エフロブ「買いたい新書」の書評No.233に上原善広「石の虚塔」(新潮選書)を取り上げました。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1409900128
副題が「発見と捏造,考古学に憑かれた男たち」とある。2000年11月,「毎日」のスクープが暴いた,アマチュア考古学者が「旧石器遺跡」発掘現場に石器を埋めている写真は世界中の耳目を驚かせた。以後,日本考古学会による3年間の「藤村関連遺跡」の発掘検証が行われるにつれ,日本の旧石器遺跡は音を立てるように崩壊し,研究は30年前の1970年代以前に戻った。
著者は『私家版差別語辞典』(新潮選書,2011)というユニークな書もあるルポライターで,事件発覚後12年以上経った時点で,多くの関係者に取材し,捏造事件に至る経緯を明らかにしたものだ。本書の大きな特徴は,日本ではじめて旧石器時代の存在を明らかにしたとされる1949年の「岩宿遺跡の発掘」まで遡って,遺跡の発見者相澤忠洋と考古学者芹沢長介に始まる「在野と専門学者」の「協力関係」が,やがて史上空前の遺跡捏造事件へと発展して行く過程を描いた点にある。
この事件と「STAP細胞」事件との間には、著しい類似性がある。妄説に執着する二人の老教授がいる。一人は日本における前期旧石器時代の存在を革新した老考古学者で、「層位は型式に優先する」と唱えて地層の古さを石器の旧さと誤認した。他方は、体細胞内にまれに小さな多能性幹細胞が存在すると唱えた。
それらの説を「実証」したのが、藤村新一であり小保方晴子である。二人とも一時的にメディアの寵児となった。二つの事件で彼らの「発見」が厳密な検証や再現実験を経ることなく、周囲の考古学者や医学生物学者に容易に受け入れられたのは、「目の前でそれを見た」という直裁的な体験があったからだ。経験がいかに人を欺くかは、70年代の「スプーン曲げ」事件を見れば分かる。
考古学と再生医学という一見大きく異なる分野で起きた捏造事件だが、「一次情報の誤認」という重要な共通点が見逃されるなら、別の分野で「第三の捏造」事件が発生するのを防げないだろう。
読み物としてもよくできており、お奨めします。
1) 献本お礼:「医薬経済」9/1号の恵送を受けた。お礼申し上げます。
「リビングウィルを阻む3つの理由」
「本に書く覚悟と、書かれる覚悟」
という2本の記事を辰濃哲郎氏が書いている。確か朝日新聞の「天声人語」を書いていた辰濃和男の息子で、やはり朝日出身だ。
『歪んだ権威:密着ルポ日本医師会』(医薬経済社, 2010)を出しており、医療問題を得意としている。
2) 「買いたい新書」の書評では月に4冊の取り上げる本の配分を、レファレンス本1冊、ノンフィクション2冊、フィクション(小説など)1冊の割合にしている。ノンフィクションでは、STAP細胞事件の元である幹細胞生物学についての本、原発再稼働にかかわる資源エネルギー問題、「気候変動」にかかわる気候年代史や気候学・気象学の本などを取り上げたいと思っているが、あるテーマを網羅的に論じた本は教科書だし、新書ではピンぼけの本もあったりで、なかなか月4冊では思うに任せない。
榎木英介『嘘と絶望の生命科学』(文春新書)はよい本だが、STAP事件の背景をなしている同氏の『博士漂流時代』(ディスカバー・トゥエンティワン)を取り上げたので、連続を控えている。
そしたらネットで『嘘と絶望の生命科学』についての優れた書評を認めたので、紹介したい。
三好老師という名前で「NET-IB News」に書いている。
http://www.data-max.co.jp/area_and_culture/2014/09/15121/0901_knk_01/
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1409900128
副題が「発見と捏造,考古学に憑かれた男たち」とある。2000年11月,「毎日」のスクープが暴いた,アマチュア考古学者が「旧石器遺跡」発掘現場に石器を埋めている写真は世界中の耳目を驚かせた。以後,日本考古学会による3年間の「藤村関連遺跡」の発掘検証が行われるにつれ,日本の旧石器遺跡は音を立てるように崩壊し,研究は30年前の1970年代以前に戻った。
著者は『私家版差別語辞典』(新潮選書,2011)というユニークな書もあるルポライターで,事件発覚後12年以上経った時点で,多くの関係者に取材し,捏造事件に至る経緯を明らかにしたものだ。本書の大きな特徴は,日本ではじめて旧石器時代の存在を明らかにしたとされる1949年の「岩宿遺跡の発掘」まで遡って,遺跡の発見者相澤忠洋と考古学者芹沢長介に始まる「在野と専門学者」の「協力関係」が,やがて史上空前の遺跡捏造事件へと発展して行く過程を描いた点にある。
この事件と「STAP細胞」事件との間には、著しい類似性がある。妄説に執着する二人の老教授がいる。一人は日本における前期旧石器時代の存在を革新した老考古学者で、「層位は型式に優先する」と唱えて地層の古さを石器の旧さと誤認した。他方は、体細胞内にまれに小さな多能性幹細胞が存在すると唱えた。
それらの説を「実証」したのが、藤村新一であり小保方晴子である。二人とも一時的にメディアの寵児となった。二つの事件で彼らの「発見」が厳密な検証や再現実験を経ることなく、周囲の考古学者や医学生物学者に容易に受け入れられたのは、「目の前でそれを見た」という直裁的な体験があったからだ。経験がいかに人を欺くかは、70年代の「スプーン曲げ」事件を見れば分かる。
考古学と再生医学という一見大きく異なる分野で起きた捏造事件だが、「一次情報の誤認」という重要な共通点が見逃されるなら、別の分野で「第三の捏造」事件が発生するのを防げないだろう。
読み物としてもよくできており、お奨めします。
1) 献本お礼:「医薬経済」9/1号の恵送を受けた。お礼申し上げます。
「リビングウィルを阻む3つの理由」
「本に書く覚悟と、書かれる覚悟」
という2本の記事を辰濃哲郎氏が書いている。確か朝日新聞の「天声人語」を書いていた辰濃和男の息子で、やはり朝日出身だ。
『歪んだ権威:密着ルポ日本医師会』(医薬経済社, 2010)を出しており、医療問題を得意としている。
2) 「買いたい新書」の書評では月に4冊の取り上げる本の配分を、レファレンス本1冊、ノンフィクション2冊、フィクション(小説など)1冊の割合にしている。ノンフィクションでは、STAP細胞事件の元である幹細胞生物学についての本、原発再稼働にかかわる資源エネルギー問題、「気候変動」にかかわる気候年代史や気候学・気象学の本などを取り上げたいと思っているが、あるテーマを網羅的に論じた本は教科書だし、新書ではピンぼけの本もあったりで、なかなか月4冊では思うに任せない。
榎木英介『嘘と絶望の生命科学』(文春新書)はよい本だが、STAP事件の背景をなしている同氏の『博士漂流時代』(ディスカバー・トゥエンティワン)を取り上げたので、連続を控えている。
そしたらネットで『嘘と絶望の生命科学』についての優れた書評を認めたので、紹介したい。
三好老師という名前で「NET-IB News」に書いている。
http://www.data-max.co.jp/area_and_culture/2014/09/15121/0901_knk_01/
http://www.data-max.co.jp/2013/07/24/06_mr1.html
STAP事件では世論がなぜこうも盛り上がらないのか不思議でしたが、この本が参考になるのではないでしょうか。読んでみようと思います。
私も先の国政選挙が、原発問題よりも経済政策の方に国民の関心が移った事にがっかりしました。原発問題こそ大きな経済問題なのに、目先の景気浮揚策に乗せられてしまっているようでした。
又、STAP問題も、多くの国民的事案が浮かび上がり、再生医療の問題、大学院のあり方等議論する良い機会でしたのに、そういう風潮ではなさそうですね。
高齢者が狙われています。なんとまあ、小保方氏の罪深いことよ。
STAP検証は無意味ですね。
可能性が皆無とは断言できないので潰すことはできないが、他機関が実験で立証できるのを待つとして、現段階では「無い」という見解を理研は半年前に示すべきだったね。
論文撤回で終わりにしないといけない問題だよ実際。
投資詐欺にしても、世の中そんなに甘い話はないでしょう。欲を出すのがいけないと思いますよ。
研究者と一般人の言葉の違いと言えば、こんな例もあります。
福島第一原発事故調査報告書や関連書籍に出てくるエピソードです。現場では苦労に苦労を重ねて原子炉を冷やすために海水の注水を始めていました。その頃首相官邸でも、海水注水が問題になっていました。斑目原子力保安院委員長(当時)ら原子力の専門家は、海水注水を進言します。すると菅首相(当時)は「海水を入れて再臨界することはないか?」と問います。斑目氏の答えは「その可能性はゼロではない。」
すると、官邸にいた政治家たちは「万一再臨界したら大変なことになる。」と海水注水をためらいます。その空気を読んだリエゾンが、現場に海水注水を待てと指示して、吉田所長(当時)の一芝居が打たれたわけです。事故調査報告書によれば、斑目氏は「限りなくゼロに近いというニュアンス言ったのだ」と証言していますが、研究者としては、絶対とはとは言えないので、科学的には正しい表現ですが、残念ながら、官邸の面々にはその真意が伝わっていなかったのです。
こうした、研究者と一般人の隔たりをわきまえて研究者の真意を解りやすく一般人に伝えるのが本来のマスコミの役割のはずですが、残念ながら全く機能していません。そこで、多少の科学的な正確さは犠牲にしても、いったん「STAP細胞はない。」と理研に断言してもらい、世間的にはSTAP細胞の有り無しの議論に終止符を打って、小保方氏の方法以外で多能性細胞ができるかどうかは、研究者に委ねたほうがよいと思うのです。
ただでさえ暮らして行くには少ない年金が年々減らされいるし、健康保険料や介護保険料も上がるばかりです。年齢とともに、眼医者だ、歯医者だ、整形外科だと、支払う医療費も増える一方です。多少の蓄えがあっても、入院すれば、あっという間になくなりそうです。だから一見元気そうな高齢者も実は先行きの不安でいっぱいなのです。そんな不安に付け込まれ、高齢による判断力の低下も相まって、ついつい引っ掛かってしまうのだと思いますよ。
私は高齢者ですけど、投資などというものに手が出せる人は、お金に余裕がある人のすることと思っています。
つましい暮らしをしている者に、そのような恐ろしいことは出来ません。
アノニマスさんのように大学に進学せず、事務のお仕事をしていらした方でも実に色々とご存知ですし、専門家とは名ばかりの人もいますしね。大切なのは、肩書きでは無いという事でしょうか。