ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

10-13-2014鹿鳴荘便り/難波先生より

2014-10-13 21:45:15 | 難波紘二先生
 先日10/4(土)に前の虚空蔵山(522m)に登った。無線塔があるので、道路は整備されており頂上の展望台まで軽自動車で登れる。天候が良くて、町の中心にあるダム湖がよく見えた。(写真1)左のハート型の湖に突き出た半島の付け根に町営の共同墓地があり、そこに墓所を用意してある。

 カメラアングルを探して歩いていたら、大きなドングリが沢山落ちていた。頂上の展望台で町の写真撮影をした後、山道を下りながら、七つ道具のひとつビニール袋を取り出し、実を拾った。登山靴を履いていたので、急坂でつんのめらないですんだ。柴栗の実ほどもある丸みのある実で、これまで見たことがない。すぐに袋いっぱいになった。で、これを前の雑木林で拾った栗、ドングリと比較してみた。(写真2)
(写真2)
 上段が前庭のドングリ、中段が前の山で拾った大きなドングリ。右端は外の皮を剥いで、渋皮と実を露出したところ。下段が雑木林の大栗(左)と柴栗(右)。ナイフでスライスしてクリとドングリを比較してみた。(写真3)
(写真3)
 切った直後は左の大栗と変わらない色をしていたが、ドングリは5分もすると褐色に変色した。「これは含まれている渋(タンニン酸)のせいだな」と思い、小片を切り取り口に入れ噛んでみると意外に柔らかく、確かにほのかな渋みがあるが、庭の山椒の葉や実(外皮)、野生のイヌザンショウの葉に比べて、それほど刺激性のあるものではない。濃い番茶程度のものだ。写真の栗の実の方には、渋みはないが、生では固くて不味い。ドングリよりブラックコーヒーの方がよっぽど苦い。
 不思議なことに渋皮を剥いたドングリの表面は、時間がたっても茶色にならない。(写真2,中段右端)おそらく渋皮の下にある細胞はタンニン酸を分泌しないのであろう。結局、写真の渋皮だけのドングリは全部食べてしまった。噛んでいると渋みに慣れて、甘みが出てくる。
 クリの方には、真ん中に虫食いによる穴があり、穴の左縁に写っているのが、「栗虫」の幼虫だ。ナイフで切断されたが、黒い眼点が見える。マユをつくる蛾の幼虫で、子供の頃は樹にいるこの幼虫を捕まえて、絹糸腺を取り出し、引き延ばして魚釣り用のテグスを自作していた。確か酢に漬けた後、急いで引っ張って伸ばしたと記憶する。虫食いのクリを集めて大きな缶に入れておくと、春先に川釣り用の餌に不自由しないと聞いたことがある。
 タンニン酸(タンニン)は酸化により黒くなる性質がある。化学辞典によると、ポリフェノールを含んだ化合物だそうだ。タンニン酸と鉄が結合すると、不溶性の黒い色素ができるのでインクに利用されるともある。タンパク質分子同士を結合させるので、味蕾の受容体タンパクに一時的に架橋し、それに酸味が加わると「渋味」として感じられるのである。なんだ、渋みがある赤ワインと同じじゃないか…。
 オジギソウがお辞儀をするのは、「タンニン液胞」というタンニン酸を溜めた小胞があり、その外に線維性のタンパク質分子が並んでいて、刺激を受けるとタンニン酸と小胞膜表面からのカルシウムが放出され、「筋線維」が収縮するからだそうだ。カルシウムが関与するのは同じだが、動物の筋収縮の仕組みと原理が違う。
 ドングリの調理法を「食べられる野草」、「食用植物百科」の類で調べたが、どこにも書いてないので以上の基礎実験をしてみた。柿の実の黒い星は、タンニン酸が不溶性になり凝集したものだ。ドングリも同じ原理で渋抜きができると思う。実際にやってみたが、クリと違い実の中まで薄茶色になり、弱い渋みが残った。それにクリより堅かった。(写真4.スケールは細線が1cm、太線が5cm)
(写真4)
 後は味付けでこの渋みを消せるかどうかだろうが、私は調理はさっぱりダメだ。
 「どんぐり」というと、『寺田寅彦随筆集1』(岩波文庫)の冒頭にある同名の、亡き妻を偲んだ随筆を思い出す。18歳で嫁に来て、翌年初産して「みつ坊」を忘れ形見に残して結核で死んだ。6歳になった遺児と公園でどんぐりを拾いながら、ハンカチにどんぐりをいっぱい拾って喜んでいた亡妻を思い出すという話だ。読み直してもほろりとする。
 宮沢賢治「どんぐりと山猫」は岩波文庫版には入っておらず、ちくま文庫『ちくま日本文学3・宮沢賢治』には入っている。「かねた一郎」が山猫から来たハガキに呼び出されて行ってみると、どんぐりたちが「ドングリの背比べ」で、頭のとがったのが偉い、いや頭の丸いのが偉いと言い争っている。裁判長の山猫が困って一郎の意見を聞くので、判決を耳打ちしてやる。裁判が片付き、喜んだ山猫が「金のどんぐり」一升を謝礼にくれるが、家に帰ると「茶色のどんぐり」に変色していたという話だ。宮崎駿あたりが映画にすれば面白いだろうが、読んだのでは面白くない。
 「渋み」というと、トレヴェニアンの代表作『シブミ』(ハヤカワ文庫、2冊本)がある。第6部まであるが、各部名がすべて日本語(eg.フセキ、サバキ、ツル ノ スゴモリetc)という変わった作品だ。昔、英語ペーパーバックで読んだのだが、邦訳をみるとすっかり中身を忘れている。
 今回は、
1.訂正など=「連綿」と「恋々」の間違い、
2.書評など=エフロブ「買いたい新書」書評にNo.238:神崎亮平「サイボーグ昆虫、フェロモンを追う」をとりあげました。
3.修復腎物語(9)ウィスコンシン再訪=男は二度目の腎移植留学をし、それが「ウィスコンシン腎輸入」という国際プロジェクトのきっかけとなります。
4.IQ84=村上春樹はノーベル賞に値するか?
5.けた違い=朝鮮人「従軍慰安婦20万人」という虚偽数値の出所を突き止めました
6. 書込を読んで10/10=「宋襄の仁」の意味とAO入試について
7.マッチポンプ=「朝鮮日報」の朴槿恵「空白の7時間」報道について
8.1面コラム=10/10各紙の「産経ソウル支局長起訴」についての論評を比較してみた
と多彩になりました。
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