〔レジオネア菌・続報〕
問題の三原市「みはらし温泉」(森川観光の経営)では、広島県の検査により「公衆浴場法」の基準値の11倍のレジオネラ菌が検出され、同法に基づき県が3/28に「営業停止」を命じたと地元紙「中国」が報じた。この日、患者はさらに増え、計50人になったという。
米フィラデルフィアの場合は、ホテルの業務用エアコンの消毒が不十分だったために起きたが、「みはらし温泉」の場合は、お湯からレジオネラ菌が検出されている。これは温泉水の衛生管理がなっていない、ということだ。
お湯の菌のDNAと患者から検出された菌のDNAは同じものだったという。PCR法という前述の方法でDNAを増幅して確かめたのだと思う。
日本では「温泉信仰」が根強く、温泉とは名ばかりで、実際には地下から組み上げた水を加熱し、温泉に仕立てあげ、お湯はフィルターを通して再利用しているから、警戒が必要だ。「お医者さまでも、草津の湯でも…」(惚れた病は治しゃせぬ、を省略)というが、兵庫県の城崎温泉のようなところなら安心だ。志賀直哉が滞在し、名作「城崎にて」を書いたところだ。
中世のドイツにも温泉にはいる風習があったようで、ブリューゲルの版画に「青春の泉」と題する男女混浴の温泉風景を描いたものがあると記憶するが、画集が行方不明で再確認できない。彼は風刺画家だったから、混浴は事実でないかも知れない。江戸時代の銭湯は男女混浴で、明治になって西洋化政策により禁止されたと思う。
上記記事と並んで島根県浜田市の三セク宿泊施設「ふるさと体験村」の男湯で基準値(10個/100MLあたり)の2倍のレジオネラ菌が検出されたことが、報じられている。これも利用禁止になっている。
3/31「中国」の続報によると、県の営業停止に続いて三原署が「業務上過失致死傷」の容疑で同施設を家宅捜索したという。観光地三原市のイメージを大きく損なっただけに、ペナルティが必要だろう。三原は横山大観が愛した銘酒「酔心」の酒造会社があるだけに、日本酒のイメージまで損なったと思う。
(ちなみに酔心の「ぶなのしずく」という酒は、わが町福富町の県央の森公園の近くにある専用井戸から「深層水」を組み上げて専用タンクで三原市まで運び、この水で酒を造っている。我が家の井戸も地下50mまで掘り下げ、2層に分かれた岩盤の下から水を汲み上げている。水道水のようなカルキは入っていない。レストラン「サンサーラ」の水も同様である。いわば天然のミネラル・ウォーターである。もちろん保健所の検査は受けている。)
まあ、全国にある「安っぽい温泉」にはレジオネラ菌がいると考えて、近づかない方がよいだろう。私はラジウムとかラドンのような放射能がある温泉は敬遠することにしている。医用放射線にも発がん効果があるのを知らない人も多い。ラジウムの放射線を研究したキュリー夫人はがんになって死んだのである。
危険は温泉だけではない。高齢者が冬に寒い脱衣室から浴室で熱い風呂に入った後、また寒い脱衣室に出ると、血圧が一挙に30mm/Hg以上上昇し、意識障害や失神を起こしやすくなることが「東京都健康長寿医療センター研究所」の実験結果で明らかになったと、3/27「日経」が報じた。
実際隣町(今は三原市)の知人宅では寒い冬の夜に、老人が風呂の湯を出しながら入浴したので、失神発作を起こして溺れ死んだという事故が起きている。脱衣所を十分暖かくして、浴室との温度変化を、なるべく少なくすることが健康管理の上で重要だ。
3/27「産経抄」は元横綱武蔵丸が本場所中に40℃以上の発熱があるのに、身体を温めようと風呂に入り上がったら、急に意識喪失して、病院に行く車中で意識が戻ったが、「逆行性健忘」が残ったという面白いエピソードを(武田葉月「横綱」講談社文庫)の紹介と共に載せている。「逆行性健忘」というのは、失神する直前の記憶を忘れているということで、一時的な脳障害があったということだ。いま、一面コラムでは「産経」が一番面白いと私は思う。これなど力士に基本的な健康知識が欠けている証拠だ。決して美談ではない。
「記事転載は事前にご連絡いただきますようお願いいたします」
問題の三原市「みはらし温泉」(森川観光の経営)では、広島県の検査により「公衆浴場法」の基準値の11倍のレジオネラ菌が検出され、同法に基づき県が3/28に「営業停止」を命じたと地元紙「中国」が報じた。この日、患者はさらに増え、計50人になったという。
米フィラデルフィアの場合は、ホテルの業務用エアコンの消毒が不十分だったために起きたが、「みはらし温泉」の場合は、お湯からレジオネラ菌が検出されている。これは温泉水の衛生管理がなっていない、ということだ。
お湯の菌のDNAと患者から検出された菌のDNAは同じものだったという。PCR法という前述の方法でDNAを増幅して確かめたのだと思う。
日本では「温泉信仰」が根強く、温泉とは名ばかりで、実際には地下から組み上げた水を加熱し、温泉に仕立てあげ、お湯はフィルターを通して再利用しているから、警戒が必要だ。「お医者さまでも、草津の湯でも…」(惚れた病は治しゃせぬ、を省略)というが、兵庫県の城崎温泉のようなところなら安心だ。志賀直哉が滞在し、名作「城崎にて」を書いたところだ。
中世のドイツにも温泉にはいる風習があったようで、ブリューゲルの版画に「青春の泉」と題する男女混浴の温泉風景を描いたものがあると記憶するが、画集が行方不明で再確認できない。彼は風刺画家だったから、混浴は事実でないかも知れない。江戸時代の銭湯は男女混浴で、明治になって西洋化政策により禁止されたと思う。
上記記事と並んで島根県浜田市の三セク宿泊施設「ふるさと体験村」の男湯で基準値(10個/100MLあたり)の2倍のレジオネラ菌が検出されたことが、報じられている。これも利用禁止になっている。
3/31「中国」の続報によると、県の営業停止に続いて三原署が「業務上過失致死傷」の容疑で同施設を家宅捜索したという。観光地三原市のイメージを大きく損なっただけに、ペナルティが必要だろう。三原は横山大観が愛した銘酒「酔心」の酒造会社があるだけに、日本酒のイメージまで損なったと思う。
(ちなみに酔心の「ぶなのしずく」という酒は、わが町福富町の県央の森公園の近くにある専用井戸から「深層水」を組み上げて専用タンクで三原市まで運び、この水で酒を造っている。我が家の井戸も地下50mまで掘り下げ、2層に分かれた岩盤の下から水を汲み上げている。水道水のようなカルキは入っていない。レストラン「サンサーラ」の水も同様である。いわば天然のミネラル・ウォーターである。もちろん保健所の検査は受けている。)
まあ、全国にある「安っぽい温泉」にはレジオネラ菌がいると考えて、近づかない方がよいだろう。私はラジウムとかラドンのような放射能がある温泉は敬遠することにしている。医用放射線にも発がん効果があるのを知らない人も多い。ラジウムの放射線を研究したキュリー夫人はがんになって死んだのである。
危険は温泉だけではない。高齢者が冬に寒い脱衣室から浴室で熱い風呂に入った後、また寒い脱衣室に出ると、血圧が一挙に30mm/Hg以上上昇し、意識障害や失神を起こしやすくなることが「東京都健康長寿医療センター研究所」の実験結果で明らかになったと、3/27「日経」が報じた。
実際隣町(今は三原市)の知人宅では寒い冬の夜に、老人が風呂の湯を出しながら入浴したので、失神発作を起こして溺れ死んだという事故が起きている。脱衣所を十分暖かくして、浴室との温度変化を、なるべく少なくすることが健康管理の上で重要だ。
3/27「産経抄」は元横綱武蔵丸が本場所中に40℃以上の発熱があるのに、身体を温めようと風呂に入り上がったら、急に意識喪失して、病院に行く車中で意識が戻ったが、「逆行性健忘」が残ったという面白いエピソードを(武田葉月「横綱」講談社文庫)の紹介と共に載せている。「逆行性健忘」というのは、失神する直前の記憶を忘れているということで、一時的な脳障害があったということだ。いま、一面コラムでは「産経」が一番面白いと私は思う。これなど力士に基本的な健康知識が欠けている証拠だ。決して美談ではない。
「記事転載は事前にご連絡いただきますようお願いいたします」
この事件では、周辺住民も犠牲になっており、建物の冷却塔でレジオネラ菌が繁殖し、周辺にエアロゾルとして拡散したのが原因といわれています。エアコンを消毒するだけでは不十分でした。
>高齢者が冬に寒い脱衣室から浴室で熱い風呂に入った後、また寒い脱衣室に出ると、血圧が一挙に30mm/Hg以上上昇し、意識障害や失神を起こしやすくなること
意識障害は、血圧が降下した時に起きやすいでしょう。該当する研究を紹介した記事には、「血圧の急降下で脳に必要な血液を届けにくくなり、入浴中に意識障害や失神を起こしやすい。」とある。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO11242950Q6A231C1000000/