団」を派遣して、病理解剖にも当たっている。
しかし、福島原発メルトダウンがなければ、住民が2年半以上にわたり避難する必要がなかったことは事実だ。
福島民報「福島と原発」を読むと、国はや東電は「原発は安全」といいながら、県や原発周囲の町村に、膨大な補助金や寄付を行っていたことが明らかになった。
危なくないのなら、営利会社がなんでこんなにも金をばらまくのかわからない。
そのうえ「廃炉経費」が内部備蓄されていないことも明らかになった。作る経費と運転経費だけで、電力料金を計算して「一番安い電力」と主張していたわけだ。
8/19「毎日」が英国ウェールズ州のトロースフィニッド原発(1965運転開始, 91運転停止=26年間)の廃炉作業をレポートしている。95年に燃料を取りだしたが、肝腎の放射性廃棄物の最終処分場が決まらず、原発の解体撤去は早くて2083年になるという。今から70年先だ。事故を起こしていないこの原発で解体まで100年かかるのだから、3基がメルトダウンした福島第一は「永久に解体できない」と思った方がよいだろう。
この特集記事によると、世界で廃炉が決定している原発は全部で132基あるが、まだ廃炉に成功した国はないようだ。どの国も「壊すことは考えていなかった」そうだ。先のことをまったく考えなかった点では核兵器と同じではないか。
核兵器は核力を爆発力として利用し、敵を壊滅させようというコンセプトから生まれた。その残虐な威力を目の当たりにして、物理学者は良心の呵責から核力を制御し電気を生むものとして原発を考えた。どちらも予備実験を重ねることなく、いきなり本番だった。
少なくとも事故を想定した廃炉実験は行われていない。
東電はこれまで福島第一原発4基の廃炉作業に1兆円を投じたそうだ。これから何兆円かかるか誰も予測できない。廬溝橋事件が発生した時、これが日中戦争に発展し、さらに太平洋戦争にまで拡大するとは誰も予想しなかった。あれと同じで、東京人がオリンピック建設ブームに沸いている間に、福島に労働者が集まらなくなり廃炉コストは上昇し、作業が遅れ、ある日気がついたら、東京の地下水が汚染されていて、「オリンピック返上」ということも起こりかねない。
「福島はコントロールされている」と国際社会にスピーチした手前、政府は1,000兆円を超す国債の上に、さらに50兆円くらい福島に投じざるをえないだろう。国民医療費は年間40兆円近くになった。国の歳入に匹敵する。GDP(約600兆円)の200%を超える公的負債を抱える日本は、「世界負債国オリンピック」NO.1である。2位以下を大きく引き離している。
医療保険制度は破綻寸前、国家財政も破産寸前、東北3県から2年半で10万4,000人が立ち去った。これからも人口流出は続くだろう。
今の日本は、高く積み上げた積み木の塔のようなもので、負のエントロピーがきわめて大きくなっている。原発にしろ、経済政策にしろ、領土問題にしろ、国際金融にしろ、一手間違えて、ブロックを抜くのに失敗すると、ガラガラと崩れかねない。
恩師の追悼集を読んでいて、「発言すべき時に発言しないのは卑怯ですね。」という、旧制松本高校ドイツ語教師手塚冨雄の言葉が中日新聞「「今週のことば」に引用されているのを知った。ゲーテ「ファウスト」やシュティフター「石さまざま」の翻訳で知られる人だ。(添付1)
「4.5.17稿」とあるのは、平成4(1992)年5月17日の執筆ということであろう。「体言止め」を用いているのは、新聞社の原稿用紙は字数が少ないからだ。
それはともかく、この手塚の言葉の意味はよくわかる。恩師は生涯それを実行した。私もそれにならいたいと思う。
私にとって、当面、一番重要なことは、「修復腎移植」を公認させることである。2006年からこれに取り組んでいる。福島はその後に起きた。
重要度は後者が上かも知れないが、だからといって身はひとつ、二つのことは実行に移せない。だからせめて、発言だけでもと思っている。
幸い、あるルートを通じてこの間の福島問題についての、私の発言が政府の中枢部に届くことになった。効果があるかどうかはわからない。
他方、私は「環中国包囲網」を提唱していて、20年計画で10兆円を投じて、中国周辺国に日系工場を移転させ、周辺国からの民主主義により中国を自壊させよ、と提言している。
福島を放置し、オリンピック誘致に血眼になり、シリア軍事介入問題で、真っ先に米国支持を打ち出した安倍首相を、軽率で愚かだと思っている。元々、第一次小泉内閣の時に「拉致問題」で登場した人物だ。政治家には信念と一貫性がないといけない。人気取りはよくない。
舟入本町電停そばに作られた救護所の光景は、小倉豊文「絶後の記録」に描かれていることは、前に指摘した。
父の従兄が陸軍の兵器を製造する会社を経営していて、東京から芸備線沿線に工場のひとつを移した。その従兄から戰争の実態を知らされ、小学校教師を辞めて父はその工場の事務長になった。たぶん従兄は、父を口説くのに「広島は危ない」という情報を切り札にしたのであろう。
一家がその町に疎開したので、運よく助かったのである。
1.5キロ地点では、ガンマ線を21.6ラド、中性子を10.1ラド浴びたとされている。合計31.7ラドだ。シーベルトに直すと0.32Svだが、これは爆発時の数値で残留放射能の影響は入っていない。あの町に住み続けていたら、立派に「被曝者」になっていただろう。
「核の平和利用」が叫ばれ、読売の正力松太郎が中心になって原子力発電を推進した頃は、それが正しいと信じていた。実際に、高校の同級生には東大原子力工学科に進んだ男もいる。が、スリーマイルズ島事故とチェルノ事故の後では、「原子力の制御は不可能だ」と考えを変えた。物理学を買いかぶっていた。
核兵器と同じように原発は悪である。どちらも全廃しか人類が生きる道はない。
9/12の米NBCは9/10「毎日」記事を引用して「福島避難は地震津波より多くの人を殺した」と述べている。
http://worldnews.nbcnews.com/_news/2013/09/10/20420833-fukushima-evacuation-has-killed-more-than-earthquake-and-tsunami-survey-says?lite
私も読んだ記事だが、内容の意味を見落としていた。日赤の調査によれば原発事故のため避難させられた人約30万人。東海大地震津波による全国の死者は約16,000人。内福島県民が1,599人で約1割。「毎日」の調査によれば、「避難関連死」は約1600人と地震津波に匹敵するか、それを超えるという。
http://mainichi.jp/select/news/20130819k0000e030145000c.html
http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20130909p2a00m0na009000c.html
「消耗死」、「孤独死」、「自殺」が多いとある。
仮に福島原発メルトダウンによる強制避難措置がなくても、原住地で死亡していたかもしれないので、避難以前の死亡率との比較が必要だ。それができるのは、死亡小票にアクセスできる公衆衛生学者か、厚労省の役人だけだろう。ぜひきちんとした死亡数および死因統計を作成してほしいと思う。
あの原爆投下後だって、各大学は「調査団」を派遣して、病理解剖にも当たっている。
しかし、福島原発メルトダウンがなければ、住民が2年半以上にわたり避難する必要がなかったことは事実だ。
福島民報「福島と原発」を読むと、国はや東電は「原発は安全」といいながら、県や原発周囲の町村に、膨大な補助金や寄付を行っていたことが明らかになった。
危なくないのなら、営利会社がなんでこんなにも金をばらまくのかわからない。
そのうえ「廃炉経費」が内部備蓄されていないことも明らかになった。作る経費と運転経費だけで、電力料金を計算して「一番安い電力」と主張していたわけだ。
8/19「毎日」が英国ウェールズ州のトロースフィニッド原発(1965運転開始, 91運転停止=26年間)の廃炉作業をレポートしている。95年に燃料を取りだしたが、肝腎の放射性廃棄物の最終処分場が決まらず、原発の解体撤去は早くて2083年になるという。今から70年先だ。事故を起こしていないこの原発で解体まで100年かかるのだから、3基がメルトダウンした福島第一は「永久に解体できない」と思った方がよいだろう。
この特集記事によると、世界で廃炉が決定している原発は全部で132基あるが、まだ廃炉に成功した国はないようだ。どの国も「壊すことは考えていなかった」そうだ。先のことをまったく考えなかった点では核兵器と同じではないか。
核兵器は核力を爆発力として利用し、敵を壊滅させようというコンセプトから生まれた。その残虐な威力を目の当たりにして、物理学者は良心の呵責から核力を制御し電気を生むものとして原発を考えた。どちらも予備実験を重ねることなく、いきなり本番だった。
少なくとも事故を想定した廃炉実験は行われていない。
東電はこれまで福島第一原発4基の廃炉作業に1兆円を投じたそうだ。これから何兆円かかるか誰も予測できない。廬溝橋事件が発生した時、これが日中戦争に発展し、さらに太平洋戦争にまで拡大するとは誰も予想しなかった。あれと同じで、東京人がオリンピック建設ブームに沸いている間に、福島に労働者が集まらなくなり廃炉コストは上昇し、作業が遅れ、ある日気がついたら、東京の地下水が汚染されていて、「オリンピック返上」ということも起こりかねない。
「福島はコントロールされている」と国際社会にスピーチした手前、政府は1,000兆円を超す国債の上に、さらに50兆円くらい福島に投じざるをえないだろう。国民医療費は年間40兆円近くになった。国の歳入に匹敵する。GDP(約600兆円)の200%を超える公的負債を抱える日本は、「世界負債国オリンピック」NO.1である。2位以下を大きく引き離している。
医療保険制度は破綻寸前、国家財政も破産寸前、東北3県から2年半で10万4,000人が立ち去った。これからも人口流出は続くだろう。
今の日本は、高く積み上げた積み木の塔のようなもので、負のエントロピーがきわめて大きくなっている。原発にしろ、経済政策にしろ、領土問題にしろ、国際金融にしろ、一手間違えて、ブロックを抜くのに失敗すると、ガラガラと崩れかねない。
恩師の追悼集を読んでいて、「発言すべき時に発言しないのは卑怯ですね。」という、旧制松本高校ドイツ語教師手塚冨雄の言葉が中日新聞「「今週のことば」に引用されているのを知った。ゲーテ「ファウスト」やシュティフター「石さまざま」の翻訳で知られる人だ。(添付1)
「4.5.17稿」とあるのは、平成4(1992)年5月17日の執筆ということであろう。「体言止め」を用いているのは、新聞社の原稿用紙は字数が少ないからだ。
それはともかく、この手塚の言葉の意味はよくわかる。恩師は生涯それを実行した。私もそれにならいたいと思う。
私にとって、当面、一番重要なことは、「修復腎移植」を公認させることである。2006年からこれに取り組んでいる。福島はその後に起きた。
重要度は後者が上かも知れないが、だからといって身はひとつ、二つのことは実行に移せない。だからせめて、発言だけでもと思っている。
幸い、あるルートを通じてこの間の福島問題についての、私の発言が政府の中枢部に届くことになった。効果があるかどうかはわからない。
他方、私は「環中国包囲網」を提唱していて、20年計画で10兆円を投じて、中国周辺国に日系工場を移転させ、周辺国からの民主主義により中国を自壊させよ、と提言している。
福島を放置し、オリンピック誘致に血眼になり、シリア軍事介入問題で、真っ先に米国支持を打ち出した安倍首相を、軽率で愚かだと思っている。元々、第一次小泉内閣の時に「拉致問題」で登場した人物だ。政治家には信念と一貫性がないといけない。人気取りはよくない。
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